俺はモブなので。

バニラアイス

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第二皇子と悪役令息

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「殿下.....?」

突然現れた第二皇子に驚きながら、その背中をジッと見つめた。

よく見るとその手には、先ほど俺を殴ろうと振り上げていた悪役令息の腕が掴まれている。


(た....助かった......)

あのままだったら、完全に殴られてた。

第二皇子が助けてくれた事に安心して、俺はホッと胸を撫で下ろす。


「レ...レイ様.....」

悪役令息の顔は第二皇子で見えないが、その声はとても焦っているように聞こえる。


「どうしてここにレイ様が......」

第二皇子の後ろから覗けば、顔を真っ青にして震えながら悪役令息は第二皇子を見上げていた。


「私はクレノを探していただけだ。」

(俺を.....?)

「一週間ぶりに時間が空いたから、またクレノを誘って二人で茶でもしようかと教室まで会いに行った。だが姿が見えなかったのでそこら辺にいた生徒達に聞いて回ったが、どこに行ったのか分からないと言われたから宛もなく探しながら噴水の近くを歩いていたら、偶然お前達がクレノを囲んでいるのが見えたという訳だ。」

そう言って第二皇子は俺を見て「無事か?」と心配するような声を出した。

「無事です!」と俺が答えると、第二皇子は「そうか。」と言ってすぐに目線を悪役令息へと戻す。


第二皇子と一瞬目が合っただけで、俺の先ほどまでの怒りと不安が吹き飛んだ。


「ノア・カーティス。」

先ほどまでの心配したような声とは違い、一段と低い声が悪役令息の名を呼ぶ。

第二皇子に名を呼ばれ、ビクリと悪役令息の肩が動いた。


「お前とクレノとの会話を聞いていたが、私がいつお前のモノになった?

私はお前のモノになった覚えはないが?」

第二王皇子は怒気の混じった声で、悪役令息に言葉を投げかける。


「それだけではない。

クレノをお前の取り巻き共と逃げられないよう囲み、罵倒し、挙句の果てには手を上げようとしていたな。」

そう無表情のまま悪役令息を見下ろす第二皇子の姿に、後ろにいる俺ですら固まってしまう。

それほど今の第二皇子は殺気立っていて怖かった。


悪役令息は恐怖でなにも言えないようで、ただ第二皇子を怯えた表情で見上げている。

「...クレノに被害が遭う前に、こうするべきだったな。」

「.....え?」

「お前の父である伯爵家当主には、この学園の支援や補助など色々と世話になってきた。だからこそ今までのお前の私への不敬や、身に余る行動に多少は目を瞑ってきた。
お前が特定の生徒に嫌がらせをし、強制的に退学させていた事も知っていたが、私には関係のないどうでもいい事だからと見逃していた。

だがクレノに手を出した事に関しては話が別だ。見逃すつもりはない。」

ガタガタと震えている悪役令息を前に、冷めた表情で第二皇子は最後の言葉を告げる。


「今回の件とこれまでのお前の悪行は、学園長とお前の父である伯爵家当主へ知らせる。

お前の居場所はもうこの学園にも、伯爵家にもなくなるだろう。」


そう悪役令息に告げた第二皇子の表情は、まさに噂どおりの冷酷な皇子そのものだった。

    
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