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三毛猫とぼく

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「大丈夫かにゃ?」
 塀の上から声がした。見上げるとむっちりした三毛猫。こいつもしゃべるのか!

「にゃ!」
「ああ、怖がらにゃくていい。俺は寅次とらじにゃ。さっきのは吉太郎きちたろう。悪いやつじゃにゃいから安心しな」

「にゃー」
 これはこうぎのにゃー、だ。僕の宿題を取っていったんだ、悪いやつに決まってる。

「そうか、まだ『にゃー』しか言えにゃいか、不便だにゃあ」
 寅次は高い塀からすとん、とおりた。まんまるな見かけによらず、すごい動きだ。
 こっちを向く時に、やっぱりしっぽが変な形をしてるのに気づいた。短くて、先っぽが二つに分かれてて。ハートみたい。
 
「だいたいあいつの行くところは知ってる。ついてくるにゃ」
「にゃ! にゃにゃにゃー!」
 ちなみにこれは「え! ありがとう!」と言ったつもり。
 天の助け、というやつだ。


「お前、塀に乗れるかにゃ?」
 僕は塀の上を見た。猫になるとずいぶん高く見える。
「手本にゃ」
寅次はぐっ、と体をちぢめて、勢いよく体を伸ばして、塀の上に軽々と上がった。すごい。

 ぼくもできるかな。
 いや、宿題を取り戻すためだ、やるしかない。

 やるんだ!
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