僕の女装学校生活

玉串 ひとみん

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8. ご主人さま、あの転入生は、お相手で?

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「ふぅ、疲れた。まぁ、シルヴィアとゆっくり話せたのは良かったけど。」


長々と話していたが、どうやらシルヴィアも元気になってきたようでよかった。仕事ばかりな彼女に、息抜きをさせられたなら、それでいい。


今は、お風呂で一人だった。やっぱり女子友達だとシルヴィアは思ったままからなのか、一緒にお風呂に入りたいと言い出したのだが、こちらが恥ずかしいということを理由に辞めてもらった。


(仮にそんなことをしたら……犯罪でしょ?)


とも思いつつ、そもそも生の女の子の裸なんて見たことないから……自分が耐えられる気がしない。赤らめた顔を隠すように、顔を湯船に沈める。


(そうじゃなくても、クリスタルが胸の真ん中にあるしな。見られたら、不味いな。僕が『人間兵器』ってバレる可能性から国家機密だし。おかげで、プールも入れないし。いや、その前に水着がな……。)


実は、ユウの胸には、半分見えるようにして、クリスタルが埋まっている。これには、色々と訳があるのだが、とりあえず、このクリスタルのおかげで、全属性の魔法が使えたり、精霊と交流ができたりしている。当然、人前に晒していいようなものではない。


(うーん、綺麗だからまだしも、ちょっと引くかもな。石が胸のど真ん中に埋まっていて、レースみたいに肩から模様になっていて……刺青の進化バージョンといえば、そんなもんだが。)


見た目的には問題はなくても、機密事項だから、バレてしまうのは論外なのだが。


「にゃぁ、にゃ?」


ふと、お風呂場のドアから、猫が顔を出した。糸のように細くなった瞳と目が合う。


「猫ちゃんも、シャワー浴びる?」


勝手に入ってきた猫は、ひょいっと椅子の上に置いていた、お湯の張った桶に身体を入れて、気持ちよさそうに顔を緩めた。


猫って、水が嫌いなはずだと思いつつ、あまりにも人間じみた動作に思わず笑ってしまった。


「ついでだから、身体を洗ってあげるよ。」


まぁ所詮猫は獣だから、と割り切ってユウは手を伸ばした。



--- --- ---ロゼ目線--- --- ---



「にゃ?」


まさか手を伸ばしてくるとは思わなかったが、泡立った石鹸で身体を洗い始めてくれた。やっぱりダニは大敵だし、この身体を自分で洗うとなると、結構大変なのだ。洗ってもらえるのなら、ありがたい。


まぁ、女の子だし、こんな可愛い子に洗ってもらうのは、なかなかない機会よね、と思いつつ、されるがままに洗ってもらう。見た目の割に、少しごつごつとした手が背中をマッサージのようにして、泡だててくれる。


「んにゃぁ。」


あまりにも気持ちよくて、ごろごろと喉を思わず鳴らしてしまった。その後、あっと思ったが、お腹やら、胸やら、お尻やらまで丁寧に洗ってくれる。


「……////」


確かにありがたいのだが、やっぱり恥ずかしい。いくら獣の身体とはいえ、相手が女の子とはいえ、心は乙女なのだ。慣れているはずの、ご主人様(シルヴィア)以外だと、少し気がひける。


「よし、シャワーで洗い流すぞ。」


ザーッと水をかけられて、泡がどんどん消えて行く。目をつぶりながら、毛並みに沿うように、シャワーの前に立つ。


「ついでに湯船に浸かるか。」


ひょいっと、脇に手を入れられて持ち上げられ、そのまま、シルヴィアの友達の腕の中に収まった。先ほどまで、湯船の外にいたから見えなかったのだが、この友達、胸が全くのまな板である。


(やっばい、筋肉すごっ!)


ぽんっとキックしてしまったお腹の上のあたりは割れているし、抱いてくれている腕は、細いがしっかりと無駄のない筋肉が付いている。ただ、どういう訳だか、大きなクリスタルが胸に一つと、小さなクリスタルが広がったレースのように無数、皮膚に半分埋まるようにして散りばめられていた。


「あぁ、ごめんな。こらは取れないし、僕と一体化してる魔石なの。そうは言ってもわからないだろうけど。」


僕? という言葉が気にかかり、ひょいと思い切って、水面の下を覗いてみた。


(あ、あ、あ、あ、あ、ある!? あっちゃいけないものが、あるよ!? えー!!!)


ぎゃーっと思わず悲鳴をあげそうになり、暴れ出す。


「あ、ごめん、猫ちゃんはのぼせちゃうよね。」


抱っこされたまま立ち上がって、湯船を出ると、すぐに魔法で乾かしてくれた。


(な、なんて便利にゃ魔法だにゃ。だ、だがしかし、いけないものが、私の視界でぶらぶらしとるーーー!!???)


落ち着け私、いや、落ち着けるか私。どうしてこんにゃことになってるんだ! なんであんなに女も顔負けの可愛らしい子に、よくわかんないのが、股にある!? 立派なわけではないけど、小さくはないしっ!!


「シャワー、気持ちよかった?」


待ってー!! いけないことを、今ので気づいちゃったよ! はい、気持ちよかったけどね、ダメなのよ。つまり、私、人間の身体ではないけど、男の子に全身触られちゃったのよね? え? え?


「はぁ~、さすがに女性物は着れないからな、絶対にシルヴィに見つからないようにしないと。」


あからさまに、男用の下着を着ながら、彼はだるそうそう言った。待って。シルヴィアは、この子を男だと気づいてないの!? なに、ケダモノを連れ込んできてるんじゃーい!!!


「猫ちゃん。あったかいなぁ。」


着替え終わると、再びひょいっと抱かれてしまった。心の中が落ち着かないので、どう動いていいのかわからず、身動きもままならない。


「あ、ロゼさんったら、早速ユウに懐いたのね。私もお風呂はいってくるから。」


無防備にもシルヴィアは、半分脱ぎながら、お風呂場へと行く。あかん、あの子、あかんよ。


ふと、ユウを見ると、さすがに目のやり場に困ったらしく、違う方向に向いていた。ほほう、ちょっと見直してやろう。だがな、そもそも性別偽って家に入ってる時点で、アウトだからにゃ!


「はぁー、流石にそこで脱ぐなよ。でも、男ってバレるとお互いショックだしな。あっちは女の子友達のつもりだもんな。」


脱衣所から、お風呂場に入った音を聞いて、ようやく彼は安心したように、ソファにくつろいだ。抱っこされままの自分は、立派な腹筋の上に座っている。


「どうしよ、布団は違うといいな。もしものことで、傷つけると悪いし。そもそもアランのことがなければ……。」


ぼそぼそと彼は独り言をぼやいた。どうやら、偽りたくて性別を違うことにしているわけではないらしい。しかも、シルヴィアを大切に思っているからこそ、今の状況に苦しんでいるようだ。


なにか相談に乗ってやりたい気分でもあったが、もしも本当は呪いをかけられた人間だとバレたなら、全身を洗わせたこともバレる。いやいや、それは絶対に無理。一生の恥。


(そうだ、そもそも、シルヴィアとの話では、学校で一番人気の王子様『アラン』とやらとキスを交わしていた仲ではにゃいのか? でも、この子、男なんでしょ? そうか、そっち趣味なのかにゃ!?)


一番ユウが恐れていた勘違いをしたロゼは、にやにやと頬を緩めた。


(にゃるほど。実は、そっち系の趣味があるけど、公にはしたくにゃいと。だから、シルヴィア様にかくしておるんじゃにゃぁ。ふふーん。)


「猫ちゃん、可愛い。名前、ロゼっていうんだね。」


……無邪気に抱きつかれて、にゃぁ、と返事を返す。27歳独身女子ロゼッタこと、ロゼは、12歳歳下の男の子に抱擁してもらってます、しかもめっちゃ可愛い子に!! 単に可愛がられるだけなら、猫って役得だわぁ。


「あ、ロゼも、ユウも。そんなところで寝たら風邪ひいちゃうよ?」


お風呂上がりのシルヴィアが、つんつんとユウのほっぺを指で突いたが、これっぽっちも反応がない。


「もう、せっかく夜は布団に潜り込みながら、恋話でもできると思ったのに。」


修学旅行も仕事で全く行けていないシルヴィアにとって、それは憧れだったのだが、どうやら今回はお預けらしい。ソファで丸まった二人に毛布をかけてあげる。


「むぅ、今度はちゃんと、起きててよ~?」


寝ているから意味がないとわかりつつも、シルヴィアは、そう話しかけた。


(ご主人様が、間違っても男と寝ることにならなくて、よかったにゃあ。このまんま、お預けにゃ。)


抱きかかえられながら、大人しくしていたロゼは、ほっと離れていく足音を聞いた。シルヴィアは、まだ鈍感で気づいていないし、おそらく当分は男女を勘違いしたままだろう。


「おやすみー!」


奥の寝室から、物足りなさそうな声が聞こえた。


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