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美晴 5
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二日間で行われた中間試験二日目の放課後。今日まで部活動がないので、HRの後に渡君たちと答え合わせをしようと約束していた。
まあ、渡君と私の問題の内容は違う教科もあるんだけど。
「どうだった?」
「委員長のヤマのおかげで今までにない手応えはあった! てか、美晴はどうだった? 俺らにばかり付き合わせたから」
「渡君たちに付き合ったのは昼休みだけだったじゃない。私たちは放課後も家に帰ってからも時間はあったよ。大丈夫」
「ははっ、スゲェな進学組!」
解答用紙は先生のところにあるので、残った問題用紙に書き込まれた答えを進学組六人で答え合わせしていく。私、丹野さん、佐東さん、五組の中でも教え役だった委員長他男子二人。
結果。私たちがちょっと自信がない所を差し引いても、サッカー部二年は全員赤点を免れました!
五組全員が心配して残っていたので大きな歓声が上がり、サッカー部はポカーンとした。
「これで、夏休みも存分に練習出来るね!」
それぞれに採点したテストを本人に返す。パラパラとめくり、点数を確認した六人は叫んだ。
そして、五組の一人一人に「ありがとう」と言っていく。結局最後の方には誰彼構わず質問しまくったからね。付き合いのいいクラスで良かった。
最後に私の前に来た渡君は、私の描いた花丸をこちらに向けながら笑う。今までにない明るい表情だ。
いい顔……カッコイイ…
よく見て覚えておこう。こんな近くで見るのはこれがきっと最後だから。
「ありがとう。美晴のお陰だ」
「どういたしまして。でも渡君たちが頑張ったのが一番だからね。去年のインターハイもそう。運もあったというなら、それも含めての結果だから。テストだってヤマは運よ。だけど、起こるべくして起こる運。だから渡君たちも自信は持って」
少しだけ驚いたような顔になった渡君は、ゆっくりと口を歪ませた。
「……お前、いいな……」
ん? 何?
「美晴ちゃん先生!ありがとう!お礼に今度デートしよう!」
「木村君、お礼はいらないからその『美晴ちゃん先生』をやめて…」
「そうだぞ木村、『荒井先生』と呼べ」
「ちょっと中村君!?」
「『荒井先生』! 丹野さんと佐東さんとデートする術を俺に伝授して下さい!」
「加藤君、私にそんな事を聞く無謀さに敬意を表して両手に花は高くつくのを覚悟してと言っておくよ! そして『先生』もやめて!?」
「荒井、委員長を口説くにはどうすればいい?」
「田辺君!? ええっ!? ちょっとそれ詳しく!!」
「馬鹿野郎田辺! 俺は別れないからな!」
「佐竹君!? ちょっとそこ詳しくっ!!」
突然乱入してきた木村君に乗っかったら、何だか変な方向に動き出した。でも、このノリ楽しい。
いいな、サッカー部。渡君も楽しいんだろうな。
周りからも笑いが起きて、次は誰がボケるのかと待っていたら、ガシッと肩を掴まれた。
「駄目」
振り返る。サッカー部とのコントがぴたりと止まってしまった。
「美晴は今から俺とデート。コンビニスイーツしか買えない散歩デートだけど」
言われた事にガン見してしまった渡君の頬がうっすら赤い。
私は真っ赤だ。だって耳が熱いのが分かる。こんなに耳が熱くなったのは中学の時の弁論大会の練習で体育館のステージに一人で立った時以来だ(本番は緊張が突き抜けて逆に平静だった)。
声も出ない。
動けない。
心臓だけがバクバク鳴ってる。
目が離せない―――
はっっ!?
これは渡君のボケか!
ど、どどどどうしよう、こんなに赤くなってしまったら本気に受け取ったと思われちゃう! 実際そうだけど!
どうボケる? どうつっこむ??
「ボケんな、つっこむな」
な、何で分かるの!?
「何日お前の正面にいたと思ってんだ。顔見れば分かる」
えっ、ええ~? 私、渡君が何考えてるか分からないけど……
「初対面で対戦相手の心理も読まなきゃならない運動部をなめんな」
「う、運動部ってスゴいね…」
やっと金縛りが解けて会話ができると、渡君がニヤリとした。
そんな顔もカッコイイけど、駄目な笑顔でしょ?それ!?漫画によくあるよ!
「せっかくだから、公開告白しとくか?」
「攻め過ぎでしょ!?」
「だって俺、攻めてなんぼのFWだし」
「ポジションなんか知らないし!」
「そこがいいよな~」
「馬鹿にされてる!」
「プリンが好きだよな~」
「バレてる!」
「俺とどっち好き?」
「ぶふぁあ!?」
女子として駄目な叫びをあげてしまった。慌てて口を押さえたけど、教室大爆笑。
ですよね!私も自分じゃなければ笑っちゃうよ!
恥ずかし過ぎて涙が滲んできた。くっ。
「恥ずかしいから帰ります! 皆さんサヨウナラ! できれば明日までに忘れてて~!」
友達に先に帰るとアイコンタクトして、爆笑が続く教室を飛び出した。
今日はプリンをヤケ食いしよう。うん、そうしよう。コンビニまで走っていけばカロリーも消費する!
昇降口で靴を履き替えてる時に腕を掴まれた。
「マジで逃げるとか」
渡君! 何で!?
「コラ。返事は?」
「? 何の?」
「マジか……!」
「笑いを提供できたのはいいけど、もう色々恥ずかしいから帰らせて~! 帰る~!」
なぜだか脱力した渡君は、それでも腕を離してくれず、喚く私をじっと見る。
……あの、一番に渡君から逃げたいんだけど……
さっきの叫びが我ながら残念過ぎて、渡君の顔を見られない。
恥ずかしいやら、情けないやら。
「一緒に帰ろう」
「?何で?」
「速答かよ……。俺がまだ一緒にいたいから。美晴が嫌ならしない」
そんなの、答えは決まってる。顔はまだ上げられないけど。
「嫌じゃない。わ、私も渡君といたい……もう少し……」
「……もう少しってどれくらいだよ?」
「……渡君が、もういいやって思うまで?」
「俺次第?」
「うん。だって私が決めるのは烏滸がましくない?」
「……お前、難しい言葉使うよな。分かりやすく言えよ」
「次期エースが私なんかに声をかけてくれる事が私には奇跡だから、逆らえるわけがない?」
「…………嫌なら嫌って言えって」
「嬉し過ぎて私に断る理由がないの。けど、は、恥ずかしい……」
渡君が急にしゃがみこんだ。腕を掴んでいた手は私の手を握る事になったらしい。ふわああ!
そして、臥せていた顔を上げた。目が合った。
さっきよりも渡君の顔が赤い……気がする。
「なあ美晴。俺とプリン、どっちが好き?」
!!
「どっちもは無しな」
ぇ、ええ~!?
「……そんなに迷うのかよ」
笑いながらも少し不満気に呟く渡君。
そんなの、答えは、決まってる。
だけど、言いたくても緊張で口がわなわなしている。
ここまで来たら恥などかき捨てじゃ!頑張れ、私!
「………………渡君……が……好き」
渡君がゆっくり息を吐いた。
い、言った、言っちゃった、恥ずかしい~~!
この後は、どうなるの……?
「俺はサッカーのが好きだな」
ガーーン! なんてこった! ギャグ漫画仕様か騙された!
「知ってるよそんなの! 私の告白返して~!帰る~!」
「待てって。返さない。美晴は俺の二番目だからな」
「なにそれ愛人宣言!?」
「あー。字としては合ってる」
「合ってるって何!?」
「『愛しい人』だろ? 合ってる」
呆然と立つ私の前で、渡君が柔らかく笑ってる。
……え、どこまで冗談……?
「全部本気。サッカーが好き。お前も好き。プリンより好きだって言われてちょー嬉しい。だから今から俺と美晴はカレカノな」
混乱したままの私の手を握り、渡君はいい顔で笑った。
「俺以外の男とは勉強会もするなよな」
まさかこんな事が起こるとは……実は夢じゃないだろうか……渡君が勉強以外で私の前にいるなんて……
「……あの時、水玉パンツ見といて良かった」
夢じゃなかったっ!!?
ぎゃあああああっ!!
まあ、渡君と私の問題の内容は違う教科もあるんだけど。
「どうだった?」
「委員長のヤマのおかげで今までにない手応えはあった! てか、美晴はどうだった? 俺らにばかり付き合わせたから」
「渡君たちに付き合ったのは昼休みだけだったじゃない。私たちは放課後も家に帰ってからも時間はあったよ。大丈夫」
「ははっ、スゲェな進学組!」
解答用紙は先生のところにあるので、残った問題用紙に書き込まれた答えを進学組六人で答え合わせしていく。私、丹野さん、佐東さん、五組の中でも教え役だった委員長他男子二人。
結果。私たちがちょっと自信がない所を差し引いても、サッカー部二年は全員赤点を免れました!
五組全員が心配して残っていたので大きな歓声が上がり、サッカー部はポカーンとした。
「これで、夏休みも存分に練習出来るね!」
それぞれに採点したテストを本人に返す。パラパラとめくり、点数を確認した六人は叫んだ。
そして、五組の一人一人に「ありがとう」と言っていく。結局最後の方には誰彼構わず質問しまくったからね。付き合いのいいクラスで良かった。
最後に私の前に来た渡君は、私の描いた花丸をこちらに向けながら笑う。今までにない明るい表情だ。
いい顔……カッコイイ…
よく見て覚えておこう。こんな近くで見るのはこれがきっと最後だから。
「ありがとう。美晴のお陰だ」
「どういたしまして。でも渡君たちが頑張ったのが一番だからね。去年のインターハイもそう。運もあったというなら、それも含めての結果だから。テストだってヤマは運よ。だけど、起こるべくして起こる運。だから渡君たちも自信は持って」
少しだけ驚いたような顔になった渡君は、ゆっくりと口を歪ませた。
「……お前、いいな……」
ん? 何?
「美晴ちゃん先生!ありがとう!お礼に今度デートしよう!」
「木村君、お礼はいらないからその『美晴ちゃん先生』をやめて…」
「そうだぞ木村、『荒井先生』と呼べ」
「ちょっと中村君!?」
「『荒井先生』! 丹野さんと佐東さんとデートする術を俺に伝授して下さい!」
「加藤君、私にそんな事を聞く無謀さに敬意を表して両手に花は高くつくのを覚悟してと言っておくよ! そして『先生』もやめて!?」
「荒井、委員長を口説くにはどうすればいい?」
「田辺君!? ええっ!? ちょっとそれ詳しく!!」
「馬鹿野郎田辺! 俺は別れないからな!」
「佐竹君!? ちょっとそこ詳しくっ!!」
突然乱入してきた木村君に乗っかったら、何だか変な方向に動き出した。でも、このノリ楽しい。
いいな、サッカー部。渡君も楽しいんだろうな。
周りからも笑いが起きて、次は誰がボケるのかと待っていたら、ガシッと肩を掴まれた。
「駄目」
振り返る。サッカー部とのコントがぴたりと止まってしまった。
「美晴は今から俺とデート。コンビニスイーツしか買えない散歩デートだけど」
言われた事にガン見してしまった渡君の頬がうっすら赤い。
私は真っ赤だ。だって耳が熱いのが分かる。こんなに耳が熱くなったのは中学の時の弁論大会の練習で体育館のステージに一人で立った時以来だ(本番は緊張が突き抜けて逆に平静だった)。
声も出ない。
動けない。
心臓だけがバクバク鳴ってる。
目が離せない―――
はっっ!?
これは渡君のボケか!
ど、どどどどうしよう、こんなに赤くなってしまったら本気に受け取ったと思われちゃう! 実際そうだけど!
どうボケる? どうつっこむ??
「ボケんな、つっこむな」
な、何で分かるの!?
「何日お前の正面にいたと思ってんだ。顔見れば分かる」
えっ、ええ~? 私、渡君が何考えてるか分からないけど……
「初対面で対戦相手の心理も読まなきゃならない運動部をなめんな」
「う、運動部ってスゴいね…」
やっと金縛りが解けて会話ができると、渡君がニヤリとした。
そんな顔もカッコイイけど、駄目な笑顔でしょ?それ!?漫画によくあるよ!
「せっかくだから、公開告白しとくか?」
「攻め過ぎでしょ!?」
「だって俺、攻めてなんぼのFWだし」
「ポジションなんか知らないし!」
「そこがいいよな~」
「馬鹿にされてる!」
「プリンが好きだよな~」
「バレてる!」
「俺とどっち好き?」
「ぶふぁあ!?」
女子として駄目な叫びをあげてしまった。慌てて口を押さえたけど、教室大爆笑。
ですよね!私も自分じゃなければ笑っちゃうよ!
恥ずかし過ぎて涙が滲んできた。くっ。
「恥ずかしいから帰ります! 皆さんサヨウナラ! できれば明日までに忘れてて~!」
友達に先に帰るとアイコンタクトして、爆笑が続く教室を飛び出した。
今日はプリンをヤケ食いしよう。うん、そうしよう。コンビニまで走っていけばカロリーも消費する!
昇降口で靴を履き替えてる時に腕を掴まれた。
「マジで逃げるとか」
渡君! 何で!?
「コラ。返事は?」
「? 何の?」
「マジか……!」
「笑いを提供できたのはいいけど、もう色々恥ずかしいから帰らせて~! 帰る~!」
なぜだか脱力した渡君は、それでも腕を離してくれず、喚く私をじっと見る。
……あの、一番に渡君から逃げたいんだけど……
さっきの叫びが我ながら残念過ぎて、渡君の顔を見られない。
恥ずかしいやら、情けないやら。
「一緒に帰ろう」
「?何で?」
「速答かよ……。俺がまだ一緒にいたいから。美晴が嫌ならしない」
そんなの、答えは決まってる。顔はまだ上げられないけど。
「嫌じゃない。わ、私も渡君といたい……もう少し……」
「……もう少しってどれくらいだよ?」
「……渡君が、もういいやって思うまで?」
「俺次第?」
「うん。だって私が決めるのは烏滸がましくない?」
「……お前、難しい言葉使うよな。分かりやすく言えよ」
「次期エースが私なんかに声をかけてくれる事が私には奇跡だから、逆らえるわけがない?」
「…………嫌なら嫌って言えって」
「嬉し過ぎて私に断る理由がないの。けど、は、恥ずかしい……」
渡君が急にしゃがみこんだ。腕を掴んでいた手は私の手を握る事になったらしい。ふわああ!
そして、臥せていた顔を上げた。目が合った。
さっきよりも渡君の顔が赤い……気がする。
「なあ美晴。俺とプリン、どっちが好き?」
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「どっちもは無しな」
ぇ、ええ~!?
「……そんなに迷うのかよ」
笑いながらも少し不満気に呟く渡君。
そんなの、答えは、決まってる。
だけど、言いたくても緊張で口がわなわなしている。
ここまで来たら恥などかき捨てじゃ!頑張れ、私!
「………………渡君……が……好き」
渡君がゆっくり息を吐いた。
い、言った、言っちゃった、恥ずかしい~~!
この後は、どうなるの……?
「俺はサッカーのが好きだな」
ガーーン! なんてこった! ギャグ漫画仕様か騙された!
「知ってるよそんなの! 私の告白返して~!帰る~!」
「待てって。返さない。美晴は俺の二番目だからな」
「なにそれ愛人宣言!?」
「あー。字としては合ってる」
「合ってるって何!?」
「『愛しい人』だろ? 合ってる」
呆然と立つ私の前で、渡君が柔らかく笑ってる。
……え、どこまで冗談……?
「全部本気。サッカーが好き。お前も好き。プリンより好きだって言われてちょー嬉しい。だから今から俺と美晴はカレカノな」
混乱したままの私の手を握り、渡君はいい顔で笑った。
「俺以外の男とは勉強会もするなよな」
まさかこんな事が起こるとは……実は夢じゃないだろうか……渡君が勉強以外で私の前にいるなんて……
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