俺はモブなので。

バニラアイス

文字の大きさ
46 / 267

カグラと対峙

しおりを挟む


「え....?」

(カグラ....だよな....?ていうか、え?....今の俺に言ったのか?)

自分とカグラ以外に誰かいるのかと辺りを見回したが、やはりこの場には俺とカグラの二人しかいない。

「あんたに言ったんだよ、クレノ・シア。

まったく、なんでお前みたいな美しくもないただのモブが、あの美しいレイ様に気に入られているのかな。」

俺を見下しているかのようなカグラの言葉に唖然とする。


(今......俺、カグラに貶された?つーか、本当に主人公のカグラ本人だよな?)

本人かを疑うほどに今のカグラは、あの時の皇太子から告白され嬉しそうに頬を染めながら微笑んでいた人物とはほど遠かった。

本当に、あの時の人物とはまるで別人だ。


「はぁ....まぁ、いいや。
どうせレイ様も、シン様みたいに僕のモノになる運命なんだから。

僕の事、好きだろうし。

だから絶対に僕とレイ様の邪魔はしないでよね。
秀でた才能も容姿も持ってない、たかが子爵令息がレイ様の傍にいるってだけで本当は腹立たしいんだ。

こうやって忠告だけで済ませてあげる寛大な僕に感謝しなよ。」

そう言ってカグラは自慢げに腕を組んだ。


(ムカつくな....殴りたい.....我慢だ.....我慢!!)

そう自分に言い聞かせながら、俺は拳を強く握り締めた。

「じゃ、言いたい事も言えたし僕はもう行くよ。

僕の言う事が理解できたのなら、もうレイ様には近付かない事だね。」

自分の言いたい事だけを言い、この場から離れようとするカグラに対してついに俺の堪忍袋の緒が切れた。


「待ってください!カグラ.....様!!」

「何?僕はもうあんたに用はないんだけど?」

迷惑そうに振り返ったカグラにムカつきながらも、俺は口を開く。 


「それじゃあ、俺も言いたい事を言わせて頂きますけど、今俺に対してたかが子爵令息と言っていましたが、そういうカグラ様こそどうなんですか?
俺よりもっと身分が低い、たかが男爵令息ですよね?

それに確かにカグラ様の容姿は俺も素敵だとは思いますけど、性格に関してはゴミですね。

それとどうしてたかが男爵令息のカグラ様が、第二皇子殿下をファーストネームで呼んでいるんですか?
カグラ様の恋人である皇太子殿下は良いとして、第二皇子殿下に許可は取ったんですよね?

あと、どうして第二皇子殿下がまだ自分の事を好きだと断言できるんです?第二皇子殿下から直接言われたんですか?勘違いじゃなくて?
カグラ様の勘違いなら、恥をかくのはカグラ様なんですから、俺以外の人に話すのは止めておいた方が良いですよ!

第二皇子を自分のモノのように言う妄想ストーカーだと、カグラ様が勘違いされてしまいますから!!」

俺は満面の笑みでその暴言をカグラに伝えた。


「なっ....!」

「俺も言いたい事は言えたのでもう行きますね!お話、とても楽しかったです!!」

そう最上級の嫌味を笑顔と共に伝え、俺はカグラに背を向け歩き出した。

後ろでカグラが何か叫んでいたが、気せずカグラから離れながら思った。

(まさかカグラがあんな奴だったとは.....少しはカグラに傷付けられてきた人達の分も言い返せたかな....

まぁ、カグラに言いたい事も言えてスッキリしたし、早く控えテントに戻ろ。)

こうして俺は自分が罵倒した後のカグラのアホみたいに口を開け硬直している姿を思い出し、清々しい気持ちになりながら赤組のテントへと戻った。

しおりを挟む
感想 189

あなたにおすすめの小説

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 透夜×ロロァのお話です。 本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけを更新するかもです。 『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も 『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑) 大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑) 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...