人を愛せない最強冒険者 アキハナ・アカネ 世界の旅

rina103

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第一章 ええやんええやん♪ 異世界ストレスフリー

第三話 イレギュラーマン

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 バチン!! という大きな放電音がした。

「きゃぁぁぁぁっ 昭英あきはなさん!」
「昭英!」

 天井のLEDが点き、オフィスが明るさを取り戻す。

 昭英の周りに集まっていた社員が、明かりの点いた天井を見上げ、ふたたび視線を戻すと、昭英は消えていた。

「昭英どこ行った!」
「えっ 昭英さん?」
「昭英が消えた!」

 オフィス内が騒然とする。

 フロア内の全員で昭英を捜した。
 一階のゲートに昭英の通過履歴はなく、非常階段も使われた様子がなく、ビル内の監視カメラ映像にもその姿はなかった。
 スマホも家の電話も繋がらず、実家にも帰っていなかった。

 複数人の前で“消える”という異常事態に会社側は困惑したが、翌日、各所を再度確認して、警察に昭英明音の捜索願を出した。


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 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おい、誰だ、僕のケツを凝視しているのは! そう云うの見えてなくても分かるんだからな! って、アレ?」

 ここはどこだ?
 僕とパソコンでバチバチしてたよね

 なんで廊下の真ん中で四つん這い?

 廊下ではあるが…

「知らない廊下だ…」

 膝をパンパンッと掃いながら立ち上がり、辺りを見渡す。
 幅3m程の廊下。レトロな感じのライトグレーのリノリウム床、真っ白な壁、真っ白な天井には等間隔で蛍光灯が並んでいる。
 壁には、5m程の間隔で、扉上に長方形の赤ランプの付いた、磨りガラスが嵌め込まれた扉が並んでいる。果てしなく。

「嘘でしょ…」

 前も後も、廊下の端が見えなかった。そしてずっと奥までも明るかった。
 見ていると遠近感が狂って頭が痛くなる。

 “ビィーーーーーーーーーーッ”

 突然ブザーが鳴った。

「なになになに!」

 びっくりして鼓動が早まる。

 振り返ると、50m程先に一か所、扉上の赤いランプが点灯している。

「あそこの部屋に入れってこと?」

 ランプの点いた扉の前に立つ。
 磨りガラスからは中の様子が分からないが、何かあるのは分かる。

 恐る恐るドアノブに手を掛ける。

「どうぞ」

 ビクゥン!
 不意に中から声を掛けられ思わずドアノブから手を放す。
 鼓動が更に早まる

「どうぞ」

 再びドアノブに手を掛け扉をゆっくり開ける。
 少し開けて、中の様子を覗く。

「お入りください」

 さらに扉を開けて、部屋の中に半身だけ入れる。

 中には、左右の壁にピッタリ付けられたスチール棚とそれに挟まれるように置かれた事務机。
 その机の上に広げられた書類に目を落としていた人物が顔を上げこちらを見る。

 完全な白髪、白のマオカラースーツ、袖口から見えるシャツも白、机の下に見える靴も白のエナメル。裾から覗く靴下も白。
 肌も病的ではないが白く、瞳は淡いブルー。総じて白。真っ白な男がいた。
 そのビジュアルからは性別以外の情報は得られない。

 その白さにも驚いたが、ハッと気付いた。

 この人、ここに来るたび机を乗り越えてあそこに座っているのか?

 白い男の向こうには、窓も扉も無かった。

「いつまでそうしているつもりですか?」
「あ、すいません!」

 白い男の無機質な感じに気圧されて思わずヘコッとしてしまう。

 部屋に入って扉を閉めると、ノブから“カチリ”と鍵がかかったような音がした。

 ん?

「お座りください」
「は、はいっ」

 うわー こう云うタイプ苦手だなぁ… なんか就活ン時を思い出すよ。

 机の前に置かれた、座面と背もたれがメッシュで出来た簡素な椅子に座る。

 慌てて居住まいを正して、

「あのぉ 先にお伺いしてもよろしいですか?」
「どうぞ」
「ここはいったいどこですか? ここに来るまでの記憶が一切ないのですが…」
「あなたの以前の存在レベルでは認知も認識もできない場所。あなたが知りうる語彙から近似表現をするならば“現実空間と概念空間の狭間”と言えば理解できますか?」
「いえ。 まったく。」
「…また近似表現をするならば、私は、次元検閲官と云う存在です。」
「………」
「ここは、かみさまが、せかいのおしごとのためにつくった、かみさまのくにですよ。」

 子供を諭すような声と口調になりやがった。

「…そこはかとなく馬鹿にしてますか?」
「………」
「………」
「私は、次元検閲官と云う存在です」

 次元検閲官の無機な表情から、『私、間違ったこと言いました?』と云う意志だけが伝わってくる。

「んー… 検閲官…さん? …私はなぜここにいるのでしょう?」

 次元検閲官が、机の上の書類を纏め端に寄せ、引き出しから新たな書類束を出してきた。
 書類束の一番上の書類に目を通しながら、

「えー… 個体名、昭英明音≪あきはなあかね≫ですね。これから、昭英さんの身に起こった事を説明いたします」

「お願いします」

「まずはここが何処かと云う事ですが、昭英さんが今、五感で認識している物は全て、昭英さんの存在レベルが一時的に上がったことに因り、次元が平滑化しようとする自然現象の概念が顕在化したものです」
「?」
「なぜここにいるか、ですが、昭英さんもご存知のアプダスバックやプロト007、それらが局所的なエントロピー増大を引き起こし、基底現実のバランスを崩壊させるレベルに到達しました」

 ぜんっぜん頭に入ってこないな

「そのため、バランス崩壊と云う事象の因果を分解するために、複数の世界線への干渉が起きました。それに巻き込まれ、昭英さんの因果も分解されかけました。」
「ちょっ! な!」
「ですが、干渉に対するフィルタリングにより、自我が検出され、検閲対象となり、昭英さんの存在確率をここで上げ、分解を保留状態にしました」
「分解とか! 僕死んじゃってるんですか!」
「存在確率が上がった事に起因する存在レベル上昇が、自然現象の概念の顕在化に繋がっています」
「僕死んでるんですか? 全然意味がわかりません!」

 何を言っているのか、感情の分からない顔で淡々と語られると、マジ怖いんですけど!

「次元の平滑化という自然現象は、エントロピーという“出る杭”を打って一様にそろえるだけではありません。分解にあたっては、多角的に分解そのものに対し、検閲のような動作をします」
「てか、死んでるんですか、死んでないんですか!」

 自分で死んでるか、死んでないかとか、どうなん? 

「生きてるんですよね?」
「首の皮一枚、この場合は、シルバーコードの繊維一本で繋がってると云った感じでしょうか」

 生きてるのかどうかは教えてくれないクセに、急に『上手いこと言ったった』みたいな感じ出してきたな、次元検閲官さん。
 なんか冷静になってきたよ。

「…次元…の保全? のために働く的な、自然現象があると…」
「厳密には…いや、事象に言葉を与えると概念化するので意味をなさないのですが、そう認識してください」
「んーもう理解できないのだが。まぁいいや。 えーその自然現象自体を、徳の上がった「徳は一切上がっていません」…何かが上がった僕が認知すると、今僕が見たり聞いたり触ったりしているものとなる」
「はい、そう認識してください」
「その自然現象の一部には、次元検閲官さんも?」
「はい、そう認識してください」
「僕が携わっていた、アプダスバックやプロト007が何かやらかしそうなので、消そうとしたら、それに僕が巻き込まれて… あー、あのデカい雷とかPCと僕の間のスパークとかか!」
「はい、そう認識してください」

 なんか同じことしか言わなくなったな次元検閲官さん。

「んー、自然現象として、色々消しちゃったんですよね? それってどうなっちゃったんですか」
「消したのではなく、因果の分解ですので、そもそもの原因と結果が別の事象として浸透していきます」
「イイ感じで無かったことになるってことですか」
「無かったことになるのとは違いますが、見かけ上は同じですね」
「無くなったものはもう存在しないと?」
「そうですね、ただ、昭英さんの場合はかなり特殊な状態です」

 ん、ん、ん?

「特殊とは?」
「端的に言いますと、昭英さんはかなりイレギュラーな存在です」
「イレギュラー…」
「昭英さんは巻き込まれて、存在確率が著しく下がりました。マルチバースに於いても、存在率はRontoロントつまり10のマイナス27乗の割合です」
「…」
「それを次元検閲官扱いで、揮発しないように存在確率を上げました。次元検閲官は、昭英さん認識のもとにあると言えます。つまり、例えるならば、自分が立っている床を自分で引っ張り上げて浮いているようなものです」

 あー、これは、色々ダメなような気がしてきた。



 つづく
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