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勇者辞めますの真相編
19話 全裸勇者 イラストあり
「………………………………大変申し訳ございませんでした」
「………………………………うん。いいよ、もう。僕も自分に酔っちゃてたとこあるし」
「………………………………いえ、まず自分が、お酒に酔わなければ良かっただけなので」
「………………………………もうやめない? この話」
「………………………………そうですね」
──あの後。
エモの最高到達点から一転、ゲロの愛好到達点へと叩き落されたふたりは、そのまま庭に設置してあるシャワーで、服やら身体を綺麗に洗い流し、念入りに歯磨きをした──なぜユーリも歯磨きをする必要があったかは、あまり思い出したくはないのだが──のち、タオルを巻いて温泉へと浸かっていた。
男女がふたりで温泉に入るのはどうなのか……などという倫理的なことは、互いに全く気にならなかった。
男女以前に、倫理観がどうとか以前に、人としての尊厳を守るほうが大事だったからだ。
人の頭にゲロをぶっかけた人と、頭からゲロをぶっかけられた人は、人とは呼び難いのだ。
「はあ~~~。でもなんか、やっとスッキリしてきたよ
ヒィちゃんも少しはスッキリできたんじゃない? あれだけいろいろ吐き出せば」
お湯をすくい上げて顔を洗ってから、悪戯っぽい視線をヒィロに振る。すると彼女は、赤い顔で恥ずかしそうにこちらを睨み上げて、
「い、意地悪ですね……。まあでも、身体のほうも楽になってきましたし……。
……それに、気持ちのほうも、少しスッキリしました」
涙の筋を洗い流すようにして、彼女もバシャバシャと顔を洗う。
そのたびに、タオルに包まれた豊満な胸が僅かに揺れ、その谷間へと水滴がこぼれ落ちていった。
ヒィロの身長はマホやエンリエッタとそう変わらないのだが、とにかく胸が大きく、腰回りの肉付きも良い。セイラやファイフほどではないにしろ、あと数年もすれば、そんな美女ふたりに肉薄するようなプロポーションへと到達することだろう。
(さっきまでゲロで頭がいっぱいだったけど、ちょっと落ち着いてみると、やっぱエロイな。この状況……)
そんな美少女が、タオル一枚で隣にいるという状況に、改めてそんなことを考えてしまうユーリだった。
「……って、どうしたんですか、ユーリ先輩?」
「ごめん。おっぱいガン見してた」
「だとしてもそんなにちゃんと言わないでください」
赤い顔でタオルの位置を直しつつ、ヒィロは言葉を続けた。
「……まだ気持ちの整理がつかない部分がありますが、ユーリ先輩がそんなふうに思ってくれていたのは、少し……。
いえ、かなり、嬉しい、です」
「……うん。良かった」
前にも同じような声かけをしたことは、何度かあった。
しかし、人はその時々の心境によって、言葉の解釈が違うものだ。
同じことを言われても、スッと入ってくることもあるし、そうでないときもある。
彼女の心情とユーリの言葉掛けが、うまくマッチングしたようだ。
エモだった。
「正直、自分はまだ、自分のことがそんなに信用できません。
ほとんど勢いだけで『アンペルマン』の……あんな巨大組織のトップになってしまったし、先輩はできると言ってくれましたが、自分では【勇装龍気】を使いこなせる気配も感じない……正直、この先やっていけるか、不安しかありません」
ヒィロは自身の掌を見つめる。
彼女の不安心の表れのように、その手は僅かに震えていた。
「……しかし、」
──その不安を押さえつけるように、ヒィロは力強く手を握り、そして前を向いた。
「ユーリ先輩が……この世界で一番尊敬している人が、自分のことを信じていると、そう言ってくれました。
あなたが信じているものなら、自分も信用できます。
だから──もう少しだけ、自分を信じて、頑張ってみようと思います」
「……うん。ありがとう」
ヒィロの頭をぐしゃぐしゃと撫でつつ、ユーリは内心で胸を撫で下ろしていた。
彼女の気持ちが折れてしまいそうになったとき、正直かなり焦った。
ここまで大きな問題なく計画が進んでいたものの、肝心の彼女が折れてしまったら元も子もない。
ゆえに、不本意ながらもジゴロな手段に出てしまった。
彼女への気持ちを誤魔化してしまうで申し訳なかったが、結果としてはこの通り。
彼女はきちんと、自分の力で前を向いてくれた。
過程はどうあれ、こちらの意図したとおりの結論に結びついたのだ。
ユーリもヒィロもメンタルはよわよわだが、一度決めたことに関しては、一定の信念を持って邁進することができる。
だからきっと、彼女はもう大丈夫だろう。
(って、毎度毎度、綱渡り過ぎて泣けてくる……。こんなんでよくいままでやって来られたな、僕。全部終わったら、ほんとに田舎に帰って稼業継ごうかな……)
などと、今度はこちらが弱気に陥りかけたところで、いかんいかんと小さく首を振る。
ユーリには、まだやるべきことが残っているのだ。
「それでね、ヒィちゃん。実はもうひとつ、話しておかなきゃいけないことがあるんだ」
「ええ、それもセイラ様から概要は聞いているので、なんとなくは把握しています。ユーリ先輩の口から詳細をお聞かせ願いたい」
「うん。じゃあまずは……」
「……し、しかし、その前に……っ」
そこでヒィロは大きく深呼吸をすると、その高鳴りを抑えるように胸に手を置く。
そして、覚悟を固めるように立ち上がると、ユーリの前に屹立し、
「……その前に、その……し、鎮めていただけませんか?」
「……え?」
水滴の伝う大きな乳房と、柔らかな曲線を描く腰回りと太もも。
タオル一枚に包まれた肢体を晒しながら、美少女がそんなことを言っているのだった。
「……えっと、えーっと」
と、二秒ほど固まってから、ユーリは数回瞬きし、
「……こ、この流れで、そうなるの?」
「この流れだからそうして欲しいんです」
と、ヒィロはとろんとさせていた目を僅かに眇め、
「だいたい、ユーリ先輩は昔から無責任過ぎるんですよ。ふざけたり、酔った勢いでキスしてきて、そ、そのあと、ワンチャンなにかあるかなって思っても、そのまま放っておかれて……!
自分だって女なんです! そんな中途半端なことをされたら……た、溜まるものは溜まるんですよ!
さっきのだって……か、かなり、ヤバかったんですから……!」
その言葉が示す通り、彼女は下腹あたりを抑えながら、下半身をもじもじと揺り動かした。それに伴って大きな乳房も揺れ、ユーリは思わず息を飲む。
ヒィロは常日頃から厳しく自身を律し、勇者らしく在ろうと心がけていた。
しかしやはり、その反動はかなりのものになっていたようだ。
「……えっと、イケメンでごめん」
「謝って済む問題じゃありません!」
「わっぷ!」
ザバッ! と、ユーリの前に迫った彼女は、渾身の勇気を振り絞るようにして、言った。
「で、ですから、自分をこんなにした責任は、きちんと取ってください! 話を聞くのはそのあとです!」
「すごい交渉術使うね! ってか、するって言ったって……君、その、初めてだよね?
本当にできるの? たぶん結構痛いよ?」
「……ですから、子ども扱いしないでください!」
もう一度大きく深呼吸をすると、ヒィロはユーリの顔を掴み、その唇に自身のそれを重ねた。
「おお」
「……ほ、ほら。自分だってする気になれば、これくらいはできるんです!
あまり、自分を舐めないでいただきたい……!」
「……う~ん。困ったねえ」
ユーリは小さく唸りながら、軽く頬を掻いて──。
■
「……子ども扱い、してなかったでしょ?」
「…………はい♡」
で、こうなった。
具体的にどうなったかというと、あの申し出の後、ヒィロを二階の部屋へと連れ込んだユーリが、がっつりとすることをして、それも先ほど終わり、ふたりでベッドへと横たわって、
「ああ、でも『舐めないでいただきたい』って約束は、守れなくてごめんね?」
「は、恥ずかしいこと、言わないでください……♡」
で、こうなった。
シーツにくるんだ身体をモジモジと動かせながら、ヒィロは上目遣いでユーリを見上げると、
「……というか、初めからこうするつもりだったのなら……なぜ気のない素振り見せたんですか?」
「ちょっと焦らしたほうが楽しんでもらえるかなと思って」
「もう……意地悪……♡」
好青年のイメージが優り、そちらのイメージが置き去りになりがちだが、決して忘れてはいけない。
──ユーリは、ちゃんとヤリチンなのだ。
ともあれ、彼女のことを大事に思っていることは本当だ。
その実力を信じ、『アンペルマン』を継がせるために育ててきたことも、また事実。
本物の妹のように可愛がってきたし、楽しい思い出を共有してきた事実も変わらない。
ユーリはヒィロの後輩にして、大事な仲間なのだ。
その事実はなにがあっても揺るがないし、これからもその関係は変わらないだろう。
が、それはそれとして。
ユーリは昔から、ヒィロのことをがっつりと女として見ていたのだった。
ヒィロにキスやボディタッチをし続けていたのも、すべて計算の上の行動。
彼女をムラムラさせるためにやっていたことだった。
いずれこうなったとき、美味しくいただくつもりでいた。
ユーリ・ザッカ―フィールド。
彼は、切り離して考えられるタイプのヤリチンだった。
同じような手法で落としたうぶな女の子は数知れない。
それはセンテンススプリング砲もぶち食らうというものだった。
「ごめんね。ヒィちゃん可愛いから、ついついイジめたくなっちゃって」
そんなスキャンダラス勇者はしかし、ヒィロの肩を抱きながら、気遣うような視線を彼女に向け、
「お腹痛くなったり気持ち悪かったりしたら、すぐ言うんだよ? そのときは痛くなかったかも知れないけど、あとでどっか痛くなることもあるみたいだからね。
薬もあるから、なんか変な感じがしたらちゃんと言って?」
「は、はい……ありがとう、ございます……♡」
その気遣いに、ヒィロは嬉しそうに目を細め、ユーリの手を愛おしそうに握った。
これだけヤリ散らかしているユーリが、未だに刺されたり訴訟を起こされたりしないのは、こういった気遣いができるからだった。
相手が行きずりの女の子だったとしても、事後のピロートークやアフターケア欠かさずに行い、あと腐れないが無いように全力で務める。
シゴデキなヤリチンなのだった。
それはともかく、
「それでね、ヒィちゃん。さっきの話の続き、してもいいかな?」
ユーリがそう言うと、ヒィロはとろんとした目をぱちくりとさせて、
「えっと……ふたりのこれからの話……でしたっけ? 赤ちゃんの名前とか……♡」
「うん。してないかな、そんな話は」
ヤッベ意外と重い系だこの子……などと危機感を感じつつも、ユーリは続ける。
「僕たちの作戦について、だよ」
「あ、ああ、ああ! す、すいません! そうでした。そうでしたね」
ヒィロはほっぺたをパチパチと叩くと、仕事モードの顔でユーリを見た。
「すいません。お聞かせいただきたい」
「うん。まあ、作戦ってほど大げさなもんじゃないけど……」
そのように前置きをしてから、ユーリは一度目を閉じる。
確かにこれは、作戦と呼べるほど大層なものではない。
穴だらけな計画だし、何度も躓きそうになってきた。
が、ここまではどうにかうまくいっている。
そして、この調子でこのままいけば──。
「いままで僕たちはさ、非友好国の帝国にうまいことやられて、勇者としての活動を制限されて生きてきた。
そんでとうとう、引退にまで追いやられた。
ここまではマジでやられっぱなしだ。
でもね。ヒィちゃん」
ユーリは目を開け、ひどく好戦的な顔で笑った。
「ここから全部ひっくり返す。
今度はこっちが刺す番だ。
本当は君を巻き込むつもりはなかったけど、真相を知ったからには協力して貰うよ、ヒィちゃん」
「……はい!」
威勢よく返事をするヒィロ。その顔にも精悍な面魂が宿っており、作戦に対する熱意が感じられた。
……が。
「……すいません。先輩のその顔、カッコよすぎて無理なんで……ちょっと、イチャつきながら聞かせて貰ってもいいですか♡」
「……うん。いいよ、全然。うん。大丈夫だよ」
──生まれて初めて、刺される系の子に手を出してしまったかもしれない。
そんな予感に戦々恐々としつつ、ユーリは甘えてきた彼女の頭を撫でながら、作戦を話し始めるのだった。
※※以下筆者後書き※※
ユーリ「やられたら、やり返す……」
ヒィロ「あ、それ絶対言わないほうがいいと思います」
ユーリ「……ダメかなあ」
ヒィロ「ダメですね」
ユーリ「そっかぁ」
ヒィロ「はい。かわいそうですけど……」
ユーリ「言いたいなあ」
ヒィロ「言わせてあげたいですけど……」
ユーリ「…………」
ヒィロ「…………」
ユーリ「倍返しだ!!」
ヒィロ「なんで言っちゃうんですか!?」
今回もご覧いただきありがとうございました!
本日は18時にもう一本投稿となっております。よろしければご一読下さい!
ご意見ご指摘、お気に入り登録やいいね、大会ポイントの投票などいただければ幸いです!
「………………………………うん。いいよ、もう。僕も自分に酔っちゃてたとこあるし」
「………………………………いえ、まず自分が、お酒に酔わなければ良かっただけなので」
「………………………………もうやめない? この話」
「………………………………そうですね」
──あの後。
エモの最高到達点から一転、ゲロの愛好到達点へと叩き落されたふたりは、そのまま庭に設置してあるシャワーで、服やら身体を綺麗に洗い流し、念入りに歯磨きをした──なぜユーリも歯磨きをする必要があったかは、あまり思い出したくはないのだが──のち、タオルを巻いて温泉へと浸かっていた。
男女がふたりで温泉に入るのはどうなのか……などという倫理的なことは、互いに全く気にならなかった。
男女以前に、倫理観がどうとか以前に、人としての尊厳を守るほうが大事だったからだ。
人の頭にゲロをぶっかけた人と、頭からゲロをぶっかけられた人は、人とは呼び難いのだ。
「はあ~~~。でもなんか、やっとスッキリしてきたよ
ヒィちゃんも少しはスッキリできたんじゃない? あれだけいろいろ吐き出せば」
お湯をすくい上げて顔を洗ってから、悪戯っぽい視線をヒィロに振る。すると彼女は、赤い顔で恥ずかしそうにこちらを睨み上げて、
「い、意地悪ですね……。まあでも、身体のほうも楽になってきましたし……。
……それに、気持ちのほうも、少しスッキリしました」
涙の筋を洗い流すようにして、彼女もバシャバシャと顔を洗う。
そのたびに、タオルに包まれた豊満な胸が僅かに揺れ、その谷間へと水滴がこぼれ落ちていった。
ヒィロの身長はマホやエンリエッタとそう変わらないのだが、とにかく胸が大きく、腰回りの肉付きも良い。セイラやファイフほどではないにしろ、あと数年もすれば、そんな美女ふたりに肉薄するようなプロポーションへと到達することだろう。
(さっきまでゲロで頭がいっぱいだったけど、ちょっと落ち着いてみると、やっぱエロイな。この状況……)
そんな美少女が、タオル一枚で隣にいるという状況に、改めてそんなことを考えてしまうユーリだった。
「……って、どうしたんですか、ユーリ先輩?」
「ごめん。おっぱいガン見してた」
「だとしてもそんなにちゃんと言わないでください」
赤い顔でタオルの位置を直しつつ、ヒィロは言葉を続けた。
「……まだ気持ちの整理がつかない部分がありますが、ユーリ先輩がそんなふうに思ってくれていたのは、少し……。
いえ、かなり、嬉しい、です」
「……うん。良かった」
前にも同じような声かけをしたことは、何度かあった。
しかし、人はその時々の心境によって、言葉の解釈が違うものだ。
同じことを言われても、スッと入ってくることもあるし、そうでないときもある。
彼女の心情とユーリの言葉掛けが、うまくマッチングしたようだ。
エモだった。
「正直、自分はまだ、自分のことがそんなに信用できません。
ほとんど勢いだけで『アンペルマン』の……あんな巨大組織のトップになってしまったし、先輩はできると言ってくれましたが、自分では【勇装龍気】を使いこなせる気配も感じない……正直、この先やっていけるか、不安しかありません」
ヒィロは自身の掌を見つめる。
彼女の不安心の表れのように、その手は僅かに震えていた。
「……しかし、」
──その不安を押さえつけるように、ヒィロは力強く手を握り、そして前を向いた。
「ユーリ先輩が……この世界で一番尊敬している人が、自分のことを信じていると、そう言ってくれました。
あなたが信じているものなら、自分も信用できます。
だから──もう少しだけ、自分を信じて、頑張ってみようと思います」
「……うん。ありがとう」
ヒィロの頭をぐしゃぐしゃと撫でつつ、ユーリは内心で胸を撫で下ろしていた。
彼女の気持ちが折れてしまいそうになったとき、正直かなり焦った。
ここまで大きな問題なく計画が進んでいたものの、肝心の彼女が折れてしまったら元も子もない。
ゆえに、不本意ながらもジゴロな手段に出てしまった。
彼女への気持ちを誤魔化してしまうで申し訳なかったが、結果としてはこの通り。
彼女はきちんと、自分の力で前を向いてくれた。
過程はどうあれ、こちらの意図したとおりの結論に結びついたのだ。
ユーリもヒィロもメンタルはよわよわだが、一度決めたことに関しては、一定の信念を持って邁進することができる。
だからきっと、彼女はもう大丈夫だろう。
(って、毎度毎度、綱渡り過ぎて泣けてくる……。こんなんでよくいままでやって来られたな、僕。全部終わったら、ほんとに田舎に帰って稼業継ごうかな……)
などと、今度はこちらが弱気に陥りかけたところで、いかんいかんと小さく首を振る。
ユーリには、まだやるべきことが残っているのだ。
「それでね、ヒィちゃん。実はもうひとつ、話しておかなきゃいけないことがあるんだ」
「ええ、それもセイラ様から概要は聞いているので、なんとなくは把握しています。ユーリ先輩の口から詳細をお聞かせ願いたい」
「うん。じゃあまずは……」
「……し、しかし、その前に……っ」
そこでヒィロは大きく深呼吸をすると、その高鳴りを抑えるように胸に手を置く。
そして、覚悟を固めるように立ち上がると、ユーリの前に屹立し、
「……その前に、その……し、鎮めていただけませんか?」
「……え?」
水滴の伝う大きな乳房と、柔らかな曲線を描く腰回りと太もも。
タオル一枚に包まれた肢体を晒しながら、美少女がそんなことを言っているのだった。
「……えっと、えーっと」
と、二秒ほど固まってから、ユーリは数回瞬きし、
「……こ、この流れで、そうなるの?」
「この流れだからそうして欲しいんです」
と、ヒィロはとろんとさせていた目を僅かに眇め、
「だいたい、ユーリ先輩は昔から無責任過ぎるんですよ。ふざけたり、酔った勢いでキスしてきて、そ、そのあと、ワンチャンなにかあるかなって思っても、そのまま放っておかれて……!
自分だって女なんです! そんな中途半端なことをされたら……た、溜まるものは溜まるんですよ!
さっきのだって……か、かなり、ヤバかったんですから……!」
その言葉が示す通り、彼女は下腹あたりを抑えながら、下半身をもじもじと揺り動かした。それに伴って大きな乳房も揺れ、ユーリは思わず息を飲む。
ヒィロは常日頃から厳しく自身を律し、勇者らしく在ろうと心がけていた。
しかしやはり、その反動はかなりのものになっていたようだ。
「……えっと、イケメンでごめん」
「謝って済む問題じゃありません!」
「わっぷ!」
ザバッ! と、ユーリの前に迫った彼女は、渾身の勇気を振り絞るようにして、言った。
「で、ですから、自分をこんなにした責任は、きちんと取ってください! 話を聞くのはそのあとです!」
「すごい交渉術使うね! ってか、するって言ったって……君、その、初めてだよね?
本当にできるの? たぶん結構痛いよ?」
「……ですから、子ども扱いしないでください!」
もう一度大きく深呼吸をすると、ヒィロはユーリの顔を掴み、その唇に自身のそれを重ねた。
「おお」
「……ほ、ほら。自分だってする気になれば、これくらいはできるんです!
あまり、自分を舐めないでいただきたい……!」
「……う~ん。困ったねえ」
ユーリは小さく唸りながら、軽く頬を掻いて──。
■
「……子ども扱い、してなかったでしょ?」
「…………はい♡」
で、こうなった。
具体的にどうなったかというと、あの申し出の後、ヒィロを二階の部屋へと連れ込んだユーリが、がっつりとすることをして、それも先ほど終わり、ふたりでベッドへと横たわって、
「ああ、でも『舐めないでいただきたい』って約束は、守れなくてごめんね?」
「は、恥ずかしいこと、言わないでください……♡」
で、こうなった。
シーツにくるんだ身体をモジモジと動かせながら、ヒィロは上目遣いでユーリを見上げると、
「……というか、初めからこうするつもりだったのなら……なぜ気のない素振り見せたんですか?」
「ちょっと焦らしたほうが楽しんでもらえるかなと思って」
「もう……意地悪……♡」
好青年のイメージが優り、そちらのイメージが置き去りになりがちだが、決して忘れてはいけない。
──ユーリは、ちゃんとヤリチンなのだ。
ともあれ、彼女のことを大事に思っていることは本当だ。
その実力を信じ、『アンペルマン』を継がせるために育ててきたことも、また事実。
本物の妹のように可愛がってきたし、楽しい思い出を共有してきた事実も変わらない。
ユーリはヒィロの後輩にして、大事な仲間なのだ。
その事実はなにがあっても揺るがないし、これからもその関係は変わらないだろう。
が、それはそれとして。
ユーリは昔から、ヒィロのことをがっつりと女として見ていたのだった。
ヒィロにキスやボディタッチをし続けていたのも、すべて計算の上の行動。
彼女をムラムラさせるためにやっていたことだった。
いずれこうなったとき、美味しくいただくつもりでいた。
ユーリ・ザッカ―フィールド。
彼は、切り離して考えられるタイプのヤリチンだった。
同じような手法で落としたうぶな女の子は数知れない。
それはセンテンススプリング砲もぶち食らうというものだった。
「ごめんね。ヒィちゃん可愛いから、ついついイジめたくなっちゃって」
そんなスキャンダラス勇者はしかし、ヒィロの肩を抱きながら、気遣うような視線を彼女に向け、
「お腹痛くなったり気持ち悪かったりしたら、すぐ言うんだよ? そのときは痛くなかったかも知れないけど、あとでどっか痛くなることもあるみたいだからね。
薬もあるから、なんか変な感じがしたらちゃんと言って?」
「は、はい……ありがとう、ございます……♡」
その気遣いに、ヒィロは嬉しそうに目を細め、ユーリの手を愛おしそうに握った。
これだけヤリ散らかしているユーリが、未だに刺されたり訴訟を起こされたりしないのは、こういった気遣いができるからだった。
相手が行きずりの女の子だったとしても、事後のピロートークやアフターケア欠かさずに行い、あと腐れないが無いように全力で務める。
シゴデキなヤリチンなのだった。
それはともかく、
「それでね、ヒィちゃん。さっきの話の続き、してもいいかな?」
ユーリがそう言うと、ヒィロはとろんとした目をぱちくりとさせて、
「えっと……ふたりのこれからの話……でしたっけ? 赤ちゃんの名前とか……♡」
「うん。してないかな、そんな話は」
ヤッベ意外と重い系だこの子……などと危機感を感じつつも、ユーリは続ける。
「僕たちの作戦について、だよ」
「あ、ああ、ああ! す、すいません! そうでした。そうでしたね」
ヒィロはほっぺたをパチパチと叩くと、仕事モードの顔でユーリを見た。
「すいません。お聞かせいただきたい」
「うん。まあ、作戦ってほど大げさなもんじゃないけど……」
そのように前置きをしてから、ユーリは一度目を閉じる。
確かにこれは、作戦と呼べるほど大層なものではない。
穴だらけな計画だし、何度も躓きそうになってきた。
が、ここまではどうにかうまくいっている。
そして、この調子でこのままいけば──。
「いままで僕たちはさ、非友好国の帝国にうまいことやられて、勇者としての活動を制限されて生きてきた。
そんでとうとう、引退にまで追いやられた。
ここまではマジでやられっぱなしだ。
でもね。ヒィちゃん」
ユーリは目を開け、ひどく好戦的な顔で笑った。
「ここから全部ひっくり返す。
今度はこっちが刺す番だ。
本当は君を巻き込むつもりはなかったけど、真相を知ったからには協力して貰うよ、ヒィちゃん」
「……はい!」
威勢よく返事をするヒィロ。その顔にも精悍な面魂が宿っており、作戦に対する熱意が感じられた。
……が。
「……すいません。先輩のその顔、カッコよすぎて無理なんで……ちょっと、イチャつきながら聞かせて貰ってもいいですか♡」
「……うん。いいよ、全然。うん。大丈夫だよ」
──生まれて初めて、刺される系の子に手を出してしまったかもしれない。
そんな予感に戦々恐々としつつ、ユーリは甘えてきた彼女の頭を撫でながら、作戦を話し始めるのだった。
※※以下筆者後書き※※
ユーリ「やられたら、やり返す……」
ヒィロ「あ、それ絶対言わないほうがいいと思います」
ユーリ「……ダメかなあ」
ヒィロ「ダメですね」
ユーリ「そっかぁ」
ヒィロ「はい。かわいそうですけど……」
ユーリ「言いたいなあ」
ヒィロ「言わせてあげたいですけど……」
ユーリ「…………」
ヒィロ「…………」
ユーリ「倍返しだ!!」
ヒィロ「なんで言っちゃうんですか!?」
今回もご覧いただきありがとうございました!
本日は18時にもう一本投稿となっております。よろしければご一読下さい!
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ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。

