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過去を思い出して
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気がつけば、私は昔のことを思い出していた。
私の夢は、少しでもみんなが幸せになるための手助けをすること。
それは昔見たドラマがきっかけだった――ドラマの内容は確か…弁護士が弱い立場の人に寄り添い幸せになるための手助けをするといった内容だったと思う。
私は文系の大学を懸命に頑張ってなんとか卒業できるくらいの学力で、司法試験を受けて弁護士になろうとまでは思わなかった。
ただ、できるだけ近い仕事に携わり、依頼人に寄り添える仕事がしたいと思ったのだ。
就職活動の結果、ある司法事務所に事務員として仕事が決まり、その時は両親もとても喜んでくれたのを今でも憶えている。
とても忙しい職場だったけど、私は懸命に働いた。仕事はもちろん大変で、けど夢に近い仕事ができることが嬉しかった。
ただ…この事務所は退職者も多く、業務の内容がおかしいのではないかという違和感も心のどこかにあった。親に辞めたほうがいいのかなと相談もしたが、辞めるべきじゃない! それが普通なんだ! と言われ、私はその違和感を打ち消しそれでも働き続けていた。
――けどその生活は、突然終わりをむかえる。
休日出勤が普通で、休みなしで働いていたためか、私は体調を壊し一ヶ月ほど事務所を休んでいた。
久しぶりに出勤したとき、法律事務所の経営者である弁護士の先生と、直属の上司から突然、会議室に呼ばれたのだ。そこで告げられたのは、どう考えても不当な解雇。
弁護士の先生が言うには、
「君が休んでいるときに、法学部出身の女の子に君の仕事をやってもらったんだ。そしたら、その女の子の方が仕事が早くてね。だから君、今日でこの事務所を辞めてくれるかな」
「でも…頑張ってやりますから…」
「その必要はないよ。ああ、ちなみに有給休暇っていうのもあるんだけど、それは君が辞めるとき、まとめてつけておくから。それじゃ、この書類にサインをしてそれで終わりだから」
それは自己都合で退社する旨が書いてある書面だった。
完全な不当解雇。それに有給休暇ぐらい知っている、雇用主が勝手につけていいものでもないことも…馬鹿にするな! と私は心の中で憤っていた。
だが、この弁護士の先生を敵にまわし訴えたとしても、相手は法律を知り尽くしているプロ。役所関係の人脈だってあるし、簡単に握りつぶされてしまう。
私は悔しさのあまり、膝の上で手が白くなるまで握りしめていたが…けっきょく書類にサインをすることを選んだ。
その後のことは、よく覚えてはいない。
たしか自宅に帰った後、仕事を解雇されたことで親と喧嘩をし、数日後、私は家を飛び出し今に至るわけだが。
東京の両親からは、私のスマホによく電話がかかってくる。けど、話はしたくはなかった。まだ冷静に話ができないから。それでも無視するわけにもいかず、メールで簡単なやり取りはするようにしている。
少し冷えた頭で今になって考えてみれば、あの法律事務所は完全がブラックだったんだと思えてくる。
後片付けをしながら今度、子狐くんに思い切ってその話をしてみようと私は心に決めたのだ。
そして――今日の夕飯の買い物終え…家に帰ってくると、なぜか子狐くんの気配がした。
ふと、こたつの方角を見てみると、大きなもふもふの尻尾だけが、こたつからはみ出ているではないか。
どうやら私が出かけている間に、家に来ていたようだ。
こたつ板の上にあったお茶菓子とみかんは綺麗に食べてあり、頭をこたつに入れた状態で子狐くんは熟睡していたのだ。
すうーすうー
と、気持ちの良さそうな寝息が聞こえる。
その様子を見ていると、今までうじうじと考えていたことが、少しだけとるにたらないバカバカしいことのように思えてしまう。
そうやって子狐くんの存在は、私の心をいつも癒してくれていたのだ。
私の夢は、少しでもみんなが幸せになるための手助けをすること。
それは昔見たドラマがきっかけだった――ドラマの内容は確か…弁護士が弱い立場の人に寄り添い幸せになるための手助けをするといった内容だったと思う。
私は文系の大学を懸命に頑張ってなんとか卒業できるくらいの学力で、司法試験を受けて弁護士になろうとまでは思わなかった。
ただ、できるだけ近い仕事に携わり、依頼人に寄り添える仕事がしたいと思ったのだ。
就職活動の結果、ある司法事務所に事務員として仕事が決まり、その時は両親もとても喜んでくれたのを今でも憶えている。
とても忙しい職場だったけど、私は懸命に働いた。仕事はもちろん大変で、けど夢に近い仕事ができることが嬉しかった。
ただ…この事務所は退職者も多く、業務の内容がおかしいのではないかという違和感も心のどこかにあった。親に辞めたほうがいいのかなと相談もしたが、辞めるべきじゃない! それが普通なんだ! と言われ、私はその違和感を打ち消しそれでも働き続けていた。
――けどその生活は、突然終わりをむかえる。
休日出勤が普通で、休みなしで働いていたためか、私は体調を壊し一ヶ月ほど事務所を休んでいた。
久しぶりに出勤したとき、法律事務所の経営者である弁護士の先生と、直属の上司から突然、会議室に呼ばれたのだ。そこで告げられたのは、どう考えても不当な解雇。
弁護士の先生が言うには、
「君が休んでいるときに、法学部出身の女の子に君の仕事をやってもらったんだ。そしたら、その女の子の方が仕事が早くてね。だから君、今日でこの事務所を辞めてくれるかな」
「でも…頑張ってやりますから…」
「その必要はないよ。ああ、ちなみに有給休暇っていうのもあるんだけど、それは君が辞めるとき、まとめてつけておくから。それじゃ、この書類にサインをしてそれで終わりだから」
それは自己都合で退社する旨が書いてある書面だった。
完全な不当解雇。それに有給休暇ぐらい知っている、雇用主が勝手につけていいものでもないことも…馬鹿にするな! と私は心の中で憤っていた。
だが、この弁護士の先生を敵にまわし訴えたとしても、相手は法律を知り尽くしているプロ。役所関係の人脈だってあるし、簡単に握りつぶされてしまう。
私は悔しさのあまり、膝の上で手が白くなるまで握りしめていたが…けっきょく書類にサインをすることを選んだ。
その後のことは、よく覚えてはいない。
たしか自宅に帰った後、仕事を解雇されたことで親と喧嘩をし、数日後、私は家を飛び出し今に至るわけだが。
東京の両親からは、私のスマホによく電話がかかってくる。けど、話はしたくはなかった。まだ冷静に話ができないから。それでも無視するわけにもいかず、メールで簡単なやり取りはするようにしている。
少し冷えた頭で今になって考えてみれば、あの法律事務所は完全がブラックだったんだと思えてくる。
後片付けをしながら今度、子狐くんに思い切ってその話をしてみようと私は心に決めたのだ。
そして――今日の夕飯の買い物終え…家に帰ってくると、なぜか子狐くんの気配がした。
ふと、こたつの方角を見てみると、大きなもふもふの尻尾だけが、こたつからはみ出ているではないか。
どうやら私が出かけている間に、家に来ていたようだ。
こたつ板の上にあったお茶菓子とみかんは綺麗に食べてあり、頭をこたつに入れた状態で子狐くんは熟睡していたのだ。
すうーすうー
と、気持ちの良さそうな寝息が聞こえる。
その様子を見ていると、今までうじうじと考えていたことが、少しだけとるにたらないバカバカしいことのように思えてしまう。
そうやって子狐くんの存在は、私の心をいつも癒してくれていたのだ。
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