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ざまぁされたらやり返す編
24話 クソ野郎 イラストあり
──自分は最低の裏切者なのだ。
彼女の温かさなど、感じ取る資格が無い。
最後までその業を背負い、悪役として在らねばならない。
そんなことを思っていると、ヒィロが悲痛な声で叫んだ。
「い、意味が……分かりません! なぜ君が、帝国などに与するのですが!? なぜ自分たちを裏切ったのですか!?」
「勘違いしないでください。私はあなたがたを裏切ってなどいません。
──最初から帝国の人間だったのですよ」
「「「…………おおぉ………!」」」
と、ユーリとマホ、そしてエンリエッタが、なぜか興奮したような声を上げ、それをセイラにたしなめられていたのだが……それはともかく。
──セイリーヌは幼い頃から、ガイムの指示で動いていた。
彼の指示で『アンペルマン』に入り、順調に実績を積み上げ、やがて次席パーティ『レスティンピース』に拾い上げられた。
そして組織のNo2、ヒィロの右腕として彼女を支えつつ、そこで得た情報を、全てガイムに流し続けていたのだ。
「ヒィロ……あなたが間抜けで本当に助かりました。私がそうだと気づかずに、ペラペラ機密情報を喋ってくれたのですからね。本当にありがとうございます」
「セイリーヌ……」
「勇者様が抜けたら、このクランは死ぬ……。いつだったかそんなことを言ったのを覚えていますか? あれはスパイとして言ったのではありませんよ。私の心の底からの本音です。
あなたのような出来損ないの間抜けに、こんな超大規模組織を引っ張っていけるわけがない……。ずっとそう思っていましたよ」
できるだけ意地悪く笑いながら、セイリーヌはヒィロに向けて罵詈雑言を続ける。
セイリーヌは許されないことをしている。
なんの救いも求めてはいけない。
徹底的に彼女に嫌われ、憎まれなくてはならない。
そうでなければ、自分を許すことができない。
「挙げ句の果てには、私を信用し切って、私生活の相談までしてくるのですから……はっ。笑いを通り越して、苛立ちすら覚えましたよ。こんな間抜けをマークしていても、なんの益にもならない。何度そのように報告したか分かりません」
「セイリーヌ……」
「いいですか、ヒィロ? こうなったのは全てあなたの責任です。あなたが人を疑うことすらしないお人好しだから、私などに出し抜かれるんですよ? 全てあなたのせいです。『アンペルマン』はあなたのせいで崩壊……」
「セイリーヌ!」
ひときわ大きな声で名を呼ばれ、セイリーヌは気づいた。
「……分かりました……よく分かりましたよ、セイリーヌ」
視界が大きく視界が波打っていることに。
目頭が熱く、鼻もひどく詰まっていることに。
「君が納得してスパイをしていたわけではないことは、よく分かりました」
「…………え?」
──セイリーヌは、泣いていた。
大粒の涙を流し、嗚咽を上げながら、泣いていたのだ。
「……だから。だからそれ以上、自分を傷つけることを言うのはやめてください」
「えぁ? あ……あぁ……ひぐっ……う、うぅ……うううぅっ!」
ヒィロのその言葉に、セイリーヌは頽れるように膝をついた。
セイリーヌは、もうとっくに限界だった。
確かに彼女は最初から帝国の人間だった。
が、そこでの扱いはひどいものだった。スパイとしての訓練は痛みを伴うものばかりだったし、少しでも弱音を吐けば、ガイムよってより強い痛苦を与えられ、家族に危害を及ぼすと脅された。
地獄のような毎日。
しかし、それが自分の一生だと割り切って生きてきた。
スパイの訓練が終わり、『アンペルマン』に送り込まれたときも同様。一瞬たりとも気が抜けず、誰にも助けを求めることができない日々が始まると思っていた。
ガイムによる支配も終わらない。家族の命も握られたまま。
地獄の種類が変わるだけ。
そんなふうに、思っていた。
思っていたのに……。
「ひぐぅ……う、う、うう……なん、で……? なんで、ヒィロも、シークエンスも、勇者様も……なんで、ぐす……そんな、優しいんですか?」
──彼らは、セイリーヌに対して優しかったのだ。
帝国出身の自分を温かく接してくれた。仲間として迎え入れてくれた。
信頼して、背中を任せてくれたのだ。
「あ、あなたたちがぁ! うぐぅ、酷い人なら……痛いことする人なら、ぐすっ、……嫌いで、い、いられたのに……! なんでそんな、ひっく、私なんかに、優しく……ううっ、うっ、うぅ……」
セイリーヌは、彼女らのことを好きになってしまっていた。
帝国の諜報機関にいた人間よりも。ガイムなんかよりも。
ずっとずっと、彼女らのことが大切になってしまっていたのだ。
ずっとずっと、ここに居たいと感じてしまっていた。
これだったら、自分ひとりが苦しむほうが良かった。
こんな優しい人たちを欺き続けるくらいなら、自分一人が地獄にいる方が、よっぽど楽だった。
「セイリーヌ……」
そう言って彼セイリーヌに近づくヒィロに、彼女は土下座のような姿勢のまま、
「ご、めんなさっ……ごめんなさい、ごめんなさい! ひぐっ、私が! 私が死ねば良かったんです! 私がもっと早く、死んでいれば良かった……! そうしていたら、こんなことには……うぅ、うっ……でも、そうしたら、私、の、家族が……妹が……殺されちゃう、からぁ……」
「…………っ!!」
彼女には死ぬ権利すらない。
かといって生きる自由もない。
それらを握っているのは……!
(ガイム……! やつは、どこまで……っ!!)
バガァンッ! となにかが砕ける音が中庭に響き渡る。
ヒィロがそちらを見ると、ファイフが水の入った樽を蹴り砕いているところだった。
「……ファイフさん」
「ファイフさん、落ち着いて、ね?」
「……大丈夫、大丈夫。ごめんね、大丈夫」
エンリエッタとブレイダにたしなめながら、ファイフは樽のひとつに腰かけると、
「大丈夫、大丈夫……。ガイムのクソ野郎、どうやって殺そうか考えてるだけだから、大丈夫……!!」
その目に煮えたぎるような激情を灯しながら、震える声でそう呟いた。
「……はい、いっちばんヤベエときのファイフ入りました~」
ため息交じりにそう告げると、マホはユーリの顔を見上げ、
「どーすんだよ、勇者。お前らのクソキモ会話ばりのデッドロック決まってるし、ファイフもいつ爆発するか分からねえぞ」
「……セイリーヌさん」
ゆっくりとセイリーヌに歩み寄りながら、ユーリは沈痛な面持ちで、
「君が、帝国側のスパイだったなんて……!!」
彼女の温かさなど、感じ取る資格が無い。
最後までその業を背負い、悪役として在らねばならない。
そんなことを思っていると、ヒィロが悲痛な声で叫んだ。
「い、意味が……分かりません! なぜ君が、帝国などに与するのですが!? なぜ自分たちを裏切ったのですか!?」
「勘違いしないでください。私はあなたがたを裏切ってなどいません。
──最初から帝国の人間だったのですよ」
「「「…………おおぉ………!」」」
と、ユーリとマホ、そしてエンリエッタが、なぜか興奮したような声を上げ、それをセイラにたしなめられていたのだが……それはともかく。
──セイリーヌは幼い頃から、ガイムの指示で動いていた。
彼の指示で『アンペルマン』に入り、順調に実績を積み上げ、やがて次席パーティ『レスティンピース』に拾い上げられた。
そして組織のNo2、ヒィロの右腕として彼女を支えつつ、そこで得た情報を、全てガイムに流し続けていたのだ。
「ヒィロ……あなたが間抜けで本当に助かりました。私がそうだと気づかずに、ペラペラ機密情報を喋ってくれたのですからね。本当にありがとうございます」
「セイリーヌ……」
「勇者様が抜けたら、このクランは死ぬ……。いつだったかそんなことを言ったのを覚えていますか? あれはスパイとして言ったのではありませんよ。私の心の底からの本音です。
あなたのような出来損ないの間抜けに、こんな超大規模組織を引っ張っていけるわけがない……。ずっとそう思っていましたよ」
できるだけ意地悪く笑いながら、セイリーヌはヒィロに向けて罵詈雑言を続ける。
セイリーヌは許されないことをしている。
なんの救いも求めてはいけない。
徹底的に彼女に嫌われ、憎まれなくてはならない。
そうでなければ、自分を許すことができない。
「挙げ句の果てには、私を信用し切って、私生活の相談までしてくるのですから……はっ。笑いを通り越して、苛立ちすら覚えましたよ。こんな間抜けをマークしていても、なんの益にもならない。何度そのように報告したか分かりません」
「セイリーヌ……」
「いいですか、ヒィロ? こうなったのは全てあなたの責任です。あなたが人を疑うことすらしないお人好しだから、私などに出し抜かれるんですよ? 全てあなたのせいです。『アンペルマン』はあなたのせいで崩壊……」
「セイリーヌ!」
ひときわ大きな声で名を呼ばれ、セイリーヌは気づいた。
「……分かりました……よく分かりましたよ、セイリーヌ」
視界が大きく視界が波打っていることに。
目頭が熱く、鼻もひどく詰まっていることに。
「君が納得してスパイをしていたわけではないことは、よく分かりました」
「…………え?」
──セイリーヌは、泣いていた。
大粒の涙を流し、嗚咽を上げながら、泣いていたのだ。
「……だから。だからそれ以上、自分を傷つけることを言うのはやめてください」
「えぁ? あ……あぁ……ひぐっ……う、うぅ……うううぅっ!」
ヒィロのその言葉に、セイリーヌは頽れるように膝をついた。
セイリーヌは、もうとっくに限界だった。
確かに彼女は最初から帝国の人間だった。
が、そこでの扱いはひどいものだった。スパイとしての訓練は痛みを伴うものばかりだったし、少しでも弱音を吐けば、ガイムよってより強い痛苦を与えられ、家族に危害を及ぼすと脅された。
地獄のような毎日。
しかし、それが自分の一生だと割り切って生きてきた。
スパイの訓練が終わり、『アンペルマン』に送り込まれたときも同様。一瞬たりとも気が抜けず、誰にも助けを求めることができない日々が始まると思っていた。
ガイムによる支配も終わらない。家族の命も握られたまま。
地獄の種類が変わるだけ。
そんなふうに、思っていた。
思っていたのに……。
「ひぐぅ……う、う、うう……なん、で……? なんで、ヒィロも、シークエンスも、勇者様も……なんで、ぐす……そんな、優しいんですか?」
──彼らは、セイリーヌに対して優しかったのだ。
帝国出身の自分を温かく接してくれた。仲間として迎え入れてくれた。
信頼して、背中を任せてくれたのだ。
「あ、あなたたちがぁ! うぐぅ、酷い人なら……痛いことする人なら、ぐすっ、……嫌いで、い、いられたのに……! なんでそんな、ひっく、私なんかに、優しく……ううっ、うっ、うぅ……」
セイリーヌは、彼女らのことを好きになってしまっていた。
帝国の諜報機関にいた人間よりも。ガイムなんかよりも。
ずっとずっと、彼女らのことが大切になってしまっていたのだ。
ずっとずっと、ここに居たいと感じてしまっていた。
これだったら、自分ひとりが苦しむほうが良かった。
こんな優しい人たちを欺き続けるくらいなら、自分一人が地獄にいる方が、よっぽど楽だった。
「セイリーヌ……」
そう言って彼セイリーヌに近づくヒィロに、彼女は土下座のような姿勢のまま、
「ご、めんなさっ……ごめんなさい、ごめんなさい! ひぐっ、私が! 私が死ねば良かったんです! 私がもっと早く、死んでいれば良かった……! そうしていたら、こんなことには……うぅ、うっ……でも、そうしたら、私、の、家族が……妹が……殺されちゃう、からぁ……」
「…………っ!!」
彼女には死ぬ権利すらない。
かといって生きる自由もない。
それらを握っているのは……!
(ガイム……! やつは、どこまで……っ!!)
バガァンッ! となにかが砕ける音が中庭に響き渡る。
ヒィロがそちらを見ると、ファイフが水の入った樽を蹴り砕いているところだった。
「……ファイフさん」
「ファイフさん、落ち着いて、ね?」
「……大丈夫、大丈夫。ごめんね、大丈夫」
エンリエッタとブレイダにたしなめながら、ファイフは樽のひとつに腰かけると、
「大丈夫、大丈夫……。ガイムのクソ野郎、どうやって殺そうか考えてるだけだから、大丈夫……!!」
その目に煮えたぎるような激情を灯しながら、震える声でそう呟いた。
「……はい、いっちばんヤベエときのファイフ入りました~」
ため息交じりにそう告げると、マホはユーリの顔を見上げ、
「どーすんだよ、勇者。お前らのクソキモ会話ばりのデッドロック決まってるし、ファイフもいつ爆発するか分からねえぞ」
「……セイリーヌさん」
ゆっくりとセイリーヌに歩み寄りながら、ユーリは沈痛な面持ちで、
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