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02 神様は?
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俺は目を覚ました。視界が白に染まり、ズキンと頭痛が走る。
反射的に右手で頭を抑える。しかし、頭に触れた頃には頭痛は治まっていた。
頭痛のおかげで意識がはっきりしたので、状況把握に努める。
上体を起こす。
頭痛はしない。傷もない。身体も痛いところはない。服装は轢かれた時の格好。
視線を巡らせる。
どこを見ても白い。ただ白いだけじゃなく、城か塔のような造りみたいだ。
柱と壁に半球状の天井。11個の閉じた扉と1つの開かれた扉。その先もまた白い。
死んだ………んだろうな。じゃあここは死後の世界だろうか。
神様は………いないか。
とりあえず、あの扉の先に行けってことか?
立ち上がり、軽く伸びをして開かれた扉に向けて歩き出す。
死後の世界って神様がいるものなのではないだろうか?あまりしっかり観たことはないが異世界転生もののアニメは少しは知っている。
死後の世界で神様と会って、チート能力貰って転生して、俺TUEEEでチート無双だのハーレムだの建国だの。いろいろあるし、どれもよく知らないが、まず神様からチート能力貰わないととチート無双はできない。かなり他力本願で傲慢な御都合主義だと自分でも思う。というか思った。まぁ、誰がいるわけでもないしいいよね、思うだけだし。
「でかいな」
目の前には、外側に開かれた両開きの扉。その扉が大きい。いや、城みたいなところならこんなものなのか?
扉の先は目が覚めた場所からはわからなかったが渡り廊下の様になっている。腰よりやや高めの手摺に半円状の屋根が付いている。
扉を潜って渡り廊下から外を眺める。
「これ、落ちたら終わるやつ?」
下を眺めれば延々と白い。地面のようなものも、空と呼べるものもなく、上横下全部が白い。
渡り廊下から顔を出せるってことは、度が過ぎればここから落ちることができるということだろう。怖すぎて試す気にはならない。
「城じゃくて、塔?」
先ほどまで居た方を向けば、城というより塔に近い外観をしていた。近すぎて上と下の方が見えないが円形に近い縦長の白い塔の様だ。
塔からはここと同じ様に渡り廊下が伸びていて、その先に中央の塔より小さい塔がある。
中央の塔に十二個の扉があったから、小さい塔も十二個あるのだろう。
さて、これからどうしたものか。
俺は中央の塔の中に戻ってきていた。ここで目が覚めてそこそこ時間が経つが神様らしき存在はお目にかかれていない。
死んだ記憶があるから、ここは死後の世界で間違いないはずだ。白昼夢や明晰夢という可能性も無くはないが、生前一度も自身に起きたことが無いから、きっとそれは無いだろう。
事態の発展に必要なことはなんだろうか。
思いつくのは『神様に会うこと』だろう。では、会うためにはどうしたらいいか。
会えない原因として考えられるのは、別のところへ行っていて不在、または特定の場所から動けない、といったところだろう。そもそも神などいないという可能性もあるが、これは最終結論になるから今は考えないことにする。
不在の可能性。これは時間の問題だな。神様の都合など、一市民である俺にどうこうできる問題じゃない。ということで次。
特定の場所から動けない可能性。こっちは行動の不足か。行ってない所といえば渡り廊下の先にある小さな塔だな。今までの行動範囲は中央の塔内部と渡り廊下の中央の塔側数メートルだけだ。
どうして小さな塔の方へ行ってないかは、ぶっちゃけ怖いからだ。何か行動を起こして変な事態になっても嫌だし。今まで起こした行動は中央の塔内部を少し歩き回って、開いた扉から少し出て塔の外観を見ただけだ。閉じた扉には触ってすらいない。
特に何かするわけでも無く、神様が現れるのを待っていたがそろそろ限界だ。暇すぎる。
「行く…………しかないよなぁ」
再び渡り廊下に来る。
「はぁ。まぁ、成るように成るだろう」
諦めて小さな塔へ向けて足を動かす。すると決めれば早いもので、スイスイ進んで行く。
渡り廊下の中腹にきた辺りで何気なく振り返り、そして焦った。中央の塔の扉が音も無く閉じ始めていたからだ。
「え!?うそだろ!?」
全力疾走で扉の元へ向かう。目に見える距離とは言え、それなりの距離だ。着いた頃には無情にも扉は閉じてしまっていた。
扉を引くための取っ手が無く、開くためには押すしかない。しかし、ビクともしない。最初から外側に向けて開いていた扉だ。元より外開きなのだろう。
逃げ道を塞がれて袋小路に陥る感覚に襲われる。
「締め出された不正解か、あの塔へ向かう正解か」
こういうのがあるから、行動を起こしたくなかったのだ。
予防線を一つ無くした俺は若干焦りながら、再び小さな塔へ向けて渡り廊下を歩く。
小さな塔の扉の前に着く。この扉も外開きで、こちらに向けて開かれている。
「神様がいますように……」
もはや神頼みだ。初めから神頼みなのだが、俺は不意の事態に弱いのだ。扉の一件で精神的余裕は完全に無くなった。
泣きはしないが泣きたい気分で扉を潜る。
小さな塔の内部は中央の塔より小さい広間で中心に紫色の光を放つ球体が浮いていた。
数歩歩いたところでまた扉が閉まった。もう駆け寄る気力もない。
もう嫌。
「おやおやおや?君は噂の死者かい?」
絶望に近いものを感じていたところに、背後から陽気な少年の声がかかる。
振り返ればそこには十二、三歳くらいの少年がいた。髪と瞳が中心にある球体と同じ紫色をして異彩さを醸し出している。
少年はニィッと口を歪ませ、随分愉しそうに笑っていた。
反射的に右手で頭を抑える。しかし、頭に触れた頃には頭痛は治まっていた。
頭痛のおかげで意識がはっきりしたので、状況把握に努める。
上体を起こす。
頭痛はしない。傷もない。身体も痛いところはない。服装は轢かれた時の格好。
視線を巡らせる。
どこを見ても白い。ただ白いだけじゃなく、城か塔のような造りみたいだ。
柱と壁に半球状の天井。11個の閉じた扉と1つの開かれた扉。その先もまた白い。
死んだ………んだろうな。じゃあここは死後の世界だろうか。
神様は………いないか。
とりあえず、あの扉の先に行けってことか?
立ち上がり、軽く伸びをして開かれた扉に向けて歩き出す。
死後の世界って神様がいるものなのではないだろうか?あまりしっかり観たことはないが異世界転生もののアニメは少しは知っている。
死後の世界で神様と会って、チート能力貰って転生して、俺TUEEEでチート無双だのハーレムだの建国だの。いろいろあるし、どれもよく知らないが、まず神様からチート能力貰わないととチート無双はできない。かなり他力本願で傲慢な御都合主義だと自分でも思う。というか思った。まぁ、誰がいるわけでもないしいいよね、思うだけだし。
「でかいな」
目の前には、外側に開かれた両開きの扉。その扉が大きい。いや、城みたいなところならこんなものなのか?
扉の先は目が覚めた場所からはわからなかったが渡り廊下の様になっている。腰よりやや高めの手摺に半円状の屋根が付いている。
扉を潜って渡り廊下から外を眺める。
「これ、落ちたら終わるやつ?」
下を眺めれば延々と白い。地面のようなものも、空と呼べるものもなく、上横下全部が白い。
渡り廊下から顔を出せるってことは、度が過ぎればここから落ちることができるということだろう。怖すぎて試す気にはならない。
「城じゃくて、塔?」
先ほどまで居た方を向けば、城というより塔に近い外観をしていた。近すぎて上と下の方が見えないが円形に近い縦長の白い塔の様だ。
塔からはここと同じ様に渡り廊下が伸びていて、その先に中央の塔より小さい塔がある。
中央の塔に十二個の扉があったから、小さい塔も十二個あるのだろう。
さて、これからどうしたものか。
俺は中央の塔の中に戻ってきていた。ここで目が覚めてそこそこ時間が経つが神様らしき存在はお目にかかれていない。
死んだ記憶があるから、ここは死後の世界で間違いないはずだ。白昼夢や明晰夢という可能性も無くはないが、生前一度も自身に起きたことが無いから、きっとそれは無いだろう。
事態の発展に必要なことはなんだろうか。
思いつくのは『神様に会うこと』だろう。では、会うためにはどうしたらいいか。
会えない原因として考えられるのは、別のところへ行っていて不在、または特定の場所から動けない、といったところだろう。そもそも神などいないという可能性もあるが、これは最終結論になるから今は考えないことにする。
不在の可能性。これは時間の問題だな。神様の都合など、一市民である俺にどうこうできる問題じゃない。ということで次。
特定の場所から動けない可能性。こっちは行動の不足か。行ってない所といえば渡り廊下の先にある小さな塔だな。今までの行動範囲は中央の塔内部と渡り廊下の中央の塔側数メートルだけだ。
どうして小さな塔の方へ行ってないかは、ぶっちゃけ怖いからだ。何か行動を起こして変な事態になっても嫌だし。今まで起こした行動は中央の塔内部を少し歩き回って、開いた扉から少し出て塔の外観を見ただけだ。閉じた扉には触ってすらいない。
特に何かするわけでも無く、神様が現れるのを待っていたがそろそろ限界だ。暇すぎる。
「行く…………しかないよなぁ」
再び渡り廊下に来る。
「はぁ。まぁ、成るように成るだろう」
諦めて小さな塔へ向けて足を動かす。すると決めれば早いもので、スイスイ進んで行く。
渡り廊下の中腹にきた辺りで何気なく振り返り、そして焦った。中央の塔の扉が音も無く閉じ始めていたからだ。
「え!?うそだろ!?」
全力疾走で扉の元へ向かう。目に見える距離とは言え、それなりの距離だ。着いた頃には無情にも扉は閉じてしまっていた。
扉を引くための取っ手が無く、開くためには押すしかない。しかし、ビクともしない。最初から外側に向けて開いていた扉だ。元より外開きなのだろう。
逃げ道を塞がれて袋小路に陥る感覚に襲われる。
「締め出された不正解か、あの塔へ向かう正解か」
こういうのがあるから、行動を起こしたくなかったのだ。
予防線を一つ無くした俺は若干焦りながら、再び小さな塔へ向けて渡り廊下を歩く。
小さな塔の扉の前に着く。この扉も外開きで、こちらに向けて開かれている。
「神様がいますように……」
もはや神頼みだ。初めから神頼みなのだが、俺は不意の事態に弱いのだ。扉の一件で精神的余裕は完全に無くなった。
泣きはしないが泣きたい気分で扉を潜る。
小さな塔の内部は中央の塔より小さい広間で中心に紫色の光を放つ球体が浮いていた。
数歩歩いたところでまた扉が閉まった。もう駆け寄る気力もない。
もう嫌。
「おやおやおや?君は噂の死者かい?」
絶望に近いものを感じていたところに、背後から陽気な少年の声がかかる。
振り返ればそこには十二、三歳くらいの少年がいた。髪と瞳が中心にある球体と同じ紫色をして異彩さを醸し出している。
少年はニィッと口を歪ませ、随分愉しそうに笑っていた。
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