悪魔の隣りでお昼寝させて~幼い私があなたをお慕いしていることは誰にも内緒です~

吉沢 月見

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8.学園への潜入2

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 制服ってドレスとはまた違ってなんというか背筋がぴんとする。

 春休みが終わって新しい学期が始まってしばらく経った頃、いよいよ学園へ潜入。

 さてさて、寄宿舎に部屋を用意したって言ったけど、ここって物置きじゃない。

「うわっ、蜘蛛の巣」

 教室への出入りは難しいみたい。ここに身を潜めつつ生徒に紛れ、いなくなった令嬢を探し、彼女が見つからなければ学園の休み時間に生徒たちに聞き込みをする算段。

 自分で言うのもなんだけど、女優が向いてるんじゃないかしら。前髪ぱっつんで地味っ子を演出。ミランさんが選んでくれた眼鏡をかければどこにでもいる女の子。年相応に見えるようにお化粧もしていない。

 寄宿舎の料理人の一人がライゾン様の手下のようだった。料理人では好き勝手に動けず情報を得られないのだろうか。彼から、依頼人の生徒のクラスメイトを教えてもらう。

 どの子がいいだろう。女の子はおしゃべりが大好き。しかし派閥もあるし、実際に親しくない子では困る。よし、あの子にしよう。

「ここ、空いてる?」

 寄宿舎ではごはんの時間だけが自由なようだった。目星をつけた女の子のとなりに座る。

「ええ。あなた、見ない顔ね」

 女の子ばかりなのによく見分けがつくわね。私なんてどの子も似たり寄ったりに見える。

「春休みのあとに転校してきたばかりなの。二年生よ」

 学年が違うほうが、このあと接点を持つ必要もない。

「私は三年生。よろしく」

 彼女がいつも一人でごはんを食べていることは料理人から聞かされていた。いじめとかではなくて、彼女は本当に一人が楽だと思っている。いなくなった依頼人の娘さんのクラスメイトらしい。

 それにしても女の子300人程が同じ建物で暮らしているなんて不気味な光景。同じものを食べ同じ勉強をしているのに違う人格になるのだから不思議ね。

「この感じ、いまだに慣れないわ」

 私は言った。がやがやと会話と食器を片づける音がうるさい。

「前の学校はもっと生徒が少なかったの?」

「ええ」
 と嘘をつく。

「ここは王子の妃候補が通う学校だもの。私には関係ないけど」

 現王妃がこの学校の卒業生だからって、この学校はそんな触れ込みで生徒を集めているのね。

「卒業前にいなくなる生徒もいるんでしょう?」

 私は聞いた。

「結婚が決まったりしてね。よくあることよ」

 彼女は答えた。

「オリヴィアも?」

 私は尋ねた。

「彼女ならそこにいるじゃない?」

 と友達と笑う女の子を指差した。

「オリヴィアじゃなかったかしら。ええと」

 やばい。

「ミッシェルのこと?」

 私が聞かされたのは確かにオリヴィアだった。

「不思議よね。忽然と消えるなんて」

 どういうことだろう。家族から捜索してと依頼されたオリヴィアは普通に生活をし、違う女の子がいなくなっているなんて。この状況をライゾン様に知らせたほうがいいのかしら。

 オリヴィアに接触を図るべきなのだろうか。しばらく様子見。

 私はこっそり誰かに成り代わって授業に入り込んだりした。幸いなことに授業は同じ席に着かなくてよかった。こういう能力は本当に長けている。変に緊張しなければいい。堂々と本を開く。

 オリヴィアのクラスの女の子に食堂で声をかけたのは失敗だった。おかげでクラスに紛れられない。この後悔が更に私をずる賢くさせる。

 料理人を通して知り得た情報はライゾン様のところへ行っているはず。彼ならどうするのだろうか。自分の用件は済んだから、いなくなった女の子のことなんて気にしなくていい?

 なぜオリヴィアが家に帰らないかはすぐにわかった。学校の先生と恋仲だったのだ。どうしてわかったかというと、裏庭でキスをしているのを見てしまったから。脇が甘いわ。こんな偵察に来たばかりの私に見られるのだから誰かにも知られているのではないだろうか。

「卒業したら結婚しよう」

「ええ、絶対よ。他の女の子なんて見ないで」

「君しか見ていないさ」

 あと数ヶ月経ったら何の問題もないのだから、二人の将来のために自重すべき。その甘い言葉も学校ではないところで囁いて。

 二人の考えは理解に苦しむが、その会話に聞き耳を立てていた私は背後から伸びてくる手に気づくのが一瞬遅れた。
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