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22.偽りのマリア4
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今日は晴れ。いつもならライゾン様のお屋敷で洗濯をするシャーロットさんを手伝ったり邪魔をしている時間だわ。いい服を着て、髪も結ってもらって。
本当の私はこういう生活を送っていたのだろう。休みもなく働いてお茶も出てこない。いや、常識のない私ではお屋敷勤めは難しかったかもしれない。きちんとしたところで働いている人の中には下級貴族の娘もいる。
ナッツがたっぷり入ったスコーンが食べたいな。暇だと空を見上げて嘆きたい。ここでは窓や床を磨いてばかり。
ライゾン様からの連絡がない。どう動いているのかしら。あの毒を警察に持ち込んだのかな。ならば警察が動いてくれそうだが。
私が潜入して5日ばかりが過ぎた頃、メイドのほとんどが食あたりになってしまった。底辺の生活をしていたせいなのか私だけが平気で、仕事がたんまり。掃除だけではなく配膳、お客様の出迎えまで。
執事に呼ばれて、
「これを運んでくれ」
とお盆を渡される。メイドたちのごはんにしては豪華。
「どちらへ?」
「メイド長の部屋だ。わかるか?」
「わかります」
と私は頷いた。お屋敷の中で入れない場所は旦那様、若旦那様たちのお部屋。そこにマリアがいないことは他のメイドに探りを入れていた。それから別棟にあるメイド長の部屋。旦那様たちの話の感じからそこではないかと私は目星をつけていた。が、そこへ入る理由がなかった。やっと行ける。しかし確証もなければ弟の愚行も理由がわからない。もっと詰めてからにするべきだが時間もない。
考えてみよう。真実はひとつしかない。マリアさんの義弟は彼女が好きだった。しかし、彼女は自分の兄の婚約者であり、一年前に二人は結婚。
ん? だとしたら、好きな女が入れ替わっていることに彼だけ気づいたのではないだろうか。そして偽物のマリアさんに本物の居場所を聞き出す。偽物のマリアは、
「知らない」
としか言いようがない。本当に知らないのだから。
姿の見えないメイド長は二人の監視役なのだろうか。メイド長の部屋は一階の突き当り。
「お食事をお持ちしました」
私はノックを三回した。
「そこの椅子に置いてすぐに立ち去りなさい」
老婆のような声だった。ドアさえ開けてくれない。
ちっ。折角、部屋を探るチャンスだったのに。言われた通りにするしかない。これに睡眠薬を入れることも今なら可能。
「焦るな」
塀の向こうからライゾン様の声がした。
「ライゾン様?」
小声で壁に向かって言った。
「裏に来い」
ライゾン様は農夫に変装していた。
「似合いますね」
「お前ほどじゃないさ」
ライゾン様が来てくれたということは解決も近い?
「わかりましたの?」
「いいや、さっぱり。でも明日、二人がここから夜明け前に連れ出されることは馬係から聞かされた」
それまでになんとかしなければ。
「行先は?」
私は聞いた。
「わからん」
先回りもできないか。
「トイレとかお風呂はどうしているのでしょう?」
そこの隙を狙えないだろうか。
「尿瓶とかだろうか」
それだって取り換える必要はある。
「ライゾン様の力で乗り込むことは不可能ですか?」
隠密のような人を雇うこともあった。
「人質を取られている以上、簡単には動けん」
メイド長は自分で二人を匿っているのか、当主に頼まれているのか、当主の息子だから言うことを聞いているのか。今はメイド長よりマリアの救出が第一。
「せめてマリアの素性がバレているか演技を続けているかがわかれば」
「バレていたらとっくに消されてる。バンズ家にも連絡が行くだろうし」
ライゾン様の言葉にぞっとする。
「そうですわね」
私はライゾン様に仮説を話した。弟がマリアさんを好きで精神がおかしくなってしまっていること、なぜかマリアさんの夫や義父はその弟を庇い、メイド長も仕方なく二人を監視しているだろうこと。マリアさんの旦那だけが彼女が偽物と気づいている可能性もある。
こうしていても時間が過ぎるのみ。なんとかしてマリアの居場所を探らなければ。
「ここを早朝にまでいるのならもう一度、配膳を頼まれるやもしれません。そのときに部屋に潜入してみます。私の作戦が無理なら馬車に乗り込む前にライゾン様がどうにかしてください」
私は一人、仕事へ戻った。
本当の私はこういう生活を送っていたのだろう。休みもなく働いてお茶も出てこない。いや、常識のない私ではお屋敷勤めは難しかったかもしれない。きちんとしたところで働いている人の中には下級貴族の娘もいる。
ナッツがたっぷり入ったスコーンが食べたいな。暇だと空を見上げて嘆きたい。ここでは窓や床を磨いてばかり。
ライゾン様からの連絡がない。どう動いているのかしら。あの毒を警察に持ち込んだのかな。ならば警察が動いてくれそうだが。
私が潜入して5日ばかりが過ぎた頃、メイドのほとんどが食あたりになってしまった。底辺の生活をしていたせいなのか私だけが平気で、仕事がたんまり。掃除だけではなく配膳、お客様の出迎えまで。
執事に呼ばれて、
「これを運んでくれ」
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「どちらへ?」
「メイド長の部屋だ。わかるか?」
「わかります」
と私は頷いた。お屋敷の中で入れない場所は旦那様、若旦那様たちのお部屋。そこにマリアがいないことは他のメイドに探りを入れていた。それから別棟にあるメイド長の部屋。旦那様たちの話の感じからそこではないかと私は目星をつけていた。が、そこへ入る理由がなかった。やっと行ける。しかし確証もなければ弟の愚行も理由がわからない。もっと詰めてからにするべきだが時間もない。
考えてみよう。真実はひとつしかない。マリアさんの義弟は彼女が好きだった。しかし、彼女は自分の兄の婚約者であり、一年前に二人は結婚。
ん? だとしたら、好きな女が入れ替わっていることに彼だけ気づいたのではないだろうか。そして偽物のマリアさんに本物の居場所を聞き出す。偽物のマリアは、
「知らない」
としか言いようがない。本当に知らないのだから。
姿の見えないメイド長は二人の監視役なのだろうか。メイド長の部屋は一階の突き当り。
「お食事をお持ちしました」
私はノックを三回した。
「そこの椅子に置いてすぐに立ち去りなさい」
老婆のような声だった。ドアさえ開けてくれない。
ちっ。折角、部屋を探るチャンスだったのに。言われた通りにするしかない。これに睡眠薬を入れることも今なら可能。
「焦るな」
塀の向こうからライゾン様の声がした。
「ライゾン様?」
小声で壁に向かって言った。
「裏に来い」
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「似合いますね」
「お前ほどじゃないさ」
ライゾン様が来てくれたということは解決も近い?
「わかりましたの?」
「いいや、さっぱり。でも明日、二人がここから夜明け前に連れ出されることは馬係から聞かされた」
それまでになんとかしなければ。
「行先は?」
私は聞いた。
「わからん」
先回りもできないか。
「トイレとかお風呂はどうしているのでしょう?」
そこの隙を狙えないだろうか。
「尿瓶とかだろうか」
それだって取り換える必要はある。
「ライゾン様の力で乗り込むことは不可能ですか?」
隠密のような人を雇うこともあった。
「人質を取られている以上、簡単には動けん」
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「バレていたらとっくに消されてる。バンズ家にも連絡が行くだろうし」
ライゾン様の言葉にぞっとする。
「そうですわね」
私はライゾン様に仮説を話した。弟がマリアさんを好きで精神がおかしくなってしまっていること、なぜかマリアさんの夫や義父はその弟を庇い、メイド長も仕方なく二人を監視しているだろうこと。マリアさんの旦那だけが彼女が偽物と気づいている可能性もある。
こうしていても時間が過ぎるのみ。なんとかしてマリアの居場所を探らなければ。
「ここを早朝にまでいるのならもう一度、配膳を頼まれるやもしれません。そのときに部屋に潜入してみます。私の作戦が無理なら馬車に乗り込む前にライゾン様がどうにかしてください」
私は一人、仕事へ戻った。
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