俺はモブなので。

サイドストーリー③ 皇太子の前世1

「降りてください。」

馬車が止まり、最低限の手荷物を持って降りる。

「ここからは殿下...シン様のお好きな所へ向かわれてください。」

最後に従者に二枚の手紙を渡され、走る馬車を見送り町に向かって歩き出す。


(色々な事があったな...)

自分が転生した事に気付いた時はもう一度人生をやり直せるんだと、今回の人生は穏やかに過ごしたいと思った。

でも...アイツに...カグラの手を握った瞬間に分かったんだ。


『惨めなのがお前にはお似合いだよ！！！』



コイツは俺のすべてを奪った、あの男なんだって。


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『その顔、気に入らないなぁ。』

その一言から、アイツからのいじめが始まった。


アイツは自分からは手を出さず、取り巻き共に僕を暴行させる。

『ゔ...』

今日は一段と酷く殴られ、先生のいない保健室で自ら治療した。

(どうして僕がこんな目に...)

母にも言えず、友達もいない。周りの人達も目を逸らし、助けてくれない。


『...なんで泣いてんの？』

そんな僕に唯一話し掛けてくれたのが、晴人だった。

晴人とは趣味が合い、一緒にいるのも楽しい。何もかもが最悪だった僕の学校生活にも晴人と会えるという楽しみができた。


『何、ぼーっとしてんだよ。』

『痛っ...！い、痛いっ...』


だけど、イジメは酷くなる一方だ。