【完全版製作記念連載再開】金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師

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ざまぁされたらやり返す編

32話 エナドリにストローつけそう系 イラストあり

「あぁ~~~。うまくいって良かったぁ~~。これでとりあえず、『アンペルマン』の下の子達も、僕が引退したことに納得してくれるよね~~~」
「ちょっと、勇者様、声が大きいです。まだそこで休んでいるメンバーもいるのですから……」

 一同を見送ったのち、脱力するユーリの身体を支えつつ、セイラはその耳元で苦言を呈する。
 ごめんごめん、と体勢を直していると、シークエンスが感心したように口を開いた。

「しっかし、ほんま驚きやわぁ~。あのヒィロが【勇装龍気フランジャー】を使いこなせるとはな。しかも、いきなり解放龍力79パーて……。
修行の成果って、そんな唐突に出るもんなん?」

「ん~。まあ、半分そうで、半分そうじゃない、って感じかな。
ヒィロさんは、ほら、いつ【勇装龍気フランジャー】が使えるようになってもいいように、【勇装龍気フランジャー】の修行も欠かさずにやってたでしょ?
 だから急に使えるようになっても、力に振り回されることなく、ああやって使いこなせててるし、総量だってかなりのものだ。日頃の努力のたまものだね」
「ふぅ~ん。じゃあ、解放龍力がいきなり上がった理由はなんなん?」
「身体的な構造の変化、かな」
「……構造の変化?」

 ユーリはひとつ頷くと、セイラの顔色をチラチラと窺いつつ、

「そう。解放龍力はいろいろな要因で上がることが確認されてるけど、肉体的な発達の過程で上がることが多いんだ。
 男子で言えば喉仏が出てきたりとか、精通とか。女子で言えば初潮とかかな」
「初潮って……。ヒィロさんはそんな歳では…………あっ」

 そこでセイラの頭の中で、カチャカチャカチャッ! といくつかのパーツが繋がっていった。
 ユーリ宅へたどり着いたとき、僅かに濡れていたふたりの髪。
 どことなくセイラに向けて気まずそうな顔をするヒィロ。
 それでいて、ユーリといるときは幸せそうな表情で、やたらと多かったボディタッチ。
 空だけを映したパブスタの意味深投稿……。

「………………………………勇者様」
「…………なんでしょう、セイラさん」
「ヒィロさんのことは、妹のように思っている……と、以前仰っていませんでしたか?」
「んっんー? んー? んーんーんー……うーん……まあ、言ったような言わないような……」
「仰っていましたよね?」
「言いました、はい」
「で?」

「……で? っていうのは?」
「で、妹のように思っている女の子に、なにをしたのですか?」
「んっんー? んー? んーんーんー……まあ、なにっていうか……まあ、ナニっていう、か……別にまあ、普通に、スキンシップ? 肩パンとかハイタッチ……」
「なにをしたのですか?」
「エッチしました。はい、すいません。エッチを……はい、しました」
「………………」
「………………」

「……クランの存続がかかっている、こんなときに、ですか?」
「……そう、ですね……。まあはい。クランの存続がかかっている、こんなときに、です、かね。はい」
「………………」
「………………」

 ブオンッ! と、セイラは亜音速のような速度で錫杖を振り上げ、ユーリもまた、とんでもない速度でそれを躱した。

「いま股間が弾け飛んだら、勇者様は困りますか?」
「フルスイングしてから聞く質問じゃないよね!? あとそれいまだけじゃなくて一生困るから! お願い勘弁して!!」
「ね、姐さん! な、ほら? 若いもんそこで見てるから、な!? 一回落ち着こ! ほら、飴ちゃん舐め?」

 と、シークエンスから渡された飴をコロコロと舐めながら、セイラは大きく溜息を吐き、

「まったく、あなたという人は……。まあ、いいですけどね。なんとなくそうなる気はしていましたし……」

 ヒィロに全てを話し、ユーリの元へ送り出したそのときから、そんな予感はしていた。
 真相を明かされたヒィロは、不安定な状態に陥ったに違いない。
 それを静めるため、ユーリがジゴロな手段に出たのだろうということは、容易に想像がついた。

 身体を重ねることで心身の安寧が得られることは、セイラ自身が最もよく知るところである。
 ヒィロを持ち直させるために、彼は文字通り一肌脱いだのだろう。
 ……まあ、ユーリ自身の思惑も、がっつりと働いていたのだろうが。

「……それに、こんなことでいちいちやきもきしていたは、この先やっていけませんしね」
「えっと、それは……どういうこと、かな?」
「なんでもありませんよ」

 口を突いて出た独白に蓋をしつつ、セイラは普通に錫杖を持ち直すと、

「しかし、それで解放龍力が上がったから良かったものの、そうでなければどうするおつもりだったのですか?」
「そのときは普通に、ヒィロさんが魔力とか【気】だけでも強いんだどー、ってことをアピールする動画を撮るつもりだったよ。あ、ごめん。そういえばその辺、ちゃんと話してなかったね」

 実際、彼女はSランク冒険者と遜色のない実力を持っているし、魔王軍との戦闘経験も豊富だ。このままでも十分にクランを引っ張っていける実力者なのだ。
 この大暴走スタンピードでの戦闘で、それがそのまま皆に伝わるような動画を、シークエンスに撮影してもらうつもりだった。
 いずれ解放龍力が上がるだろうという予感もあったので、あくまでも『つなぎ』としてのものである。

「せやから、解放龍力上がったのって、ほんまにめちゃくちゃ嬉しい誤算やな。はは、メンバーのあの顔、めっちゃ嬉しそうだったやん。
 まあ『エッチしたらレベルが上がった~』なんて言うわけにはいかんけども」
「んっんー。別に恥ずかしいことじゃないと思うけどね。人類ってエッチに救われてきたところあるし」
「人類ってエッチに救われてんのん?」
「人類ってエッチに救われてるんやで」

 人類ってエッチに救われているのである。

「……それはそうと、」

 ちらり、と、ケータイに目を落としながらセイラが言う。

「……そろそろ出発しなければ、ガイムに逃げられてしまうのでは?」
「ん~。まあそうなんだけど……まだ準備が整ってないからねえ」

 そう。
 ガイムとの最終決戦をするにあたり、最後のピースが揃っていないのだ。
 それがハマらない限り、まだ動くわけにはいかないのだが……。

「……うん。でもヤバいねえ。そろそろ逃げられちゃいそう」

 ユーリは指で輪っかを作り、望遠魔法でガイムたちの様子を窺い見る。
 周囲のモンスターは七割ほど片づけている様子だし、撤退する準備も着々と進んでいるように見える。
 いますぐに……とまではいかないものの、十分以内には出立する準備が整ってしまうだろう。

「仕方ない……。とりあえず僕とセイリーヌさん。それから……ファイフさんかブレイダさんのどっちかを連れて、足止めに行ってるよ」
「……かしこまりました。それではセイリーヌさんに連絡を取ります」

 そう言ってセイリーヌに念話を掛けるセイラに頷きかけると、ユーリはシークエンスのほうを向いて、

「シークエンスさん、前線で戦ってるふたりは、ケータイ出る暇ないだろうから、君が直接言って伝えて来てくれるかな?」
「ほいきた! ようやく盗賊らしい仕事できるわぁ!」

 デバイスをユーリに投げ渡すと、シークエンスは素早い身のこなしで前線へと向かって行った。セイラも手早く念話を済ませると、錫杖を力強く握り、

「私もお供します、勇者様」
「いや、でもセイラさんにはここで治療を続けてて欲しいかな。たぶんもう大丈夫だと思うけど、フェイフェイさんにも直せない重症人が出るかもだし」
「しかし、ガイムがなにを隠し持っているか分かりませんので」
「そのために前衛のどっちかを連れて行くわけだから、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
「…………っ!」

 シークエンスが十分に離れたことを確認すると、セイラはユーリに身を寄せて小声になり──。





「いやっ、マジすごかったな、ヒィロ様!」
「ああ。これで『アンペルマン』の未来も安泰だ」
「そんで可愛いしな~! 俺いまのうちにファンサうちわ作っとこうかな!」
「バカ。アイドルではないのだぞ……。ま、まあ、確かに整ったお顔立ちをされているが……」

『アンペルマン』アジトにて。
 先ほどの館内放送を見た一同の顔は、とても晴れやかなものだった。
 ユーリ引退の真相が明らかになったことはもちろんだが、それ以上に、ヒィロが凄まじい力を有していることが、一同の心に大きな高揚感を灯した。
 漠然と抱いていた不安が消え去り、代わりに希望と勇気が満ち溢れてきたのだった。
 
彼女の言っていた通り、『アンペルマン』は昔となにひとつ変わらない。
 最強の勇者の元に仲間たちが集い、人々を魔王軍の脅威から守り抜いていく。
 そんな集団であることに、何一つ変わらないのだ。
 そしてこれからも、その誉れ高き活動を続けていける。
 その事実が、一同はたまらなく嬉しかったのだった。

 ……と。
 そんなお祭りムードの漂うアジト内ではあったのだが……。

「……あれ? なんかまたモニターついたぞ」

 ブン、と、消えていたモニターが再び起動し、なにやら映像が流れ始めた。
 
「あ、あれじゃね? ヒィロ様が戦ってるところ、誰か撮ってくれてるんじゃね?」
「おぉ、見たい見たーい!」

 と、一同は期待の眼差しでモニターに目を向ける。
 そんな中、モニターに流れ始めた映像は……。

『ねえ~! やだやだぁ、やぁ~だぁ~! セイラも行くの! ユーくん心配だからぁ! 怪我したらヤだからぁ! セイラも一緒に行きたいのぉ~!!』

「「「「「「「…………………………………」」」」」」」

 バブみ全開でユーリへと縋りつく、セイラの姿だった。
 鼻にかかったような甘ったるい声を出し、その目の奥には♡が宿ってすらいる。
 普段の凛々しく、そして神々しい彼女からは想像もできないような、地雷系彼女全開のセイラが、全館放送で流れ始めたのだった。

 彼らは──いや、その場にいる誰しも知りえない話ではあったのだが……。
 ユーリがシークエンスからデバイスを投げ渡された際、その衝撃で、再び中継が繋がってしまったのだった。
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