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勇者辞めますの真相編
13話 高度7000メートルおっぱい イラストあり
「仕事してんねえ。『アンペルマン』に入り込んでるスパイ」
「そんでシゴデキだなぁ、スパイ」
「え、スパイ!?」
帰りの飛空艇内。
飛空艇の運転をするマホ。助手席でそのサポートをするユーリ。そして彼の膝の上に乗るエンリエッタは、そんな会話に興じていた。
ちなみに、エンリエッタがユーリの膝に乗っているのは、飛空艇に乗り込む際、ユーリが「ヘルデンくん羨ましかったなー。女の子二人も膝の上に乗せてさ。僕もあんな老後送りたいなー」などとのたまわったところ、エンリエッタが「老後と言わずに今乗りまーす♡」と、元気よく膝の上に飛び乗り、ユーリは「計算通り……」とほくそ笑んだのが……。
まあそれはともかく。
「……えっと、そんな身近なところまで入りこんでるもんなんですか、スパイって」
「そりゃいるよ。ってか僕たちだって同じことしてるし。帝国の主要クランや王城、国賓が集まりやすいレストランとかホテルに、別班の人たちを潜り込ませてるでしょ?」
勇者直属の隠密機動部隊。通称『別班』。
彼らは王国や帝国の主要施設や団体に潜り込み、表向きには一般職に従事しながら、ユーリへと情報を送り続けているのだ。
が、敵国や競合他社もそれは然り。『アンペルマン』の中にも、そういったスパイが潜り込んでいるのだ。
「それはそうですけど……でも、そんな中枢まで来てるなんて……」
「ガイムのたぬきジジイがほざいてたことは、うちの幹部連中しか知りえねえ情報だった。ってことはつまり、そういうこったろ?」
エンリエッタの声にそう答えてから、マホはチラリとユーリを見つつ、
「でもさぁ、例えばめちゃくちゃ身近にいるやつが裏切り者だったら……お前ならどうするよ、勇者?」
「…………」
その言葉に、ユーリはやや意味深な間を溜めつつ、顎に手を添えて、
「んー、まあ泳がせてる部分もあるから、そんなに深刻な問題ではないんだけど……まあそうだねえ。どうしようかな~」
ユーリはチラリとマホを見てから、少しシリアスな表情を作り、
「……ところでマホちゃん。君は確か、帝国の魔法大学とも交流があったね?」
「ああ。いまでもちょいちょい講義に行くし、名誉顧問として籍を置いてるところもあるぞ」
「そうかい……」
ユーリはひどく物憂げな表情で、それを言った。
「残念だよマホちゃん。まさか君が裏切り者……。帝国のスパイだったなんてね……!」
「バカ言え。ボクはお前らを裏切ってなんていねえ。
──ボクは最初から、帝国側の人間だったのさ」
「…………」
「…………」
そのまましばし、ふたりは顔を突き合わせてから……。
「うわ! うわうわうわ! ぽいぽい! めっちゃそれっぽい! めっちゃ裏切った瞬間の人っぽいよ!」
「な! な! ボクもなんか言ってて、うあああってなったもん! あー、お前裏切ったとき、ボクこれ言お~」
「えー! 私も言いたい言いたい! んっと、んーっと……ふっふっふっ……最初から私は、帝国側の人間だったのでちゅよっ!」
「噛んでる噛んでる」
「赤ちゃんスパイすんな」
「赤ちゃんにスパイはちょっと無理かな~」
「できますよぉ~!」
「…………」
そんなバカ話に興じる三人を、セイラは微笑ましい気持ちで……。
そして、心苦しく思いながら、見ていた。
裏切り。
セイラがユーリに対して行おうとしていることは、ある種そういうことだ。
あの優しいユーリの気持ちを、無碍にしなくてはいけない。
納得をしていることではある。
皆の賛同を得ていることでもある。
しかし、決行の日が近づいてくるにつれ、セイラは思ってしまうのだ。
果たしてこれで良いのか……と。
「……いいんだよ、セイラさん。あなたはなにも間違ってない」
「……え?」
ブレイダのその声に振り返ると、ブレイダとファイフが、酒盛りをしながらセイラに微笑みかけていた。
「えっと、いま私、声に出して……」
「ないけど、それくらい分かるよ~。顔に大きく書いてあるもん」
「あっはっはぁ! しかも結構な太字でねえ~。酔っ払いにも分かっちゃうくらいだから、相当なもんだよ?」
やや酔眼となった目をユーリに放りながら、ファイフはハイボールを軽く煽り、
「まあさ、あたしは脳筋だから、ほんとに難しいことは分んないけど……たぶん勇者はさ、そういうセイラさんの葛藤も混みで、ちゃんと受け入れてくれるんじゃないかな? 勇者って昔からそういうヤツじゃん。
そういうのは、あたしらよりも付き合いの長いセイラさんのほうが分かってるでしょ?」
「それは、そうなのですが……」
「それにさ♪」
ブレイダはそう言って、勢いよくセイラへと抱き着いた。豊満な胸同士がぶつかり合い、ぶるん! と大きく揺れ動く。
「一人で抱え込まないで、って……さっきセイラさんが、坊ちゃんにそう言ったじゃない? 私たちも同じ気持ちだよ。
そうするってことは、ここにいるみんなと、カリちゃむとハンナさん……全員で決めたことでしょ?
だからさ、あなたひとりが抱え込まないで欲しいな」
「ブレイダさん、ファイフさん……」
二人のその言葉に、セイラは一度目を閉じてから、
「……はい、すいません。その通りです」
目を開けるとともに、笑顔でそう答えることができた。
自分たちがいまからしようとしていることが、正解かどうかはよく分からない。
が、ブレイダが言ったように、そして自分がユーリに言ったように、その不安心を一人で抱え込む必要はないのだ。
「申し訳ありません。私としたことが、少し弱気になってしまいました。お心遣い感謝します」
「謝る必要なんてないんだよ。でもまた思う所があったら、私たちにも教えてもらえると嬉しいな」
「あっはっはぁ~! そんでセイラさんは固いよ固い! もっと砕けて話してよって、何回も言ってるでしょ~!」
ファイフはそう言って、バンバンとセイラの背中を叩き、ブレイダは慣れた手つきでセイラのブラウスのボタンを外すと、ぼろんと胸の谷間を露出させた。
「ちょ……!」
「うおぉ~! セイラさん、やっぱすごいね! あたしもまあまああるほうだと思うけど……ちょっと触っちゃおう」
「ん~♡ やっぱり若いと張りがあっていいなぁ~♡」
などと言いながら、ぼよんぼよんとおっぱいを触り始めるファイフとブレイダに、セイラは顔を赤らめながら身を引き、
「ちょ、ちょっと、ふたりとも! 酔い過ぎですよ!」
酔っ払いのダル絡みを往なしつつ、しかしセイラは、そんなに悪い気分がしなかった。
自分には、仲間がいる。
悩みを共有できる存在がいる。
それを再確認することができて、すとんと溜飲が下ったのだ。
「……しかし、ファイフさんの言う通りですね。それでは少し、砕けてお話をさせていただいて……」
信頼できる仲間の元へと、セイラはゆっくりと手を伸ばし……。
そして、お酒を取りあげた。
「ふたりでこれ一本は、流石に飲み過ぎです」
「やぁだぁ~! まだ酔ってないからぁ! 歩いて帰れるからぁ! 返してよぉ~!」
「お願いセイラさん! あと一杯だけ! いや、空の上で飲むハイボール、マッジで美味しいんだって! 地上で飲むハイボール三杯分くらいの価値あるんだって!」
ブレイダとファイフが情けない声を上げるとともに、運転席からもエンリエッタの泣きそうな声が上がった。
「ね~意地悪しないで教えてくださいよぉ~! 向こう側に送りこんでるスパイって、誰なんですかぁ~!」
「いやでもエリカン赤ちゃんだからなぁ」
「エリカン最近つかまり立ちできるようになったばっかりだもんな」
「ちょっと前までハイハイして喃語喋ってたのにね」
「あの頃はまだワンチャン可愛かったよな」
「いまもちゃんと可愛いもんっ!!」
行きと同じように、騒がしい声を乗せながら、飛空艇は王国へと戻って行くのだった。
■
「……わしだ」
ユーリ一行が帰途に着き、ヘルデンとその女たちも退室していった後。
小部屋へと一人残ったガイムは、ケータイを手に念話をしていた。
その相手は、
「……ああ。さきほど勇者一行がこちらに来た。お前の報告通り、飛行艇でな」
──『アンペルマン』に潜り込ませている、スパイだ。
彼女に向けて、ガイムは低い声で言葉を続ける。
「難癖をつけて飛空艇の詳細なデータを開示させようとしたが……のらりくらりと逃げられてしまった。やはり引退しても勇者は勇者。全て思い通りにはいかぬものだなあ」
『……そうですか』
「…………」
つまらぬ返事だ、と、そうは思いつつも、面白みなど期待できるような相手でもないことを思い出し、憮然と鼻を鳴らす。
彼女は非常に優秀なスパイである。
が、それ以上でも以下でもない。
こちらが要求した以上の仕事をすることはないし、積極的に干渉をしてくることもない。
仕事人、といえば聞こえ良いが、この女の場合は、単に非協力的なだけ──つまり、納得して諜報員をしているわけではないだけのだ。
可愛げの類を感じることはなく、こちらに対しても悪感情しか抱いていないことがよく分かる。
……まあ、それだけに、そそるものもがあるのだが。
「まあいい。さっさと定時報告を始めろ──セイリーヌ」
「……はい」
『アンペルマン』次席パーティ『レスティンピース』。
その古参メンバー、セイリーヌ・マクレーン。
彼女はヒィロの右腕であり、優秀な賢者であり、そして……。
「……それでは、先ほどの幹部会で決定した案件からお話させていただきます」
──ルミエ帝国、ガイム大臣直属のスパイ。
そんな肩書を持つ彼女は、淡々と報告を始めるのだった。
※※以下筆者後書き※※
>>古参メンバー、セイリーヌ・マクレーン。
……って誰だっけ? ってなった人は、5話をご覧いただけると登場シーンあります。ヒィロの隣でゴチャゴチャ言ってたアイツです。
挿絵追加したほうがいいかな……?
今回もご覧いただきありがとうございました!
>>インパクトファクター
>>別班
勘の鋭い読者の方たちならすでにお気づきでしょうが、筆者は日曜劇場と海堂尊と池井戸潤ガチ勢です。
主人公が下唇を甘く噛みながら遠くを睨み、「やられたらやり返す……」的なことを言い始めたら、全力で止めてください。
そして、最近文字数が少ないお話になってしまってごめんなさい!
2編は特に大きく直した部分でして、全カットシーンが続出し、それに伴って文字数も大幅に削ることになってしまいました……。
次の次くらいの話から徐々に読みごたえが出てくると思いますので、懲りずにお付き合いいただければ幸いです!
ご意見ご指摘、ブックマーク登録、大会ポイントの投票など、よろしかったらお願いいたします!!
「そんでシゴデキだなぁ、スパイ」
「え、スパイ!?」
帰りの飛空艇内。
飛空艇の運転をするマホ。助手席でそのサポートをするユーリ。そして彼の膝の上に乗るエンリエッタは、そんな会話に興じていた。
ちなみに、エンリエッタがユーリの膝に乗っているのは、飛空艇に乗り込む際、ユーリが「ヘルデンくん羨ましかったなー。女の子二人も膝の上に乗せてさ。僕もあんな老後送りたいなー」などとのたまわったところ、エンリエッタが「老後と言わずに今乗りまーす♡」と、元気よく膝の上に飛び乗り、ユーリは「計算通り……」とほくそ笑んだのが……。
まあそれはともかく。
「……えっと、そんな身近なところまで入りこんでるもんなんですか、スパイって」
「そりゃいるよ。ってか僕たちだって同じことしてるし。帝国の主要クランや王城、国賓が集まりやすいレストランとかホテルに、別班の人たちを潜り込ませてるでしょ?」
勇者直属の隠密機動部隊。通称『別班』。
彼らは王国や帝国の主要施設や団体に潜り込み、表向きには一般職に従事しながら、ユーリへと情報を送り続けているのだ。
が、敵国や競合他社もそれは然り。『アンペルマン』の中にも、そういったスパイが潜り込んでいるのだ。
「それはそうですけど……でも、そんな中枢まで来てるなんて……」
「ガイムのたぬきジジイがほざいてたことは、うちの幹部連中しか知りえねえ情報だった。ってことはつまり、そういうこったろ?」
エンリエッタの声にそう答えてから、マホはチラリとユーリを見つつ、
「でもさぁ、例えばめちゃくちゃ身近にいるやつが裏切り者だったら……お前ならどうするよ、勇者?」
「…………」
その言葉に、ユーリはやや意味深な間を溜めつつ、顎に手を添えて、
「んー、まあ泳がせてる部分もあるから、そんなに深刻な問題ではないんだけど……まあそうだねえ。どうしようかな~」
ユーリはチラリとマホを見てから、少しシリアスな表情を作り、
「……ところでマホちゃん。君は確か、帝国の魔法大学とも交流があったね?」
「ああ。いまでもちょいちょい講義に行くし、名誉顧問として籍を置いてるところもあるぞ」
「そうかい……」
ユーリはひどく物憂げな表情で、それを言った。
「残念だよマホちゃん。まさか君が裏切り者……。帝国のスパイだったなんてね……!」
「バカ言え。ボクはお前らを裏切ってなんていねえ。
──ボクは最初から、帝国側の人間だったのさ」
「…………」
「…………」
そのまましばし、ふたりは顔を突き合わせてから……。
「うわ! うわうわうわ! ぽいぽい! めっちゃそれっぽい! めっちゃ裏切った瞬間の人っぽいよ!」
「な! な! ボクもなんか言ってて、うあああってなったもん! あー、お前裏切ったとき、ボクこれ言お~」
「えー! 私も言いたい言いたい! んっと、んーっと……ふっふっふっ……最初から私は、帝国側の人間だったのでちゅよっ!」
「噛んでる噛んでる」
「赤ちゃんスパイすんな」
「赤ちゃんにスパイはちょっと無理かな~」
「できますよぉ~!」
「…………」
そんなバカ話に興じる三人を、セイラは微笑ましい気持ちで……。
そして、心苦しく思いながら、見ていた。
裏切り。
セイラがユーリに対して行おうとしていることは、ある種そういうことだ。
あの優しいユーリの気持ちを、無碍にしなくてはいけない。
納得をしていることではある。
皆の賛同を得ていることでもある。
しかし、決行の日が近づいてくるにつれ、セイラは思ってしまうのだ。
果たしてこれで良いのか……と。
「……いいんだよ、セイラさん。あなたはなにも間違ってない」
「……え?」
ブレイダのその声に振り返ると、ブレイダとファイフが、酒盛りをしながらセイラに微笑みかけていた。
「えっと、いま私、声に出して……」
「ないけど、それくらい分かるよ~。顔に大きく書いてあるもん」
「あっはっはぁ! しかも結構な太字でねえ~。酔っ払いにも分かっちゃうくらいだから、相当なもんだよ?」
やや酔眼となった目をユーリに放りながら、ファイフはハイボールを軽く煽り、
「まあさ、あたしは脳筋だから、ほんとに難しいことは分んないけど……たぶん勇者はさ、そういうセイラさんの葛藤も混みで、ちゃんと受け入れてくれるんじゃないかな? 勇者って昔からそういうヤツじゃん。
そういうのは、あたしらよりも付き合いの長いセイラさんのほうが分かってるでしょ?」
「それは、そうなのですが……」
「それにさ♪」
ブレイダはそう言って、勢いよくセイラへと抱き着いた。豊満な胸同士がぶつかり合い、ぶるん! と大きく揺れ動く。
「一人で抱え込まないで、って……さっきセイラさんが、坊ちゃんにそう言ったじゃない? 私たちも同じ気持ちだよ。
そうするってことは、ここにいるみんなと、カリちゃむとハンナさん……全員で決めたことでしょ?
だからさ、あなたひとりが抱え込まないで欲しいな」
「ブレイダさん、ファイフさん……」
二人のその言葉に、セイラは一度目を閉じてから、
「……はい、すいません。その通りです」
目を開けるとともに、笑顔でそう答えることができた。
自分たちがいまからしようとしていることが、正解かどうかはよく分からない。
が、ブレイダが言ったように、そして自分がユーリに言ったように、その不安心を一人で抱え込む必要はないのだ。
「申し訳ありません。私としたことが、少し弱気になってしまいました。お心遣い感謝します」
「謝る必要なんてないんだよ。でもまた思う所があったら、私たちにも教えてもらえると嬉しいな」
「あっはっはぁ~! そんでセイラさんは固いよ固い! もっと砕けて話してよって、何回も言ってるでしょ~!」
ファイフはそう言って、バンバンとセイラの背中を叩き、ブレイダは慣れた手つきでセイラのブラウスのボタンを外すと、ぼろんと胸の谷間を露出させた。
「ちょ……!」
「うおぉ~! セイラさん、やっぱすごいね! あたしもまあまああるほうだと思うけど……ちょっと触っちゃおう」
「ん~♡ やっぱり若いと張りがあっていいなぁ~♡」
などと言いながら、ぼよんぼよんとおっぱいを触り始めるファイフとブレイダに、セイラは顔を赤らめながら身を引き、
「ちょ、ちょっと、ふたりとも! 酔い過ぎですよ!」
酔っ払いのダル絡みを往なしつつ、しかしセイラは、そんなに悪い気分がしなかった。
自分には、仲間がいる。
悩みを共有できる存在がいる。
それを再確認することができて、すとんと溜飲が下ったのだ。
「……しかし、ファイフさんの言う通りですね。それでは少し、砕けてお話をさせていただいて……」
信頼できる仲間の元へと、セイラはゆっくりと手を伸ばし……。
そして、お酒を取りあげた。
「ふたりでこれ一本は、流石に飲み過ぎです」
「やぁだぁ~! まだ酔ってないからぁ! 歩いて帰れるからぁ! 返してよぉ~!」
「お願いセイラさん! あと一杯だけ! いや、空の上で飲むハイボール、マッジで美味しいんだって! 地上で飲むハイボール三杯分くらいの価値あるんだって!」
ブレイダとファイフが情けない声を上げるとともに、運転席からもエンリエッタの泣きそうな声が上がった。
「ね~意地悪しないで教えてくださいよぉ~! 向こう側に送りこんでるスパイって、誰なんですかぁ~!」
「いやでもエリカン赤ちゃんだからなぁ」
「エリカン最近つかまり立ちできるようになったばっかりだもんな」
「ちょっと前までハイハイして喃語喋ってたのにね」
「あの頃はまだワンチャン可愛かったよな」
「いまもちゃんと可愛いもんっ!!」
行きと同じように、騒がしい声を乗せながら、飛空艇は王国へと戻って行くのだった。
■
「……わしだ」
ユーリ一行が帰途に着き、ヘルデンとその女たちも退室していった後。
小部屋へと一人残ったガイムは、ケータイを手に念話をしていた。
その相手は、
「……ああ。さきほど勇者一行がこちらに来た。お前の報告通り、飛行艇でな」
──『アンペルマン』に潜り込ませている、スパイだ。
彼女に向けて、ガイムは低い声で言葉を続ける。
「難癖をつけて飛空艇の詳細なデータを開示させようとしたが……のらりくらりと逃げられてしまった。やはり引退しても勇者は勇者。全て思い通りにはいかぬものだなあ」
『……そうですか』
「…………」
つまらぬ返事だ、と、そうは思いつつも、面白みなど期待できるような相手でもないことを思い出し、憮然と鼻を鳴らす。
彼女は非常に優秀なスパイである。
が、それ以上でも以下でもない。
こちらが要求した以上の仕事をすることはないし、積極的に干渉をしてくることもない。
仕事人、といえば聞こえ良いが、この女の場合は、単に非協力的なだけ──つまり、納得して諜報員をしているわけではないだけのだ。
可愛げの類を感じることはなく、こちらに対しても悪感情しか抱いていないことがよく分かる。
……まあ、それだけに、そそるものもがあるのだが。
「まあいい。さっさと定時報告を始めろ──セイリーヌ」
「……はい」
『アンペルマン』次席パーティ『レスティンピース』。
その古参メンバー、セイリーヌ・マクレーン。
彼女はヒィロの右腕であり、優秀な賢者であり、そして……。
「……それでは、先ほどの幹部会で決定した案件からお話させていただきます」
──ルミエ帝国、ガイム大臣直属のスパイ。
そんな肩書を持つ彼女は、淡々と報告を始めるのだった。
※※以下筆者後書き※※
>>古参メンバー、セイリーヌ・マクレーン。
……って誰だっけ? ってなった人は、5話をご覧いただけると登場シーンあります。ヒィロの隣でゴチャゴチャ言ってたアイツです。
挿絵追加したほうがいいかな……?
今回もご覧いただきありがとうございました!
>>インパクトファクター
>>別班
勘の鋭い読者の方たちならすでにお気づきでしょうが、筆者は日曜劇場と海堂尊と池井戸潤ガチ勢です。
主人公が下唇を甘く噛みながら遠くを睨み、「やられたらやり返す……」的なことを言い始めたら、全力で止めてください。
そして、最近文字数が少ないお話になってしまってごめんなさい!
2編は特に大きく直した部分でして、全カットシーンが続出し、それに伴って文字数も大幅に削ることになってしまいました……。
次の次くらいの話から徐々に読みごたえが出てくると思いますので、懲りずにお付き合いいただければ幸いです!
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