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勇者辞めますの真相編
17話 勇者っぽいな(前編) イラストあり
「ん、んん……」
ヒィロが目を覚ますと、視界にいっぱいに青空が広がっていた。
どうやら自分は、屋外に寝かされているらしい。
まさかあのまま往来に倒れ込んで……!? と、危惧したが、すぐにそうではないと思いたる。
なぜなら、
「あ、ヒィロさん、目ぇ覚めた? 大丈夫?」
「…………っ!」
後頭部には温かな感触、そして目の前にはイケメン……。
自分はいま、ユーリに膝枕をされていると、気付いたからだ。
「す、すすすす、すいませんっ! い、いまどきますっ!」
「ああ、動かない、動かないよ。いま解毒魔法かけてるけど、僕あんまり上手じゃないから、もう少しジッとしてて」
そう言ってヒィロの頭を軽く押さえるユーリ。確かにまだ少し……いや、かなり気持ち悪い。が、
「い、いえ! しかし、いきなり押しかけて、お酒をラッパ飲みして、吐きそうになってぶっ倒れて、そのうえ介抱までされるなんて! これ以上を恥を上塗りするわけには……!」
「いま羅列された情報だけでまあまあヤバいよ。ここまできたらもう、介抱くらいされなって」
「いえしかし……うえ、おえ……!」
「ほらもー、吐きたくなければジッとしててください」
再び膝に押し付けられる。それでも少しジタバタしてみたものの、吐気とめまいには抗えず、観念して動くのをやめた。
そして、真っ赤になった顔を覆い隠す。
「……恥ずかしいです。子ども扱いして欲しくないと言った矢先、こんなことになるなんて……」
「いや、そんな子ども扱いしてないよ? おっぱい見てちゃんと興奮してたし」
「ちゃんとの意味がよく分からないのですが」
「それにさ」
ユーリはヒィロの頭をポンポンと撫で、温かな笑みを広げた。
「ヒィロさんはヒィロさんなりに思うところがあって、僕のところに来てくれたわけでしょ? その判断は立派だし、勇気がいることだったと思う。
だから、最初に少し失敗しちゃったくらいで、そんな落ち込むことないよ」
「…………」
こちらの真意を汲んだうえでも、それを認め、褒め、勇気づけてくれる。
ユーリはいつだって優しい。
──優しすぎるのだ。
「……それで、ヒィロさん」
複雑な心境でそんなことを思っていると、彼は少しだけ声を固くして、
「どこまで知ってるの?」
「…………?」
その質問に、ヒィロも表情を硬くして、酩酊した頭を回転させ始め……。
そして、それをやめた。
ここまで来たら、駆け引きなど必要ない。
いまこの場においては、ユーリはきちんとヒィロに向き合ってくれているようだ。
だったら、こちらも……。
「……元老院議会」
「…………っ」
ヒィロがその単語を出すと、ユーリの目がスッと細められ、その奥に負の感情が宿る。
侮蔑と怒り。
この優しい男が滅多に表出させないその感情に、ヒィロは確信する。
本当にそうなのだ、と。
そんなものを相手に、たったの八人で立ち向かっていたのか、と。
ユーリは気持ちをリセットするように目を閉じ、そして元の優しい笑顔を浮かべながら言った。
「全部知ってるってことね」
「ほぼ全部知ってるってことです」
「誰から聞いたの?」
「セイラ様です」
「セイラさんか……」
と、意外そうに呟く彼。情報の出所が、ユーリの最も信頼のおける人物だったのだから、それはこの反応にもなるだろう。
「誤解しないでください。セイラ様は情報を売ったわけではなく……」
ヒィロはそう言って、昨日の出来事をユーリに話した。
■
「手荒な真似をしてしまい、まことに申し訳ございません! 処分はあとでいかようにでも!!」
ガチャン! と、ヒィロはセイラに突きつけていた剣を投げ捨て、そのままがばりと土下座をした。
「しかし……やはり自分は、どうしても納得がいかないのです!!
世界の平和を最前線で守り続けてきたあなたたちが、こんな理由で引退するなど……到底信じられるものではない!!」
「ヒィロさん……」
動揺するセイラを他所に、ヒィロは床に額を擦りつけたまま言葉を重ねる。
「下の者たちを説得するにしても、自分が納得をしないと、言葉が軽くなってしまいます!
今後もあなたたちの思い通りに動きますし、必要なら騙された振りも続けます! お話しいただいた内容は、誓って自分の胸だけに留めます! ですから、どうか、どうか……!」
そして顔を上げると、必死の形相でセイラを見やり、
「本当のことを、教えてください、セイラお姉ちゃん……!!」
「…………」
ヒィロがまだ幼い頃、セイラや他のパーティメンバーを『お姉ちゃん』とつけて呼んでいた。
そして、それから長い月日が流れた。
彼女も立派に成長し、『アンペルマン』のNo2にまで上り詰めた。
そして、いまは……。
「……解呪魔法【アンチェイン】」
セイラは拘束を解くと、土下座を続けるヒィロの元へと歩み寄る。
そしてその身体を抱き起し、優しく抱きしめた。
「大きくなったね、ヒィちゃん……。
ごめん、ごめんね。
私たち、あなたのことを、ちょっとだけ子ども扱いしてたかもしれない」
「セイラお姉ちゃん……」
ポンポンと背中を叩いてから、セイラは極めて真剣な顔でヒィロを見つめた。
「分かったよ。私から話せることは、全部話す。
そのうえで、ユーくんと話をしてきなさい」
「……はいっ!」
目をグシグシと拭ってから、ヒィロも精悍な顔つきで頷く。
彼女も十分に頼もしくなった。
真相を知っても、きっと受け入れてくれるだろう。
「そ、それで、その……野暮なこと、だとは、思うのですが……」
そんなふうに思っていると、ヒィロは少したどたどしい口調になり、
「……えっと、すみません、さっき、ユーリ先輩の……と、盗撮写真が、どうとか……っひ!」
ガッ! と、ヒィロの肩を持つ手に力がこもり、その表情から温かみが消え失せていく。
「ヒィちゃん」
崩れた前髪から除いたその目には、光が宿っていなかった。
「──わたし、そんなこと、いってないよ?」
「……は、はひっ!」
■
「そっか……まあセイラちゃんなら、そう言うよね……」
すべてを聞き終えた──後半部分は全力でぼかしたが──ユーリは、顎に手を添えながら何度か頷いて見せた。ヒィロはバツが悪そうな顔で小さく顎を引き、
「手荒な真似をしてしまって、本当にすみません。しかし、こちらも追い詰められていたし、他に思いつかなかったもので……」
「仕方ないよ……そこまで君を追い詰めちゃったのは僕たちだしね」
……そう。
ユーリは、そういう部分でも失敗している。
こんな無茶な辞め方をすれば、どこかで不備が生じることなど分かり切っていた。
ヒィロにその気がなかったから良かったものの、もし少しでも害意があったのなら、ユーリは大事なパーティメンバーを傷つけるところだったのだ。
まあ、ヒィロに限ってそんなことはしないと理解していたから、このような形を取ったわけだが……。
(……ほんと、こんな詰めの甘いやつが国内最強の勇者だなんて、笑えてくるよね)
そういった失敗を重ねるたび、自分は凡人なのだと思い知る。
肩書の通りに振舞うために、頑張って背伸びをしているだけの凡人。
勇者の才能がなければ、田舎でのんびりと親の稼業でも継いでいたに違いない。
そして、そういう人生も悪くないと思っている自分がいる。
自分の手の届く範囲の幸せを守っていく生涯。
ユーリはきっと、そういう人生のほうが向いているのだ。
勇者として大きな力を授かってしまい、たまたま手の届く範囲が広くなってしまっただけに過ぎない。
選ばれたから、それに相応しい働きをしようとしているだけ。
──しかし、やはりそれではダメなのだ。
勇者としての力だけあっても、心が伴っていないとやっていけないのだ。
勇者として、平和の象徴として、君臨し続けるような精神性を持つ人とは、むしろ──。
「……どうしたんですか、ユーリ先輩?」
「……なんでもないよ。ヒィロさん、クリームパンみたいでかわいいなーって思ってるだけ」
「……それは、褒められているんでしょうか? それとも、切れていいやつですか?」
複雑な顔をするヒィロをひと撫でしつつ、ユーリは思う。
襲撃という行動そのものは褒められてものではないが、そこまでして真実をつかみ取ろうとする姿勢は、決して悪くない。
そして真実を知り、それを受け止めようとする姿勢に関しては、十分に褒められるものだ。
こちらが思っていたよりも、ずっと彼女は成長している。
すべては大義のため。
勇者という肩書に見合うため。
彼女は必死で努力を続けてきたのだ。
──ユーリなんかよりもヒィロのほうが、ずっと勇者っぽい。
「あ、でもね」
そこまで思考したところで、ユーリは思い出したようにそう言って、ヒィロの頭をガっと掴んだ。
そして耳たぶの下くらいまで口を割ると、目が一切笑っていない笑顔で彼女を見下し、
「もう、絶対そういうことしないでね?
今回はセイラちゃんが無事だったから良かったけど……。
本当に傷とかつけられてたら──ぼく、なにするかわからないからね?」
「大変申し訳ございませんでしたぁっ!!」
と、その体勢で限界の可動域まで頭を下げる。彼らは激イタカップルだが、ときとして激コワカップルに変貌することを、ヒィロは熟知しているのだ。
ユーリはユーリで、虎の尾を踏んでまで真実に辿りつこうとするその姿勢を褒めるべきなのかもしれないが、それはそれ。
こちらの失策が招いた事態でもあるのだが、それもそれ。
どんな理由があろうと、パーティメンバーに危害が及ぶようなことがあれば、ユーリは国のひとつやふたつは余裕でぶっ壊す界隈の勇者なのだった。
「なんてね。冗談だよ冗談! 二割くらい冗談だから」
「八割本音はヤバくないですか……と、ともかく」
精悍な顔つきに戻ったヒィロは、覚悟を固めるようにしてユーリに言った。
「セイラ様から話はしていただけましたが、時間が無かったので歯抜けな部分も多く、きちんと全容は把握できませんでした。
……ユーリ先輩の口から、全てを聞かせて貰えませんか?」
「…………」
ユーリもまた、覚悟を固めるように遠くを見つめ、
「そうだね──なにから話そうかなあ」
そうして彼は、真相を語り始めるのだった。
「結構ヤな話だから、ちょいちょいおっぱい見ながら話してもいい?」
「……ご自由にどうぞ」
ヒィロが目を覚ますと、視界にいっぱいに青空が広がっていた。
どうやら自分は、屋外に寝かされているらしい。
まさかあのまま往来に倒れ込んで……!? と、危惧したが、すぐにそうではないと思いたる。
なぜなら、
「あ、ヒィロさん、目ぇ覚めた? 大丈夫?」
「…………っ!」
後頭部には温かな感触、そして目の前にはイケメン……。
自分はいま、ユーリに膝枕をされていると、気付いたからだ。
「す、すすすす、すいませんっ! い、いまどきますっ!」
「ああ、動かない、動かないよ。いま解毒魔法かけてるけど、僕あんまり上手じゃないから、もう少しジッとしてて」
そう言ってヒィロの頭を軽く押さえるユーリ。確かにまだ少し……いや、かなり気持ち悪い。が、
「い、いえ! しかし、いきなり押しかけて、お酒をラッパ飲みして、吐きそうになってぶっ倒れて、そのうえ介抱までされるなんて! これ以上を恥を上塗りするわけには……!」
「いま羅列された情報だけでまあまあヤバいよ。ここまできたらもう、介抱くらいされなって」
「いえしかし……うえ、おえ……!」
「ほらもー、吐きたくなければジッとしててください」
再び膝に押し付けられる。それでも少しジタバタしてみたものの、吐気とめまいには抗えず、観念して動くのをやめた。
そして、真っ赤になった顔を覆い隠す。
「……恥ずかしいです。子ども扱いして欲しくないと言った矢先、こんなことになるなんて……」
「いや、そんな子ども扱いしてないよ? おっぱい見てちゃんと興奮してたし」
「ちゃんとの意味がよく分からないのですが」
「それにさ」
ユーリはヒィロの頭をポンポンと撫で、温かな笑みを広げた。
「ヒィロさんはヒィロさんなりに思うところがあって、僕のところに来てくれたわけでしょ? その判断は立派だし、勇気がいることだったと思う。
だから、最初に少し失敗しちゃったくらいで、そんな落ち込むことないよ」
「…………」
こちらの真意を汲んだうえでも、それを認め、褒め、勇気づけてくれる。
ユーリはいつだって優しい。
──優しすぎるのだ。
「……それで、ヒィロさん」
複雑な心境でそんなことを思っていると、彼は少しだけ声を固くして、
「どこまで知ってるの?」
「…………?」
その質問に、ヒィロも表情を硬くして、酩酊した頭を回転させ始め……。
そして、それをやめた。
ここまで来たら、駆け引きなど必要ない。
いまこの場においては、ユーリはきちんとヒィロに向き合ってくれているようだ。
だったら、こちらも……。
「……元老院議会」
「…………っ」
ヒィロがその単語を出すと、ユーリの目がスッと細められ、その奥に負の感情が宿る。
侮蔑と怒り。
この優しい男が滅多に表出させないその感情に、ヒィロは確信する。
本当にそうなのだ、と。
そんなものを相手に、たったの八人で立ち向かっていたのか、と。
ユーリは気持ちをリセットするように目を閉じ、そして元の優しい笑顔を浮かべながら言った。
「全部知ってるってことね」
「ほぼ全部知ってるってことです」
「誰から聞いたの?」
「セイラ様です」
「セイラさんか……」
と、意外そうに呟く彼。情報の出所が、ユーリの最も信頼のおける人物だったのだから、それはこの反応にもなるだろう。
「誤解しないでください。セイラ様は情報を売ったわけではなく……」
ヒィロはそう言って、昨日の出来事をユーリに話した。
■
「手荒な真似をしてしまい、まことに申し訳ございません! 処分はあとでいかようにでも!!」
ガチャン! と、ヒィロはセイラに突きつけていた剣を投げ捨て、そのままがばりと土下座をした。
「しかし……やはり自分は、どうしても納得がいかないのです!!
世界の平和を最前線で守り続けてきたあなたたちが、こんな理由で引退するなど……到底信じられるものではない!!」
「ヒィロさん……」
動揺するセイラを他所に、ヒィロは床に額を擦りつけたまま言葉を重ねる。
「下の者たちを説得するにしても、自分が納得をしないと、言葉が軽くなってしまいます!
今後もあなたたちの思い通りに動きますし、必要なら騙された振りも続けます! お話しいただいた内容は、誓って自分の胸だけに留めます! ですから、どうか、どうか……!」
そして顔を上げると、必死の形相でセイラを見やり、
「本当のことを、教えてください、セイラお姉ちゃん……!!」
「…………」
ヒィロがまだ幼い頃、セイラや他のパーティメンバーを『お姉ちゃん』とつけて呼んでいた。
そして、それから長い月日が流れた。
彼女も立派に成長し、『アンペルマン』のNo2にまで上り詰めた。
そして、いまは……。
「……解呪魔法【アンチェイン】」
セイラは拘束を解くと、土下座を続けるヒィロの元へと歩み寄る。
そしてその身体を抱き起し、優しく抱きしめた。
「大きくなったね、ヒィちゃん……。
ごめん、ごめんね。
私たち、あなたのことを、ちょっとだけ子ども扱いしてたかもしれない」
「セイラお姉ちゃん……」
ポンポンと背中を叩いてから、セイラは極めて真剣な顔でヒィロを見つめた。
「分かったよ。私から話せることは、全部話す。
そのうえで、ユーくんと話をしてきなさい」
「……はいっ!」
目をグシグシと拭ってから、ヒィロも精悍な顔つきで頷く。
彼女も十分に頼もしくなった。
真相を知っても、きっと受け入れてくれるだろう。
「そ、それで、その……野暮なこと、だとは、思うのですが……」
そんなふうに思っていると、ヒィロは少したどたどしい口調になり、
「……えっと、すみません、さっき、ユーリ先輩の……と、盗撮写真が、どうとか……っひ!」
ガッ! と、ヒィロの肩を持つ手に力がこもり、その表情から温かみが消え失せていく。
「ヒィちゃん」
崩れた前髪から除いたその目には、光が宿っていなかった。
「──わたし、そんなこと、いってないよ?」
「……は、はひっ!」
■
「そっか……まあセイラちゃんなら、そう言うよね……」
すべてを聞き終えた──後半部分は全力でぼかしたが──ユーリは、顎に手を添えながら何度か頷いて見せた。ヒィロはバツが悪そうな顔で小さく顎を引き、
「手荒な真似をしてしまって、本当にすみません。しかし、こちらも追い詰められていたし、他に思いつかなかったもので……」
「仕方ないよ……そこまで君を追い詰めちゃったのは僕たちだしね」
……そう。
ユーリは、そういう部分でも失敗している。
こんな無茶な辞め方をすれば、どこかで不備が生じることなど分かり切っていた。
ヒィロにその気がなかったから良かったものの、もし少しでも害意があったのなら、ユーリは大事なパーティメンバーを傷つけるところだったのだ。
まあ、ヒィロに限ってそんなことはしないと理解していたから、このような形を取ったわけだが……。
(……ほんと、こんな詰めの甘いやつが国内最強の勇者だなんて、笑えてくるよね)
そういった失敗を重ねるたび、自分は凡人なのだと思い知る。
肩書の通りに振舞うために、頑張って背伸びをしているだけの凡人。
勇者の才能がなければ、田舎でのんびりと親の稼業でも継いでいたに違いない。
そして、そういう人生も悪くないと思っている自分がいる。
自分の手の届く範囲の幸せを守っていく生涯。
ユーリはきっと、そういう人生のほうが向いているのだ。
勇者として大きな力を授かってしまい、たまたま手の届く範囲が広くなってしまっただけに過ぎない。
選ばれたから、それに相応しい働きをしようとしているだけ。
──しかし、やはりそれではダメなのだ。
勇者としての力だけあっても、心が伴っていないとやっていけないのだ。
勇者として、平和の象徴として、君臨し続けるような精神性を持つ人とは、むしろ──。
「……どうしたんですか、ユーリ先輩?」
「……なんでもないよ。ヒィロさん、クリームパンみたいでかわいいなーって思ってるだけ」
「……それは、褒められているんでしょうか? それとも、切れていいやつですか?」
複雑な顔をするヒィロをひと撫でしつつ、ユーリは思う。
襲撃という行動そのものは褒められてものではないが、そこまでして真実をつかみ取ろうとする姿勢は、決して悪くない。
そして真実を知り、それを受け止めようとする姿勢に関しては、十分に褒められるものだ。
こちらが思っていたよりも、ずっと彼女は成長している。
すべては大義のため。
勇者という肩書に見合うため。
彼女は必死で努力を続けてきたのだ。
──ユーリなんかよりもヒィロのほうが、ずっと勇者っぽい。
「あ、でもね」
そこまで思考したところで、ユーリは思い出したようにそう言って、ヒィロの頭をガっと掴んだ。
そして耳たぶの下くらいまで口を割ると、目が一切笑っていない笑顔で彼女を見下し、
「もう、絶対そういうことしないでね?
今回はセイラちゃんが無事だったから良かったけど……。
本当に傷とかつけられてたら──ぼく、なにするかわからないからね?」
「大変申し訳ございませんでしたぁっ!!」
と、その体勢で限界の可動域まで頭を下げる。彼らは激イタカップルだが、ときとして激コワカップルに変貌することを、ヒィロは熟知しているのだ。
ユーリはユーリで、虎の尾を踏んでまで真実に辿りつこうとするその姿勢を褒めるべきなのかもしれないが、それはそれ。
こちらの失策が招いた事態でもあるのだが、それもそれ。
どんな理由があろうと、パーティメンバーに危害が及ぶようなことがあれば、ユーリは国のひとつやふたつは余裕でぶっ壊す界隈の勇者なのだった。
「なんてね。冗談だよ冗談! 二割くらい冗談だから」
「八割本音はヤバくないですか……と、ともかく」
精悍な顔つきに戻ったヒィロは、覚悟を固めるようにしてユーリに言った。
「セイラ様から話はしていただけましたが、時間が無かったので歯抜けな部分も多く、きちんと全容は把握できませんでした。
……ユーリ先輩の口から、全てを聞かせて貰えませんか?」
「…………」
ユーリもまた、覚悟を固めるように遠くを見つめ、
「そうだね──なにから話そうかなあ」
そうして彼は、真相を語り始めるのだった。
「結構ヤな話だから、ちょいちょいおっぱい見ながら話してもいい?」
「……ご自由にどうぞ」
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