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脱サラ編 第二話
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定時で帰路につくと、バイクに乗りながら私は昼間、休憩中に見せられた動画の事を思い出していた。
「田舎でのんびり過ごすねぇ。夢があっていいじゃない。私もいつかそんな暮らしがしてみたいもんだ。」
そんな事を呟きながら、私はアクセルを吹かした。
250cc二気筒のドコドコと太鼓を叩くような音がヘルメット越しに心地よく聴こえた。
◇
家に着くと、やはりどうしても昼間見た動画がどうしても忘れられないでいた。
夕飯を食べている時も、風呂に入っている時も、友人とゲームをしている時も。
どこか頭の片隅で昼間の動画がちらつく。
よくわからない気持ちだ。確かに私は昔から動物が好きで、犬や猫、実家のお隣さんが飼っていた馬の世話なんかをよくやっていた。祖父が趣味で畑をやっていたので、野菜や果物の手入れを手伝っていた。別にそれは苦ではなかった。むしろ楽しかった。
だが、今はどうだろうか?
毎日試験をやって結果を纏めて、また新しい試験を行う。
確かに試験項目がたくさんあるのでやってる試験内容自体は毎日変化がある。
でもやっていることは単調で最近はどこかつまらなさを感じていた。
仕事で唯一楽しいと思える時は、いつだろうか。
不具合の原因調査で原因を見つけ出した時か?いや、それは楽しいのではなく達成感ややりがいを感じるだけだ。では、私はいつ仕事で楽しいと思うのだろうか。
「やめだ、こんな事考えてもしょうがない。明日も仕事だからさっさと寝よう。」
わざと口に出して自分を鼓舞する。
そうだ。明日も仕事だ。やらなきゃいけない事が山ほどある。
そう思いながら布団に入るも、何か靄が掛かったような思考に悩まされあまり眠ることができないまま翌朝を迎えるのであった。
◇
「さて、今日は耐久試験が11万回終わる。エアーが止まるらしいから今日はもう耐久は回せないな。……となると今日は途中性能だけ測定してエアーが必要ないアクチュエーター系の耐久でも回すか。」
今日の予定を口に出しながら確認していく。
そう、今日はエアーが止まる日なのだ。昨日松田さんが教えてくれた。
エアーを使う耐久試験は合計で22万回行うが、今は11万回。これが終わるのは来週になるだろう。初期性能、1万回、3万回、5万回、11万回、22万回と測定していき、耐久試験によって資料にどのような変化が生じたのかを確認する試験。測定するために耐久を止めるのは面倒だが、耐久による変化を見れるのはちょっとだけ面白かったりする。スペックNGになったら嫌だけど。
事務所からPCを持ち、試験棟内の耐久試験部屋へと向かう。
「よし、11万回終わってるな。エアーの元栓閉めとくか。」
耐久試験を確認すると、シーケンサーのカウンターは11万回となっていた。
資料を機器から取り外し、足元から伸びているエアーの元栓を閉める。元栓の周りがドレンまみれでベタベタだ。後で掃除しておこう。
「さて、まだ時間はあるし先にアクチュエーター系の耐久準備をやっとくか。あれ結構時間かかるし。」
耐久資料を性能測定部屋へと置き、足早にアクチュエーター系の耐久準備へと取り掛かる。
直流安定化電源を用意し、駆動部を動作させるためのカプラ等を用意していると、声を掛けられる。
「よぉ、喜多。ちょっと話良いか?」
「あ、清水さんお疲れ様です。」
この人は清水さん。
私のグループの係長だ。つまり直属の上司。
「喜べ、今度の成果発表担当に喜多が指名されたぞ。上手くいけば昇進だ。」
「え?」
「田舎でのんびり過ごすねぇ。夢があっていいじゃない。私もいつかそんな暮らしがしてみたいもんだ。」
そんな事を呟きながら、私はアクセルを吹かした。
250cc二気筒のドコドコと太鼓を叩くような音がヘルメット越しに心地よく聴こえた。
◇
家に着くと、やはりどうしても昼間見た動画がどうしても忘れられないでいた。
夕飯を食べている時も、風呂に入っている時も、友人とゲームをしている時も。
どこか頭の片隅で昼間の動画がちらつく。
よくわからない気持ちだ。確かに私は昔から動物が好きで、犬や猫、実家のお隣さんが飼っていた馬の世話なんかをよくやっていた。祖父が趣味で畑をやっていたので、野菜や果物の手入れを手伝っていた。別にそれは苦ではなかった。むしろ楽しかった。
だが、今はどうだろうか?
毎日試験をやって結果を纏めて、また新しい試験を行う。
確かに試験項目がたくさんあるのでやってる試験内容自体は毎日変化がある。
でもやっていることは単調で最近はどこかつまらなさを感じていた。
仕事で唯一楽しいと思える時は、いつだろうか。
不具合の原因調査で原因を見つけ出した時か?いや、それは楽しいのではなく達成感ややりがいを感じるだけだ。では、私はいつ仕事で楽しいと思うのだろうか。
「やめだ、こんな事考えてもしょうがない。明日も仕事だからさっさと寝よう。」
わざと口に出して自分を鼓舞する。
そうだ。明日も仕事だ。やらなきゃいけない事が山ほどある。
そう思いながら布団に入るも、何か靄が掛かったような思考に悩まされあまり眠ることができないまま翌朝を迎えるのであった。
◇
「さて、今日は耐久試験が11万回終わる。エアーが止まるらしいから今日はもう耐久は回せないな。……となると今日は途中性能だけ測定してエアーが必要ないアクチュエーター系の耐久でも回すか。」
今日の予定を口に出しながら確認していく。
そう、今日はエアーが止まる日なのだ。昨日松田さんが教えてくれた。
エアーを使う耐久試験は合計で22万回行うが、今は11万回。これが終わるのは来週になるだろう。初期性能、1万回、3万回、5万回、11万回、22万回と測定していき、耐久試験によって資料にどのような変化が生じたのかを確認する試験。測定するために耐久を止めるのは面倒だが、耐久による変化を見れるのはちょっとだけ面白かったりする。スペックNGになったら嫌だけど。
事務所からPCを持ち、試験棟内の耐久試験部屋へと向かう。
「よし、11万回終わってるな。エアーの元栓閉めとくか。」
耐久試験を確認すると、シーケンサーのカウンターは11万回となっていた。
資料を機器から取り外し、足元から伸びているエアーの元栓を閉める。元栓の周りがドレンまみれでベタベタだ。後で掃除しておこう。
「さて、まだ時間はあるし先にアクチュエーター系の耐久準備をやっとくか。あれ結構時間かかるし。」
耐久資料を性能測定部屋へと置き、足早にアクチュエーター系の耐久準備へと取り掛かる。
直流安定化電源を用意し、駆動部を動作させるためのカプラ等を用意していると、声を掛けられる。
「よぉ、喜多。ちょっと話良いか?」
「あ、清水さんお疲れ様です。」
この人は清水さん。
私のグループの係長だ。つまり直属の上司。
「喜べ、今度の成果発表担当に喜多が指名されたぞ。上手くいけば昇進だ。」
「え?」
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