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勇者辞めますの真相編
20話 “スタンピード” イラストあり
「アンペルマンの名前の由来?」
ヒィロと作戦を共有し合った、そのあと。
徐々にイチャイチャモードが落ち着いてきた彼女に、唐突にそんなことを聞かれて、ユーリは思わずオウム返しをしてしまった。
「あれ? 話したことなかったんだっけ?」
「はい。あまりきちんと聞いたことがなかったので、この機会にお聞かせ願いたい」
シーツにくるまり、ユーリの胸板に頭を乗せているヒィロは、視線だけ上に向けながらそんなことを聞いてくる。
その身体はわずかに汗ばみ、顔全体にもまだ火照りが残っているため、なんとも艶かしい寝姿だった。
彼女から漂うエロスの残滓を堪能しつつ、ユーリは口を割る。
「全然いいけど……なんでこのタイミング?」
「いや、これから自分が背負う組織ですから、名前の由来くらいは知っておくべきかと思いまして」
「お~! すごいねヒィちゃん、なんか前向き~!」
そう言って頭を撫でると、彼女は心地よさそうに、しかし、少しだけ複雑そうな表情で笑った。
「はい……不謹慎な話かも知れませんが、こう、することをしたら、本当に気持ちがスッキリしたといいますか……。悶々と悩んでいたことが、そんなに重い問題ではないように思えてきたんです」
身体のほうは疲れているものの、意識はクリアになったし、なんだか物事をポジティブに考えられるようになった気がするのだ。
セックスにそういった効果があることはなんとなく知っていたが、ここまでのものとは思わなかった。
……まあ、そのおかげで気持ちが楽になった、というのも、いいんだか悪いんだか、よく分わからない話ではあるのだが。
そんなことを思っていると、ユーリは実にこともなげに、
「不謹慎なんかじゃないよ。エッチってそういうもんだからね」
「ハッキリ言わないでくださいよ……」
「でも本当のことだよ。ふざけた話でもなんでもなく、エッチの力って凄いんだ。
僕も魔王軍とバチボコにやり合ってて、本当に死ぬほどしんどいときが何回もあったけど、エッチのおかげでどうにか乗り切れたからね」
「人類ってエッチに救われてきたんですか?」
「人類ってエッチに救われてきたんだよ」
「人類ってエッチに救われてきたのかあ……」
人類ってエッチに救われてきたのである。
「ではなくて、由来ですよ、由来」
「あ、ごめん。全然ちゃんと忘れてた。
んーと……それもごめんなんだけど、マジで大した理由ないんだ。パーティ名考えてるとき、たまたま大通り歩いてて、信号兵士の人がいた、っていうだけで……」
「……それだけですか?」
「うん。それだけ」
信号兵士とは、馬車通りの多い道などで、交通の安全を確保するため、進行、停止などの信号を特殊な魔道具で示す王国兵士のことだ。
なにか深い意味があるのかと思ったが、まさかそのままの意味だったとは……。
「……あー。でもなんか、それっぽいこと考えなきゃーって思って、適当に後付けした理由なら、まああるよ」
「では、そちらもお聞かせいただきたい」
「んー……まあ本当に適当なんだけど……」
そこでユーリは、そっぽを向きながら鼻の辺りを掻き、
「……この世界ってさ、魔王軍に占領されてる地域とか、魔物がいっぱい住んでるとことかの、人間が立ち入れない場所……赤色信号が点いてる場所って、結構いっぱいあると思うんだよね」
「はい」
「でもさ、僕たちがさ、そういう場所を、こう、頑張ってさ……青色信号に変えていければいいなーって……思って。
っていう、感じ」
「……はい」
「てきと―にね。適当に考えたのは、そういう感じのやつ」
「……なるほど」
ニヤリ、と、ヒィロにしては意地悪な笑顔を浮かべ、表情のままの口調で言う。
「そちらが本当の理由、というわけですね」
「違うってば。後付けだよ。適当な後付け」
「なんでそういう嘘つくのだけは下手なんですか、先輩って」
「嘘じゃないって。あの……マイチューバーの考察動画でやってたやつをそのまま言っただけだよ」
「『アンペルマン』の名前の考察動画上げてるマイチューバーなんていませんよ」
「いるよー、いるいる。僕見たもん」
「えー、じゃあいまから見ましょうよ。そこのデッカいテレビで」
「いやでもその人垢BANくらってたかも知れない。もうチャンネルないかも」
「どんな考察動画あげたら垢BANになるんですか」
そんなバカ話に興じつつ、ヒィロは思う。
ユーリは、勇者なのだ。
誰よりも人々の平和を願い、それを実現させるため、身を粉にして戦うことができる人。
人類の赤色信号を、青色に変えることができる人。
ヒィロのほうが勇者っぽい、などと言ってくれたが、自分はそうは思わない。
彼ほど勇者と言う肩書が似合う人物など、他にいないのだ。
……だからこそ、思ってしまう。
すべてを明かされ、そして理解した後であっても、ヒィロはこんなことを思ってしまうのだ。
「……ユーリ先輩は、これでいいんですか?」
「…………」
その質問に、ユーリはお茶らけた態度を取り下げると、悲しそうに笑った。
「……なにが?」
「全部ですよ。勇者を引退すること。『アンペルマン』を去ること。
……もう、魔王軍から人々を救うことができないこと。
ユーリ先輩は、そのままでいいんですか?」
ユーリたちの立てた作戦は、確かに帝国に一泡吹かせることができるかもしれないものだ。
が、それはあくまで、ユーリが引退することを前提に立てられた作戦である。
言うなれば、彼は自分が死ぬために戦っているのだった。
「いまからでも遅くありません。自分が直接女王陛下に陳述して、元老院の決定に異議申し立てを……」
「いや遅い遅い遅い。もうそんなの散々したし、女王様も僕らの作戦通りに動いてくれてるんだから、いまさら止められないよ。
……っていうか、別に怒る感じで言うんじゃないけどさ、ヒィちゃんに全貌を伝えられなかったのって、君にそういうところがあるからだよ?」
「…………っ!」
そう注意すると、ヒィロはなんとも言えない顔で口を引き結び、上げていた頭をポフッとユーリの胸板に着地させた。
「ごめんなさい……」
「いや、だから別に怒ってるんじゃないし、それが君のいいところでもあるわけだけど……う~ん、まあ、うん。ほどほどにね、ほどほどに」
まさにこういう葛藤と軽お説教が、ことあるごとに生じる恐れがあたったため、彼女に全貌を話せなかったわけだが……それはともかく。
「う~ん……まあ、納得してるかどうかって言ったら、そりゃ納得してないよ。僕は別に勇者に向いてるわけじゃないけど、僕の力を必要としてくれる人がいるうちは、そう在りたいと思ってるからね。
……ただ、なるべくしてこうなったのかな、っていうのは、思ってる」
「……なるべくしてなった?」
「うん、だってさ、まあ自分で言うのもなんだけど、僕って強いじゃん? それに、元祖勇者パーティのみんなもバカ強いでしょ?」
「先輩たちがその気になれば、一晩で国一つがなくなる……吟遊詩人の語り草ですね」
もちろんそれは、彼らが脚色して歌にしたものである。
が、ヒィロは知っている。
ユーリたちの戦闘を目の当たりにしたヒィロは、知っているのだ。
それが誇張ではなく、過小評価であると。
彼らの実力は、そんなものではないのだ、と。
そんな力を持つユーリは、恥ずかしそうにほっぺたを掻きつつ、
「うん。まあ、そんなんしないしできないけど……でも、そんなふうに言われてる僕たちが、1500人も冒険者従えてるんだよ? しかも超高価な魔導具やらでブリンブリンに武装してさ。
そりゃあ、手綱の百本や二百本はつけておきたいって思われちゃうよ」
『アンペルマン』は言うまでもなく、魔王軍と戦うために組織された武装勢力だ。
その刃が民草に向くことはあり得ない。
が、そこは重要な問題ではないのだ。
やるきになれば、できてしまうこと。
できるだけの力を持っていること。
そしてその決定権は、国連でも『勇者連合』でもなく、たったひとりの代表取締役に委ねられていること。
大人たちは、そう言った部分を気にしているのだった。
平たく言ってしまえば、
「見る人から見れば僕たちは、なにをしでかすか分からない危険集団でもあるんだ。個人が持ち得る戦力としても、さすがに大きすぎる。
人類の持ち得る戦力のバランスを、著しく乱す存在なんだよ。
垢BANできるなら垢BANしたい……そんなふうに思う人も、いるだろうね」
「しかし、それは専制君主の独立国家などでも同じことが言えるのでは……」
「国っていうのは何百年も何千年もかけて人が作り上げてきた概念だよ。十年足らずで、しかもほとんど誰の手も借りずに急成長した武装勢力に、同じ考えは持ってもらえないよ」
ユーリは悲しげな、しかしどこか納得したような口調で告げる。
「僕たちはね、やり過ぎたんだ。
魔王軍と戦うことに夢中で、一緒に戦ってくれる人たちが増えていくのが嬉しくて、大人の事情を考えずに、組織を大きくし過ぎてしまった。
僕らの引退を提案したのはガイム大臣だけど、それを可決したのはたくさんの人たちなんだ。つまり、みんな大なり小なり同じようなことを思ってたってこと。
だからさ、ヒィちゃん。これは仕方のないことなんだよ」
「……先輩」
悲しい、悔しい、そして腹立たしい……それらの感情がないまぜになった表情を浮かべるヒィロに、ユーリは軽くキスをして、優しく笑いながら言った。
「でもね、別にそれを悲観的に捉えてるだけでもないんだ。むしろ、これからだって思ってる」
「これから、ですか?」
「うん。これから。
僕は君の力を信じてるけど、他の人たちはそうじゃない。君がトップになることで、『アンペルマン』は弱体化するって考えてるんだ。失礼しちゃうよね。
でも、逆にそこを利用してやるんだ。
僕が引退することで、元老院も帝国も、今後一切『アンペルマン』の運営には口出しすることはないっていう約束を取り付けてるんだよ」
厳密に言えば、口出しをする『必要が無い』と思われているようだ。
ユーリなきあとの『アンペルマン』に、それほどの脅威は感じていないのだろう。
舐められたものだ、と、腹立たしい気持ちもあるが、それも利用させてもらう。
「それに伴って、『アンペルマン』を縛る条約規約はかなり緩和されることになってるんだよ。いまよりも自由に動けるようになる。
いまよりもたくさんの人が救えるようになるんだよ」
「たくさんの、人を……」
「そうだよ、ヒィちゃん。
『アンペルマン』は、ここからなんだ」
ユーリは拳をグッと握り、それを天井に突き上げる。
「まずは五年……いや、十年くらいかかっちゃうかもしれないけど、地道に堅実に実績を積み上げて、それと同時にたくさんのひとたちと関わっていく。そうやって、今度はしっかり時間をかけて、「僕らが危ない集団じゃない」っていうことを、世界中の人に分かって貰うんだ。組織のブランディングだね。
信頼と実績。そのふたつがあれば、どんなに組織を大きくしたって、誰もなにも言えなくなる。くだらない権力争いに巻き込まれることもなくなる。
僕はそうやって、『アンペルマン』を、世界最強の組織に……平和の象徴にしたいんだよ。
そんで、みんなが安心して暮らせる世界を作りたいんだ」
力強く握っていた拳をぱっとほどき、今度はヒィロの手を優しく握りつつ、
「で、地道に堅実に努力を積み上げるってことに関しては、君の右に出る人はいないよね。
だからヒィちゃん、君ならそうできるって信じてるよ」
「先輩……」
頭に置かれたその感触は心地よかったが、再び不安心が顔を覗かせる。
世界最強の組織。
みんなが安心して暮らせる世界。
勇者としての力を持たない自分に、そんな大層なものが作れるだろうか?
最強の勇者に渡されたバトンを、自分なんかが受け取って良いのだろうか?
(そうじゃないだろ……!)
再び押し寄せてきた弱気の波を、ヒィロは無理やり打ち消した。
違う。
ユーリの語った夢は、本来彼自身が紡ぎたかったものなのだ。
彼自身が行くはずだった夢の果てなのだ。
それを、苦渋の決断で後任に譲ろうとしている。
だったら、ヒィロがするべきことは、弱気になることではない。
そして、ヒィロが言うべき言葉は──。
「分かりましたよ、先輩」
グッとその手を握り返しつつ、ヒィロは力強く笑った。
「先輩が果たせなかった夢は、思いは、必ずや自分が成し遂げて見せます。
ですから、あとのことはすべて、自分に任せてください!」
「っしゃらあああい! 僕たちの冒険はこれからだああぁぁっ!」
「そうだっ……すいません、なんですか、それ?」
「あれ!? ヒィちゃん少年漫画とか読まない人だっけ!?」
「えっと、すいません。少女漫画なら多少はあれなんですけど……でも覚えますよ。なんでしたっけ? 僕たちの冒険は……」
「いいよいいよいいよ! なんか恥ずいよ、説明すんの」
「いや覚えますって。足並み揃えさせてくださいよ!」
と、結局はバカ話にシフトしてしまったが、ユーリは満ち足りた気分だった。
後任が頼もしいことは十分に分かった。
そして、こちらの思いも告げられた。
少し寂しくもあるが、これで本当に、安心して引退することができる。
──残る問題は。
「好きな人の好きなものくらい、把握しておきたいんです。
だ、だって、自分たち、これから……」
と、今後の予定を考えていると、ヒィロが急にモジモジとし始め、頬を紅潮させながらユーリを見つめ、
「……これから、その……お付き合いを始めるわけですし♡」
「…………………………………………………………………………ん?」
と、顔だけはニコニコとしたまま、めちゃくちゃ固い声でそう言うと、ヒィロは変わらずモジモジと身体を揺り動かし、
「こういうことをするっていうことは、その、そういうこと……ですもんね♡
あ、でもこういうのって、口に出すのも野暮なもの、なんですかね? えへへ、ごめんなさい。初めてなので、そういうのも良く分からなくて……♡」
「うんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうん」
「でも、あの、初めてなんで……っていうか、えへへ♡ こういうの憧れてたんで、い、言っちゃいますね。
えっと、えーっと……。ふ、ふつつかな彼女ですが、これからよろしくお願いします♡」
「うんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうん」
ニコニコ顔で固まることしばし、ユーリはゆっくりとベッドから立ち上がると、シュボッ、とタバコに火をつけ、
「……………………………………………………………………………………………重ぇな」
「なんてっ!?」
ヒィロもシーツをはぎ取って立ち上がり、しかし自分の姿に気付いて「あっ……」と声を上げ、その辺にあったタオルを身体に巻く。
そうしてから、改めてユーリの前に立つと、
「え、え? ユ、ユーリ先輩? 自分たち……し、しましたよね、そういうこと!?」
「したねえ」
「じゃ、じゃあその……お付き合いをするってことじゃあ……」
「いいかいヒィちゃん。よく聞いて」
ユーリは真っすぐな瞳で言った。
「そういうことをしたから付き合う……っていうのはね、少女漫画の世界のお話なんだよ。現実世界でそんなことしてる人、ひとりもいないよ」
「ひとりもいないんですか!?」
「そういうことはスキンシップの延長……ハイタッチとか肩パンみたいなものさ」
「ハイタッチと肩パン!?
い、いや、でも、待ってください……! 確かに自分は、そういう知識はないですし、そういうものだと言われたら、なにも反論することはできないのですが……!」
ヒィロはひたすら戸惑ったように視線を右往左往させてから、やがて泣きそうな顔でユーリを見上げ、
「だ、だったら、自分のこの気持ちはどうなるんですか? 自分はもう、ユーリ先輩のことが……す、好きになってしまっているんですよ……?」
「僕だってヒィちゃんのことが大好きさ!」
ユーリはタバコを灰皿に放り投げると、ヒィロの身体を力強く抱きしめる。
で、さすがにちょっと気まずそうな声で告げた。
「で、でも、他の女の子も、みんな大好きなんだ」
「死ねああぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
ゴズッ! と、ヒィロの右フックがユーリの顔に突き刺さり、その身体が錐もみながらベッドへと転がった。
「最悪だあぁぁ! なんでこんなクズを好きになってしまったんだろう!?」
「イケメンで足長くて性格いいからじゃないかな!」
「自分で言わないでください! それはありますけど!」
「あとマッジで体の相性最強だから!」
「もう黙ってください! 殺してしまいそうだ!!」
と、どこかで見たようなやりとりを繰り広げ始めた、そのとき。
「……え?」
──ユーリのつけていたチョーカーが、反応を示した。
言うまでもなく、これは【勇装龍気】に反応する魔導具だ。
ユーリはいま【勇装龍気】を使っていない。
ということは……!
「……うわ、うわわ! やべやべやべ! ガイム大臣から念話だ!」
その推論に行きつくより早く、チョーカーの管理権限を持っている男からの着信が入り、ユーリは慌ててケータイを手に取る。
「はいもしもし! はいザッカ―フィールドです~はい~! いえ、違うんです違うんです! あの、寝ぼけててぶっ放しちゃったみたいで……はい、前にも何回かあったやつです、はいはい! 始末書と報告書と、それから……」
と、数分かけてこってり絞られてから、ユーリは念話を切った。そちらはそちらで問題なのだが、それよりも早くはっきりさせておかねばならないことがある。
すなわち……。
「……ヒィちゃん。ちょっと【勇装龍気】使ってみてくれる?」
「……はい」
ヒィロも自分の身体の異変に気づいたらしく、茫洋としながら自身の手を見つめている。
しかしやがて、なにかの覚悟を固めるように、ユーリに向かって手を突き出すと、
「……いきます」
「僕に向かって撃たないでよ! 死ぬよ!? それはちゃんと死んじゃうよ!?」
「大丈夫です。先輩を殺して自分も死ぬので」
「だいじょばないをだいじょばないで上塗りしないで! え、ウソでしょ、こんな形で僕の夢終わんの!? ヤリチンエンドって聞いたことない……って、あれ、また念話」
ヤンデレで夢破れそうになっていると、再びユーリのケータイが鳴った。
その相手は、『アンペルマン』所属のSランク冒険者パーティ『グランピングパンダ』の拳闘士、パンダだ。
彼にも作戦の一端を任せているのだが、その内容は……。
「もしもし、パンダくん。なにかあった?」
嫌な予感を覚えながらそう訊ねると、案の定、猫熊族の青年は渋く苦い声で、
「マズいことになったぞ、勇者。
──予定よりだいぶ早く、サザン山脈で大暴走が始まった」
※※以下筆者後書き※※
ユーリ「……ヒィロ。お前、ちょっとヒィロの目を発現させたまま水見式やってみろ! もしかしたら、お前……!」
ヒィロ「な、なんの漫画のネタかは分かりませんが……その、彼氏に『お前』って言われるの……悪い気がしないですね♡」
ユーリ(……彼女ムーブ入ってる)
ヒィロ「でも、他の女の子にもおんなじことしちゃ、ダメですよぉ~♡」
ユーリ(……束縛がすごい)
ヒィロ「もしそんなことしたら──一緒に死んであげますね」
ユーリ(運命共同体……)
今回もご覧いただきありがとうございました!
これにて2編は終了です!
次回からやっと……やっと、俺TUEEEEと激アツ展開が書いていける……!
いや違うんです。書いてるうちに他に書きたい事できちゃったり、ヤベ伏線張り忘れたここでこういう展開入れなきゃ! みたいな事態が続出しまして、はい。知らないうちにキモ長ぇ話になってしまいまして……。
…………だからプロットっていうものが必要なんですね(遠い目)。
ともかく、伏線張るのに20話使う、へっぽこ作家にお付き合いいただき、まことにありがとうございます!!
次の編からは、伏線全回収の気持ち良い展開に持って行けると思いますので、懲りずにお付き合いいただければ幸いです!!
ご意見ご指摘、いいねやお気に入り登録、大会ポイントの投票など、よろしければお願いいたします!
よろしくお願いします顔のカリちゃむ置いておきます。
ヒィロと作戦を共有し合った、そのあと。
徐々にイチャイチャモードが落ち着いてきた彼女に、唐突にそんなことを聞かれて、ユーリは思わずオウム返しをしてしまった。
「あれ? 話したことなかったんだっけ?」
「はい。あまりきちんと聞いたことがなかったので、この機会にお聞かせ願いたい」
シーツにくるまり、ユーリの胸板に頭を乗せているヒィロは、視線だけ上に向けながらそんなことを聞いてくる。
その身体はわずかに汗ばみ、顔全体にもまだ火照りが残っているため、なんとも艶かしい寝姿だった。
彼女から漂うエロスの残滓を堪能しつつ、ユーリは口を割る。
「全然いいけど……なんでこのタイミング?」
「いや、これから自分が背負う組織ですから、名前の由来くらいは知っておくべきかと思いまして」
「お~! すごいねヒィちゃん、なんか前向き~!」
そう言って頭を撫でると、彼女は心地よさそうに、しかし、少しだけ複雑そうな表情で笑った。
「はい……不謹慎な話かも知れませんが、こう、することをしたら、本当に気持ちがスッキリしたといいますか……。悶々と悩んでいたことが、そんなに重い問題ではないように思えてきたんです」
身体のほうは疲れているものの、意識はクリアになったし、なんだか物事をポジティブに考えられるようになった気がするのだ。
セックスにそういった効果があることはなんとなく知っていたが、ここまでのものとは思わなかった。
……まあ、そのおかげで気持ちが楽になった、というのも、いいんだか悪いんだか、よく分わからない話ではあるのだが。
そんなことを思っていると、ユーリは実にこともなげに、
「不謹慎なんかじゃないよ。エッチってそういうもんだからね」
「ハッキリ言わないでくださいよ……」
「でも本当のことだよ。ふざけた話でもなんでもなく、エッチの力って凄いんだ。
僕も魔王軍とバチボコにやり合ってて、本当に死ぬほどしんどいときが何回もあったけど、エッチのおかげでどうにか乗り切れたからね」
「人類ってエッチに救われてきたんですか?」
「人類ってエッチに救われてきたんだよ」
「人類ってエッチに救われてきたのかあ……」
人類ってエッチに救われてきたのである。
「ではなくて、由来ですよ、由来」
「あ、ごめん。全然ちゃんと忘れてた。
んーと……それもごめんなんだけど、マジで大した理由ないんだ。パーティ名考えてるとき、たまたま大通り歩いてて、信号兵士の人がいた、っていうだけで……」
「……それだけですか?」
「うん。それだけ」
信号兵士とは、馬車通りの多い道などで、交通の安全を確保するため、進行、停止などの信号を特殊な魔道具で示す王国兵士のことだ。
なにか深い意味があるのかと思ったが、まさかそのままの意味だったとは……。
「……あー。でもなんか、それっぽいこと考えなきゃーって思って、適当に後付けした理由なら、まああるよ」
「では、そちらもお聞かせいただきたい」
「んー……まあ本当に適当なんだけど……」
そこでユーリは、そっぽを向きながら鼻の辺りを掻き、
「……この世界ってさ、魔王軍に占領されてる地域とか、魔物がいっぱい住んでるとことかの、人間が立ち入れない場所……赤色信号が点いてる場所って、結構いっぱいあると思うんだよね」
「はい」
「でもさ、僕たちがさ、そういう場所を、こう、頑張ってさ……青色信号に変えていければいいなーって……思って。
っていう、感じ」
「……はい」
「てきと―にね。適当に考えたのは、そういう感じのやつ」
「……なるほど」
ニヤリ、と、ヒィロにしては意地悪な笑顔を浮かべ、表情のままの口調で言う。
「そちらが本当の理由、というわけですね」
「違うってば。後付けだよ。適当な後付け」
「なんでそういう嘘つくのだけは下手なんですか、先輩って」
「嘘じゃないって。あの……マイチューバーの考察動画でやってたやつをそのまま言っただけだよ」
「『アンペルマン』の名前の考察動画上げてるマイチューバーなんていませんよ」
「いるよー、いるいる。僕見たもん」
「えー、じゃあいまから見ましょうよ。そこのデッカいテレビで」
「いやでもその人垢BANくらってたかも知れない。もうチャンネルないかも」
「どんな考察動画あげたら垢BANになるんですか」
そんなバカ話に興じつつ、ヒィロは思う。
ユーリは、勇者なのだ。
誰よりも人々の平和を願い、それを実現させるため、身を粉にして戦うことができる人。
人類の赤色信号を、青色に変えることができる人。
ヒィロのほうが勇者っぽい、などと言ってくれたが、自分はそうは思わない。
彼ほど勇者と言う肩書が似合う人物など、他にいないのだ。
……だからこそ、思ってしまう。
すべてを明かされ、そして理解した後であっても、ヒィロはこんなことを思ってしまうのだ。
「……ユーリ先輩は、これでいいんですか?」
「…………」
その質問に、ユーリはお茶らけた態度を取り下げると、悲しそうに笑った。
「……なにが?」
「全部ですよ。勇者を引退すること。『アンペルマン』を去ること。
……もう、魔王軍から人々を救うことができないこと。
ユーリ先輩は、そのままでいいんですか?」
ユーリたちの立てた作戦は、確かに帝国に一泡吹かせることができるかもしれないものだ。
が、それはあくまで、ユーリが引退することを前提に立てられた作戦である。
言うなれば、彼は自分が死ぬために戦っているのだった。
「いまからでも遅くありません。自分が直接女王陛下に陳述して、元老院の決定に異議申し立てを……」
「いや遅い遅い遅い。もうそんなの散々したし、女王様も僕らの作戦通りに動いてくれてるんだから、いまさら止められないよ。
……っていうか、別に怒る感じで言うんじゃないけどさ、ヒィちゃんに全貌を伝えられなかったのって、君にそういうところがあるからだよ?」
「…………っ!」
そう注意すると、ヒィロはなんとも言えない顔で口を引き結び、上げていた頭をポフッとユーリの胸板に着地させた。
「ごめんなさい……」
「いや、だから別に怒ってるんじゃないし、それが君のいいところでもあるわけだけど……う~ん、まあ、うん。ほどほどにね、ほどほどに」
まさにこういう葛藤と軽お説教が、ことあるごとに生じる恐れがあたったため、彼女に全貌を話せなかったわけだが……それはともかく。
「う~ん……まあ、納得してるかどうかって言ったら、そりゃ納得してないよ。僕は別に勇者に向いてるわけじゃないけど、僕の力を必要としてくれる人がいるうちは、そう在りたいと思ってるからね。
……ただ、なるべくしてこうなったのかな、っていうのは、思ってる」
「……なるべくしてなった?」
「うん、だってさ、まあ自分で言うのもなんだけど、僕って強いじゃん? それに、元祖勇者パーティのみんなもバカ強いでしょ?」
「先輩たちがその気になれば、一晩で国一つがなくなる……吟遊詩人の語り草ですね」
もちろんそれは、彼らが脚色して歌にしたものである。
が、ヒィロは知っている。
ユーリたちの戦闘を目の当たりにしたヒィロは、知っているのだ。
それが誇張ではなく、過小評価であると。
彼らの実力は、そんなものではないのだ、と。
そんな力を持つユーリは、恥ずかしそうにほっぺたを掻きつつ、
「うん。まあ、そんなんしないしできないけど……でも、そんなふうに言われてる僕たちが、1500人も冒険者従えてるんだよ? しかも超高価な魔導具やらでブリンブリンに武装してさ。
そりゃあ、手綱の百本や二百本はつけておきたいって思われちゃうよ」
『アンペルマン』は言うまでもなく、魔王軍と戦うために組織された武装勢力だ。
その刃が民草に向くことはあり得ない。
が、そこは重要な問題ではないのだ。
やるきになれば、できてしまうこと。
できるだけの力を持っていること。
そしてその決定権は、国連でも『勇者連合』でもなく、たったひとりの代表取締役に委ねられていること。
大人たちは、そう言った部分を気にしているのだった。
平たく言ってしまえば、
「見る人から見れば僕たちは、なにをしでかすか分からない危険集団でもあるんだ。個人が持ち得る戦力としても、さすがに大きすぎる。
人類の持ち得る戦力のバランスを、著しく乱す存在なんだよ。
垢BANできるなら垢BANしたい……そんなふうに思う人も、いるだろうね」
「しかし、それは専制君主の独立国家などでも同じことが言えるのでは……」
「国っていうのは何百年も何千年もかけて人が作り上げてきた概念だよ。十年足らずで、しかもほとんど誰の手も借りずに急成長した武装勢力に、同じ考えは持ってもらえないよ」
ユーリは悲しげな、しかしどこか納得したような口調で告げる。
「僕たちはね、やり過ぎたんだ。
魔王軍と戦うことに夢中で、一緒に戦ってくれる人たちが増えていくのが嬉しくて、大人の事情を考えずに、組織を大きくし過ぎてしまった。
僕らの引退を提案したのはガイム大臣だけど、それを可決したのはたくさんの人たちなんだ。つまり、みんな大なり小なり同じようなことを思ってたってこと。
だからさ、ヒィちゃん。これは仕方のないことなんだよ」
「……先輩」
悲しい、悔しい、そして腹立たしい……それらの感情がないまぜになった表情を浮かべるヒィロに、ユーリは軽くキスをして、優しく笑いながら言った。
「でもね、別にそれを悲観的に捉えてるだけでもないんだ。むしろ、これからだって思ってる」
「これから、ですか?」
「うん。これから。
僕は君の力を信じてるけど、他の人たちはそうじゃない。君がトップになることで、『アンペルマン』は弱体化するって考えてるんだ。失礼しちゃうよね。
でも、逆にそこを利用してやるんだ。
僕が引退することで、元老院も帝国も、今後一切『アンペルマン』の運営には口出しすることはないっていう約束を取り付けてるんだよ」
厳密に言えば、口出しをする『必要が無い』と思われているようだ。
ユーリなきあとの『アンペルマン』に、それほどの脅威は感じていないのだろう。
舐められたものだ、と、腹立たしい気持ちもあるが、それも利用させてもらう。
「それに伴って、『アンペルマン』を縛る条約規約はかなり緩和されることになってるんだよ。いまよりも自由に動けるようになる。
いまよりもたくさんの人が救えるようになるんだよ」
「たくさんの、人を……」
「そうだよ、ヒィちゃん。
『アンペルマン』は、ここからなんだ」
ユーリは拳をグッと握り、それを天井に突き上げる。
「まずは五年……いや、十年くらいかかっちゃうかもしれないけど、地道に堅実に実績を積み上げて、それと同時にたくさんのひとたちと関わっていく。そうやって、今度はしっかり時間をかけて、「僕らが危ない集団じゃない」っていうことを、世界中の人に分かって貰うんだ。組織のブランディングだね。
信頼と実績。そのふたつがあれば、どんなに組織を大きくしたって、誰もなにも言えなくなる。くだらない権力争いに巻き込まれることもなくなる。
僕はそうやって、『アンペルマン』を、世界最強の組織に……平和の象徴にしたいんだよ。
そんで、みんなが安心して暮らせる世界を作りたいんだ」
力強く握っていた拳をぱっとほどき、今度はヒィロの手を優しく握りつつ、
「で、地道に堅実に努力を積み上げるってことに関しては、君の右に出る人はいないよね。
だからヒィちゃん、君ならそうできるって信じてるよ」
「先輩……」
頭に置かれたその感触は心地よかったが、再び不安心が顔を覗かせる。
世界最強の組織。
みんなが安心して暮らせる世界。
勇者としての力を持たない自分に、そんな大層なものが作れるだろうか?
最強の勇者に渡されたバトンを、自分なんかが受け取って良いのだろうか?
(そうじゃないだろ……!)
再び押し寄せてきた弱気の波を、ヒィロは無理やり打ち消した。
違う。
ユーリの語った夢は、本来彼自身が紡ぎたかったものなのだ。
彼自身が行くはずだった夢の果てなのだ。
それを、苦渋の決断で後任に譲ろうとしている。
だったら、ヒィロがするべきことは、弱気になることではない。
そして、ヒィロが言うべき言葉は──。
「分かりましたよ、先輩」
グッとその手を握り返しつつ、ヒィロは力強く笑った。
「先輩が果たせなかった夢は、思いは、必ずや自分が成し遂げて見せます。
ですから、あとのことはすべて、自分に任せてください!」
「っしゃらあああい! 僕たちの冒険はこれからだああぁぁっ!」
「そうだっ……すいません、なんですか、それ?」
「あれ!? ヒィちゃん少年漫画とか読まない人だっけ!?」
「えっと、すいません。少女漫画なら多少はあれなんですけど……でも覚えますよ。なんでしたっけ? 僕たちの冒険は……」
「いいよいいよいいよ! なんか恥ずいよ、説明すんの」
「いや覚えますって。足並み揃えさせてくださいよ!」
と、結局はバカ話にシフトしてしまったが、ユーリは満ち足りた気分だった。
後任が頼もしいことは十分に分かった。
そして、こちらの思いも告げられた。
少し寂しくもあるが、これで本当に、安心して引退することができる。
──残る問題は。
「好きな人の好きなものくらい、把握しておきたいんです。
だ、だって、自分たち、これから……」
と、今後の予定を考えていると、ヒィロが急にモジモジとし始め、頬を紅潮させながらユーリを見つめ、
「……これから、その……お付き合いを始めるわけですし♡」
「…………………………………………………………………………ん?」
と、顔だけはニコニコとしたまま、めちゃくちゃ固い声でそう言うと、ヒィロは変わらずモジモジと身体を揺り動かし、
「こういうことをするっていうことは、その、そういうこと……ですもんね♡
あ、でもこういうのって、口に出すのも野暮なもの、なんですかね? えへへ、ごめんなさい。初めてなので、そういうのも良く分からなくて……♡」
「うんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうん」
「でも、あの、初めてなんで……っていうか、えへへ♡ こういうの憧れてたんで、い、言っちゃいますね。
えっと、えーっと……。ふ、ふつつかな彼女ですが、これからよろしくお願いします♡」
「うんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうん」
ニコニコ顔で固まることしばし、ユーリはゆっくりとベッドから立ち上がると、シュボッ、とタバコに火をつけ、
「……………………………………………………………………………………………重ぇな」
「なんてっ!?」
ヒィロもシーツをはぎ取って立ち上がり、しかし自分の姿に気付いて「あっ……」と声を上げ、その辺にあったタオルを身体に巻く。
そうしてから、改めてユーリの前に立つと、
「え、え? ユ、ユーリ先輩? 自分たち……し、しましたよね、そういうこと!?」
「したねえ」
「じゃ、じゃあその……お付き合いをするってことじゃあ……」
「いいかいヒィちゃん。よく聞いて」
ユーリは真っすぐな瞳で言った。
「そういうことをしたから付き合う……っていうのはね、少女漫画の世界のお話なんだよ。現実世界でそんなことしてる人、ひとりもいないよ」
「ひとりもいないんですか!?」
「そういうことはスキンシップの延長……ハイタッチとか肩パンみたいなものさ」
「ハイタッチと肩パン!?
い、いや、でも、待ってください……! 確かに自分は、そういう知識はないですし、そういうものだと言われたら、なにも反論することはできないのですが……!」
ヒィロはひたすら戸惑ったように視線を右往左往させてから、やがて泣きそうな顔でユーリを見上げ、
「だ、だったら、自分のこの気持ちはどうなるんですか? 自分はもう、ユーリ先輩のことが……す、好きになってしまっているんですよ……?」
「僕だってヒィちゃんのことが大好きさ!」
ユーリはタバコを灰皿に放り投げると、ヒィロの身体を力強く抱きしめる。
で、さすがにちょっと気まずそうな声で告げた。
「で、でも、他の女の子も、みんな大好きなんだ」
「死ねああぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
ゴズッ! と、ヒィロの右フックがユーリの顔に突き刺さり、その身体が錐もみながらベッドへと転がった。
「最悪だあぁぁ! なんでこんなクズを好きになってしまったんだろう!?」
「イケメンで足長くて性格いいからじゃないかな!」
「自分で言わないでください! それはありますけど!」
「あとマッジで体の相性最強だから!」
「もう黙ってください! 殺してしまいそうだ!!」
と、どこかで見たようなやりとりを繰り広げ始めた、そのとき。
「……え?」
──ユーリのつけていたチョーカーが、反応を示した。
言うまでもなく、これは【勇装龍気】に反応する魔導具だ。
ユーリはいま【勇装龍気】を使っていない。
ということは……!
「……うわ、うわわ! やべやべやべ! ガイム大臣から念話だ!」
その推論に行きつくより早く、チョーカーの管理権限を持っている男からの着信が入り、ユーリは慌ててケータイを手に取る。
「はいもしもし! はいザッカ―フィールドです~はい~! いえ、違うんです違うんです! あの、寝ぼけててぶっ放しちゃったみたいで……はい、前にも何回かあったやつです、はいはい! 始末書と報告書と、それから……」
と、数分かけてこってり絞られてから、ユーリは念話を切った。そちらはそちらで問題なのだが、それよりも早くはっきりさせておかねばならないことがある。
すなわち……。
「……ヒィちゃん。ちょっと【勇装龍気】使ってみてくれる?」
「……はい」
ヒィロも自分の身体の異変に気づいたらしく、茫洋としながら自身の手を見つめている。
しかしやがて、なにかの覚悟を固めるように、ユーリに向かって手を突き出すと、
「……いきます」
「僕に向かって撃たないでよ! 死ぬよ!? それはちゃんと死んじゃうよ!?」
「大丈夫です。先輩を殺して自分も死ぬので」
「だいじょばないをだいじょばないで上塗りしないで! え、ウソでしょ、こんな形で僕の夢終わんの!? ヤリチンエンドって聞いたことない……って、あれ、また念話」
ヤンデレで夢破れそうになっていると、再びユーリのケータイが鳴った。
その相手は、『アンペルマン』所属のSランク冒険者パーティ『グランピングパンダ』の拳闘士、パンダだ。
彼にも作戦の一端を任せているのだが、その内容は……。
「もしもし、パンダくん。なにかあった?」
嫌な予感を覚えながらそう訊ねると、案の定、猫熊族の青年は渋く苦い声で、
「マズいことになったぞ、勇者。
──予定よりだいぶ早く、サザン山脈で大暴走が始まった」
※※以下筆者後書き※※
ユーリ「……ヒィロ。お前、ちょっとヒィロの目を発現させたまま水見式やってみろ! もしかしたら、お前……!」
ヒィロ「な、なんの漫画のネタかは分かりませんが……その、彼氏に『お前』って言われるの……悪い気がしないですね♡」
ユーリ(……彼女ムーブ入ってる)
ヒィロ「でも、他の女の子にもおんなじことしちゃ、ダメですよぉ~♡」
ユーリ(……束縛がすごい)
ヒィロ「もしそんなことしたら──一緒に死んであげますね」
ユーリ(運命共同体……)
今回もご覧いただきありがとうございました!
これにて2編は終了です!
次回からやっと……やっと、俺TUEEEEと激アツ展開が書いていける……!
いや違うんです。書いてるうちに他に書きたい事できちゃったり、ヤベ伏線張り忘れたここでこういう展開入れなきゃ! みたいな事態が続出しまして、はい。知らないうちにキモ長ぇ話になってしまいまして……。
…………だからプロットっていうものが必要なんですね(遠い目)。
ともかく、伏線張るのに20話使う、へっぽこ作家にお付き合いいただき、まことにありがとうございます!!
次の編からは、伏線全回収の気持ち良い展開に持って行けると思いますので、懲りずにお付き合いいただければ幸いです!!
ご意見ご指摘、いいねやお気に入り登録、大会ポイントの投票など、よろしければお願いいたします!
よろしくお願いします顔のカリちゃむ置いておきます。
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