彼と私は時々キスをする

美衣

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2章

秘密Ⅱ

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「あー面白かったね。でも、あそこは予想外!!私、こうなると思ってたよ」


「本当?俺、原作見てたからあれだけどさ、あそこは本当はこうだったんだよ。」


「え、そうなの?うわーそっちの方が全然良いじゃん。なんで変えちゃったんだろう?あ、ハンバーグちょっと頂戴。」


あれから、私達は無事合流し、前々から彼が見たいと言っていた映画を見に行った。
彼が子供の頃にやっていた漫画が原作で、最近になってそれがリメイクされ映画化されたらしい。私は、その漫画を見ていなかったから内容を知らないけれど、それでも楽しめるときいていたので抵抗なく見ることが出来た。
少し、話の流れが古かったけれど。


「ハンバーグってお前、志乃も同じのだろ。」


映画を見終わり、お腹が空いた私達は近くのファミレスに入り、少し遅めのお昼ご飯を食べていた。
なぜ、同じものを頼んだにも関わらず、私が彼のハンバーグを頂戴したかと言うと、


「いつもいつも、おかずと米の配分が下手くそなんだよ。」


「だってー。」


そう。オカズばかりを口に運んでしまうからか、いつもご飯だけが残ってしまう。
私のお皿にはハンバーグと付け合わせのジャーマンポテトが跡形もなく平らげられ、残っているのは出された状態から半分しか減っていない白米だけだった。
……あと、彼のお皿からかっさらった一欠片のハンバーグ。


「ちなみにハンバーグくれたついでに、もう少しソースも分けてくれると幸せです。………なんなら、逆に白米を食べてくれたりなんかすると、もう最高です。」


「………。」


「……ご、ごめんなさい。お腹いっぱいです。もう苦しいです。お腹が幸せって言ってます。満腹です。満足です。」


「…………。」


彼は手を止めた状態で、無言で私を見るだけだった。大きい目が、私をじとーと見るために細くなるから、さすがの私も空気を読んだ。

お、おこってるー……。


「う、うっそでーす……。たべられまー…………あっ……!」


食べてもらうのを諦めた私は、再び白米を食べるためにフォークを手に持った。
すると彼はひょいっと私のご飯の皿を持ち上げ、自分の方に置いた。
何が起こったかわからず、行き場のなくなったフォークを持った私の左手と、キョトンとした私の顔。
彼は、私が残していた物を口に運んでいた。


「……あんだよ、食べんのが遅いからだからな。」


顔を上げ、私の顔を見つめてきた。


「…わかってるよ」


「取られたもん、取り返しただけだからな。」


「わかってるって」


「………じゃあ、なんで笑ってんだよ。」


「笑ってないよ」


「…………。」


「…………。」


「………顔、ニヤニヤすんな。」


「………ふふっ」


つい、我慢出来ずに笑いがもれてしまった。
彼は面白くなさそうな顔をしたままご飯を口に運んでいく。わたしはどんどん顔が綻んでいくのが自分でもわかった。彼はそれを見て呆れたように息を吐き、そして小さい子をあやすような目で見つめてきた。


彼のこういうところが好き。分かりにくそうで、分かりやすい優しさ。小さいことだけど、それでもあたしは嬉しくて彼の優しさを噛み締めていた。


「……ったく。」


全てを食べ終えた彼は時間を確認するために携帯を開いた。そして、表情が変わる。


「あれ?もうこんな時間なんだね。ちょっとしたら出ようか。トイレ行くね。」


そう言って彼は席を立った。彼のあの表情を私は知っている。きっと、家族から連絡があったのだと思う。
トイレに行くと言った彼は、きっと今頃家族と電話でもしているのだろう。
分かっていたことだけど、こういう時に現実を突きつけられる。
彼には  家族が  あることを。





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