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勇者辞めます編
6話 金髪ツインテロリ、茶髪巨乳デカ女 イラストあり
続いて一同が向かったのは、技術開発部だ。
主には武器、防具、魔導具の開発、改造などを行っており、王国や冒険者ギルド、国内外の各商会などにも技術提供もしているため、ワンフロアを丸々使うほどの広大な部署である。
その広大なフロアの各所にある給湯室の、保冷庫の影にて。
「……よし、よし! いけるいけるいける、いける!」
長い金髪をツインテールに括った少女が、ケータイを手になにやらぶつぶつと呟いていた。
「……しゃいッ! いいよーいいよー、勝てるよ勝てる! 勝てる勝てる勝てる!」
そのモニターに表示されているのは、ケータイの通信機能を利用したゲーム画面だ。
どうやら彼女は、業務中にケータイゲームに興じている様子だった。
「こら! エンリエッタさん!」
「……ぴゅい!」
エンリエッタと呼ばれたその少女は、縮こませていた身体をピクリと跳ね上げた。
恐る恐る振り返ってみると、眼鏡をかけた妙齢の女性が、柳眉を逆立てながらこちらを見下していた。
「またこんなところで仕事サボって……ほら、行きますよ!」
「ちょ、ちょちょちょ、待って待って! 待ってください! いま私が抜けたら、みんな死んじゃう~!」
と、襟首を掴まれて給湯室から連れ出されたとき、横手から聞き慣れた声がかかった。
「わ。すごいじゃん、エリちゃん。イベ限の鬼ムズステージ、もう最後まで行ったんだ?」
声の主……ユーリはエンリエッタからケータイを取りあげると、そのままタプタプと操作し、
「はい、勝てたよー」
「わ、わ、わわわ! すごい! すごいすごーい! さすが勇者様です~!」
エンリエッタはケータイを見ながらぴょんぴょんと飛び跳ねる。ふわふわのツインテールがふわふわと揺れ、ついでに控えめな胸も僅かに上下運動をしていた。
彼女の名はエンリエッタ・カルベルダンク。元祖勇者パーティの付与魔法使いだ。
年はユーリたちより三歳ほど年下なのだが、マホと同じく、150センチに満たない身長と、華奢で小柄な身体。そして元祖メンバーの中で一番の幼顔なので、それ以上に若く……いや、幼く見られがちだった。
マホを『十代前半に見えなくもない』と定義づけるとしたら、エンリエッタは『ガチで十代前半に見える』といった印象だ。
その所作や表情の幼さも相まって、ついつい甘やかしてしまうユーリだった。
「はっ! そ、そんなことより……勇者様!」
一通り喜び終わると、エンリエッタはユーリに取りすがり、先ほど自分を叱った女性をビッと指差して、
「聞いてください、勇者様! この人、私に仕事しろって言うんですよ! どう思います!?」
「な、なんてことを…! 君、エリちゃんに仕事なんてできるわけないじゃないか!」
エンリエッタをよしよししながら悪ノリしていると、背後に控えていたセイラとブレイダ、そしてマホがげんなりしたように言う。
「やめてください。パワハラになります」
「んー、どっちかっていうと、モラハラかな」
「ってかエリは普通に仕事しろや」
「ぴゅいぃぃッ!? パワハラ上司が三人もいる!?」
そんな調子で掛け合いを続ける女性陣を尻目に、ユーリは苦笑しながら眼鏡の女性に頭を下げた。
「仕事の邪魔しちゃってごめんね、デペロさん。ちょっとエリちゃんに頼みたいことがあるんで、借りちゃってもいいかな?」
「ええ、大丈夫ですよ……どうせ仕事してませんでしたから」
「はは……じゃあ、仕事してもらうよ。適当な演算魔導具貸してくれる?」
「かしこまりました」
眼鏡の女性、デペロは素早く自分の席に戻ると、黒い板状の石を持って戻って来た。
そして右上の起動ボタンを押すと、フォン、と、石の上にモニターが浮かび上がる。
「どうぞ、お使いください」
「ありがとう」
演算魔導具とは、高度な演算処理を自動的に行う魔導具だ。
一般的な工房にはまだあまり普及していないが、これを用いて魔導具に術式を書き込むのが、『アンペルマン』においての魔導具生成の手段となっている。
デペロからそれを受け取ると、ユーリはエンリエッタに向き直り、
「エリちゃん、ちょっと仕事頼まれてくれる?」
「はいはーい♡ 勇者様の言うことなら、なんなりと~♡」
「……っち!」
というデペロの舌打ちに肝を冷やしつつ、ユーリは懐から黒い宝石を取り出した。
「この魔石で魔導具を作りたいから、魔法を書き込み(プログラミング)して欲しいんだ」
「分っかりました~! わーお。ずいぶん高純度な魔石ですね~。これならいっぱい魔法が入れられそう!」
魔石とは、魔力を帯びた特殊な鉱石だ。これに魔法の術式をプログラミングすることにより、魔導具を生成していく。
「それで、どんな魔法を入れます?」
「ん-っとね、ここに書いてあるやつ、全部」
そう言ってユーリが取り出した紙には、上から下までびっしりと魔法が書かれており、それを見たデペロは顔を引きつらせる。
「ゆ、勇者様。それはさすがに……我々でも半日はかかる量ですよ。それを彼女一人にお願いするのは……」
「分っかりました~! でもそれくらいなら、デバイス使うより自分でやったほうが早いで、やっちゃいますねー!」
「えっ!?」
と、デペロが驚きの声を上げていると、エンリエッタは浮遊魔法で目の前に魔石を浮かび上がらせた。
「んーと、このレシピだと……炎魔法から入れたいんで、マホちゃん、協力お願いしまーす!」
「はいよ」
そう言ってマホが炎魔法の魔法陣を展開すると、エンリエッタはそこに指を伸ばし、
「えーっと。ここは圧縮。こっちとこっちの接続は切って、こっちに繋げるぅ、からのぉ、ここはネガティブプロンプトにしてっと……」
ものすごい速度で、魔法陣を書き換えていった。
その光景に、デペロは信じられないものを見るように目を見張る。
「え、え? ウソでしょ? 対人の魔法を、魔石に付与する仕様に手動で書き換えて……しかもこんなに早く……!?」
「……えーっと、もしかしてデペロちゃん、見るの初めてなの?」
「普段いかに働いていないかが、浮き彫りになりますね……」
ブレイダとセイラがげんなりとそう言って、ユーリも苦笑しながら口を開く。
「エリちゃんの付与魔法は、とんでもなく早くて正確な上に、対象者によってその効力を微調整できたりするんだ。
オーダーメイドエンチャント、って感じかな。
デペロさんは技術畑の人だから、あんまり戦場とかにはいかないんだよね? 大規模戦闘とかにも参加したことないでしょ?」
「え、ええ……まあ」
「そういうときのエリちゃんはすごいよ。すごい速さで戦場を駆け回ってさ、片っ端から味方に付与魔法をかけていくんだ。全滅しかけてる戦線とかでも、エリちゃんのおかげで息を吹き返したりとかするんだよね」
次々と魔石に魔法を吹き込んでいく彼女を見ながら、誇らしげに言葉を付け足した。
「ほんと、エリちゃんがいないと『みんな死んじゃう』っていう状況も、いっぱいあったんだ」
しみじみとそう呟いてから数分後、エンリエッタは魔石を掲げてジャンプする。
「終わりましたぁ~!!」
「お~、ありがとう! おかげで、べンヅ商会の社長さんにいい手土産ができたよ!」
「えへへ~! じゃあいっぱいいい子いい子してくださ~い♡」
「いいよ! いい子いい子いい子~!」
抱き着いてきたエンリエッタの頭を撫でていると、デペロは魔石を取りあげ、デバイスで内部データを読み取った。
「ほ、本当だ。全部ちゃんと入ってるし、この純度で最高のパフォーマンスが発揮できるように、最適化もされてる……!」
「えへへ~! デペロさん、少しは私のこと見直しましたか~!?」
「う、ウソでしょ、しかもこんなに早く……! ちょっと精密検査に掛けてきます!」
「どんだけ信用ないんですかぁ!?」
「それがお前の日頃の勤務態度への信用度なんだよ」
「マ、マホちゃん、活字ばりに温度のないツッコミやめてあげて……」
ユーリは苦笑しながらそう言うが、案の定、エンリエッタは「ひどいですぅ~! 私はただ、仕事中にゲームしてるだけなのにぃ~!」と、嘆きながらぎゅうぎゅうと抱き着いてきて、ユーリは少し焦り始める。
いくら凹凸の少ない身体とはいえ、こんなに強く抱き着かれれば、当たるものは当たるし、彼女の小さな腰もガンガンにユーリの股間に押し付けられているのだ。
見た目が幼い系女子と、公衆の面前でこんなことをしていると、なんだかとってもいけないことをしている気分になってしまう。
いや、人前でこんなに堂々とイチャつくこと自体がそもそもアウトなのだが……ともかく、
「えーっとね、エリちゃん。『準備が整った。行こう』」
「……え? それって……!」
初めは茫洋としていたエンリエッタだが、その意味を理解するにつれ、徐々に幼顔に笑顔を広げていった。
「やったー! ケータイゲームのランキング、軒並み一位取るどー!」
「仕事しろっての」
マホの冷めたツッコミとともに、エンリエッタが仲間に加わった。
■
「ちょっと! 腰引けてるよ、腰! あとほらもっと前出て!」
「は、はい!」
「そっちのあんたは重心意識! 体重をそのまま拳に乗っけるイメージ忘れないよ!」
「うす!」
『アンペルマン』アジト地下のトレーニングジム。
そこに設けられた闘技台の上で、複数人の男が、たったひとりを相手に挑みかかっていた。
男たちはいずれも筋骨隆々とした格闘家である。
『アンペルマン』の中でも指折りの猛者たちだ。
なのだが……。
「はあぁッ!」
「ぐぅむ!」
「せいッ!」
「ぐぼぉ!」
「うおらぁッ!」
「ごぶっ!」
リングの中心にいる人物に、ジャブで、フックで、ハイキックで、あるいは投げ技で、バッサバッサとなぎ倒されていったのだった。
「あっはっはぁ! オラオラどした!? んなもんかぁッ!?」
竜巻のような勢いで猛威を振るうその人物は、茶色い長髪をポニーテールに結わえた女性だ。
180センチに届きそうなほどの高身長と、それに見合う長くしなやかな手足。褐色の肌に伝う爽やかな汗は、彼女の健康的な魅力を際立たせていた。
腹筋は僅かに割れているが、女性的な柔らかさが損なわれることはなく、まさに理想のくびれを体現している。
そして、ブラトップに包まれた大きな双丘は、彼女の激しい動きに合わせてぶるぶると跳ねまわっているのだが、それに対して劣情を抱くことは許されない。
なぜなら、
「どこ見てんだコラァ! 集中しろー!」
「ふげぶぅっ!!」
こうなるからだ。
「あ、はは……相変わらず修羅場~……」
顔面に痛烈な一撃を受けて、リングの外まで吹っ飛んで来た男を見ながら、ユーリは引きつった笑いを浮かべた。
その背後にいるセイラとマホ、そしてブレイダとエンリエッタも、同様になんとも言えない乾いた笑顔を浮かべている。
「あれ、勇者じゃん! それにみんなも! あはは、ここに来るなんて珍しいねー」
一行の姿に気付いた褐色の女性は、快活な笑顔を浮かべながらブンブンと元気よく手を振った。
「お疲れ、ファイフさん。相変わらずフィジカルバグってるねー」
ファイフ・ゴーレムハーツ。元祖勇者メンバーの格闘家(ファイター)だ。
その名が示す通り、彼女は人の皮を被ったゴーレムである。
もちろん例えではあるものの、そうであっても不思議ではないくらい、彼女の一撃は重く、その身体は固く、そして何日でも動き回れる無尽蔵の体力を秘めているのだ。
破城槌の一撃とされるドラゴンの【ブレス】を生身で食らっても、ピンピンと動き回り、怒りに任せてそのドラゴンを何日も追い回し、一撃でぶっ倒したのち、『ん? あの【ブレス】ってやつ? うん、熱かったよ熱かった。ちょっと火傷するかと思ったもん』などとのたまわったときには、「あマジでこの人ゴーレムなんだ。しかもラスボス付近のヤベぇ方のゴーレムなんだ」と、本気で思った。
格闘家や剣士が扱える、生命力操作術の【気】を完全に習得している彼女だからこそ、そういった人間離れした所業が可能であるらしいのだが、いずれにせよ、絶対にケンカをしたくない相手だった。
そんなふうに彼女のプロフィールを述懐しつつ、ユーリはリングに歩み寄ると、
「あのね、ファイフさん。『準備が整った。行こ……』」
「まあいいや! 勇者もちょっとスパーリングやっていきなよ!」
「……ん?」
「討伐部門の連中も強くなってはいるんだけどさー。やっぱりいまいち張り合いがなくて。定期的に強い相手と戦わないと、腕が錆びちゃうよ!」
「……ん? いや、僕そんなに強くないよ。僕ってその、剣で戦う人だから。剣ありきの、あの、ヤツだから……ねえ、やめて! 引っ張らないで!! マジでやだ、マジでやだ! 剣ありきのヤツだから! 剣ありきのヤツだからっ!」
「おお、拳ありき友情(ヤツ)ってかい……あっはっはぁ! やっぱ勇者はいいこと言うね! じゃあ遠慮なくいかせてもらうよ!」
「ちょ、やめて! 急所狙ってこないでえええぇぇぇ!」
ズルズルとリングに引きずり上げられ、容赦なく拳打の応酬を食らい続けるユーリ。
その哀れな姿を何とも言えない表情で眺めながら、マホはブレイダに話しかける。
「……ブレイダさん、助けなくていいの?」
「無理。巻き込まれるの嫌だから♡」
「だよなー」
薄情な会話を繰り広げる傍らで、セイラはケータイを取り出し、鬼のような連射で写真を撮りまくった。
「お前はなにしてんだ?」
「戦っているイケメンを写真に残せと神が仰せなので」
「お前が仕えてる神って中年のドスケベ女神なの?」
「でも実際、戦ってるイケメンは絵になりますねー♡ どうせだったら、上半身裸になってくれればいいのに」
と、エンリエッタが不埒な願望を口にした、そのとき、
「おらぁッ!」
ファイフがユーリの胸倉を掴み、そのまま一本背負いを仕掛けようとするが、
(この勢いで叩きつけられたら、とても痛い!!!)
生命の赤色信号を感じ取ったユーリは、やむを得ず服を引き千切り、無理やりクラッチを切った。
露わになったユーリの分厚い胸板と、シックスパックに割れた腹筋に、女性陣が俄かに騒ぎ出す。
「「「「おぉっ……っ♡」」」」
「……っか!」
セイラの鬼連射の音が響き渡る中、ファイフも一瞬だけ視線を下に下げしまった。
その間隙を見逃すユーリではない。
「どこ見てんのよ……ってね!!」
ユーリは上体を深く沈みこませると、ファイフの顎に目掛けて回し蹴りを放った。
防御。間に合わない。回避。逃げられる角度ではない。
完璧にタイミングをとらえた一撃だった。
そのはずだった。
「……神哭至源流、手・五の型【篝雷電】」
「へ?」
瞬間──。
バァンッ!!
凄まじい轟音が鳴り響き、地震が起きたようジム全体が大きく鳴動した。
衝撃波すらも巻き起こる中、マホは真っ青な顔をして呟く。
「あのバカ……【奥義】使いやがった!」
【奥義】とは、高濃度の【気】を瞬間的に圧縮してから膨張させ、その爆発力を拳打や蹴りに乗せて攻撃に転用する技術だ。
いわば一撃必殺の大技。形あるものを壊すためだけに研ぎすまされた一撃。
無防備の状態でそんな一撃を食らったら、さすがの勇者でも……。
「……ゲホ、ゲッホ……。強いて、ファイフさん、イケメン割れるかと思ったよ」
……生きていた。
ジムの壁にめり込み、口や鼻からダラダラと血を流してはいるものの、息も意識もある様子だった。
「わ、わ……わわわ! ごめん、ごめんごめんごめん! ほんっとごめん!! 反射的に出ちゃった! セイラさん、治癒魔法掛けて、治癒魔法!」
「言わずもがなです!」
ファイフはユーリを壁から引っこ抜いて膝の上に乗せ、すぐさまセイラが治癒魔法をかける。
「ごめんごめんごめん! 大丈夫、勇者!? 目ぇ見える!? 意識ある!? ほんっとごめん! 殺すつもりはなかったの~!」
「……うん。技を食らう直前【勇装龍気】でガードしたから、どうにか平気。死にそうにはなったけど」
言いつつ、震える手でチョーカーに触れ、それが起動していないことに安堵の息を吐く。放出した【勇装龍気)】はほんの少しだったので、チョーカーが反応しなかったようだ。
いや、まあ使わないと死んじゃってたわけだが。
(……それにしても)
治癒魔法による温かな感覚に包まれながら、ユーリはチラリと上を見る。
目の前には、汗を吸って皮膚に吸い付いたブラトップが覆う、豊満な乳房があった。
後頭部では弾力のある健康的な太もも。
そして周囲にはユーリを心配する美女と美少女と美幼女の姿がある。
最高の眺めなんだけどな、死にそうになってなければ……などという益体のないことを考えていると、ファイフが泣きそうになりながら謝罪の言葉を重ねる。
「ごめんね~、勇者! 勇者相手だとうまいこと手加減できなくて……気が付いたときにはぶっ放しちゃってた! わざとじゃないの! 許して~!」
「は、はは……『手加減』ね……」
国内で……いや、世界でも最強と名高い勇者を相手に、『手加減』をしないと練習試合すらもできない。
ファイフとは、そういう女の子なのだ。
しかし。
いや、だからこそ、
「ファイフさん……『準備ができた、行こう』」
仲間にしたい、仲間でいたい、と。
彼女を仲間に引き入れたときのことを思い出しながら、ユーリはその言葉を口にした。
するとファイフは、巨乳から顔を覗かせ、パチクリと数回瞬きすると、
「え、え? そうなの? えぇ~……なに、そういうことなら、早く言ってよ! そしたらスパーリングなんかしないで、準備してたのにさ~!
あっはっはぁ! もぉ~! 昔からそういうとこあるよ勇者!! 気をつけなよね!」
「……………………………………………………うん。ごめん」
いろいろと紆余曲折はあったものの……。
斯くして、
「とりあえず……めっちゃお腹空いたああぁぁ! なんか食べ行こう!」
勇者、ユーリ・ザッカ―フィールド。
「もちろんお供します、勇者様」
聖女、セイラ・エカテリーナ。
「おお、ボクもめっさお腹空いた。なんでもいいから食べにいこうぜ。肉と魚と葉物野菜、あと油モノ以外ならなんでもいけるから」
魔法使い、マホ・マクマホン。
「いや、マホちゃん相変わらず偏食エグい……。それだともやしとスープくらいしか食べられるものないと思うんですけど……」
付与魔法使い、エンリエッタ・カルベルダンク。
「え~。私もパンケーキ食べた後だからなぁ……う~ん、ドラゴン一匹くらいしか食べられないと思うけど、一応お供しますよ、坊ちゃん♪」
剣士、ブレイダ・ケルベリオ。
「あっはっはぁ! いーね! 高たんぱく低脂質低GI、ドラゴン肉最高! なんならいまから狩り行こうよ、勇者!」
格闘家、ファイフ・ゴーレムハーツ。
元祖勇者パーティの六人が、ここに揃ったのだった。
主には武器、防具、魔導具の開発、改造などを行っており、王国や冒険者ギルド、国内外の各商会などにも技術提供もしているため、ワンフロアを丸々使うほどの広大な部署である。
その広大なフロアの各所にある給湯室の、保冷庫の影にて。
「……よし、よし! いけるいけるいける、いける!」
長い金髪をツインテールに括った少女が、ケータイを手になにやらぶつぶつと呟いていた。
「……しゃいッ! いいよーいいよー、勝てるよ勝てる! 勝てる勝てる勝てる!」
そのモニターに表示されているのは、ケータイの通信機能を利用したゲーム画面だ。
どうやら彼女は、業務中にケータイゲームに興じている様子だった。
「こら! エンリエッタさん!」
「……ぴゅい!」
エンリエッタと呼ばれたその少女は、縮こませていた身体をピクリと跳ね上げた。
恐る恐る振り返ってみると、眼鏡をかけた妙齢の女性が、柳眉を逆立てながらこちらを見下していた。
「またこんなところで仕事サボって……ほら、行きますよ!」
「ちょ、ちょちょちょ、待って待って! 待ってください! いま私が抜けたら、みんな死んじゃう~!」
と、襟首を掴まれて給湯室から連れ出されたとき、横手から聞き慣れた声がかかった。
「わ。すごいじゃん、エリちゃん。イベ限の鬼ムズステージ、もう最後まで行ったんだ?」
声の主……ユーリはエンリエッタからケータイを取りあげると、そのままタプタプと操作し、
「はい、勝てたよー」
「わ、わ、わわわ! すごい! すごいすごーい! さすが勇者様です~!」
エンリエッタはケータイを見ながらぴょんぴょんと飛び跳ねる。ふわふわのツインテールがふわふわと揺れ、ついでに控えめな胸も僅かに上下運動をしていた。
彼女の名はエンリエッタ・カルベルダンク。元祖勇者パーティの付与魔法使いだ。
年はユーリたちより三歳ほど年下なのだが、マホと同じく、150センチに満たない身長と、華奢で小柄な身体。そして元祖メンバーの中で一番の幼顔なので、それ以上に若く……いや、幼く見られがちだった。
マホを『十代前半に見えなくもない』と定義づけるとしたら、エンリエッタは『ガチで十代前半に見える』といった印象だ。
その所作や表情の幼さも相まって、ついつい甘やかしてしまうユーリだった。
「はっ! そ、そんなことより……勇者様!」
一通り喜び終わると、エンリエッタはユーリに取りすがり、先ほど自分を叱った女性をビッと指差して、
「聞いてください、勇者様! この人、私に仕事しろって言うんですよ! どう思います!?」
「な、なんてことを…! 君、エリちゃんに仕事なんてできるわけないじゃないか!」
エンリエッタをよしよししながら悪ノリしていると、背後に控えていたセイラとブレイダ、そしてマホがげんなりしたように言う。
「やめてください。パワハラになります」
「んー、どっちかっていうと、モラハラかな」
「ってかエリは普通に仕事しろや」
「ぴゅいぃぃッ!? パワハラ上司が三人もいる!?」
そんな調子で掛け合いを続ける女性陣を尻目に、ユーリは苦笑しながら眼鏡の女性に頭を下げた。
「仕事の邪魔しちゃってごめんね、デペロさん。ちょっとエリちゃんに頼みたいことがあるんで、借りちゃってもいいかな?」
「ええ、大丈夫ですよ……どうせ仕事してませんでしたから」
「はは……じゃあ、仕事してもらうよ。適当な演算魔導具貸してくれる?」
「かしこまりました」
眼鏡の女性、デペロは素早く自分の席に戻ると、黒い板状の石を持って戻って来た。
そして右上の起動ボタンを押すと、フォン、と、石の上にモニターが浮かび上がる。
「どうぞ、お使いください」
「ありがとう」
演算魔導具とは、高度な演算処理を自動的に行う魔導具だ。
一般的な工房にはまだあまり普及していないが、これを用いて魔導具に術式を書き込むのが、『アンペルマン』においての魔導具生成の手段となっている。
デペロからそれを受け取ると、ユーリはエンリエッタに向き直り、
「エリちゃん、ちょっと仕事頼まれてくれる?」
「はいはーい♡ 勇者様の言うことなら、なんなりと~♡」
「……っち!」
というデペロの舌打ちに肝を冷やしつつ、ユーリは懐から黒い宝石を取り出した。
「この魔石で魔導具を作りたいから、魔法を書き込み(プログラミング)して欲しいんだ」
「分っかりました~! わーお。ずいぶん高純度な魔石ですね~。これならいっぱい魔法が入れられそう!」
魔石とは、魔力を帯びた特殊な鉱石だ。これに魔法の術式をプログラミングすることにより、魔導具を生成していく。
「それで、どんな魔法を入れます?」
「ん-っとね、ここに書いてあるやつ、全部」
そう言ってユーリが取り出した紙には、上から下までびっしりと魔法が書かれており、それを見たデペロは顔を引きつらせる。
「ゆ、勇者様。それはさすがに……我々でも半日はかかる量ですよ。それを彼女一人にお願いするのは……」
「分っかりました~! でもそれくらいなら、デバイス使うより自分でやったほうが早いで、やっちゃいますねー!」
「えっ!?」
と、デペロが驚きの声を上げていると、エンリエッタは浮遊魔法で目の前に魔石を浮かび上がらせた。
「んーと、このレシピだと……炎魔法から入れたいんで、マホちゃん、協力お願いしまーす!」
「はいよ」
そう言ってマホが炎魔法の魔法陣を展開すると、エンリエッタはそこに指を伸ばし、
「えーっと。ここは圧縮。こっちとこっちの接続は切って、こっちに繋げるぅ、からのぉ、ここはネガティブプロンプトにしてっと……」
ものすごい速度で、魔法陣を書き換えていった。
その光景に、デペロは信じられないものを見るように目を見張る。
「え、え? ウソでしょ? 対人の魔法を、魔石に付与する仕様に手動で書き換えて……しかもこんなに早く……!?」
「……えーっと、もしかしてデペロちゃん、見るの初めてなの?」
「普段いかに働いていないかが、浮き彫りになりますね……」
ブレイダとセイラがげんなりとそう言って、ユーリも苦笑しながら口を開く。
「エリちゃんの付与魔法は、とんでもなく早くて正確な上に、対象者によってその効力を微調整できたりするんだ。
オーダーメイドエンチャント、って感じかな。
デペロさんは技術畑の人だから、あんまり戦場とかにはいかないんだよね? 大規模戦闘とかにも参加したことないでしょ?」
「え、ええ……まあ」
「そういうときのエリちゃんはすごいよ。すごい速さで戦場を駆け回ってさ、片っ端から味方に付与魔法をかけていくんだ。全滅しかけてる戦線とかでも、エリちゃんのおかげで息を吹き返したりとかするんだよね」
次々と魔石に魔法を吹き込んでいく彼女を見ながら、誇らしげに言葉を付け足した。
「ほんと、エリちゃんがいないと『みんな死んじゃう』っていう状況も、いっぱいあったんだ」
しみじみとそう呟いてから数分後、エンリエッタは魔石を掲げてジャンプする。
「終わりましたぁ~!!」
「お~、ありがとう! おかげで、べンヅ商会の社長さんにいい手土産ができたよ!」
「えへへ~! じゃあいっぱいいい子いい子してくださ~い♡」
「いいよ! いい子いい子いい子~!」
抱き着いてきたエンリエッタの頭を撫でていると、デペロは魔石を取りあげ、デバイスで内部データを読み取った。
「ほ、本当だ。全部ちゃんと入ってるし、この純度で最高のパフォーマンスが発揮できるように、最適化もされてる……!」
「えへへ~! デペロさん、少しは私のこと見直しましたか~!?」
「う、ウソでしょ、しかもこんなに早く……! ちょっと精密検査に掛けてきます!」
「どんだけ信用ないんですかぁ!?」
「それがお前の日頃の勤務態度への信用度なんだよ」
「マ、マホちゃん、活字ばりに温度のないツッコミやめてあげて……」
ユーリは苦笑しながらそう言うが、案の定、エンリエッタは「ひどいですぅ~! 私はただ、仕事中にゲームしてるだけなのにぃ~!」と、嘆きながらぎゅうぎゅうと抱き着いてきて、ユーリは少し焦り始める。
いくら凹凸の少ない身体とはいえ、こんなに強く抱き着かれれば、当たるものは当たるし、彼女の小さな腰もガンガンにユーリの股間に押し付けられているのだ。
見た目が幼い系女子と、公衆の面前でこんなことをしていると、なんだかとってもいけないことをしている気分になってしまう。
いや、人前でこんなに堂々とイチャつくこと自体がそもそもアウトなのだが……ともかく、
「えーっとね、エリちゃん。『準備が整った。行こう』」
「……え? それって……!」
初めは茫洋としていたエンリエッタだが、その意味を理解するにつれ、徐々に幼顔に笑顔を広げていった。
「やったー! ケータイゲームのランキング、軒並み一位取るどー!」
「仕事しろっての」
マホの冷めたツッコミとともに、エンリエッタが仲間に加わった。
■
「ちょっと! 腰引けてるよ、腰! あとほらもっと前出て!」
「は、はい!」
「そっちのあんたは重心意識! 体重をそのまま拳に乗っけるイメージ忘れないよ!」
「うす!」
『アンペルマン』アジト地下のトレーニングジム。
そこに設けられた闘技台の上で、複数人の男が、たったひとりを相手に挑みかかっていた。
男たちはいずれも筋骨隆々とした格闘家である。
『アンペルマン』の中でも指折りの猛者たちだ。
なのだが……。
「はあぁッ!」
「ぐぅむ!」
「せいッ!」
「ぐぼぉ!」
「うおらぁッ!」
「ごぶっ!」
リングの中心にいる人物に、ジャブで、フックで、ハイキックで、あるいは投げ技で、バッサバッサとなぎ倒されていったのだった。
「あっはっはぁ! オラオラどした!? んなもんかぁッ!?」
竜巻のような勢いで猛威を振るうその人物は、茶色い長髪をポニーテールに結わえた女性だ。
180センチに届きそうなほどの高身長と、それに見合う長くしなやかな手足。褐色の肌に伝う爽やかな汗は、彼女の健康的な魅力を際立たせていた。
腹筋は僅かに割れているが、女性的な柔らかさが損なわれることはなく、まさに理想のくびれを体現している。
そして、ブラトップに包まれた大きな双丘は、彼女の激しい動きに合わせてぶるぶると跳ねまわっているのだが、それに対して劣情を抱くことは許されない。
なぜなら、
「どこ見てんだコラァ! 集中しろー!」
「ふげぶぅっ!!」
こうなるからだ。
「あ、はは……相変わらず修羅場~……」
顔面に痛烈な一撃を受けて、リングの外まで吹っ飛んで来た男を見ながら、ユーリは引きつった笑いを浮かべた。
その背後にいるセイラとマホ、そしてブレイダとエンリエッタも、同様になんとも言えない乾いた笑顔を浮かべている。
「あれ、勇者じゃん! それにみんなも! あはは、ここに来るなんて珍しいねー」
一行の姿に気付いた褐色の女性は、快活な笑顔を浮かべながらブンブンと元気よく手を振った。
「お疲れ、ファイフさん。相変わらずフィジカルバグってるねー」
ファイフ・ゴーレムハーツ。元祖勇者メンバーの格闘家(ファイター)だ。
その名が示す通り、彼女は人の皮を被ったゴーレムである。
もちろん例えではあるものの、そうであっても不思議ではないくらい、彼女の一撃は重く、その身体は固く、そして何日でも動き回れる無尽蔵の体力を秘めているのだ。
破城槌の一撃とされるドラゴンの【ブレス】を生身で食らっても、ピンピンと動き回り、怒りに任せてそのドラゴンを何日も追い回し、一撃でぶっ倒したのち、『ん? あの【ブレス】ってやつ? うん、熱かったよ熱かった。ちょっと火傷するかと思ったもん』などとのたまわったときには、「あマジでこの人ゴーレムなんだ。しかもラスボス付近のヤベぇ方のゴーレムなんだ」と、本気で思った。
格闘家や剣士が扱える、生命力操作術の【気】を完全に習得している彼女だからこそ、そういった人間離れした所業が可能であるらしいのだが、いずれにせよ、絶対にケンカをしたくない相手だった。
そんなふうに彼女のプロフィールを述懐しつつ、ユーリはリングに歩み寄ると、
「あのね、ファイフさん。『準備が整った。行こ……』」
「まあいいや! 勇者もちょっとスパーリングやっていきなよ!」
「……ん?」
「討伐部門の連中も強くなってはいるんだけどさー。やっぱりいまいち張り合いがなくて。定期的に強い相手と戦わないと、腕が錆びちゃうよ!」
「……ん? いや、僕そんなに強くないよ。僕ってその、剣で戦う人だから。剣ありきの、あの、ヤツだから……ねえ、やめて! 引っ張らないで!! マジでやだ、マジでやだ! 剣ありきのヤツだから! 剣ありきのヤツだからっ!」
「おお、拳ありき友情(ヤツ)ってかい……あっはっはぁ! やっぱ勇者はいいこと言うね! じゃあ遠慮なくいかせてもらうよ!」
「ちょ、やめて! 急所狙ってこないでえええぇぇぇ!」
ズルズルとリングに引きずり上げられ、容赦なく拳打の応酬を食らい続けるユーリ。
その哀れな姿を何とも言えない表情で眺めながら、マホはブレイダに話しかける。
「……ブレイダさん、助けなくていいの?」
「無理。巻き込まれるの嫌だから♡」
「だよなー」
薄情な会話を繰り広げる傍らで、セイラはケータイを取り出し、鬼のような連射で写真を撮りまくった。
「お前はなにしてんだ?」
「戦っているイケメンを写真に残せと神が仰せなので」
「お前が仕えてる神って中年のドスケベ女神なの?」
「でも実際、戦ってるイケメンは絵になりますねー♡ どうせだったら、上半身裸になってくれればいいのに」
と、エンリエッタが不埒な願望を口にした、そのとき、
「おらぁッ!」
ファイフがユーリの胸倉を掴み、そのまま一本背負いを仕掛けようとするが、
(この勢いで叩きつけられたら、とても痛い!!!)
生命の赤色信号を感じ取ったユーリは、やむを得ず服を引き千切り、無理やりクラッチを切った。
露わになったユーリの分厚い胸板と、シックスパックに割れた腹筋に、女性陣が俄かに騒ぎ出す。
「「「「おぉっ……っ♡」」」」
「……っか!」
セイラの鬼連射の音が響き渡る中、ファイフも一瞬だけ視線を下に下げしまった。
その間隙を見逃すユーリではない。
「どこ見てんのよ……ってね!!」
ユーリは上体を深く沈みこませると、ファイフの顎に目掛けて回し蹴りを放った。
防御。間に合わない。回避。逃げられる角度ではない。
完璧にタイミングをとらえた一撃だった。
そのはずだった。
「……神哭至源流、手・五の型【篝雷電】」
「へ?」
瞬間──。
バァンッ!!
凄まじい轟音が鳴り響き、地震が起きたようジム全体が大きく鳴動した。
衝撃波すらも巻き起こる中、マホは真っ青な顔をして呟く。
「あのバカ……【奥義】使いやがった!」
【奥義】とは、高濃度の【気】を瞬間的に圧縮してから膨張させ、その爆発力を拳打や蹴りに乗せて攻撃に転用する技術だ。
いわば一撃必殺の大技。形あるものを壊すためだけに研ぎすまされた一撃。
無防備の状態でそんな一撃を食らったら、さすがの勇者でも……。
「……ゲホ、ゲッホ……。強いて、ファイフさん、イケメン割れるかと思ったよ」
……生きていた。
ジムの壁にめり込み、口や鼻からダラダラと血を流してはいるものの、息も意識もある様子だった。
「わ、わ……わわわ! ごめん、ごめんごめんごめん! ほんっとごめん!! 反射的に出ちゃった! セイラさん、治癒魔法掛けて、治癒魔法!」
「言わずもがなです!」
ファイフはユーリを壁から引っこ抜いて膝の上に乗せ、すぐさまセイラが治癒魔法をかける。
「ごめんごめんごめん! 大丈夫、勇者!? 目ぇ見える!? 意識ある!? ほんっとごめん! 殺すつもりはなかったの~!」
「……うん。技を食らう直前【勇装龍気】でガードしたから、どうにか平気。死にそうにはなったけど」
言いつつ、震える手でチョーカーに触れ、それが起動していないことに安堵の息を吐く。放出した【勇装龍気)】はほんの少しだったので、チョーカーが反応しなかったようだ。
いや、まあ使わないと死んじゃってたわけだが。
(……それにしても)
治癒魔法による温かな感覚に包まれながら、ユーリはチラリと上を見る。
目の前には、汗を吸って皮膚に吸い付いたブラトップが覆う、豊満な乳房があった。
後頭部では弾力のある健康的な太もも。
そして周囲にはユーリを心配する美女と美少女と美幼女の姿がある。
最高の眺めなんだけどな、死にそうになってなければ……などという益体のないことを考えていると、ファイフが泣きそうになりながら謝罪の言葉を重ねる。
「ごめんね~、勇者! 勇者相手だとうまいこと手加減できなくて……気が付いたときにはぶっ放しちゃってた! わざとじゃないの! 許して~!」
「は、はは……『手加減』ね……」
国内で……いや、世界でも最強と名高い勇者を相手に、『手加減』をしないと練習試合すらもできない。
ファイフとは、そういう女の子なのだ。
しかし。
いや、だからこそ、
「ファイフさん……『準備ができた、行こう』」
仲間にしたい、仲間でいたい、と。
彼女を仲間に引き入れたときのことを思い出しながら、ユーリはその言葉を口にした。
するとファイフは、巨乳から顔を覗かせ、パチクリと数回瞬きすると、
「え、え? そうなの? えぇ~……なに、そういうことなら、早く言ってよ! そしたらスパーリングなんかしないで、準備してたのにさ~!
あっはっはぁ! もぉ~! 昔からそういうとこあるよ勇者!! 気をつけなよね!」
「……………………………………………………うん。ごめん」
いろいろと紆余曲折はあったものの……。
斯くして、
「とりあえず……めっちゃお腹空いたああぁぁ! なんか食べ行こう!」
勇者、ユーリ・ザッカ―フィールド。
「もちろんお供します、勇者様」
聖女、セイラ・エカテリーナ。
「おお、ボクもめっさお腹空いた。なんでもいいから食べにいこうぜ。肉と魚と葉物野菜、あと油モノ以外ならなんでもいけるから」
魔法使い、マホ・マクマホン。
「いや、マホちゃん相変わらず偏食エグい……。それだともやしとスープくらいしか食べられるものないと思うんですけど……」
付与魔法使い、エンリエッタ・カルベルダンク。
「え~。私もパンケーキ食べた後だからなぁ……う~ん、ドラゴン一匹くらいしか食べられないと思うけど、一応お供しますよ、坊ちゃん♪」
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