30 / 267
喧嘩はやめて
しおりを挟む「なぜクレノに会いに行く度にお前がいる?いい加減うざいぞ。」
「そちらこそ。毎日毎日クレノに付き纏って、生徒会といっても暇ですのね。」
「あの....二人共喧嘩はやめて......」
あのお茶会以降シャーロットは第二皇子同様、毎日俺に会いに来るようになった。
その結果第二皇子とシャーロットは毎日のように鉢合わせしてしまい、こうやって口喧嘩をする。もうこの二人の喧嘩を見る事に慣れて、俺の毎日の日課になっているくらいだ。
だが周りの人間はなかなか慣れないらしく、二人を止めて欲しいと言わんばかりに視線を送ってくるが、俺が逆に助けてほしい。
そんな俺の思いとは裏腹に、クラスメイト達は近付きたくないのか教室の端にいる。
俺に助けを求めるだけで、助ける気は一切ないらしい。
(だよね...そりゃ近付きたくないよな...関わりたくないよな.....
俺だって本来なら、モブとしてそっち側にいるはずだったのに....)
そう思いながら、睨み合っている二人を見て頭を抱える。
(なんで俺なんだよ.....誰か替わってくれ!!)
心の中でそう叫んだ。
「...そうだ、クレノ。」
第二皇子が何かを思い出したのか、睨み合いを止めて俺に話しかけた。
「はい。」
「私はこれから生徒会で忙しくなってしまう。だからしばらくの間お前の所へ来る事ができない。」
「え。」
「もうすぐ体育祭がある。その準備で忙しくてな。」
(あ....最近色々ありすぎて忘れてたけど、体育祭......そういえばもうすぐだった。
じゃあ、しばらく殿下には会えないのか....)
毎日喧嘩されても困るが、いないとそれはそれで寂しい。
俺は周りの人達にも分かってしまうくらい残念そうに肩を落とした。
そんな俺を見て、第二皇子が優しく頭を撫でてくれる。
「寂しいのか?
体育祭が終わったら、また一緒に茶でもしよう。それまで我慢していてくれ。」
「そ、そんな事.....」
第二皇子に自分が思っている事を勘づかれ、恥ずかしくなった俺は顔を赤くしながらその言葉を否定した。
「.....そうか。私は寂しいがな。」
「......っ」
そう言って第二皇子は俺の頭を撫でる。
(な....なんでそんなセリフ、恥ずかしげもなく言えるんだ?!)
第二皇子の言葉に余計恥ずかしくなり、もう顔が見れない。
そして俺が赤面する様子を隣で見ていたシャーロットが、不満そうに声を荒らげた。
「ちょっと!二人の世界に入らないで!!私もいるのよ!?」
そう言って俺の頭から第二皇子の手を振り払い、俺と第二皇子の間に無理矢理身体を捩じ込ませてきた。
そんなシャーロットを不愉快そうに見つめながら、第二皇子が告げる。
「シャーロット・バーベル。
ついでにお前を特別に体育祭実行委員へと推薦しておいた。お前もこれから忙しくなるだろう。
....私がいない間、クレノと二人きりでお茶をする暇もないだろうな。」
「なっ.....!」
「私はこれから生徒会があるのでな。
またな、クレノ。」
そう言って第二皇子は俺に挨拶をして、呆然と立ち尽くしているシャーロットを置き去りに教室を出て行ってしまった。
「ちょ......待ちなさい!ごめんねクレノ!またあとで!!!」
そしてシャーロットも、足早に行ってしまった第二皇子のあとを追いかけ教室を出て行った。
(そっか....二人共忙しくなるのか.....
じゃあしばらくはお茶会もなく、のんびり穏やかに過ごせるのかな?)
取り残された俺はそう思いながらも、二人がしばらく来れない事を寂しく感じ、窓から空を眺めた。
582
あなたにおすすめの小説
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる
路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか?
いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ?
2025年10月に全面改稿を行ないました。
2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。
2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。
2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。
2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
* ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
透夜×ロロァのお話です。
本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけを更新するかもです。
『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も
『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑)
大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑)
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる