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ざまぁされたらやり返す編
38話 白日 イラストあり
「改めましてこんにちは♡ 女王直属隠密機動部隊所属工作員、エニファー・ローレンスで~す」
「同じくビーリッシュ・ハイタワーだよぉ~♡」
「…………ッ!!」
ふたりのふざけた自己紹介に、ガイムは血が滲むような勢いで奥歯を噛みしめる。
女王直属隠密機動部隊。通称『ディンキィ』。
尻の軽いバカ女だと思っていたこのふたりが、どうやらその工作員であったらしい。
殺意すら抱きながらそんなことを思っていると、ビーリッシュがユーリから借りたケータイを手に笑顔を浮かべ、
「あ、言っとくけど、さっき盗聴した音声なんて、証拠のほんの一部だからね? 伊達にず~っとケータイ持ってたわけじゃないからさ、色々撮らしてもろうてましたよぉ~」
その台詞に、エニファーもうんうんと頷いて、
「ね。ヘルデンくん、全然気づかないからびっくりしちゃったよ。ほんとバッ……じゃなくて、素直でいい子だよねぇ~」
「だね。エッチのほうはちょっと乱暴だったけどね。その割に……ね? あれのほうはあれだったけど」
「うん。そっちの勇者は勇者じゃなかったね」
「……っぐ!」
ガイムの横にいるヘルデンが、怒りとも羞恥ともつかない感情で赤面するが、そんなことにかまうべくもなく、ガイムはギロリと彼を睨みつけ、
「ヘルデン……。貴様、あの女どもをどこで拾った?」
「ちゃ、ちゃんと覚えてねえけど……どっかのクラブで飲んでたときに、逆ナンされて……」
「……遊ぶときはこちらの指定したラウンジを使えと、あれほど……!!」
……いや。
ヘルデンがふたりを連れてきたとき、彼女らの素性は徹底的に洗った。
洗ったうえで、なにも出てこなかったのだ。
つまりガイムは、情報戦において王国に──いや、女王に出し抜かれたということになる。
ふたりの素性を見抜けなかったのは、こちらの落ち度だ。
落ち度ではあるのだが……!
「ざっけんなよ、テメエら!! あ゛ッ!? 俺のこと騙してやがったのか!? 汚ねえ売女どもがよ! 散々高ぇ服買ってやったろうが!!」
ガイムの気持ちを代弁するように──それは甚だ不本意な情動の一致であったが──、ヘルデンが勢いよくふたりへとにじり寄る。
……が。
「ごぼぉッ!!」
信じられない速度で繰り出されたファイフの拳に、鳩尾を強か殴りつけられ、吐しゃ物をまき散らしながら地面に叩きつけられた。
「ごぶぅ……うぐッ……うぅ……」
「ごめんごめん。あたしも頭悪ぃからさぁ、うまいこと手加減できねえんだわ」
自身の吐き出したもののなかで呻くヘルデンに、ファイフはゆっくりと歩み寄ると、髪の毛を掴み上げながら静かに告げた。
「いま大人たちが難しい話してっからさ、バカはバカ同士黙ってようぜ? じゃないと、ほら、」
ぶちぶちぶち、と、髪の毛を引きちぎりながら、ファイフは元ヤン全開の凄絶な笑顔を浮かべる。
「テメエの汚ねえ顔を、もうちょっと汚くしちまうからよ、な? 大人しくしとけよ、クソ雑魚がよ」
「いぎぃ……いッ……!」
「…………」
頭頂部のみが禿げあがっていくヘルデンを横目にしつつ、ガイムは再び思考を巡らす。
ここまできたらもう、言い逃れるのは不可能と考えたほうが良いだろう。
確かに証拠は隠滅したが、おそらくは隠滅前に撮られていたのだ。
それらが抑えられているのだとしたら、さすがのガイムも罪を認めざるを得ない。
……が。
「弁護士と、その他諸々に連絡をさせていただく。よろしいですな?」
この状況においても、ガイムはなにも焦ってはいなかった。
なぜならガイムは、まだ手札を一枚も切っていないのだ。
勇者連合、魔道士連合、剣士連合、拳闘士連合。
そして、元老院議会。
それらのホットラインを、なにひとつ使ってはいない。
確かにここまで来たら、罪を罪で無くすことは不可能だろう。
だったら、もみ消してしまえばよい。
それこそがガイムの得意分野なのだ。
そして、それはユーリもクインリィも知る処である。
ここからが本当の戦いなのだ。
……そう。
そのはずなのだ。
「構いませんよ。どうぞ、お好きな所に念話を掛けてください」
「…………っ」
先ほどと同様、クインリィは極めて冷静にそう告げた。
その瞳の湖面には、波紋のひとつもたっていない。
まるで予定調和が如く、そんなことを言ってきたのだった。
「………………!!」
そのやりとりだけで、ガイムは瞬時に悟る。
おかしい。
こちらの本領を前にして、さすがにこの反応はおかし過ぎる。
「ま、さか……!」
彼女がそういった反応を示すということは、そういうことなのだろう。
ガイムは無駄なことをしない。
だが、そんな自身の信条など棚に上げ、次々とホットラインへと連絡をしていった。
それらの連絡先は、いついかなるときでもこちらの念話に応じる体制を整えており、事実として繋がらなかったことなどはない。
だというのに。
だというのに。
「…………バ、カな…………!」
繋がらない。
勇者連合、魔道士連合、剣士連合、拳闘士連合。
そして、元老院議会。
どのホットラインに連絡をしても、繋がらないのだ。
人生の大半を投資して作り上げたネットワークが。
ガイムの持つ、唯一にして最強の武器が。
その役割を、果たしていなかったのだ。
「同じくビーリッシュ・ハイタワーだよぉ~♡」
「…………ッ!!」
ふたりのふざけた自己紹介に、ガイムは血が滲むような勢いで奥歯を噛みしめる。
女王直属隠密機動部隊。通称『ディンキィ』。
尻の軽いバカ女だと思っていたこのふたりが、どうやらその工作員であったらしい。
殺意すら抱きながらそんなことを思っていると、ビーリッシュがユーリから借りたケータイを手に笑顔を浮かべ、
「あ、言っとくけど、さっき盗聴した音声なんて、証拠のほんの一部だからね? 伊達にず~っとケータイ持ってたわけじゃないからさ、色々撮らしてもろうてましたよぉ~」
その台詞に、エニファーもうんうんと頷いて、
「ね。ヘルデンくん、全然気づかないからびっくりしちゃったよ。ほんとバッ……じゃなくて、素直でいい子だよねぇ~」
「だね。エッチのほうはちょっと乱暴だったけどね。その割に……ね? あれのほうはあれだったけど」
「うん。そっちの勇者は勇者じゃなかったね」
「……っぐ!」
ガイムの横にいるヘルデンが、怒りとも羞恥ともつかない感情で赤面するが、そんなことにかまうべくもなく、ガイムはギロリと彼を睨みつけ、
「ヘルデン……。貴様、あの女どもをどこで拾った?」
「ちゃ、ちゃんと覚えてねえけど……どっかのクラブで飲んでたときに、逆ナンされて……」
「……遊ぶときはこちらの指定したラウンジを使えと、あれほど……!!」
……いや。
ヘルデンがふたりを連れてきたとき、彼女らの素性は徹底的に洗った。
洗ったうえで、なにも出てこなかったのだ。
つまりガイムは、情報戦において王国に──いや、女王に出し抜かれたということになる。
ふたりの素性を見抜けなかったのは、こちらの落ち度だ。
落ち度ではあるのだが……!
「ざっけんなよ、テメエら!! あ゛ッ!? 俺のこと騙してやがったのか!? 汚ねえ売女どもがよ! 散々高ぇ服買ってやったろうが!!」
ガイムの気持ちを代弁するように──それは甚だ不本意な情動の一致であったが──、ヘルデンが勢いよくふたりへとにじり寄る。
……が。
「ごぼぉッ!!」
信じられない速度で繰り出されたファイフの拳に、鳩尾を強か殴りつけられ、吐しゃ物をまき散らしながら地面に叩きつけられた。
「ごぶぅ……うぐッ……うぅ……」
「ごめんごめん。あたしも頭悪ぃからさぁ、うまいこと手加減できねえんだわ」
自身の吐き出したもののなかで呻くヘルデンに、ファイフはゆっくりと歩み寄ると、髪の毛を掴み上げながら静かに告げた。
「いま大人たちが難しい話してっからさ、バカはバカ同士黙ってようぜ? じゃないと、ほら、」
ぶちぶちぶち、と、髪の毛を引きちぎりながら、ファイフは元ヤン全開の凄絶な笑顔を浮かべる。
「テメエの汚ねえ顔を、もうちょっと汚くしちまうからよ、な? 大人しくしとけよ、クソ雑魚がよ」
「いぎぃ……いッ……!」
「…………」
頭頂部のみが禿げあがっていくヘルデンを横目にしつつ、ガイムは再び思考を巡らす。
ここまできたらもう、言い逃れるのは不可能と考えたほうが良いだろう。
確かに証拠は隠滅したが、おそらくは隠滅前に撮られていたのだ。
それらが抑えられているのだとしたら、さすがのガイムも罪を認めざるを得ない。
……が。
「弁護士と、その他諸々に連絡をさせていただく。よろしいですな?」
この状況においても、ガイムはなにも焦ってはいなかった。
なぜならガイムは、まだ手札を一枚も切っていないのだ。
勇者連合、魔道士連合、剣士連合、拳闘士連合。
そして、元老院議会。
それらのホットラインを、なにひとつ使ってはいない。
確かにここまで来たら、罪を罪で無くすことは不可能だろう。
だったら、もみ消してしまえばよい。
それこそがガイムの得意分野なのだ。
そして、それはユーリもクインリィも知る処である。
ここからが本当の戦いなのだ。
……そう。
そのはずなのだ。
「構いませんよ。どうぞ、お好きな所に念話を掛けてください」
「…………っ」
先ほどと同様、クインリィは極めて冷静にそう告げた。
その瞳の湖面には、波紋のひとつもたっていない。
まるで予定調和が如く、そんなことを言ってきたのだった。
「………………!!」
そのやりとりだけで、ガイムは瞬時に悟る。
おかしい。
こちらの本領を前にして、さすがにこの反応はおかし過ぎる。
「ま、さか……!」
彼女がそういった反応を示すということは、そういうことなのだろう。
ガイムは無駄なことをしない。
だが、そんな自身の信条など棚に上げ、次々とホットラインへと連絡をしていった。
それらの連絡先は、いついかなるときでもこちらの念話に応じる体制を整えており、事実として繋がらなかったことなどはない。
だというのに。
だというのに。
「…………バ、カな…………!」
繋がらない。
勇者連合、魔道士連合、剣士連合、拳闘士連合。
そして、元老院議会。
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