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ざまぁされたらやり返す編
23話 私事だらけを欠く仕事 イラストあり
「あ~~~~! もう嫌や~~~! なにが悲しゅうて、何日も何日も女三人で同衾せなアカンねんっ!!」
魔王討伐のための遠征中。
シングルベッドが三つ並べられた宿屋の一室で、シークエンスはがばりと起き上がりながらそう叫んだ。
「うるさいですよ、シークエンス。明日も早いのですから、早く寝なさい」
と、シークエンスの隣のベッドに横たわるヒィロが、ケータイ書籍の少女漫画を見ながらそう呟けば、
「そうですよ。あまりうるさくすると、上の階にいる勇者様たちにご迷惑です」
その隣のベッドで、ナイトキャップを被ったセイリーヌがあくび交じりに叱責する。
今回の遠征は、元祖勇者パーティのそれに、自分たちが同道する形だ。
彼らと共闘しつつ、現場の空気を学ばせてもらうのだった。
だというのに、
「せや、勇者呼んだったらええやん! メールしよっ」
「こ、ここでなにを始めるつもりですか!?」
「というか、もう寝ておられると思うのですが……。今日も会議や移動でお疲れの様子でしたし」
ヒィロとセイリーヌが口々にツッコむ中、シークエンスは上を見上げ、
「かなあ……。ん? でもなんか、上のほうで話し声せえへん?」
■
「あれぇ~♡ どうしたんですかぁ、坊ちゃん? こんな時間まで起きてるなんて、悪い子ですねぇ~♡」
「ブレイダさんこそ、こんな時間にそんな恰好で男の部屋に来るなんて、とぉっても悪い子だねえ」
「いやぁん♡ 悪い子はどんなお仕置きされちゃうのかなぁ♡」
「どんなお仕置きされちゃうんだろうねぇ?」
※このときユーリは起きてたし、おきてました。
■
「ワンチャン起きてるかもやな! やっぱりメールしたろ!」
「やめなさい、こんなときに不謹慎ですよ」
げんなりしたようにヒィロがツッコミを入れるが、シークエンスはその手を止めることなく、
「こんなときやからこそ、や! いつまでも気ぃ張ってても疲れるだけやろ!? 息抜きも必要やん!」
「そんなはしたないことで息が抜けるものですか」
「はしたないて……ヒィロ、お前もうええ歳やろ。いつまでもそんなん読んどらんで、現実の恋愛に目ぇ向けろや」
そう言って少女漫画を指差されると、ヒィロは『うっ……』と赤い顔をしながら押し黙る。
シークエンスは畳みかけるように言った。
「現実の恋愛はエッチありきのもんやで。ほんでそれは、恥ずかしいことでもしたないことでもあれへん。お互い合意の上で、気持ちよぉなれるんやから、むしろ積極的にやったっていいくらいやで! お肌もツルツルになるで~」
「だ、誰しもが、性に対してそんなにオープンになれるわけではないのですよ。それに! 別に君と勇者様は恋愛関係にはないでしょう! 論点がずれてますよ!」
「まあまあ固いこと言わんと。お前も一回勇者にイかれてみ? あれはホンッッッマ沼るでぇ♡」
「お、同じパーティの仲間に、なにを勧めているんですか……!?」
「だからこそや。大事な仲間にも、気持ちよぉストレス発散して欲しいねんて」
「……君って本当に仲間でしたっけ?」
「おいおいおい、ヤバいフラグ立ったな。なんや、わしパーティ追放されんのけ? ざまぁされてスローライフ送らされんのけ?」
そんな戯言を無視し、ヒィロはやや思案顔になりながらセイリーヌに向いた。
「まあ、自分も全く興味が無い、と言えばウソにはなりますが……」
というか実は、めちゃくちゃ興味あるが。
「セイリーヌ、君はどう思いますか?」
「そこで私に振りますか……」
たはは、と苦笑してから、彼女は考えるように顎に手を添え、
「シークエンスや勇者様のように、性に積極的な方であれば、それも人生の楽しみ方のひとつだと思います。
しかしそうでないのなら、いずれパートナーができたとき、お互いのタイミングで身体を重ねるのが、もっとも自然な形だと思いますよ。
無理に背伸びをしてそういったことをしても、納得がいかなかったり、傷つくこともあるかも知れません。
性への向き合い方は人それぞれですが、自分に合ったものを選び取るのが大事だと思います」
「……なるほど。やはりセイリーヌは、素晴らしくいいことを言いますね……! ん? でも……」
ヒィロはなにかに気付いたように、セイリーヌのほうを不安げに向くと、
「その言い方だと、否定とも肯定ともとれるのですが……まさかセイリーヌは……」
「いや、いやいやいや! してないですよ、してない! 私もそういう経験ありません!」
「で、ですよね、良かった……」
ほっとしたように息を吐いて、少し照れ臭そうに笑いかけた。
「ではそういう意味でも、自分たちは『仲間』ですね」
「…………」
親しみを込めて投げ渡されたその言葉に、セイリーヌの胸の奥がしくりと痛んだ。
ヒィロは別に、その部分を強調して言ってはいない。
自分がそう聞こえただけだ。
そのワードにセンシティブになっているだけだ。
……なぜなら。
「もちろん──私はあなたの仲間ですよ、ヒィロ」
不自然にならない程度の間を開け、セイリーヌはそう答えた。
その微笑の裏側に、罪悪感を押し込めながら──。
■
「なにかの冗談、ですよね……?」
最初は呆然と。
しかし、その意味を理解していくにつれて、愕然と。
信じがたいことを言ったセイリーヌに、ヒィロは一歩お歩み寄る。
「動かないで下さいと言ったはずです」
対するセイリーヌは淡々と答える。
「私がケータイに特定の魔力を送り込めば、『アンペルマン』アジトに仕掛けられた爆弾が、一斉に爆発を起こします。
当然、アジトは瓦解。その横にある冒険者ギルド内の人間も含めて、多数の死傷者が出るでしょう」
聡明な彼女らしい、理路整然とした口調で答えてから、ブレイダに視線を移し、
「それとブレイダ様……。私が意識を失ったり、死んだり、またはこの手からケータイが離れることがあっても、爆弾は作動するように仕掛けてありますので、よしなにお願いします」
「うん。だと思った~♪」
ニコニコと笑いながら、彼女は剣の柄にかけていた手を離した。
彼女がその気になれば、瞬きの間にセイリーヌの首など飛んでいただろう。そうしなかったのは、他の作動条件の可能性を瞬時に汲み取ったからだ。
「でも、そっか……」
聡明で残忍な女剣士はしかし、お茶らけた態度を取り下げると、悲しそうな、それでいてどこか安心したような複雑な表情を浮かべ、
「それなら、良かった……」
「…………」
それなら、殺さなくて済む。
その表情の裏側にある気持ちを汲み、セイリーヌは表情が崩れそうになるのをグッと堪える。
……いけない。
──こんなことでブレてはいけない。
魔王討伐のための遠征中。
シングルベッドが三つ並べられた宿屋の一室で、シークエンスはがばりと起き上がりながらそう叫んだ。
「うるさいですよ、シークエンス。明日も早いのですから、早く寝なさい」
と、シークエンスの隣のベッドに横たわるヒィロが、ケータイ書籍の少女漫画を見ながらそう呟けば、
「そうですよ。あまりうるさくすると、上の階にいる勇者様たちにご迷惑です」
その隣のベッドで、ナイトキャップを被ったセイリーヌがあくび交じりに叱責する。
今回の遠征は、元祖勇者パーティのそれに、自分たちが同道する形だ。
彼らと共闘しつつ、現場の空気を学ばせてもらうのだった。
だというのに、
「せや、勇者呼んだったらええやん! メールしよっ」
「こ、ここでなにを始めるつもりですか!?」
「というか、もう寝ておられると思うのですが……。今日も会議や移動でお疲れの様子でしたし」
ヒィロとセイリーヌが口々にツッコむ中、シークエンスは上を見上げ、
「かなあ……。ん? でもなんか、上のほうで話し声せえへん?」
■
「あれぇ~♡ どうしたんですかぁ、坊ちゃん? こんな時間まで起きてるなんて、悪い子ですねぇ~♡」
「ブレイダさんこそ、こんな時間にそんな恰好で男の部屋に来るなんて、とぉっても悪い子だねえ」
「いやぁん♡ 悪い子はどんなお仕置きされちゃうのかなぁ♡」
「どんなお仕置きされちゃうんだろうねぇ?」
※このときユーリは起きてたし、おきてました。
■
「ワンチャン起きてるかもやな! やっぱりメールしたろ!」
「やめなさい、こんなときに不謹慎ですよ」
げんなりしたようにヒィロがツッコミを入れるが、シークエンスはその手を止めることなく、
「こんなときやからこそ、や! いつまでも気ぃ張ってても疲れるだけやろ!? 息抜きも必要やん!」
「そんなはしたないことで息が抜けるものですか」
「はしたないて……ヒィロ、お前もうええ歳やろ。いつまでもそんなん読んどらんで、現実の恋愛に目ぇ向けろや」
そう言って少女漫画を指差されると、ヒィロは『うっ……』と赤い顔をしながら押し黙る。
シークエンスは畳みかけるように言った。
「現実の恋愛はエッチありきのもんやで。ほんでそれは、恥ずかしいことでもしたないことでもあれへん。お互い合意の上で、気持ちよぉなれるんやから、むしろ積極的にやったっていいくらいやで! お肌もツルツルになるで~」
「だ、誰しもが、性に対してそんなにオープンになれるわけではないのですよ。それに! 別に君と勇者様は恋愛関係にはないでしょう! 論点がずれてますよ!」
「まあまあ固いこと言わんと。お前も一回勇者にイかれてみ? あれはホンッッッマ沼るでぇ♡」
「お、同じパーティの仲間に、なにを勧めているんですか……!?」
「だからこそや。大事な仲間にも、気持ちよぉストレス発散して欲しいねんて」
「……君って本当に仲間でしたっけ?」
「おいおいおい、ヤバいフラグ立ったな。なんや、わしパーティ追放されんのけ? ざまぁされてスローライフ送らされんのけ?」
そんな戯言を無視し、ヒィロはやや思案顔になりながらセイリーヌに向いた。
「まあ、自分も全く興味が無い、と言えばウソにはなりますが……」
というか実は、めちゃくちゃ興味あるが。
「セイリーヌ、君はどう思いますか?」
「そこで私に振りますか……」
たはは、と苦笑してから、彼女は考えるように顎に手を添え、
「シークエンスや勇者様のように、性に積極的な方であれば、それも人生の楽しみ方のひとつだと思います。
しかしそうでないのなら、いずれパートナーができたとき、お互いのタイミングで身体を重ねるのが、もっとも自然な形だと思いますよ。
無理に背伸びをしてそういったことをしても、納得がいかなかったり、傷つくこともあるかも知れません。
性への向き合い方は人それぞれですが、自分に合ったものを選び取るのが大事だと思います」
「……なるほど。やはりセイリーヌは、素晴らしくいいことを言いますね……! ん? でも……」
ヒィロはなにかに気付いたように、セイリーヌのほうを不安げに向くと、
「その言い方だと、否定とも肯定ともとれるのですが……まさかセイリーヌは……」
「いや、いやいやいや! してないですよ、してない! 私もそういう経験ありません!」
「で、ですよね、良かった……」
ほっとしたように息を吐いて、少し照れ臭そうに笑いかけた。
「ではそういう意味でも、自分たちは『仲間』ですね」
「…………」
親しみを込めて投げ渡されたその言葉に、セイリーヌの胸の奥がしくりと痛んだ。
ヒィロは別に、その部分を強調して言ってはいない。
自分がそう聞こえただけだ。
そのワードにセンシティブになっているだけだ。
……なぜなら。
「もちろん──私はあなたの仲間ですよ、ヒィロ」
不自然にならない程度の間を開け、セイリーヌはそう答えた。
その微笑の裏側に、罪悪感を押し込めながら──。
■
「なにかの冗談、ですよね……?」
最初は呆然と。
しかし、その意味を理解していくにつれて、愕然と。
信じがたいことを言ったセイリーヌに、ヒィロは一歩お歩み寄る。
「動かないで下さいと言ったはずです」
対するセイリーヌは淡々と答える。
「私がケータイに特定の魔力を送り込めば、『アンペルマン』アジトに仕掛けられた爆弾が、一斉に爆発を起こします。
当然、アジトは瓦解。その横にある冒険者ギルド内の人間も含めて、多数の死傷者が出るでしょう」
聡明な彼女らしい、理路整然とした口調で答えてから、ブレイダに視線を移し、
「それとブレイダ様……。私が意識を失ったり、死んだり、またはこの手からケータイが離れることがあっても、爆弾は作動するように仕掛けてありますので、よしなにお願いします」
「うん。だと思った~♪」
ニコニコと笑いながら、彼女は剣の柄にかけていた手を離した。
彼女がその気になれば、瞬きの間にセイリーヌの首など飛んでいただろう。そうしなかったのは、他の作動条件の可能性を瞬時に汲み取ったからだ。
「でも、そっか……」
聡明で残忍な女剣士はしかし、お茶らけた態度を取り下げると、悲しそうな、それでいてどこか安心したような複雑な表情を浮かべ、
「それなら、良かった……」
「…………」
それなら、殺さなくて済む。
その表情の裏側にある気持ちを汲み、セイリーヌは表情が崩れそうになるのをグッと堪える。
……いけない。
──こんなことでブレてはいけない。
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