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永泰の夜
第二十五話 3
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「そうだ。景興殿、頼んでいた詩はできたか?」
「ええ、完成しました」
景興にとって、二人の悲恋の物語を追体験できたのはとても貴重な経験だった。
自分はここまでの恋愛ができるだろうかーー。
そんなことをほろほろと考えていたら、詩が空から降ってきたのである。
「では、披露してくれーー」
「わかりました」
景興は、言いながら朗々と詩を読み上げ始めた。
あなたの声は楽の音より美しい。
あなたの姿は牡丹の花より美しい。
あなたの心は金剛より美しい。
あなたの声が楽となって響く時、わたしは鳥となってあなたの周りを飛ぶだろう。
あなたの姿が牡丹の花となって香る時、わたしは蝶となってあなたの花弁に留まるだろう。
あなたの心が金剛となって煌めく時、わたしの心は光となってあなたを照らすだろう。
あなたのそばには常にわたしがいる。
わたしのそばには常にあなたがいる。
わたしたちの魂は、これからも永遠に二人で一つであるのだから。
ザァと風が吹き、二人の姿がやがて婚儀の装いになって現れる。
二人は手に手を取って、微笑んだ。
思わず明明は筆を取り、その幸せそうな二人の姿を写しとる。
その姿は美しく、まるで幸せが溢れてこぼれ落ちそうな神々しさがあった。
ハーシムが楽を鳴らすと、どこからか季節外れの花びらが現れ二人の周りを舞う。
ユースィフはその指先を唇に当て、静かに低く呪を唱えた。
ふわり、と風が舞い、空から黄金の光が二人を照らす。
二人はその光を見上げると、微笑みあって手を握りあった。
『ありがとうございます』
『この御恩は決して忘れはしません』
ユースィフは軽く頷くと、その指先を唇から離しフッと息をかける。
「ーーあれは何をしているんです?」
景興の言葉に、ジュードが静かに答えた。
「御霊送りですよ。ユースィフ様の唯一魔法ですーー」
「御霊送り?」
「我々法力を扱う者が霊を成仏させる場合、相手の意思とは無関係に強制的に魂をあの世に送ってしまいます。この世に未練があろうとなかろうと、ね。しかし、ユースィフ様は霊達が自らの意思であの世へ行けるように、道筋を作る事ができる。それが御霊送りです」
「なんとーー」
ユースィフの息がかかると、二人の姿はふんわりと空へ舞い上がる。
それはだんだんと薄くなり、緩やかに消えていった。
明明は、夢中で二人の絵を描いていた。
その絵の二人は美しく幸せそうで、見ているものまで幸せが訪れそうな絵であった。
その後、明明は幸せそうな二人の絵を描き続け、それが永泰では『新婚に幸せを運ぶ絵』として話題になり、一躍有名画家となった。
明明の絵は、新婚の二人に贈る品として主流になり、その後も大いに売れた。
「ええ、完成しました」
景興にとって、二人の悲恋の物語を追体験できたのはとても貴重な経験だった。
自分はここまでの恋愛ができるだろうかーー。
そんなことをほろほろと考えていたら、詩が空から降ってきたのである。
「では、披露してくれーー」
「わかりました」
景興は、言いながら朗々と詩を読み上げ始めた。
あなたの声は楽の音より美しい。
あなたの姿は牡丹の花より美しい。
あなたの心は金剛より美しい。
あなたの声が楽となって響く時、わたしは鳥となってあなたの周りを飛ぶだろう。
あなたの姿が牡丹の花となって香る時、わたしは蝶となってあなたの花弁に留まるだろう。
あなたの心が金剛となって煌めく時、わたしの心は光となってあなたを照らすだろう。
あなたのそばには常にわたしがいる。
わたしのそばには常にあなたがいる。
わたしたちの魂は、これからも永遠に二人で一つであるのだから。
ザァと風が吹き、二人の姿がやがて婚儀の装いになって現れる。
二人は手に手を取って、微笑んだ。
思わず明明は筆を取り、その幸せそうな二人の姿を写しとる。
その姿は美しく、まるで幸せが溢れてこぼれ落ちそうな神々しさがあった。
ハーシムが楽を鳴らすと、どこからか季節外れの花びらが現れ二人の周りを舞う。
ユースィフはその指先を唇に当て、静かに低く呪を唱えた。
ふわり、と風が舞い、空から黄金の光が二人を照らす。
二人はその光を見上げると、微笑みあって手を握りあった。
『ありがとうございます』
『この御恩は決して忘れはしません』
ユースィフは軽く頷くと、その指先を唇から離しフッと息をかける。
「ーーあれは何をしているんです?」
景興の言葉に、ジュードが静かに答えた。
「御霊送りですよ。ユースィフ様の唯一魔法ですーー」
「御霊送り?」
「我々法力を扱う者が霊を成仏させる場合、相手の意思とは無関係に強制的に魂をあの世に送ってしまいます。この世に未練があろうとなかろうと、ね。しかし、ユースィフ様は霊達が自らの意思であの世へ行けるように、道筋を作る事ができる。それが御霊送りです」
「なんとーー」
ユースィフの息がかかると、二人の姿はふんわりと空へ舞い上がる。
それはだんだんと薄くなり、緩やかに消えていった。
明明は、夢中で二人の絵を描いていた。
その絵の二人は美しく幸せそうで、見ているものまで幸せが訪れそうな絵であった。
その後、明明は幸せそうな二人の絵を描き続け、それが永泰では『新婚に幸せを運ぶ絵』として話題になり、一躍有名画家となった。
明明の絵は、新婚の二人に贈る品として主流になり、その後も大いに売れた。
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