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帰郷編
68話 「××××」と喚くモラリティ
アティに軽くあしらわれつつも、エマリーとスールを抱いたまま長い廊下を歩き、やがてリビングへと辿り着く。
するとそこには、華奢で若々しいピンク髪の女性と、やたらと目つきの悪い男性が、思い思いに過ごしながらユーリを待っていた。
女性はソファベッドから身を起こし、端座位となって甘ったるい声で言った。
「お帰り、ユーくん! 勇者やめて独立したんだって? じゃあもうこっち住みなよぉ~~~♡ そうすればパパもママもアーリーリタイヤするから、家族水入らずでヌルゲー人生楽しみましょう♪」
彼女はママリア。未だに二十代に──いや、下手を打てば十代にすら間違えられるほどの童顔ではあるのだが、ちゃんとユーリの母親である。
その活動も若々しく、未だにギルドの受付嬢の長をしている。
「ユーリ。金送るだけじゃなくてたまには顔出すか連絡しろ。何もしてないのに口座の金だけが増え続けていって、パパはパパ活女子になったのかと思ったぞ」
そう言って新聞から顔を挙げたのはファザーク。ユーリの父親である。彼も若々しい顔立ちをしているのだが、そんなことよりもとにかく目つきが悪く、相応の貫録を宿した容貌だった。
今も昔もその強面を活かし、ライベルの郊外一帯の辺境伯を務めながらも、冒険者ギルドの副ギルドマスターとして、アティを支えているのだった。
「ただいま、ママ、パパ! 元気そう過ぎて安心したよ!」
ユーリは妹たちを椅子に座らせ、母に抱きつきながら頬をすり寄せる。
「ママ相変わらず綺麗! 仕事なんて今すぐ辞めなよ! 僕が一生養ってあげるからさぁ~!」
「あらぁ♡むふふ、息子にプロポーズされちゃった。どうしようかしら、パパ?」
「このマザーファッカーが」
「それ我が子に向けてそんな真っすぐに言う人あんまりいないんだよ」
「……ねえ、ママ? まざーふぁっかーってなに?」
「スーはそんなん気にしないで。義兄さんは言葉気を付けて。ユーくんは全部気を付けて」
そんな談笑を挟みながらも、一同は席つき、ユーリが手配していたキュービエのテイクアウト寿司を囲みながら、家族みんなで賑やかに食卓を囲む。
一家団欒の温かな時間。
父と母、そして叔母や妹と触れ合う、とてもとても貴重時間。
「あら? ユーくん大丈夫? なんか目が潤んでない?」
「う、うん。大丈夫……はは、ちょっとワサビつけすぎたかも」
ママリアの言葉にそう答え、ユーリはリョクチャをぐびぐびと飲み込んだ。
(なんで僕、もうちょっと先延ばしに……なんて考えちゃってたんだろう)
マホの言う通り、まず真っ先に考えるべきだったのだ。
(……家族と過ごすこの時間を、誰よりも大切にしたかった自分がいたのに)
産まれたときから勇者として扱われてきたユーリにとって、家族というコミュニティは、ユーリがユーリとしてのアイデンティティを保っていられる貴重な場だった。
勇者としてではなく、息子として、甥として、兄として接してくれる家族。
そしてその扱いに心地よさを感じていた自分。
なのにユーリは、忙しさにかまけて、そんな人たちに会うことができずにいた。
「…………」
視界の端で、エマリーが頬張った寿司を嬉しそうにほおばり、隣でスールが醤油をこぼしてアティに拭かれている。父と母は年甲斐も寿司を食べさせ合い、リビング全体がやわらかな愛情で満たされていた。
寂しさも不安も、全部こうして温かく包まれて少しずつ溶けていく。
(……僕、帰ってきたんだ……!)
ちゃんと帰ってきた自分が、ここにいる──。
そう実感できることが、何よりも嬉しかった。
■■■
と、ユーリが食卓の中心でエモを感じていた、そのとき、
(か、かっこよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!)
シェスカは二階自室の中心で、自身の中のエロと戦っていた。
(無理、無理無理無理! やっぱ生で見るとヤバい、エグい! あの人兄として見るの無理ィィィィィィィ!)
ヨロヨロと椅子に座り、鍵付きの引き出しの中から一冊のアルバムを取り出す。
そこには、家族写真などから切り抜いたユーリの顔写真などが、びっしりと収められている。
ユーリを好きな気持ちが昂じて、数年前からコレクションしているものだった。
(あぁ……ダメだよね、こんなの…。兄さんなのに、こんな気持ち悪いもの作って……)
いつの頃からそうだったのか、はっきりとは覚えていないが、シェスカはユーリの事を好きになってしまっている。
兄としててではなく、男性としてだ。
最近ではその思いが倒錯して、こんなものまで作ってしまっているし、彼のSNSを欠かさずチェックしている。
いや、それどころか……。
(……これ見ながら××××してるなんて知られたら、生きていけない…!)
今回の帰省も、このオカズ……、もとい。写真コレクションが増えると思って浮き足だっている自分がいる。
「はあ……でもやっぱり、生で見るとヤバいなぁ)
半ば反射的に触れてはいけない場所を触りそうになり──そうじゃないだろとブンブン首を振る。
(じゃなくて…私、失礼だ。兄さんが遊んでくれるって言ってるのに、変な態度取っちゃって……!)
ぺちぺちとほっぺたを叩いてから、シェスカは部屋を出ていった。
アプリで無音撮影用カメラをDLしながら。
するとそこには、華奢で若々しいピンク髪の女性と、やたらと目つきの悪い男性が、思い思いに過ごしながらユーリを待っていた。
女性はソファベッドから身を起こし、端座位となって甘ったるい声で言った。
「お帰り、ユーくん! 勇者やめて独立したんだって? じゃあもうこっち住みなよぉ~~~♡ そうすればパパもママもアーリーリタイヤするから、家族水入らずでヌルゲー人生楽しみましょう♪」
彼女はママリア。未だに二十代に──いや、下手を打てば十代にすら間違えられるほどの童顔ではあるのだが、ちゃんとユーリの母親である。
その活動も若々しく、未だにギルドの受付嬢の長をしている。
「ユーリ。金送るだけじゃなくてたまには顔出すか連絡しろ。何もしてないのに口座の金だけが増え続けていって、パパはパパ活女子になったのかと思ったぞ」
そう言って新聞から顔を挙げたのはファザーク。ユーリの父親である。彼も若々しい顔立ちをしているのだが、そんなことよりもとにかく目つきが悪く、相応の貫録を宿した容貌だった。
今も昔もその強面を活かし、ライベルの郊外一帯の辺境伯を務めながらも、冒険者ギルドの副ギルドマスターとして、アティを支えているのだった。
「ただいま、ママ、パパ! 元気そう過ぎて安心したよ!」
ユーリは妹たちを椅子に座らせ、母に抱きつきながら頬をすり寄せる。
「ママ相変わらず綺麗! 仕事なんて今すぐ辞めなよ! 僕が一生養ってあげるからさぁ~!」
「あらぁ♡むふふ、息子にプロポーズされちゃった。どうしようかしら、パパ?」
「このマザーファッカーが」
「それ我が子に向けてそんな真っすぐに言う人あんまりいないんだよ」
「……ねえ、ママ? まざーふぁっかーってなに?」
「スーはそんなん気にしないで。義兄さんは言葉気を付けて。ユーくんは全部気を付けて」
そんな談笑を挟みながらも、一同は席つき、ユーリが手配していたキュービエのテイクアウト寿司を囲みながら、家族みんなで賑やかに食卓を囲む。
一家団欒の温かな時間。
父と母、そして叔母や妹と触れ合う、とてもとても貴重時間。
「あら? ユーくん大丈夫? なんか目が潤んでない?」
「う、うん。大丈夫……はは、ちょっとワサビつけすぎたかも」
ママリアの言葉にそう答え、ユーリはリョクチャをぐびぐびと飲み込んだ。
(なんで僕、もうちょっと先延ばしに……なんて考えちゃってたんだろう)
マホの言う通り、まず真っ先に考えるべきだったのだ。
(……家族と過ごすこの時間を、誰よりも大切にしたかった自分がいたのに)
産まれたときから勇者として扱われてきたユーリにとって、家族というコミュニティは、ユーリがユーリとしてのアイデンティティを保っていられる貴重な場だった。
勇者としてではなく、息子として、甥として、兄として接してくれる家族。
そしてその扱いに心地よさを感じていた自分。
なのにユーリは、忙しさにかまけて、そんな人たちに会うことができずにいた。
「…………」
視界の端で、エマリーが頬張った寿司を嬉しそうにほおばり、隣でスールが醤油をこぼしてアティに拭かれている。父と母は年甲斐も寿司を食べさせ合い、リビング全体がやわらかな愛情で満たされていた。
寂しさも不安も、全部こうして温かく包まれて少しずつ溶けていく。
(……僕、帰ってきたんだ……!)
ちゃんと帰ってきた自分が、ここにいる──。
そう実感できることが、何よりも嬉しかった。
■■■
と、ユーリが食卓の中心でエモを感じていた、そのとき、
(か、かっこよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!)
シェスカは二階自室の中心で、自身の中のエロと戦っていた。
(無理、無理無理無理! やっぱ生で見るとヤバい、エグい! あの人兄として見るの無理ィィィィィィィ!)
ヨロヨロと椅子に座り、鍵付きの引き出しの中から一冊のアルバムを取り出す。
そこには、家族写真などから切り抜いたユーリの顔写真などが、びっしりと収められている。
ユーリを好きな気持ちが昂じて、数年前からコレクションしているものだった。
(あぁ……ダメだよね、こんなの…。兄さんなのに、こんな気持ち悪いもの作って……)
いつの頃からそうだったのか、はっきりとは覚えていないが、シェスカはユーリの事を好きになってしまっている。
兄としててではなく、男性としてだ。
最近ではその思いが倒錯して、こんなものまで作ってしまっているし、彼のSNSを欠かさずチェックしている。
いや、それどころか……。
(……これ見ながら××××してるなんて知られたら、生きていけない…!)
今回の帰省も、このオカズ……、もとい。写真コレクションが増えると思って浮き足だっている自分がいる。
「はあ……でもやっぱり、生で見るとヤバいなぁ)
半ば反射的に触れてはいけない場所を触りそうになり──そうじゃないだろとブンブン首を振る。
(じゃなくて…私、失礼だ。兄さんが遊んでくれるって言ってるのに、変な態度取っちゃって……!)
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