【完全版製作記念連載再開】金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師

文字の大きさ
73 / 78
帰郷編

67話 “妹”

「……やっば。久々過ぎて、もはやエモい。本当に帰ってなかったんだなあ……」

目の前にそびえる大きな鉄の門扉を仰ぎながら、ユーリはそう独り言ちた。
門扉の隙間から顔をのぞかせるのは、切りそろえられた芝生と、その先に佇む壮麗な屋敷。
かつて自分が「家」と呼んでいた場所である。
パーリーナイトの翌朝、朝イチで手配した高速馬車に揺られること一時間。ブレイダとセイラ、そしてユーリは、故郷であるライベルの町にたどり着いたのだった。

「では勇者様。私たちはこれで。旦那様と奥様にもよろしくお伝えください」
「セイラさんはおうちの用事があるみたいだけど、私はその辺をフラフラしてるから、あとで合流できたらしましょうね~♡」

 馬車の中でセイラが頭を下げ、ブレイダはひらひらと手を振る。ユーリは薄く笑いながら親指で実家を指差すと、

「ふたりとも、ちょっと顔出していけば? 昨日連絡したから、妹たちとアーちゃんも来てるみたいだし」
「え、アーちゃんもいるの? わぁ、懐かしいな~! じゃあ久々に会って行こかなっ……むぐっ、もぐぐぅ」

 嬉々として立ち上がろうとするブレイダに、セイラは車中食として用意した巻き寿司を食べさせて制した。そうしてから再びユーリを見やり、

「でしたらなおさら、家族水入らずでお話してあげてください。アーちゃっ……アティ様にも、どうぞよろしくお伝えください」
「あはは。昔みたいにアーちゃんって呼んであげたほうが喜ぶと思うよ?」
「勇者様の叔母様に向かって、そういうわけにもいきません。では、私たちはこれで」
「むぐ、むぅぐぐ~♡」

 頭を下げるセイラと、寿司を食べながら手を振るブレイダを乗せて、馬車は田舎道を走り去っていった。

「叔母様、か……」

 手を振ってそれを見送ってから、ユーリは再び独りごちる。
 そう。
 アティとは、ユーリと血の繋がっていない叔母だ。
 そしてユーリが『妹』と呼んでいるのは、アティの娘たちのことだった。
 つまり、ユーリと彼女らに、血の繋がりは──。

「さて、行~こうっと! 妹ちゃんたち元気かな! 楽しみだな~!」

 ユーリは元気よく門扉を開け放った。


■■■■■■■■


「お兄ちゃ~~~んッ!! 会いたかったよぉ!!」

 懐かしい玄関の扉を押し開けるや、ショートカットの鮮やかなオレンジ髪を揺らして勢いよく跳びついてきたのは、ユーリの妹のひとり、次女のエマリーだ。
元気いっぱいな声と共に、爽やかな柑橘系の香りがふわりと広がる。小柄な体なのに、抱きつく力はとても強い。

「エマちゃ~~~ん! エマちゃんエマちゃんエマちゃんッ! お兄ちゃんも会いたかったよ~~~~!!」

ユーリは抱え返し、熱のこもった頬ずりで応じた。まるで火花が散るかのように、二人の再会は全身で喜びを表しているかのようだった。

「ぶるるるるるるッ! お兄ちゃん、なんで会いに来てくれなかったの!? エマ、寂しかったんだからねぇ!!」
「ごめんねぇ! ぶるるるるる、ぶるっ! お兄ちゃん忙しくて! でもみんなのこと忘れたことなかったよ! お兄ちゃんも会いたかったよぉぉぉ!」

ぎゅうぅと抱き合ったまま、しばらく離れられずにいる二人。その視線の先に、小さな影がそっと身を潜めていた。
彼女もユーリの可愛い妹ひとり、三女のスールだ。

「スーちゃん! 大きくなったねえ! スーちゃんもおいで!」
「…………」

 しばし様子をうかがうようにこちらを見ていた彼女だが、やがて、トトトッと軽く駆け寄り、小さな両手を差し出して言った。


「……抱っこ」

なんとも甘えるように、小さく懇願する声。その瞬間、ユーリの表情がさらに柔らかくなる。

「うん!」

エマリーを片腕で抱えたまま、反対の腕でスールをそっと抱き上げる。ふわりとユーリの首に回されるスールの腕はとても細く、幼さの残るしなやかさを感じさせた。彼の頬に紫色のフワフワ髪をこすりつけるようにして甘える。

「ちゅーして」
「うん!」

優しくスールのほっぺにキスをすると、彼女は目を閉じて幸福そうに息を吐いた。

「……寂しかった」
「うん、お兄ちゃんも寂しかった」
「なんで会いに来てくれなかったの?」
「忙しかったからだよ。でも寂しい思いさせてごめんね」
「じゃあいっぱい遊んで」

「うん! お兄ちゃんもいっぱい遊びたい!!」
「じゃあ、ゆるしてあげる」
「やったー! じゃあもう一回ちゅーする! ちゅー!」

 スールはくすくすと笑う。そのやりとりを見て、エマリーが頬を膨らませながら割って入る。

「ねーズルい! エマもー!」

 二人を抱きしめたまま、ユーリはふと階段に目をやった。そこには、長い黒髪を揺らしながらこちらを見つめる少女──長女のシェスカがいた。リボンで整えられた髪は後ろでまとまり、落ち着いた印象と共に、しっかり者の雰囲気を漂わせている。

「シェスカちゃん! 背が伸びてお姉ちゃんっぽくなったねぇ~! シェスカちゃんもおいで! お兄ちゃんに抱っこさせておくれ!」

シェスカは一瞬言葉を失い、視線を泳がせた。そして、ユーリに背を向けると、静かに階段を登りながら言った。


「……魔法学校の、宿題があるので。兄さん、おかえりなさい。ゆっくりしていってくださいね……」

その声はいつも通り落ち着いているようで、けれどわずかに震えているようにも聞こえた。

「シ、シェスカちゃん……」


「──気にしないで。お年頃なのよ」

 玄関の奥から優しく微笑んで出てきたのは、アティ。三姉妹の母であり、ユーリの叔母だ。若々しく、それでいて落ち着いた雰囲気を纏っている。豊満な体つきと柔らかい目線は、子供たちの安心の拠り所だった。

 が、その経歴と役職は割とイカつい。元はS級の冒険者として鳴らしに鳴らし、その辣腕を買われてライベルの冒険者ギルドへと就職。そして史上最年少でギルドマスターへと昇格し、現在もこの地の冒険者たちをまとめ上げているのだった。
 まあ、ギルドマスターになった経緯は、他にもいろいろあるのだが……。

と、そんな彼女の遍歴も、気遣いも、そして再開の挨拶にすら気が及ばず、ユーリはガタガタと震えて言った。

「シ、シシシシシシシ、シェスカちゃ、シェスカちゃ……え、うそ…夢? 僕、イケメンなのに、妹に拒否された……? 嘘でしょ。この世で一番なのに……?」
「話聞いて? あと一回ちゃんと誰かに自信ぶち折られて」
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。