俺はモブなので。

邪魔者共～sideレイ～

「兄上....？」

(なぜここに....)

突然現れた自分の兄に、驚きを隠せない。


「ん？レイじゃないか！」

私を見つけた兄がこちらに向かって歩いて来る。
そしてカグラと共に、私とクレノが座っているテーブルの前で立ち止まった。


「まさか、ここを貸切にしていたのがレイだったとはな。」

「....えぇ、私も驚きました。

私が貸切にしたこの店に兄上が無理矢理押し入ってくるなんて、思いもしませんでした。」

(クレノとの幸せなデートの邪魔をして。)


「すまない。カグラがどうしても今日、この店に行きたいと言ってな。」

そう言って兄上は幸せそうにカグラの腰を抱き、見つめている。


「......そうですか。」

クレノとの時間を邪魔されイラついていた私は、ついカグラを睨んでしまった。

そんな私と目が合ったカグラは怯え、目に涙を溜めている。

「も....申し訳ありません、レイ様....僕、どうしてもこのお店に行ってみたくて....シン様に無理を言って、連れてきてもらったんです....」

目を潤ませ申し訳なさそうに謝罪しているカグラを見て余計にイラついてしまい、眉間に皺を寄せる。


「そうか。ならば今のこの状況を見て分かるだろう。

私は今、大切な人とのデート中だ。誰であろうと邪魔をされたくない。

即刻、出て行ってもらいたいものだな。」

(そして早く、クレノを口説きたい。)


「....っ、ほ....本当に申し訳ありません！

僕、決してお二人の邪魔をするつもりじゃなかったんですっ....」

そう震えながら、ついにカグラは泣き始めてしまった。

「レイ！カグラを責めるな！！」

手で顔を覆って泣いているカグラを抱き締め、慰めながら私を睨みつける兄にとてつもなく呆れる。

(私は兄上含め、二人に言ったんだが.....)


「....申し訳ありません兄上。つい、頭に血が登ってしまいました。」

本当はもっと言いたいところだが、これ以上兄に反抗すれば面倒な事になるのが目に見えているので、私はとりあえず謝罪をした。

「....まぁ良い、許そう。

それより今日お前が貸切にしたこの店だが、私達もお前達と一緒に席を共にしても良いだろう？」

(....兄上は先ほど私がカグラに言った、出て行って貰いたい。という言葉を聞いていなかったのだろうか？)

「いや、ですが....」

「なにを渋っている。良いではないか。クレノくんも良いだろう？」

「え？いや.........はい。別に構いませんが......」

(嫌だと顔に出ているな。

本当に兄上達は空気が読めない。早くいなくなってほしいものだ。)

そう思いながら図々しくも私達のテーブルへと腰掛ける自分の兄とカグラに、一際大きなため息が口から漏れた。