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帰郷編
69話 “小悪魔系”おしゃれガール
昼食もひと段落し、まったりとした空気が食卓に流れつつある頃。ユーリは向かいのアティに控えめに声をかけた。
「アーちゃん、シェスカちゃんは呼ばなくていいの?」
「宿題が一区切りしたら来るって。メール来てたわ」
アティはそう言ってケータイを見せる。安心したように胸を撫でおろすユーリ。
「よ、良かった。本当に宿題が忙しいからなんだよね? ……僕がイケメンじゃないからじゃないよね?」
「そのメンタリティを持ってる時点でもうイケメンじゃないのよ。ヴィジュがどんなに強かろうと、心に化け物を飼ってる人はイケメンじゃないの」
アティの冷たいツッコミに、エマリーが身を乗り出してくる。
「ねーお兄ちゃん! ご飯食べ終わったらどっか遊びに行こうよ!」
「ダメよ。お兄ちゃん疲れてるんだから、休ませてあげなさい」
「いいよいいよ。僕もみんなと遊びたいし! エマちゃん、スーちゃん、どこ行きたい?」
「ディスティニーランド!」
「USJJ!!」
対照的な答えが両側からあっさり飛んでくる。ユーリは悪びれもなく答えた。
「分かった! プライベートジェット使おう!」
「分かるな! プライベートジェット使うな! 金銭感覚麻痺するから、そういうのやめてって言ってるでしょ!」
「なんで~? 僕の妹って時点で、人生ヌルゲー確定なんだから、別にいいじゃん」
「そういうヤバい倫理が身につくからやめてって言ってるのよ!」
そんな言い合いの最中、リビングのドアががちゃりと開いた。
「ラウンドGO……なんてどうかな? それなら馬車ですぐのところあるし……」
部屋に入って来たシェスカが、控えめに提案する。ラウンドGOとは、ボーリング、アミューズメント、カラオケ、スポーツなどを提供する、地域密着の屋内型複合レジャー施設だ。某ネズミのテーマパークやカンサイ随一のテーマパークからしたら見劣りするが、少なくとも現実的な選択肢ではあるだろう。
「いいねラウゴー! 久々に行きたい!」
エマリーがパッと明るい声を上げる。
「……スー運動嫌い。ゲーセンなら行きたい」
「エマも行きたーい! プリ撮ろう!」
ユーリはうれしそうに頷くと、シェスカへと笑顔を向けた。
「じゃあ決まりだね! シェスカちゃんも来てくれるんだよね?」
「え、ええ……行ってよければ……」
「悪いわけないよ。もちろん一緒に行こう!」
アティが横から口を挟む。
「悪いわね、疲れてるのに。スーエマシェスカ、アンタらわがまま言わないで、ちゃんとお兄ちゃんの言う事きくのよ」
「「「はーい」」」
「そしたら忘れないうちに、お小遣いだけ渡しておこうかな」
ユーリは財布を取り出すや否や、分厚い札束を取り出す。
「はい、ひとり三百万円」
「やっぱり何一つ言う事聞かないで!」
アティの制止の叫びが響く。
「ママ、ウニ好きでしょ? パパの一個食べていいよ」
「ありがとー♡ じゃあママのイクラひとつあげちゃう」
仲良く寿司を交換し合う両親を横目に、アティが半ば泣きそうに呟く。
「義兄さんも義姉さんも何か言ってよ! 化け物に育ってるわよ、お宅の息子さん!」
「無理よ。言うこと聞くような子だったら、年商8兆ルードのクランなんて作らないもの」
「俺たちはとんでもない化け物を育ててしまった。そいつを止めるのはもう無理だ。殺すしかない」
「諦めるなああぁぁぁ!」
家族のドタバタ劇を背に、昼食を終えたユーリは、妹たちを引き連れてラウンドGOへ遊びに出かけるのだった。
■■■
昼食を終えると、妹たちは「着替えてくる!」と元気よく階段を駆け上がっていき、ユーリは玄関で待つことになった。
「お待たせー! ねえ見て、お洋服可愛いでしょ!」
勢いよく扉が開き、エマリーが文字通り飛び出してきた。ヘソ出しのレースアップギャザーTシャツの上にピンクのファーアウターを羽織り、ラップスカート風のミニスカートを合わせた、まさに“小悪魔系おしゃれガール”といういで立ちだ。
そのすぐ後ろから、三つ子コーデ──たぶん、その表現で合っているはずだ。双子コーデじゃないし──に身を包んだスールとシェスカも現れる。
「うわっ、めっちゃSejuu系で大人っぽー! そんな格好するようになったんだね! めっちゃ可愛いし似合ってるよ!」
「でしょー! お兄ちゃんが帰ってくるから、ママに頼んで買ってもらったんだ!」
「オシャレしてくれたんだねぇ~。嬉しいなぁ」
駆け寄って抱きついてきたエマリーを抱き返していると、彼女がケータイで自撮りを始めた。
「ねえ、お写真撮ろう! お兄ちゃんとツーショット!」
「いいよ~……って、それ、僕のお古のケータイじゃん。まだ使ってたんだ?」
ユーリたちは普通に使っているが、ケータイは庶民には手の届かない高級魔導具である。なので、ユーリはケータイを買い替えるたびに家族や知人にあげるようにしていた。
エマリーの小さな手に収まっていたのは、そうしてケータイ配りお兄さんとしてあげたもののひとつだったのだ。
「そうだよ~。お兄ちゃんから貰ったやつだから、嬉しくって。いまも大事に使ってるの~♡」
「そ、そんな真っすぐメロいこと言われたら、メロ過ぎてメロいよ! でもそれ、もうだいぶ古いから、新しいの買ってあげるよ?」
「いいのいいの! だって、ほら……」
──ユーリの気のせいだろうか。
無邪気なその瞳に、一抹の大人げが蠢動したように見えたのは。
「そのほうが、いろいろ都合良いし♡」
「えーっと、それは、どういう……?」
「アーちゃん、シェスカちゃんは呼ばなくていいの?」
「宿題が一区切りしたら来るって。メール来てたわ」
アティはそう言ってケータイを見せる。安心したように胸を撫でおろすユーリ。
「よ、良かった。本当に宿題が忙しいからなんだよね? ……僕がイケメンじゃないからじゃないよね?」
「そのメンタリティを持ってる時点でもうイケメンじゃないのよ。ヴィジュがどんなに強かろうと、心に化け物を飼ってる人はイケメンじゃないの」
アティの冷たいツッコミに、エマリーが身を乗り出してくる。
「ねーお兄ちゃん! ご飯食べ終わったらどっか遊びに行こうよ!」
「ダメよ。お兄ちゃん疲れてるんだから、休ませてあげなさい」
「いいよいいよ。僕もみんなと遊びたいし! エマちゃん、スーちゃん、どこ行きたい?」
「ディスティニーランド!」
「USJJ!!」
対照的な答えが両側からあっさり飛んでくる。ユーリは悪びれもなく答えた。
「分かった! プライベートジェット使おう!」
「分かるな! プライベートジェット使うな! 金銭感覚麻痺するから、そういうのやめてって言ってるでしょ!」
「なんで~? 僕の妹って時点で、人生ヌルゲー確定なんだから、別にいいじゃん」
「そういうヤバい倫理が身につくからやめてって言ってるのよ!」
そんな言い合いの最中、リビングのドアががちゃりと開いた。
「ラウンドGO……なんてどうかな? それなら馬車ですぐのところあるし……」
部屋に入って来たシェスカが、控えめに提案する。ラウンドGOとは、ボーリング、アミューズメント、カラオケ、スポーツなどを提供する、地域密着の屋内型複合レジャー施設だ。某ネズミのテーマパークやカンサイ随一のテーマパークからしたら見劣りするが、少なくとも現実的な選択肢ではあるだろう。
「いいねラウゴー! 久々に行きたい!」
エマリーがパッと明るい声を上げる。
「……スー運動嫌い。ゲーセンなら行きたい」
「エマも行きたーい! プリ撮ろう!」
ユーリはうれしそうに頷くと、シェスカへと笑顔を向けた。
「じゃあ決まりだね! シェスカちゃんも来てくれるんだよね?」
「え、ええ……行ってよければ……」
「悪いわけないよ。もちろん一緒に行こう!」
アティが横から口を挟む。
「悪いわね、疲れてるのに。スーエマシェスカ、アンタらわがまま言わないで、ちゃんとお兄ちゃんの言う事きくのよ」
「「「はーい」」」
「そしたら忘れないうちに、お小遣いだけ渡しておこうかな」
ユーリは財布を取り出すや否や、分厚い札束を取り出す。
「はい、ひとり三百万円」
「やっぱり何一つ言う事聞かないで!」
アティの制止の叫びが響く。
「ママ、ウニ好きでしょ? パパの一個食べていいよ」
「ありがとー♡ じゃあママのイクラひとつあげちゃう」
仲良く寿司を交換し合う両親を横目に、アティが半ば泣きそうに呟く。
「義兄さんも義姉さんも何か言ってよ! 化け物に育ってるわよ、お宅の息子さん!」
「無理よ。言うこと聞くような子だったら、年商8兆ルードのクランなんて作らないもの」
「俺たちはとんでもない化け物を育ててしまった。そいつを止めるのはもう無理だ。殺すしかない」
「諦めるなああぁぁぁ!」
家族のドタバタ劇を背に、昼食を終えたユーリは、妹たちを引き連れてラウンドGOへ遊びに出かけるのだった。
■■■
昼食を終えると、妹たちは「着替えてくる!」と元気よく階段を駆け上がっていき、ユーリは玄関で待つことになった。
「お待たせー! ねえ見て、お洋服可愛いでしょ!」
勢いよく扉が開き、エマリーが文字通り飛び出してきた。ヘソ出しのレースアップギャザーTシャツの上にピンクのファーアウターを羽織り、ラップスカート風のミニスカートを合わせた、まさに“小悪魔系おしゃれガール”といういで立ちだ。
そのすぐ後ろから、三つ子コーデ──たぶん、その表現で合っているはずだ。双子コーデじゃないし──に身を包んだスールとシェスカも現れる。
「うわっ、めっちゃSejuu系で大人っぽー! そんな格好するようになったんだね! めっちゃ可愛いし似合ってるよ!」
「でしょー! お兄ちゃんが帰ってくるから、ママに頼んで買ってもらったんだ!」
「オシャレしてくれたんだねぇ~。嬉しいなぁ」
駆け寄って抱きついてきたエマリーを抱き返していると、彼女がケータイで自撮りを始めた。
「ねえ、お写真撮ろう! お兄ちゃんとツーショット!」
「いいよ~……って、それ、僕のお古のケータイじゃん。まだ使ってたんだ?」
ユーリたちは普通に使っているが、ケータイは庶民には手の届かない高級魔導具である。なので、ユーリはケータイを買い替えるたびに家族や知人にあげるようにしていた。
エマリーの小さな手に収まっていたのは、そうしてケータイ配りお兄さんとしてあげたもののひとつだったのだ。
「そうだよ~。お兄ちゃんから貰ったやつだから、嬉しくって。いまも大事に使ってるの~♡」
「そ、そんな真っすぐメロいこと言われたら、メロ過ぎてメロいよ! でもそれ、もうだいぶ古いから、新しいの買ってあげるよ?」
「いいのいいの! だって、ほら……」
──ユーリの気のせいだろうか。
無邪気なその瞳に、一抹の大人げが蠢動したように見えたのは。
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