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Episode2:祖母との出会い
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十歳になる頃、海外へ旅に出ていた祖母が突然帰ってきた。
私が生まれる前に日本を離れたきりだったので、会うのはこれが初めてだった。
私の部屋にある、あのお気に入りの「赤いドレスの人形」は、祖母が贈ってくれたものだ。
小さい頃から大切にしていたその人形を見つめながら、私はいつも、この贈り主がいったいどんな人なのかを想像していた。
自分の部屋のベッドで横になっていると、一階のリビングから賑やかな声が聞こえてきた。
母に呼ばれて階段を降りると、そこには一人の女性がいた。
「オリヴィアおばあちゃんよ。ほら、挨拶なさい」
母に促され、私はスカートの裾を持ち上げて会釈した。
「はじめまして、お祖母様」
「あら、あなたが美月ちゃんね? はじめまして」
祖母はそう言うと、顔いっぱいに柔らかな笑みを浮かべた。
「何もかしこまらなくて良いのよ。私のことはオリ婆ちゃんとでも呼んで。元気だった?」
祖母はそのまま私を優しく抱きしめた。
少し黄色がかった白髪に、スッと通った鼻筋。
刻まれた深い皺(しわ)と、私と同じ透き通るような白い肌。
派手な装いでリビングの椅子に腰掛け、くつろいでいる姿はどこか凛としていた。
オリヴィアという名のその女性は、少し低い、落ち着いた声で母に話しだした。
「近所に部屋を借りてきたわ。長い間旅をして、たくさんの国を見てきたけれど、もう旅はおしまい。……あなたも、これから大変でしょう?」
そう。母のお腹には、新しい命が宿っていたのだ。
私が生まれる前に日本を離れたきりだったので、会うのはこれが初めてだった。
私の部屋にある、あのお気に入りの「赤いドレスの人形」は、祖母が贈ってくれたものだ。
小さい頃から大切にしていたその人形を見つめながら、私はいつも、この贈り主がいったいどんな人なのかを想像していた。
自分の部屋のベッドで横になっていると、一階のリビングから賑やかな声が聞こえてきた。
母に呼ばれて階段を降りると、そこには一人の女性がいた。
「オリヴィアおばあちゃんよ。ほら、挨拶なさい」
母に促され、私はスカートの裾を持ち上げて会釈した。
「はじめまして、お祖母様」
「あら、あなたが美月ちゃんね? はじめまして」
祖母はそう言うと、顔いっぱいに柔らかな笑みを浮かべた。
「何もかしこまらなくて良いのよ。私のことはオリ婆ちゃんとでも呼んで。元気だった?」
祖母はそのまま私を優しく抱きしめた。
少し黄色がかった白髪に、スッと通った鼻筋。
刻まれた深い皺(しわ)と、私と同じ透き通るような白い肌。
派手な装いでリビングの椅子に腰掛け、くつろいでいる姿はどこか凛としていた。
オリヴィアという名のその女性は、少し低い、落ち着いた声で母に話しだした。
「近所に部屋を借りてきたわ。長い間旅をして、たくさんの国を見てきたけれど、もう旅はおしまい。……あなたも、これから大変でしょう?」
そう。母のお腹には、新しい命が宿っていたのだ。
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