3 / 3
第3話 繋がること
しおりを挟む宮元はツイッターを開き森浜にDMを送る。
「テレビ見たよ。あの写真って学園祭の時のだよな? やっぱりお前は小見山だよな?」
今何をしているのか、誰といるのか分からない森浜に対し疑念の気持ちをぶつける。
ほぼ確信に近い証拠を得た宮元は少しの元気を取り戻し、次の日からの仕事のために早めに寝ることにした。
翌朝、早めに寝たからかアラームよりも早く目が覚めた彼はスマホの通知に気がつきツイッターを開く。
昨夜送ったDMの返事が来ていた。
「そうだよ、小見山だよ。だからどうした? 俺が小見山だったら何なんだよ。もう関わらないでくれ」
もう関わらないでくれ、
それは宮元の心を空っぽにさせた。
その時、アラームが鳴り響く。
そう、彼は仕事に行かなければならない。
そう、そうしなければ生きていけない。
そう、彼なしで生きていかなればいけない。
服を着替え、身嗜みを整え、家を出る。
仕事場に着きいつも通り仕事をする。
ツイッターをブロックされてから一週間が経った。
飯も食べずに仕事と寝る事を繰り返す。これが絶望なのかと彼は嘆いた。
そんなある日、彼は仕事で些細なミスをした。
「おいおい、大丈夫か?」
「……大丈夫です」
「お前がミスするなんて珍しいじゃねぇか」
「そんな事ないですよ」
「そんな事ないって、俺がお前のミスを指摘するのは初めての事だぞ」
宮元はとても優秀に働いていた。
そんな彼がミスをするとはきっと一大事なのだろう。
上司は彼を昼飯に誘った。
「お前、最近全然食べてないだろ」
「……食べてますよ」
「いつも一口食べて残してるじゃねぇか」
「一口でお腹いっぱいになるので……」
「……どうした? 何かあったか?」
騒がしい食堂の中でしばらくの沈黙が続く。
宮元は大きなため息を一つ吐くと、口を開いた。
「大切な人を失くした時どうしたらいいんでしょうか」
「なんだ、失恋でもしたのか?」
「まあ、そんな所です」
「失恋してもそいつの事を好きなのか?」
「……そうでなきゃ落ち込みません」
「諦めきれないってか?」
「……はい」
ふた回り近く上の上司はニヤリと笑った。
「だったらとことんアタックしたらいいだろう。別に一回ダメなら終わりじゃねぇんだから」
「……でも」
「でももクソもねぇの。納得できないんだったら納得するまでやりゃあいいんだよ」
「そういうもんなんですか」
「そういうもんだよ、だから飯食って元気出せ。な?」
「……はい」
それからの宮元は今までのミスをしない優秀な社員へと戻った。
そして、目標を次の握手会へと定めた。
日時は次の週末。参加資格は前回同様、CD一枚につき五秒。彼はその時を待った。
握手会、当日。
相変わらず女性ファンで溢れている握手会の会場で、宮元は浮いている。
しかし、そんな事お構いなしに彼はCDの購入列に並んだ。
「どちらをご購入されますか?」
「森浜 瞬のCDを一枚」
「かしこまりました」
一枚のCDと一枚の参加券を手に入れた彼はその時間を待つ。
色々な思いを馳せている間に握手会の列はだいぶ長く出来ていた。
目の前のファンは友達同士で参加しているのだろう。誰々がカッコいい、誰々が可愛いなどと話している。
後ろのファンは大量の参加券を握り締めている。おそらく二十枚は買ったのだろう。
そんな事を考えながら彼はいよいよ自分の番を迎える。
森浜は顔を見るなり一瞬、怪訝な顔をする。
しかし、すぐにアイドルモードで両手を差し出した。
宮元はその両手を強く握りしめるが、その強さに森浜は驚いた顔をした。
そして、宮元の思いをぶつける五秒間が始まった。
「やっぱり俺はお前を忘れられない! 俺の前から消えないでくれ! 俺はお前が好きなんだ!!」
「はい、お時間でーす」
その声の大きさとカミングアウトに場内はざわついた。
係員によって引き剥がされる宮元だが、その顔はどこかスッキリしていた。
片や森浜は次の順番が来ているにも関わらず、豆鉄砲でも食らったかの様に固まっていた。
思いの丈をぶつけた宮元は会場を後にし、今日の晩ご飯は何にしようかとそんな事を考えながら買い物をして家に帰る。
そういえばこんな生活を送っていたなと、いつも通りに戻っていたことに彼は少し安堵した。
家に着き、ひと段落着く。
スマホを開くとツイッターからの通知が来ていた。
ツイッターを開くとブロックされていた森浜からのDMだった。
「なんでそこまで必死なんだよ」
「大切な人が居なくなったら必死になるだろ」
「そっか。ってか迷惑なんだよ、周りざわついてたし。ブロックすんのやめっから何かあったらここにしろよ」
長く離されていた宮元と森浜の繋がりは、今ようやく始まった。二人の物語は再び進んでいく。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。
或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。
自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい!
そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。
瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。
圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって……
̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶
【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ
番外編、牛歩更新です🙇♀️
※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。
少しですが百合要素があります。
☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました!
第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!
真面目学級委員がファッティ男子を徹底管理した結果⁉
小池 月
BL
☆ファッティ高校生男子<酒井俊>×几帳面しっかり者高校男子<風見凛太朗>のダイエットBL☆
晴青高校二年五組の風見凛太朗は、初めて任された学級委員の仕事を責任を持ってこなすために日々頑張っている。
そんなある日、ホームルームで「若者のメタボ」を注意喚起するプリントが配られた。するとクラス内に「これって酒井の事じゃん」と嘲笑が起きる。
クラスで一番のメタボ男子(ファッティ男子)である酒井俊は気にした風でもないが、これがイジメに発展するのではないかと心配する凛太朗は、彼のダイエットを手伝う決意をする。だが、どうやら酒井が太っているのには事情がありーー。
高校生活の貴重なひと時の中に、自分を変える出会いがある。輝く高校青春BL☆
青春BLカップ参加作品です!ぜひお読みくださいませ(^^♪
お気に入り登録・感想・イイネ・投票(BETボタンをポチ)などの応援をいただけると大変嬉しいです。
9/7番外編完結しました☆
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。
彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。
……あ。
音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。
しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。
やばい、どうしよう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる