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ざまぁされたらやり返す編
31話 個らからの力 イラストあり
「え、えぇ~♡ ちょ、褒め過ぎですよぉ♡ ……じゃなくって! ふ、ふざけないで下さいよ、ユーリ先輩! しかもこんなところで!」
褒められて満更でもなかったヒィロだったが、そうじゃないだろと顔を赤くしながらツッコミを入れた。
場所は神殿跡地前の大きな道だ。そこには残存戦力である兵士たちが立ち並び、勇者主導の元で敵陣に切り込む態勢を整えていた。
その全員から奇異な目で見られ、パンダとフェイフェイ、シークエンスやセイラ──彼女の目に光は灯っていなかったが──からも呆れた顔で見られるのは、さすがに恥ずかしすぎた。
だというのに、ユーリは周りの人など見えていないかのように、様々なアングルからヒィロを映し、
「いやいやいや! でもほんとに可愛いからさ、ちゃんと残しておかなきゃって思って! あ、このアングルもいいなぁ~! ねえねえ、ちょっとだけ! ちょっとだけおっぱい寄せて貰ってもいいかな!?」
「いい加減にしてください!」
ブチ切れたヒィロは、皆に背を向けてユーリのほうに身体を向け、
「も、もう……♡ ちょっとだけ、ですよ……♡」
「やめとき、ヒィロ! お前チョロいねんから、気付いたら全部脱がされてるで! ほんで知らん間にAVデビューさせられるで!」
「勇者様。さすがにお戯れが過ぎるのでは……?」
「うん、うん、ごめん。ごめんね? だからセイラさん、その、そんなふうに錫杖を持つのはやめて? それアレだから。人に向けて振り下ろすときの、アレだからさ、ね?」
と、焦るシークエンスと静かにブチ切れるセイラに詫びを入れてから、ユーリは改めてヒィロにケータイのカメラを向け、
「シークエンスさん、もう動画回し始めちゃって平気?」
「おう! いま中継繋ぐでぇ~!」
そう言ってデバイスを操作する彼女。
するとそのモニター画面に、『アンペルマン』アジト内部の様子と、呆気に取られた様子のクランメンバーの顔が映し出された。
『お、おい、なんだよ、急に館内放送って……』
『分かんねえけど……え、これ、サザン山脈か? いま大暴走が起きてるって話だよな?』
なにが起きているのか分からない、と言った様子で画面を見つめるクランメンバーたち。
さきほど『アンペルマン』アジトに通達し、こちらの様子を中継して、アジトの館内放送で流れるように手配したのだ。
なぜ、そんなことをする必要があったか。
それは……。
「ありがとう! じゃあ、カメラ回しちゃうね!」
ユーリはそう言ってRECボタンを押し、インカメで自分の姿を映し出した。
「はいどーもー! 元勇者系金持ちマイチューバ―の、ユーリ社長で~す! プライベートジェット買っちゃうぞ! つってね!
そういうわけでね~、今日はね~、え~、絶賛大暴走が起きてるね、サザン山脈の麓に来ちゃいました~、という感じなんですけれど、もぉ……。こぉれぇはヤバいですよ~。見てください、うわ、うわうわ! カムロン平原埋め尽くされちゃってますよ~! こぉれはヤバい! ヤバいですよねえ!? ヤバいと思ったら👍ボタン、ヤバくないと思ったらチャンネル登録を……」
「……勇者様」
「はい、はい、すいません、すいません」
錫杖を逆手に握り、股間に向けて振り上げるような構えを取るセイラに平謝りをしてから、ユーリはコホンとひとつ咳払いをして、
「いきなりごめんね、みんな! そんで、急に辞めちゃって本当にごめんなさい!
僕が勇者を辞めた理由がよく分からなくて、みんなが不安に思ってるって聞いたから、その説明をするために、今日はこうやって動画を回してるんだ」
そこで外カメラに切り替えてヒィロを映しだすと、彼女は少しだけ恥ずかしそうに前髪を直す。
「僕が辞めた本当の理由はね、ものすごく簡単なことなんだ。
ここにいるヒィロさんが、僕より強くなったから、だよ!」
『……………………』
一瞬の沈黙を挟んでから、アジト内が俄かにざわついていくのが分かった。
『い、いや、強くなった、って……』
『あのお方は、【勇装龍気】が満足に扱えないのでは……』
『おいバカ! こっちの声も聞こえてんだぞ!』
『し、しかし、事実は事実……』
と、疑問の声がところどころで上がり、こちらに待機している兵士にもそれが伝播していく。
ヒィロは【勇装龍気】が扱えない。
それは、『アンペルマン』のみならず、国内においては有名な話なのだ。
にもかかわらず、ユーリよりも強くなった、などと言われても、俄かには信じられないだろう。
……そう。
言われただけでは、とても信じられない話だ。
「ヒィロさん」
「……はい」
ヒィロは深く、大きく呼吸をすると、ゆっくりと両手を前に出す。
そして射線上に遮蔽物がないことを確認すると、指先に意識を集中し──。
「……【覇龍吼】」
ゴゥンッ!!
突き出したヒィロの手から、巨大な青黒い光が迸り、それが凄まじい速さでモンスターの大群へと突き刺さって……、
「「「「「「ギイィィィィィィィィッ!!」」」」」
その射線上にいたモンスターを、瞬く間に塵へと変えていったのだった。
「「「「「……………ッ!!」」」」」
光の軌道上の地面は深く抉れ、圧縮熱で焼け焦げてすらいる。
凄まじい起動速度。凄まじい速さ。そして凄まじい威力。
この力は、紛れもなく……!
「見ての通り、ヒィロさんは長年の修行の成果が出て、【勇装龍気】を完全に使いこなしてるんだよ!
その解放龍力は79%!! これは歴代勇者の中でも、トップテンに入る数値だよ!!」
「「「「「……おお、おおぉぉ!!」」」」」
あまりの出来事に唖然としていた一同だったが、ユーリの言葉で状況を理解し、段々とその顔に興奮が滲んでいく。
「は、はは……すげ、すっげ! マジかよ!?」
「いきなりトップテンって……そんなことあんの!?」
「いまの御業を見たであろう! 本物だ! ヒィロ様は本物だったのだ!!」
それを後押しするように、ユーリはアジトの面々に、そしてそこにいる戦士全員に向けて告げた。
「もう一回言うよ! ここにいるヒィロさんは、僕なんかよりもずっと強くなったんだ!
弟子に追い抜かれちゃったら、師匠は引退する! それは当たり前のことだよね!! だからヒィロさん! これからは君に『アンペルマン』をお願いするよ!!」
言葉のバトンを渡されたヒィロは、打ち合わせた通りに剣を掲げ、勇ましい声で叫ぶ。
「はい!! しかし皆さん、『アンペルマン』は、なにひとつ変わっていません!!
最強の勇者の元に、最強の仲間たちが集い、人々を平和に導いていく!
人類の赤色信号を、青色に変えていく!!
そんな集団であることに、変わりはないのです!
『アンペルマン』が最強の勇者クランであることに、なんの変わりもないのです!!」
「「「「「「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」」」」」」
そこで上がった鬨の声は、十万のモンスターの声をかき消すほど。
漲る闘志は、サザン山脈を揺るがすほど。
ユーリの『そーだ! 僕たちの冒険はこれからだあああぁぁ!』という声を、余裕で吹き飛ばすほどだった。
そこに集った戦士から、そしてアジトの戦士から放たれた『力』に後を押されるようにして……。
「────ぶちかますぞおおおぉぉぉッ!!!」
「「「「「「うぅおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」」」」」」
勇猛なる戦士たちを従えて、勇者ヒィロは前線に向けて駆け出していくのだった。
※※以下筆者後書き※※
ヒィロ「『アンペルマン』──アッセンブ……」
ユーリ「あ、ダメダメダメ。それは絶対……うん。絶対言っちゃダメなやつ」
ヒィロ「……ダメですかね」
ユーリ「ダメだねえ」
ヒィロ「……言いたいんですけど」
ユーリ「言わせてあげたいけどねえ……。買収されちゃったからさあ」
ヒィロ「……自分、キャプテンヒィロなんですけど」
ユーリ「なおさらダメだねえ」
ヒィロ「ダメかあ……」
ユーリ「うん……かわいそうだけど」
ヒィロ「…………」
ユーリ「…………」
ヒィロ「『アンペルマン』、カワーバンガー!」
ユーリ「そっちもダメだよ!?」
今回もご覧いただきありがとうございました!
今日も21時にもう1話更新となっております!
ご意見ご指摘、ブックマーク登録やいいね、大会ポイントの投票など、よろしかったらお願いいたします!!
褒められて満更でもなかったヒィロだったが、そうじゃないだろと顔を赤くしながらツッコミを入れた。
場所は神殿跡地前の大きな道だ。そこには残存戦力である兵士たちが立ち並び、勇者主導の元で敵陣に切り込む態勢を整えていた。
その全員から奇異な目で見られ、パンダとフェイフェイ、シークエンスやセイラ──彼女の目に光は灯っていなかったが──からも呆れた顔で見られるのは、さすがに恥ずかしすぎた。
だというのに、ユーリは周りの人など見えていないかのように、様々なアングルからヒィロを映し、
「いやいやいや! でもほんとに可愛いからさ、ちゃんと残しておかなきゃって思って! あ、このアングルもいいなぁ~! ねえねえ、ちょっとだけ! ちょっとだけおっぱい寄せて貰ってもいいかな!?」
「いい加減にしてください!」
ブチ切れたヒィロは、皆に背を向けてユーリのほうに身体を向け、
「も、もう……♡ ちょっとだけ、ですよ……♡」
「やめとき、ヒィロ! お前チョロいねんから、気付いたら全部脱がされてるで! ほんで知らん間にAVデビューさせられるで!」
「勇者様。さすがにお戯れが過ぎるのでは……?」
「うん、うん、ごめん。ごめんね? だからセイラさん、その、そんなふうに錫杖を持つのはやめて? それアレだから。人に向けて振り下ろすときの、アレだからさ、ね?」
と、焦るシークエンスと静かにブチ切れるセイラに詫びを入れてから、ユーリは改めてヒィロにケータイのカメラを向け、
「シークエンスさん、もう動画回し始めちゃって平気?」
「おう! いま中継繋ぐでぇ~!」
そう言ってデバイスを操作する彼女。
するとそのモニター画面に、『アンペルマン』アジト内部の様子と、呆気に取られた様子のクランメンバーの顔が映し出された。
『お、おい、なんだよ、急に館内放送って……』
『分かんねえけど……え、これ、サザン山脈か? いま大暴走が起きてるって話だよな?』
なにが起きているのか分からない、と言った様子で画面を見つめるクランメンバーたち。
さきほど『アンペルマン』アジトに通達し、こちらの様子を中継して、アジトの館内放送で流れるように手配したのだ。
なぜ、そんなことをする必要があったか。
それは……。
「ありがとう! じゃあ、カメラ回しちゃうね!」
ユーリはそう言ってRECボタンを押し、インカメで自分の姿を映し出した。
「はいどーもー! 元勇者系金持ちマイチューバ―の、ユーリ社長で~す! プライベートジェット買っちゃうぞ! つってね!
そういうわけでね~、今日はね~、え~、絶賛大暴走が起きてるね、サザン山脈の麓に来ちゃいました~、という感じなんですけれど、もぉ……。こぉれぇはヤバいですよ~。見てください、うわ、うわうわ! カムロン平原埋め尽くされちゃってますよ~! こぉれはヤバい! ヤバいですよねえ!? ヤバいと思ったら👍ボタン、ヤバくないと思ったらチャンネル登録を……」
「……勇者様」
「はい、はい、すいません、すいません」
錫杖を逆手に握り、股間に向けて振り上げるような構えを取るセイラに平謝りをしてから、ユーリはコホンとひとつ咳払いをして、
「いきなりごめんね、みんな! そんで、急に辞めちゃって本当にごめんなさい!
僕が勇者を辞めた理由がよく分からなくて、みんなが不安に思ってるって聞いたから、その説明をするために、今日はこうやって動画を回してるんだ」
そこで外カメラに切り替えてヒィロを映しだすと、彼女は少しだけ恥ずかしそうに前髪を直す。
「僕が辞めた本当の理由はね、ものすごく簡単なことなんだ。
ここにいるヒィロさんが、僕より強くなったから、だよ!」
『……………………』
一瞬の沈黙を挟んでから、アジト内が俄かにざわついていくのが分かった。
『い、いや、強くなった、って……』
『あのお方は、【勇装龍気】が満足に扱えないのでは……』
『おいバカ! こっちの声も聞こえてんだぞ!』
『し、しかし、事実は事実……』
と、疑問の声がところどころで上がり、こちらに待機している兵士にもそれが伝播していく。
ヒィロは【勇装龍気】が扱えない。
それは、『アンペルマン』のみならず、国内においては有名な話なのだ。
にもかかわらず、ユーリよりも強くなった、などと言われても、俄かには信じられないだろう。
……そう。
言われただけでは、とても信じられない話だ。
「ヒィロさん」
「……はい」
ヒィロは深く、大きく呼吸をすると、ゆっくりと両手を前に出す。
そして射線上に遮蔽物がないことを確認すると、指先に意識を集中し──。
「……【覇龍吼】」
ゴゥンッ!!
突き出したヒィロの手から、巨大な青黒い光が迸り、それが凄まじい速さでモンスターの大群へと突き刺さって……、
「「「「「「ギイィィィィィィィィッ!!」」」」」
その射線上にいたモンスターを、瞬く間に塵へと変えていったのだった。
「「「「「……………ッ!!」」」」」
光の軌道上の地面は深く抉れ、圧縮熱で焼け焦げてすらいる。
凄まじい起動速度。凄まじい速さ。そして凄まじい威力。
この力は、紛れもなく……!
「見ての通り、ヒィロさんは長年の修行の成果が出て、【勇装龍気】を完全に使いこなしてるんだよ!
その解放龍力は79%!! これは歴代勇者の中でも、トップテンに入る数値だよ!!」
「「「「「……おお、おおぉぉ!!」」」」」
あまりの出来事に唖然としていた一同だったが、ユーリの言葉で状況を理解し、段々とその顔に興奮が滲んでいく。
「は、はは……すげ、すっげ! マジかよ!?」
「いきなりトップテンって……そんなことあんの!?」
「いまの御業を見たであろう! 本物だ! ヒィロ様は本物だったのだ!!」
それを後押しするように、ユーリはアジトの面々に、そしてそこにいる戦士全員に向けて告げた。
「もう一回言うよ! ここにいるヒィロさんは、僕なんかよりもずっと強くなったんだ!
弟子に追い抜かれちゃったら、師匠は引退する! それは当たり前のことだよね!! だからヒィロさん! これからは君に『アンペルマン』をお願いするよ!!」
言葉のバトンを渡されたヒィロは、打ち合わせた通りに剣を掲げ、勇ましい声で叫ぶ。
「はい!! しかし皆さん、『アンペルマン』は、なにひとつ変わっていません!!
最強の勇者の元に、最強の仲間たちが集い、人々を平和に導いていく!
人類の赤色信号を、青色に変えていく!!
そんな集団であることに、変わりはないのです!
『アンペルマン』が最強の勇者クランであることに、なんの変わりもないのです!!」
「「「「「「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」」」」」」
そこで上がった鬨の声は、十万のモンスターの声をかき消すほど。
漲る闘志は、サザン山脈を揺るがすほど。
ユーリの『そーだ! 僕たちの冒険はこれからだあああぁぁ!』という声を、余裕で吹き飛ばすほどだった。
そこに集った戦士から、そしてアジトの戦士から放たれた『力』に後を押されるようにして……。
「────ぶちかますぞおおおぉぉぉッ!!!」
「「「「「「うぅおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」」」」」」
勇猛なる戦士たちを従えて、勇者ヒィロは前線に向けて駆け出していくのだった。
※※以下筆者後書き※※
ヒィロ「『アンペルマン』──アッセンブ……」
ユーリ「あ、ダメダメダメ。それは絶対……うん。絶対言っちゃダメなやつ」
ヒィロ「……ダメですかね」
ユーリ「ダメだねえ」
ヒィロ「……言いたいんですけど」
ユーリ「言わせてあげたいけどねえ……。買収されちゃったからさあ」
ヒィロ「……自分、キャプテンヒィロなんですけど」
ユーリ「なおさらダメだねえ」
ヒィロ「ダメかあ……」
ユーリ「うん……かわいそうだけど」
ヒィロ「…………」
ユーリ「…………」
ヒィロ「『アンペルマン』、カワーバンガー!」
ユーリ「そっちもダメだよ!?」
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