俺はモブなので。

シャーロット・バーベル

シャーロット・バーベル


バーベル公爵家の長女に産まれ、両親と二人の兄に散々甘やかされて育ち、子供の頃からプライドが高く超我儘な生粋のお嬢様。

そしてゲーム内では、皇太子ルートの悪役だ。

ゲーム内では皇太子に子供の頃から想いを寄せており、この学園へも皇太子を追いかけて入学するほど、一途に皇太子を想っていた。
だが二年の春、編入してきた主人公のカグラに一目惚れした皇太子の姿を目撃。嫉妬に狂ったシャーロット・バーベルは、邪魔者のカグラを学園から追い出そうと酷い嫌がらせをし、その事実を知った皇太子に断罪され学園から追放。

実家からも勘当されて修道院送りになる。


....というのが、シャーロット・バーベルのゲーム内でのストーリーだ。

そんな断罪される予定だった悪役令嬢と、俺は昨日友達になってしまった。

(同じモブかと思ってたのに....

悪役令嬢だって知っていたら友人なんかには.....なってたな。
自分より爵位が格段に上の公爵令嬢に言われたら、知っていても知らなくても断らなかったし断れなかった。)

まぁ、今更考えても友達宣言をしてしまった事は覆らないし撤回もできないと諦め、俺は授業に使う教科書類を持って寮を出た。


(学年は一緒でも学科は違うから、友達と言っても会ったら少し話す程度だろ。)

そう安易に思いながら寮の門を潜ろうとしていた俺の予想に反し、昨日ぶりの声が聞こえてきた。


「.......あ！やっと来たわね！遅いわよ！」

「いや、どうしてここにいるんですか。」

(なんでここにいるんだ？
男子寮の門の前で女生徒が待ち伏せなんて、すごく目立つだろ。)

現に周りの男達に見られてるし。

「クレノと一緒に学校に行こうと思って、忙しい中友達の私が迎えに来てあげたのよ！ありがたく思いなさい！！」

「えぇ....」

(ありがたくって......)

別に頼んでないのにな....と思ったが、そんな事を本人に言えるはずもない。


「あ、ありがとうございます。」

「ふんっ、礼は良いわ。友達なのだからこんなの当たり前よ！
それと昨日も言ったでしょ？私に敬語は不要よ。シャーロットと呼びなさい！！」

公爵令嬢にたかが貧乏子爵令息がタメ口なんて、この世界では絶対にありえない事だ。

(....でも本人がそう言ってるんだし、遠慮しなくていいよな。)


「....分かった。ありがとう、シャーロット。」

「...っ！は....早く行くわよ！学校に遅れるじゃない！」

お礼を言われて照れたのかシャーロットは少し顔を赤くして、でも嬉しそうにしながら先に進んでいく。

(こうやって友人が待っていてくれるのも、案外悪くないかも。)

そう思いながら、俺は先に行ってしまったシャーロットを追いかけた。