美月とオリヴィア〜時を超えた絆〜

Episode 5：祖母との楽しい日々

いきなり祖母の家に住みたいと言ったは良いが、流石に申し訳ないと私は感じていた。
　海外での暮らしを終えて日本に帰ってきた祖母は、これから一人暮らしを満喫したいであろうに、私がいては迷惑ではないだろうか。
​　そう思っていた私に、祖母は笑って言ってくれた。
​「一人で寂しかったから、貴方が来てくれてとても嬉しいわ。貴方といると昔を思い出して、自分が若返った感じになるの。月に一度の皆でのお食事も楽しみだしね」
​「おばあちゃん……」
​「だから遠慮せずに、ここはあなたと私のお家だと思って良いのよ」
​　私はその祖母の笑顔に、とても心が落ち着いた。
​　祖母はすぐに私の部屋も与えてくれた。
　私はその部屋に、ずっと大切にしていた赤いフリルのついたドレスの人形を、ベッドの棚の上に置いた。
​　祖母は本当に物知りだった。
　家の畑の手入れの仕方、お裁縫や機織りのやり方、庭に来る小鳥たちの名前や性格、餌やりの仕方……。
　クッキーやケーキの焼き方、紅茶の淹れ方にお料理の仕方など、沢山のことを私に教えてくれた。
​　実家では部屋に籠ってばかりだった私にとって、祖母との暮らしはとても新鮮で、毎日が新しいことの連続だった。
　次第に病気がちだった身体も、みるみる元気になっていった。
​　晴れの日には窓を開けて二人で庭を眺めたり、リビングで歌を歌ったりもした。
　日本生まれで英語を話せない私に、彼女は英語も教えてくれた。
​　本当に、充実した毎日を過ごしていた。
　そして私は、中学進学の時、思い切ってもう一度学校に行くことにした。