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勇者辞めます編
10話 勇者(後編) イラストあり
「……あー痛っ。いたたー……。あぁ~。またひどいこといっぱい言っちゃったよ~。めっちゃ病む~~~。
しかもさ~、シークエンスさんキレ芸うますぎなんだもん。こっちも思わず力は入っちゃって、ちょっと力込めて蹴っちゃったよぉ~……。マジ可哀そう。追加でボーナスあげよ……いたた」
大講堂から退出した一同は、長い廊下を歩き進み、裏口へと向かっていた。
その先頭を行くユーリに、マホはため息を吐きながら、
「……あそこまでする必要なかったと思うぜ? 確かにみんなブチ切れてはいたけどよ、ちょっと時間が経って冷静になれば、やっぱりアレなんかおかしくね? ってなるとも思うし」
「感情は時間の経過とともに消退する。でも事実はなにがあっても変わらないし、議事録も残る。ああいう公の場で、僕がひどいことしたって事実を作っておけば、あの場に居なかったみんなも、僕を嫌いになりやすいでしょ……いたた」
「……それで、この後はどうなさるのですか?」
感情を押し殺すようにセイラがそう訊ねると、ユーリはケータイに目を落とし、
「痛い、いたた……ん~。まあ特に問題なく辞められたから、予定通りかな。帝国のあの人に呼ばれてるから、みんなで行こう」
「帝国のあの人って……ああ、アイツか……!」
そう言うファイフの顔に怒りが浮かぶ。彼女ほどあからさまではないにしろ、一同の表情にも同じような感情が宿っていった。
帝国のあの人物。
彼の顔を思い浮かべるのに、怒りと殺意がセットにならないことはなかった。
ファイフは荒々しい口調で言う。
「毎回思うんだけどさ、なんであいつわざわざ勇者を呼びつけるわけ? 念話かリモートで済むような用件のときとかもあるしさ!」
「なんだかんだ臆病な人だからね。あの人にとっての大事な報告は、直接聞いておきたいんだよ。
あとは、王国最強の勇者が、帝国のいち大臣にわざわざ会いに来た……っていう事実が欲しいんだろうね。それだけで他の大臣や宰相からの見る目が変わってくるからさ……いたた」
「は、くだらなっ。そんなことのために利用すんなっつーの!」
「そーだそーだ! ねえ勇者様、別に行かなくても良くないですか? もう勇者も辞めたわけですし……」
と、エンリエッタも加わって不満を垂れるが、ユーリは苦笑しながら肩をすくめ、
「そういうわけにはいかないよ。勇者を辞めるって言ったって、きちんとやることはやらないといけない……。
じゃないと、残ったみんなに迷惑がかかっちゃうでしょ? いたた……」
「いやどんだけ痛がんだよお前。さっさとセイラに治癒魔法かけてもらっ……」
そう言いながらユーリの前に回り込んだマホは、「あっ……」と声を上げて目を逸らした。
……ユーリは、
「ぐす……ひく……あー……。痛い。痛くて涙……ひぐ。涙出てきた。あー、マジ痛い。ぐす、痛すぎ」
──ユーリは、泣いていた。
碧眼から大粒の波を流し、嗚咽をかみ殺すようにして、泣いていたのだ。
「違うよマホちゃん。ぐす……これ、痛くて泣いてるだけだから。別に、ひっく、悲しいとか、つ、辛いとかじゃないから……うぅ……すぐ、泣き止むから……」
「……バカ勇者」
マホは切ない表情を浮かべ、それが一同にも伝播していく。
ユーリのメンタルは、そこまで強くはない。
クランメンバーの前では優しく頼もしく振舞ってはいるものの、それは肩書通りの振る舞いをするため、背伸びしているだけに過ぎない。
ふざけて子供のような振る舞いをしているときのほうが、素の彼に近いのだ。
勇者で在り続けるため、皆の期待に応えるため、必死で大人の振りをしようとしている子ども。
クランメンバーはどうか知れないが、彼を良く知る元祖メンバーは、ユーリにそのような印象を抱いていた。
そして『アンペルマン』のことを誰よりも大事に思っているのは、ユーリだ。
ユーリが作った組織であり、大事な戦友たちの居場所であり、帰るべき家でもある。
それを、あんなひどい辞め方をすることになってしまったのだ。
その心中は、察するに余りあるものがあった。
子どもだったら、きっと泣いてしまうだろう。
「……偉いですよ、坊ちゃん。最後の最後まで皆のことを考えてあげられて、とても立派です」
しんみりとした空気の中、ブレイダがユーリへと歩み寄り、
「だからブレイダが、いっぱいいい子いい子してあげますね~♡」
と、いきなりユーリの顔をかき抱いて、自身の深い谷間へと押し付けた。
「ぶわっ! ちょ、いきなりなにす……ぐむぅ!?」
豊満で柔らかな乳房が顔全体に押し付けられ、喋ることすらままならない。そしてぶるぶると胸が揺れることで、その先端の見えてはいけないものがチラチラと視界に入ってしまう。
そして、そうこうしているうちに、
「……ブレイダさん。そういった役割は、第一秘書にして聖女である私がやるべきかと」
セイラがユーリの肩にぴたりと張り付き、同じように胸を押し当ててきたのだ。さらには左右に身体を揺らし、その膨らみをぐにぐにと押し付けてこられたので、着衣の上からでも柔らかさと温かさが生々しく伝わってきてしまう。
「ちょ、ちょっと! セイラさんまでなにして……おぉう!」
ドン! と勢いよく反対側の肩に抱き着いてきたのはファイフだ。彼女も弾力のある健康的な胸を押し付け、ユーリの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「勇者! あんた偉い、偉いよ! こんな状況になっても、部下をそんなに思ってあげてさ! 人の上に立つ人間ってのは、あんたみたいなことを言うんだよ!!」
いや違うもん勃ちそうなんだけど!? などと思っていると、今度は背後から温かな感触が押し当てられる。
「わ、わたし! 他の人ほど大きくないけど……こうやって、こぅ、寄せて上げればどうにかなるので! あとマホちゃんのよりはあるので!」
「殺すぞテメエ。ボクのほうがちったぁあるわ。なあ勇者、そうだよな!?」
そんな口論を繰り広げつつ、エンリエッタとマホも背中にぴっとりと引っ付いてきた。確かにふたりとも控えめな膨らみではあるのだが、それだけに形がはっきりと分かり、巨乳とは違った趣の興奮を誘う。
ともかくユーリは、超爆乳に顔を埋め、左右から巨乳に挟まれ、背後からはちっぱいを押し付けられるという、カオスな事態が巻き起こってしまったのだった。
「神様ありがとう……じゃなくて! みんな悪ノリが過ぎるて! こんなん誰かに見られたら……」
ブレイダの谷間から顔を上げて生還すると、ユーリはそう言いかけて……、
「いや、まあ、そっか……別にもう、誰に見られても困るわけじゃないのか」
「そうですよ~。坊ちゃんはもう、なにをするにも、どこに行くのも自由なんです♪ 周りに気兼ねなんてする必要ないんですよ~」
間髪入れずにそう返すと、ブレイダは鼻と鼻とが触れ合いそうなほどの距離で、
「……ただし、なにをするときも、どこに行くときも、私たちと一緒です。
坊ちゃんが楽しいときも、悲しいときも、つらいときも、えっとな気分でいるときだって、ずっと一緒に居させてください」
「………………っ」
優しく諭すような口調で、そう言った。
「私たちはそのために、あなたについてきたのですから、少しは頼ってくださいな」
「ブレイダさん……」
思わず彼女の名を呼ぶと、今度はマホは一層強くユーリを抱きしめ、
「バカ勇者がよ、ひとりで抱え込んでんじゃねえよ。
確かにお前さんは国内最強だし、世界でもトップランカーの勇者の張り合える程度には化け物だ。
でもな、化け物にだって心はある。
そんで、それを無くしちまったら、側(ガワ)だけじゃなくて中身まで化け物になっちまうんだよ。
そうならねえためにボクたちがいるんだ。忘れてんじゃねえよタコ」
するとエンリエッタとファイフも口々に告げる。
「ですです! 勇者様は一人で重いもの持ち過ぎ過ぎなんですよ! ちゃんと私たちにも分けてください!」
「そーだよ! あたし、重いもん持つのだけは得意だからさ! ベンチ1400kg分までなら余裕だよ!」
最後にセイラが優しく顔を包み込み、キスの距離感まで顔を近づけてくると、
「クランを辞めても、勇者を辞めても、たとえ人間を辞めたって、私たちは勇者様と一緒です。
勇者様がそう思ってくださっているのと同じように、私たちもそう思っています。
あなたをひとりには、絶対にさせません。
ですから──どこまででも、いつまででも、ずっと一緒に居させてください」
「……セイラさん、みんな」
ユーリが失ったものは、計り知れないほど大きなものだ。
その事実は揺るぎない。
変えることもできない。
──しかし。
「うん……うん。そうだね。いままでみたいに、そうさせてもらう!」
ユーリの手の中に残ったものも、確かにあるのだ。
そしてそれもまた、計り知れないほど大きなもの──。
勇者パーティの元祖メンバーたち。
数々の死線をともに潜り抜けてきた、これ以上ないほど信頼のおける、大事な仲間達だ。
その事実もまた、変わることはない。
──彼女らと、一緒になら、
「……うん……大丈夫。僕はもう、大丈夫だよ!
君たちと一緒なら……僕はなににだってなれるし、どにでも行けるし、なんだってできる!
勇者なんて肩書が無くても、最強でいられる!
僕たちの冒険は、これからだああぁぁぁ!」
その宣言に、マホとファイフ、そしてエンリエッタは「っしゃらあああい!」と拳を天に突き上げ、ブレイダは「男の子~」と小さく拍手をし、セイラは優しく頷きつつ、どさくさに紛れてちょっとキスをする。
いつも通りのやりとりと、いつも通りのスキンシップ。
勇者を辞めた前でも後でも変わらない、いつも通りの光景。
自分はすべてを失った……と、そんなふうに思っていたのが、バカみたいだ。
ユーリにはこんなに素晴らしい『いつも通り』があるのに。
そしてそれは、これからもずっとずっと続いていくというのに。
「よっしゃ! 気合入った! ちゃっちゃと帝国で用事済ませて、ちゃっちゃと帰ってきて、みんなで飲み会しよ~っ!」
「お、いいね~! でもその前に、汗流してえなあ~。
どうよ? 新アジトに着いたら、このメンツで仲良く風呂に入るってのは?」
と、マホが件の半眼上目遣いで悪戯っぽく提案する。常ならツッコミを入れるところなのだが、気分が良かったので、ついついその言葉に乗っかってしまった。
「いいねいいね~! 僕ん家のお風呂、防水のでっかいソープマットあるからさ、カリちゃむとハンナさんも呼んで、みんなで仲良くぬるぬるの8Pでも……!」
振り返りながらそう言ったユーリは、真っ青な顔をして押し黙る。
なぜなら、
「……ソ、ソープマット……ぬるぬる……は、はちぴー……!」
ユーリの視線の先──長い廊下の先には、ヒィロが佇んでいたのだ。
彼女は真っ赤な顔をしてフルフルと震えつつ、ユーリを見ていた。
──美女と美少女と美幼女五人に抱き着かれている、ユーリを。
ユーリは深く、深く深呼吸をしてから、努めて冷静な声で、
「や、やあ……ヒィロさん。えっと、まだなにか……」
「……た、退任式で渡そうと思っていた、お花と万年筆を持って、き、来たのですが……」
ヒィロはプルプルと震えつつ、持っていた万年筆を振りかぶり、
「け、汚らわしいもの見せるな! この変態がああぁぁァァッ!」
「痛あぁぁァッ!」
スコンッ! と、万年筆がユーリの額に突き刺さる。ヒィロはその姿にくるりと背を向けると、「やりたい放題かああァっ!」と吐き捨てながら逃げ去ってしまった。
ユーリは恐る恐る万年筆を引っこ抜き、ダラダラと血が流れる額を触りながら、
「お、おぉう……さ、最後の最後で、流血騒ぎに……!」
「お前が調子に乗るから悪い」
「それマホちゃんが言うの違くない!? ……まあ、とにかく、」
セイラに治癒魔法をかけてもらいつつ、ユーリは少しだけ目を細め、
「最後の一仕事で、会いに行きますか~。
……帝国の、ガイム大臣のところに」
非友好国の隣国・ルミエ帝国の大臣、ガイム。
彼がユーリを呼びつけた人物であり、彼の国の優秀な外務大臣であり……。
──そして、ユーリが引退することになった、真の理由を作り上げた張本人。
そんな男の元へと、一同は向かって行くのだった。
※※以下、筆者後書き※※
>>>「……た、退任式で渡そうと思っていた、お花と万年筆を持って、き、来たのですが……」
ぶん殴ってから蹴り倒し、罵声を浴びせながら踏みつけた相手に、ちゃんとお花と万年筆を持って来るヒィロさんのお話でした。
改めまして、こんにちは、夕凪五月雨影法師です! アルファポリス様は後書き機能が無さそうですので、こちらのスペースをお借りして後書きとさせていただきます。
今回もご覧いただきありがとうございました!
これにて一編は終了となります。
次の編から更に大きく話が進行し、俺TUEEEEや激アツ展開、そしてえちえちシーンも盛りだくさんでお送りできると思いますので、今後ともよろしくお願いいたします!!
また、ご意見ご指摘、お気に入り登録やいいね、大賞ポイントの投票などもいただけますと、創作をするうえでの非常に大きなモチベーションとなりますので、よろしかったらそちらのほうもお願いいたします……!
……そ、それはそうと、未だに背景と衣装が固定できない……。ブレイダの顔とか胸のサイズもブレブレ……誰か助けてください……(切実)
これが
こうなってしまう
しかもさ~、シークエンスさんキレ芸うますぎなんだもん。こっちも思わず力は入っちゃって、ちょっと力込めて蹴っちゃったよぉ~……。マジ可哀そう。追加でボーナスあげよ……いたた」
大講堂から退出した一同は、長い廊下を歩き進み、裏口へと向かっていた。
その先頭を行くユーリに、マホはため息を吐きながら、
「……あそこまでする必要なかったと思うぜ? 確かにみんなブチ切れてはいたけどよ、ちょっと時間が経って冷静になれば、やっぱりアレなんかおかしくね? ってなるとも思うし」
「感情は時間の経過とともに消退する。でも事実はなにがあっても変わらないし、議事録も残る。ああいう公の場で、僕がひどいことしたって事実を作っておけば、あの場に居なかったみんなも、僕を嫌いになりやすいでしょ……いたた」
「……それで、この後はどうなさるのですか?」
感情を押し殺すようにセイラがそう訊ねると、ユーリはケータイに目を落とし、
「痛い、いたた……ん~。まあ特に問題なく辞められたから、予定通りかな。帝国のあの人に呼ばれてるから、みんなで行こう」
「帝国のあの人って……ああ、アイツか……!」
そう言うファイフの顔に怒りが浮かぶ。彼女ほどあからさまではないにしろ、一同の表情にも同じような感情が宿っていった。
帝国のあの人物。
彼の顔を思い浮かべるのに、怒りと殺意がセットにならないことはなかった。
ファイフは荒々しい口調で言う。
「毎回思うんだけどさ、なんであいつわざわざ勇者を呼びつけるわけ? 念話かリモートで済むような用件のときとかもあるしさ!」
「なんだかんだ臆病な人だからね。あの人にとっての大事な報告は、直接聞いておきたいんだよ。
あとは、王国最強の勇者が、帝国のいち大臣にわざわざ会いに来た……っていう事実が欲しいんだろうね。それだけで他の大臣や宰相からの見る目が変わってくるからさ……いたた」
「は、くだらなっ。そんなことのために利用すんなっつーの!」
「そーだそーだ! ねえ勇者様、別に行かなくても良くないですか? もう勇者も辞めたわけですし……」
と、エンリエッタも加わって不満を垂れるが、ユーリは苦笑しながら肩をすくめ、
「そういうわけにはいかないよ。勇者を辞めるって言ったって、きちんとやることはやらないといけない……。
じゃないと、残ったみんなに迷惑がかかっちゃうでしょ? いたた……」
「いやどんだけ痛がんだよお前。さっさとセイラに治癒魔法かけてもらっ……」
そう言いながらユーリの前に回り込んだマホは、「あっ……」と声を上げて目を逸らした。
……ユーリは、
「ぐす……ひく……あー……。痛い。痛くて涙……ひぐ。涙出てきた。あー、マジ痛い。ぐす、痛すぎ」
──ユーリは、泣いていた。
碧眼から大粒の波を流し、嗚咽をかみ殺すようにして、泣いていたのだ。
「違うよマホちゃん。ぐす……これ、痛くて泣いてるだけだから。別に、ひっく、悲しいとか、つ、辛いとかじゃないから……うぅ……すぐ、泣き止むから……」
「……バカ勇者」
マホは切ない表情を浮かべ、それが一同にも伝播していく。
ユーリのメンタルは、そこまで強くはない。
クランメンバーの前では優しく頼もしく振舞ってはいるものの、それは肩書通りの振る舞いをするため、背伸びしているだけに過ぎない。
ふざけて子供のような振る舞いをしているときのほうが、素の彼に近いのだ。
勇者で在り続けるため、皆の期待に応えるため、必死で大人の振りをしようとしている子ども。
クランメンバーはどうか知れないが、彼を良く知る元祖メンバーは、ユーリにそのような印象を抱いていた。
そして『アンペルマン』のことを誰よりも大事に思っているのは、ユーリだ。
ユーリが作った組織であり、大事な戦友たちの居場所であり、帰るべき家でもある。
それを、あんなひどい辞め方をすることになってしまったのだ。
その心中は、察するに余りあるものがあった。
子どもだったら、きっと泣いてしまうだろう。
「……偉いですよ、坊ちゃん。最後の最後まで皆のことを考えてあげられて、とても立派です」
しんみりとした空気の中、ブレイダがユーリへと歩み寄り、
「だからブレイダが、いっぱいいい子いい子してあげますね~♡」
と、いきなりユーリの顔をかき抱いて、自身の深い谷間へと押し付けた。
「ぶわっ! ちょ、いきなりなにす……ぐむぅ!?」
豊満で柔らかな乳房が顔全体に押し付けられ、喋ることすらままならない。そしてぶるぶると胸が揺れることで、その先端の見えてはいけないものがチラチラと視界に入ってしまう。
そして、そうこうしているうちに、
「……ブレイダさん。そういった役割は、第一秘書にして聖女である私がやるべきかと」
セイラがユーリの肩にぴたりと張り付き、同じように胸を押し当ててきたのだ。さらには左右に身体を揺らし、その膨らみをぐにぐにと押し付けてこられたので、着衣の上からでも柔らかさと温かさが生々しく伝わってきてしまう。
「ちょ、ちょっと! セイラさんまでなにして……おぉう!」
ドン! と勢いよく反対側の肩に抱き着いてきたのはファイフだ。彼女も弾力のある健康的な胸を押し付け、ユーリの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「勇者! あんた偉い、偉いよ! こんな状況になっても、部下をそんなに思ってあげてさ! 人の上に立つ人間ってのは、あんたみたいなことを言うんだよ!!」
いや違うもん勃ちそうなんだけど!? などと思っていると、今度は背後から温かな感触が押し当てられる。
「わ、わたし! 他の人ほど大きくないけど……こうやって、こぅ、寄せて上げればどうにかなるので! あとマホちゃんのよりはあるので!」
「殺すぞテメエ。ボクのほうがちったぁあるわ。なあ勇者、そうだよな!?」
そんな口論を繰り広げつつ、エンリエッタとマホも背中にぴっとりと引っ付いてきた。確かにふたりとも控えめな膨らみではあるのだが、それだけに形がはっきりと分かり、巨乳とは違った趣の興奮を誘う。
ともかくユーリは、超爆乳に顔を埋め、左右から巨乳に挟まれ、背後からはちっぱいを押し付けられるという、カオスな事態が巻き起こってしまったのだった。
「神様ありがとう……じゃなくて! みんな悪ノリが過ぎるて! こんなん誰かに見られたら……」
ブレイダの谷間から顔を上げて生還すると、ユーリはそう言いかけて……、
「いや、まあ、そっか……別にもう、誰に見られても困るわけじゃないのか」
「そうですよ~。坊ちゃんはもう、なにをするにも、どこに行くのも自由なんです♪ 周りに気兼ねなんてする必要ないんですよ~」
間髪入れずにそう返すと、ブレイダは鼻と鼻とが触れ合いそうなほどの距離で、
「……ただし、なにをするときも、どこに行くときも、私たちと一緒です。
坊ちゃんが楽しいときも、悲しいときも、つらいときも、えっとな気分でいるときだって、ずっと一緒に居させてください」
「………………っ」
優しく諭すような口調で、そう言った。
「私たちはそのために、あなたについてきたのですから、少しは頼ってくださいな」
「ブレイダさん……」
思わず彼女の名を呼ぶと、今度はマホは一層強くユーリを抱きしめ、
「バカ勇者がよ、ひとりで抱え込んでんじゃねえよ。
確かにお前さんは国内最強だし、世界でもトップランカーの勇者の張り合える程度には化け物だ。
でもな、化け物にだって心はある。
そんで、それを無くしちまったら、側(ガワ)だけじゃなくて中身まで化け物になっちまうんだよ。
そうならねえためにボクたちがいるんだ。忘れてんじゃねえよタコ」
するとエンリエッタとファイフも口々に告げる。
「ですです! 勇者様は一人で重いもの持ち過ぎ過ぎなんですよ! ちゃんと私たちにも分けてください!」
「そーだよ! あたし、重いもん持つのだけは得意だからさ! ベンチ1400kg分までなら余裕だよ!」
最後にセイラが優しく顔を包み込み、キスの距離感まで顔を近づけてくると、
「クランを辞めても、勇者を辞めても、たとえ人間を辞めたって、私たちは勇者様と一緒です。
勇者様がそう思ってくださっているのと同じように、私たちもそう思っています。
あなたをひとりには、絶対にさせません。
ですから──どこまででも、いつまででも、ずっと一緒に居させてください」
「……セイラさん、みんな」
ユーリが失ったものは、計り知れないほど大きなものだ。
その事実は揺るぎない。
変えることもできない。
──しかし。
「うん……うん。そうだね。いままでみたいに、そうさせてもらう!」
ユーリの手の中に残ったものも、確かにあるのだ。
そしてそれもまた、計り知れないほど大きなもの──。
勇者パーティの元祖メンバーたち。
数々の死線をともに潜り抜けてきた、これ以上ないほど信頼のおける、大事な仲間達だ。
その事実もまた、変わることはない。
──彼女らと、一緒になら、
「……うん……大丈夫。僕はもう、大丈夫だよ!
君たちと一緒なら……僕はなににだってなれるし、どにでも行けるし、なんだってできる!
勇者なんて肩書が無くても、最強でいられる!
僕たちの冒険は、これからだああぁぁぁ!」
その宣言に、マホとファイフ、そしてエンリエッタは「っしゃらあああい!」と拳を天に突き上げ、ブレイダは「男の子~」と小さく拍手をし、セイラは優しく頷きつつ、どさくさに紛れてちょっとキスをする。
いつも通りのやりとりと、いつも通りのスキンシップ。
勇者を辞めた前でも後でも変わらない、いつも通りの光景。
自分はすべてを失った……と、そんなふうに思っていたのが、バカみたいだ。
ユーリにはこんなに素晴らしい『いつも通り』があるのに。
そしてそれは、これからもずっとずっと続いていくというのに。
「よっしゃ! 気合入った! ちゃっちゃと帝国で用事済ませて、ちゃっちゃと帰ってきて、みんなで飲み会しよ~っ!」
「お、いいね~! でもその前に、汗流してえなあ~。
どうよ? 新アジトに着いたら、このメンツで仲良く風呂に入るってのは?」
と、マホが件の半眼上目遣いで悪戯っぽく提案する。常ならツッコミを入れるところなのだが、気分が良かったので、ついついその言葉に乗っかってしまった。
「いいねいいね~! 僕ん家のお風呂、防水のでっかいソープマットあるからさ、カリちゃむとハンナさんも呼んで、みんなで仲良くぬるぬるの8Pでも……!」
振り返りながらそう言ったユーリは、真っ青な顔をして押し黙る。
なぜなら、
「……ソ、ソープマット……ぬるぬる……は、はちぴー……!」
ユーリの視線の先──長い廊下の先には、ヒィロが佇んでいたのだ。
彼女は真っ赤な顔をしてフルフルと震えつつ、ユーリを見ていた。
──美女と美少女と美幼女五人に抱き着かれている、ユーリを。
ユーリは深く、深く深呼吸をしてから、努めて冷静な声で、
「や、やあ……ヒィロさん。えっと、まだなにか……」
「……た、退任式で渡そうと思っていた、お花と万年筆を持って、き、来たのですが……」
ヒィロはプルプルと震えつつ、持っていた万年筆を振りかぶり、
「け、汚らわしいもの見せるな! この変態がああぁぁァァッ!」
「痛あぁぁァッ!」
スコンッ! と、万年筆がユーリの額に突き刺さる。ヒィロはその姿にくるりと背を向けると、「やりたい放題かああァっ!」と吐き捨てながら逃げ去ってしまった。
ユーリは恐る恐る万年筆を引っこ抜き、ダラダラと血が流れる額を触りながら、
「お、おぉう……さ、最後の最後で、流血騒ぎに……!」
「お前が調子に乗るから悪い」
「それマホちゃんが言うの違くない!? ……まあ、とにかく、」
セイラに治癒魔法をかけてもらいつつ、ユーリは少しだけ目を細め、
「最後の一仕事で、会いに行きますか~。
……帝国の、ガイム大臣のところに」
非友好国の隣国・ルミエ帝国の大臣、ガイム。
彼がユーリを呼びつけた人物であり、彼の国の優秀な外務大臣であり……。
──そして、ユーリが引退することになった、真の理由を作り上げた張本人。
そんな男の元へと、一同は向かって行くのだった。
※※以下、筆者後書き※※
>>>「……た、退任式で渡そうと思っていた、お花と万年筆を持って、き、来たのですが……」
ぶん殴ってから蹴り倒し、罵声を浴びせながら踏みつけた相手に、ちゃんとお花と万年筆を持って来るヒィロさんのお話でした。
改めまして、こんにちは、夕凪五月雨影法師です! アルファポリス様は後書き機能が無さそうですので、こちらのスペースをお借りして後書きとさせていただきます。
今回もご覧いただきありがとうございました!
これにて一編は終了となります。
次の編から更に大きく話が進行し、俺TUEEEEや激アツ展開、そしてえちえちシーンも盛りだくさんでお送りできると思いますので、今後ともよろしくお願いいたします!!
また、ご意見ご指摘、お気に入り登録やいいね、大賞ポイントの投票などもいただけますと、創作をするうえでの非常に大きなモチベーションとなりますので、よろしかったらそちらのほうもお願いいたします……!
……そ、それはそうと、未だに背景と衣装が固定できない……。ブレイダの顔とか胸のサイズもブレブレ……誰か助けてください……(切実)
これが
こうなってしまう
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朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
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ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。






