【完全版製作記念連載再開】金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師

文字の大きさ
18 / 78
勇者辞めますの真相編

17話 勇者っぽいな(前編)  イラストあり

「ん、んん……」

 ヒィロが目を覚ますと、視界にいっぱいに青空が広がっていた。
 どうやら自分は、屋外に寝かされているらしい。
 まさかあのまま往来に倒れ込んで……!? と、危惧したが、すぐにそうではないと思いたる。
 なぜなら、

「あ、ヒィロさん、目ぇ覚めた? 大丈夫?」
「…………っ!」

 後頭部には温かな感触、そして目の前にはイケメン……。
 自分はいま、ユーリに膝枕をされていると、気付いたからだ。

「す、すすすす、すいませんっ! い、いまどきますっ!」
「ああ、動かない、動かないよ。いま解毒魔法かけてるけど、僕あんまり上手じゃないから、もう少しジッとしてて」

 そう言ってヒィロの頭を軽く押さえるユーリ。確かにまだ少し……いや、かなり気持ち悪い。が、

「い、いえ! しかし、いきなり押しかけて、お酒をラッパ飲みして、吐きそうになってぶっ倒れて、そのうえ介抱までされるなんて! これ以上を恥を上塗りするわけには……!」
「いま羅列された情報だけでまあまあヤバいよ。ここまできたらもう、介抱くらいされなって」
「いえしかし……うえ、おえ……!」
「ほらもー、吐きたくなければジッとしててください」

 再び膝に押し付けられる。それでも少しジタバタしてみたものの、吐気とめまいには抗えず、観念して動くのをやめた。
 そして、真っ赤になった顔を覆い隠す。

「……恥ずかしいです。子ども扱いして欲しくないと言った矢先、こんなことになるなんて……」
「いや、そんな子ども扱いしてないよ? おっぱい見てちゃんと興奮してたし」
「ちゃんとの意味がよく分からないのですが」
「それにさ」

 ユーリはヒィロの頭をポンポンと撫で、温かな笑みを広げた。

「ヒィロさんはヒィロさんなりに思うところがあって、僕のところに来てくれたわけでしょ? その判断は立派だし、勇気がいることだったと思う。
 だから、最初に少し失敗しちゃったくらいで、そんな落ち込むことないよ」
「…………」

 こちらの真意を汲んだうえでも、それを認め、褒め、勇気づけてくれる。
 ユーリはいつだって優しい。
 ──優しすぎるのだ。

「……それで、ヒィロさん」

 複雑な心境でそんなことを思っていると、彼は少しだけ声を固くして、

?」
「…………?」

 その質問に、ヒィロも表情を硬くして、酩酊した頭を回転させ始め……。
 そして、それをやめた。
 ここまで来たら、駆け引きなど必要ない。
 いまこの場においては、ユーリはきちんとヒィロに向き合ってくれているようだ。
 だったら、こちらも……。

「……元老院議会」
「…………っ」

 ヒィロがその単語を出すと、ユーリの目がスッと細められ、その奥に負の感情が宿る。
 侮蔑と怒り。
 この優しい男が滅多に表出させないその感情に、ヒィロは確信する。
 本当にそうなのだ、と。
 そんなものを相手に、たったの八人で立ち向かっていたのか、と。
 ユーリは気持ちをリセットするように目を閉じ、そして元の優しい笑顔を浮かべながら言った。

「全部知ってるってことね」
「ほぼ全部知ってるってことです」
「誰から聞いたの?」
「セイラ様です」
「セイラさんか……」

 と、意外そうに呟く彼。情報の出所が、ユーリの最も信頼のおける人物だったのだから、それはこの反応にもなるだろう。

「誤解しないでください。セイラ様は情報を売ったわけではなく……」

 ヒィロはそう言って、昨日の出来事をユーリに話した。





「手荒な真似をしてしまい、まことに申し訳ございません! 処分はあとでいかようにでも!!」

 ガチャン! と、ヒィロはセイラに突きつけていた剣を投げ捨て、そのままがばりと土下座をした。

「しかし……やはり自分は、どうしても納得がいかないのです!! 
 世界の平和を最前線で守り続けてきたあなたたちが、こんな理由で引退するなど……到底信じられるものではない!!」
「ヒィロさん……」

 動揺するセイラを他所に、ヒィロは床に額を擦りつけたまま言葉を重ねる。

「下の者たちを説得するにしても、自分が納得をしないと、言葉が軽くなってしまいます! 
 今後もあなたたちの思い通りに動きますし、必要なら騙された振りも続けます! お話しいただいた内容は、誓って自分の胸だけに留めます! ですから、どうか、どうか……!」

 そして顔を上げると、必死の形相でセイラを見やり、

「本当のことを、教えてください、セイラお姉ちゃん……!!」
「…………」

 ヒィロがまだ幼い頃、セイラや他のパーティメンバーを『お姉ちゃん』とつけて呼んでいた。
 そして、それから長い月日が流れた。
 彼女も立派に成長し、『アンペルマン』のNo2にまで上り詰めた。
 そして、いまは……。

「……解呪魔法【アンチェイン】」

 セイラは拘束を解くと、土下座を続けるヒィロの元へと歩み寄る。
 そしてその身体を抱き起し、優しく抱きしめた。

「大きくなったね、ヒィちゃん……。
ごめん、ごめんね。
 私たち、あなたのことを、ちょっとだけ子ども扱いしてたかもしれない」
「セイラお姉ちゃん……」

 ポンポンと背中を叩いてから、セイラは極めて真剣な顔でヒィロを見つめた。

「分かったよ。私から話せることは、全部話す。
 そのうえで、ユーくんと話をしてきなさい」
「……はいっ!」

 目をグシグシと拭ってから、ヒィロも精悍な顔つきで頷く。
 彼女も十分に頼もしくなった。
 真相を知っても、きっと受け入れてくれるだろう。

「そ、それで、その……野暮なこと、だとは、思うのですが……」

 そんなふうに思っていると、ヒィロは少したどたどしい口調になり、

「……えっと、すみません、さっき、ユーリ先輩の……と、盗撮写真が、どうとか……っひ!」

 ガッ! と、ヒィロの肩を持つ手に力がこもり、その表情から温かみが消え失せていく。

「ヒィちゃん」

 崩れた前髪から除いたその目には、光が宿っていなかった。


「──?」
「……は、はひっ!」





「そっか……まあセイラちゃんなら、そう言うよね……」

 すべてを聞き終えた──後半部分は全力でぼかしたが──ユーリは、顎に手を添えながら何度か頷いて見せた。ヒィロはバツが悪そうな顔で小さく顎を引き、

「手荒な真似をしてしまって、本当にすみません。しかし、こちらも追い詰められていたし、他に思いつかなかったもので……」
「仕方ないよ……そこまで君を追い詰めちゃったのは僕たちだしね」

 ……そう。
 ユーリは、そういう部分でも失敗している。
 こんな無茶な辞め方をすれば、どこかで不備が生じることなど分かり切っていた。
 ヒィロにその気がなかったから良かったものの、もし少しでも害意があったのなら、ユーリは大事なパーティメンバーを傷つけるところだったのだ。
 まあ、ヒィロに限ってそんなことはしないと理解していたから、このような形を取ったわけだが……。

(……ほんと、こんな詰めの甘いやつが国内最強の勇者だなんて、笑えてくるよね)

 そういった失敗を重ねるたび、自分は凡人なのだと思い知る。
 肩書の通りに振舞うために、頑張って背伸びをしているだけの凡人。
 勇者の才能がなければ、田舎でのんびりと親の稼業でも継いでいたに違いない。

 そして、そういう人生も悪くないと思っている自分がいる。
 自分の手の届く範囲の幸せを守っていく生涯。
 ユーリはきっと、そういう人生のほうが向いているのだ。

 勇者として大きな力を授かってしまい、たまたま手の届く範囲が広くなってしまっただけに過ぎない。
 選ばれたから、それに相応しい働きをしようとしているだけ。

 ──しかし、やはりそれではダメなのだ。
 勇者としての力だけあっても、心が伴っていないとやっていけないのだ。
 勇者として、平和の象徴として、君臨し続けるような精神性を持つ人とは、むしろ──。

「……どうしたんですか、ユーリ先輩?」
「……なんでもないよ。ヒィロさん、クリームパンみたいでかわいいなーって思ってるだけ」
「……それは、褒められているんでしょうか? それとも、切れていいやつですか?」

 複雑な顔をするヒィロをひと撫でしつつ、ユーリは思う。
 襲撃という行動そのものは褒められてものではないが、そこまでして真実をつかみ取ろうとする姿勢は、決して悪くない。
 そして真実を知り、それを受け止めようとする姿勢に関しては、十分に褒められるものだ。
 こちらが思っていたよりも、ずっと彼女は成長している。

 すべては大義のため。
 勇者という肩書に見合うため。
 彼女は必死で努力を続けてきたのだ。
 ──ユーリなんかよりもヒィロのほうが、ずっと勇者っぽい。

「あ、でもね」

 そこまで思考したところで、ユーリは思い出したようにそう言って、ヒィロの頭をガっと掴んだ。
 そして耳たぶの下くらいまで口を割ると、目が一切笑っていない笑顔で彼女を見下し、

「もう、絶対そういうことしないでね?
 今回はセイラちゃんが無事だったから良かったけど……。
 本当に傷とかつけられてたら──ぼく、なにするかわからないからね?」
「大変申し訳ございませんでしたぁっ!!」

 と、その体勢で限界の可動域まで頭を下げる。彼らは激イタカップルだが、ときとして激コワカップルに変貌することを、ヒィロは熟知しているのだ。
 ユーリはユーリで、虎の尾を踏んでまで真実に辿りつこうとするその姿勢を褒めるべきなのかもしれないが、それはそれ。

 こちらの失策が招いた事態でもあるのだが、それもそれ。
 どんな理由があろうと、パーティメンバーに危害が及ぶようなことがあれば、ユーリは国のひとつやふたつは余裕でぶっ壊す界隈の勇者なのだった。

「なんてね。冗談だよ冗談! 二割くらい冗談だから」
「八割本音はヤバくないですか……と、ともかく」

 精悍な顔つきに戻ったヒィロは、覚悟を固めるようにしてユーリに言った。

「セイラ様から話はしていただけましたが、時間が無かったので歯抜けな部分も多く、きちんと全容は把握できませんでした。
 ……ユーリ先輩の口から、全てを聞かせて貰えませんか?」
「…………」

 ユーリもまた、覚悟を固めるように遠くを見つめ、

「そうだね──なにから話そうかなあ」

 そうして彼は、真相を語り始めるのだった。


「結構ヤな話だから、ちょいちょいおっぱい見ながら話してもいい?」
「……ご自由にどうぞ」
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。