9 / 9
8. ご主人さま、あの転入生は、お相手で?
しおりを挟む「ふぅ、疲れた。まぁ、シルヴィアとゆっくり話せたのは良かったけど。」
長々と話していたが、どうやらシルヴィアも元気になってきたようでよかった。仕事ばかりな彼女に、息抜きをさせられたなら、それでいい。
今は、お風呂で一人だった。やっぱり女子友達だとシルヴィアは思ったままからなのか、一緒にお風呂に入りたいと言い出したのだが、こちらが恥ずかしいということを理由に辞めてもらった。
(仮にそんなことをしたら……犯罪でしょ?)
とも思いつつ、そもそも生の女の子の裸なんて見たことないから……自分が耐えられる気がしない。赤らめた顔を隠すように、顔を湯船に沈める。
(そうじゃなくても、クリスタルが胸の真ん中にあるしな。見られたら、不味いな。僕が『人間兵器』ってバレる可能性から国家機密だし。おかげで、プールも入れないし。いや、その前に水着がな……。)
実は、ユウの胸には、半分見えるようにして、クリスタルが埋まっている。これには、色々と訳があるのだが、とりあえず、このクリスタルのおかげで、全属性の魔法が使えたり、精霊と交流ができたりしている。当然、人前に晒していいようなものではない。
(うーん、綺麗だからまだしも、ちょっと引くかもな。石が胸のど真ん中に埋まっていて、レースみたいに肩から模様になっていて……刺青の進化バージョンといえば、そんなもんだが。)
見た目的には問題はなくても、機密事項だから、バレてしまうのは論外なのだが。
「にゃぁ、にゃ?」
ふと、お風呂場のドアから、猫が顔を出した。糸のように細くなった瞳と目が合う。
「猫ちゃんも、シャワー浴びる?」
勝手に入ってきた猫は、ひょいっと椅子の上に置いていた、お湯の張った桶に身体を入れて、気持ちよさそうに顔を緩めた。
猫って、水が嫌いなはずだと思いつつ、あまりにも人間じみた動作に思わず笑ってしまった。
「ついでだから、身体を洗ってあげるよ。」
まぁ所詮猫は獣だから、と割り切ってユウは手を伸ばした。
--- --- ---ロゼ目線--- --- ---
「にゃ?」
まさか手を伸ばしてくるとは思わなかったが、泡立った石鹸で身体を洗い始めてくれた。やっぱりダニは大敵だし、この身体を自分で洗うとなると、結構大変なのだ。洗ってもらえるのなら、ありがたい。
まぁ、女の子だし、こんな可愛い子に洗ってもらうのは、なかなかない機会よね、と思いつつ、されるがままに洗ってもらう。見た目の割に、少しごつごつとした手が背中をマッサージのようにして、泡だててくれる。
「んにゃぁ。」
あまりにも気持ちよくて、ごろごろと喉を思わず鳴らしてしまった。その後、あっと思ったが、お腹やら、胸やら、お尻やらまで丁寧に洗ってくれる。
「……////」
確かにありがたいのだが、やっぱり恥ずかしい。いくら獣の身体とはいえ、相手が女の子とはいえ、心は乙女なのだ。慣れているはずの、ご主人様(シルヴィア)以外だと、少し気がひける。
「よし、シャワーで洗い流すぞ。」
ザーッと水をかけられて、泡がどんどん消えて行く。目をつぶりながら、毛並みに沿うように、シャワーの前に立つ。
「ついでに湯船に浸かるか。」
ひょいっと、脇に手を入れられて持ち上げられ、そのまま、シルヴィアの友達の腕の中に収まった。先ほどまで、湯船の外にいたから見えなかったのだが、この友達、胸が全くのまな板である。
(やっばい、筋肉すごっ!)
ぽんっとキックしてしまったお腹の上のあたりは割れているし、抱いてくれている腕は、細いがしっかりと無駄のない筋肉が付いている。ただ、どういう訳だか、大きなクリスタルが胸に一つと、小さなクリスタルが広がったレースのように無数、皮膚に半分埋まるようにして散りばめられていた。
「あぁ、ごめんな。こらは取れないし、僕と一体化してる魔石なの。そうは言ってもわからないだろうけど。」
僕? という言葉が気にかかり、ひょいと思い切って、水面の下を覗いてみた。
(あ、あ、あ、あ、あ、ある!? あっちゃいけないものが、あるよ!? えー!!!)
ぎゃーっと思わず悲鳴をあげそうになり、暴れ出す。
「あ、ごめん、猫ちゃんはのぼせちゃうよね。」
抱っこされたまま立ち上がって、湯船を出ると、すぐに魔法で乾かしてくれた。
(な、なんて便利にゃ魔法だにゃ。だ、だがしかし、いけないものが、私の視界でぶらぶらしとるーーー!!???)
落ち着け私、いや、落ち着けるか私。どうしてこんにゃことになってるんだ! なんであんなに女も顔負けの可愛らしい子に、よくわかんないのが、股にある!? 立派なわけではないけど、小さくはないしっ!!
「シャワー、気持ちよかった?」
待ってー!! いけないことを、今ので気づいちゃったよ! はい、気持ちよかったけどね、ダメなのよ。つまり、私、人間の身体ではないけど、男の子に全身触られちゃったのよね? え? え?
「はぁ~、さすがに女性物は着れないからな、絶対にシルヴィに見つからないようにしないと。」
あからさまに、男用の下着を着ながら、彼はだるそうそう言った。待って。シルヴィアは、この子を男だと気づいてないの!? なに、ケダモノを連れ込んできてるんじゃーい!!!
「猫ちゃん。あったかいなぁ。」
着替え終わると、再びひょいっと抱かれてしまった。心の中が落ち着かないので、どう動いていいのかわからず、身動きもままならない。
「あ、ロゼさんったら、早速ユウに懐いたのね。私もお風呂はいってくるから。」
無防備にもシルヴィアは、半分脱ぎながら、お風呂場へと行く。あかん、あの子、あかんよ。
ふと、ユウを見ると、さすがに目のやり場に困ったらしく、違う方向に向いていた。ほほう、ちょっと見直してやろう。だがな、そもそも性別偽って家に入ってる時点で、アウトだからにゃ!
「はぁー、流石にそこで脱ぐなよ。でも、男ってバレるとお互いショックだしな。あっちは女の子友達のつもりだもんな。」
脱衣所から、お風呂場に入った音を聞いて、ようやく彼は安心したように、ソファにくつろいだ。抱っこされままの自分は、立派な腹筋の上に座っている。
「どうしよ、布団は違うといいな。もしものことで、傷つけると悪いし。そもそもアランのことがなければ……。」
ぼそぼそと彼は独り言をぼやいた。どうやら、偽りたくて性別を違うことにしているわけではないらしい。しかも、シルヴィアを大切に思っているからこそ、今の状況に苦しんでいるようだ。
なにか相談に乗ってやりたい気分でもあったが、もしも本当は呪いをかけられた人間だとバレたなら、全身を洗わせたこともバレる。いやいや、それは絶対に無理。一生の恥。
(そうだ、そもそも、シルヴィアとの話では、学校で一番人気の王子様『アラン』とやらとキスを交わしていた仲ではにゃいのか? でも、この子、男なんでしょ? そうか、そっち趣味なのかにゃ!?)
一番ユウが恐れていた勘違いをしたロゼは、にやにやと頬を緩めた。
(にゃるほど。実は、そっち系の趣味があるけど、公にはしたくにゃいと。だから、シルヴィア様にかくしておるんじゃにゃぁ。ふふーん。)
「猫ちゃん、可愛い。名前、ロゼっていうんだね。」
……無邪気に抱きつかれて、にゃぁ、と返事を返す。27歳独身女子ロゼッタこと、ロゼは、12歳歳下の男の子に抱擁してもらってます、しかもめっちゃ可愛い子に!! 単に可愛がられるだけなら、猫って役得だわぁ。
「あ、ロゼも、ユウも。そんなところで寝たら風邪ひいちゃうよ?」
お風呂上がりのシルヴィアが、つんつんとユウのほっぺを指で突いたが、これっぽっちも反応がない。
「もう、せっかく夜は布団に潜り込みながら、恋話でもできると思ったのに。」
修学旅行も仕事で全く行けていないシルヴィアにとって、それは憧れだったのだが、どうやら今回はお預けらしい。ソファで丸まった二人に毛布をかけてあげる。
「むぅ、今度はちゃんと、起きててよ~?」
寝ているから意味がないとわかりつつも、シルヴィアは、そう話しかけた。
(ご主人様が、間違っても男と寝ることにならなくて、よかったにゃあ。このまんま、お預けにゃ。)
抱きかかえられながら、大人しくしていたロゼは、ほっと離れていく足音を聞いた。シルヴィアは、まだ鈍感で気づいていないし、おそらく当分は男女を勘違いしたままだろう。
「おやすみー!」
奥の寝室から、物足りなさそうな声が聞こえた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる