【完全版製作記念連載再開】金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師

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ざまぁされたらやり返す編

40話 魔弾の射手

「…………っ」

 一瞬だけ悲しげな表情を浮かべたクインリィだったが、次の瞬間には凛とした表情を取り戻し、銀鈴のごとき声を響かせる。

「ルミエ帝国外務大臣、ガイム・グレイリス。無差別大量虐殺の戦争犯罪を企てた罪で、あなたを捕縛します。ここにいる全員、速やかに武器を捨てて投降しなさい」
「「「「「…………ッ」」」」」

 もはやその声に逆らう者は誰もいなかった。
 彼女がここに来た時点で、大半の者は帝国の負けを確信していた。
 証拠が出てきた時点で、更にその半数ほどが下を向いた。
 それでも僅かに残った、負けを認めたくない者たちも、クインリィのその声によって勝機を諦めた。

 有無を言わさぬ存在感と、圧倒的な威厳。
 一国の王が持つその威容に逆らえるものなど、いるわけがなかったのだ。
 そんな中、ガイムだけがなんの反応も示さず、魂が抜け落ちたかのような体(テイ)を晒すままにしていた。
 惨めなその姿を前に、ユーリは手早く指示を出していく。
 
「……セイリーヌさん。帝国兵士の人たちに、拘束魔法掛けてくれるかな? ファイフさんはマホちゃんに連絡して、大暴走スタンビートが片付いたら迎えに来るように言って……あと、それ以上髪の毛むしるのやめてあげて」
「はい!」
「はいよ! ……それとさ、勇者」

 指示通りに動いていくセイリーヌ。ファイフはヘルデンの髪を投げ捨てながらこちらに近づくと、左右からユーリのほっぺたを引っ張った。

「あんたが落ちるのは地獄じゃねーよ。例えそうだとしても、あたしたちも一緒なんだからさ、悲しそうな顔すんな。笑え!」
「あ、うん……はは、ごめんね、ありがとう」

 なんとも彼女らしい元気づけに言葉を返すと、ファイフも笑顔で立ち去って行った。
 ……そうだ。
 自分たちは、まだまだこれからなのだ。
 勇者を辞めたからといって、人生も終わるわけではない。
 これから人々のためではなく、自分のために人生を謳歌して──。

「……わ、しは……負けた……のか?」

 そんなことを思っていると、ガイムがうわ言のようにポツリと言った。
 ユーリはしゃがみ込んで彼と顔を合わせると、微笑みながら言葉を返す。

「そうですね。でも、僕も負けです。さっきガイムさんが言ってた通り、『痛み分け』ですよ」
「…………」

 しばし沈黙が開いて、再びうわ言のような言葉が続く。

「わしは……なにも持たずに生まれてきた……。だから、自分の中にあるものをかき集め、どうにか形にして、それを磨き続けてきた……」
「はい。素晴らしい努力だと思います」

 素直にこちらの思っていることを伝える。
 彼に対して相応の怒りはあるものの、こうして抜け殻のようになった彼にそれをぶつけるのは、ユーリの主義に反するし、パーティのみんなも喜ばないだろう。
 ……いや、マホやファイフあたりなら、〇しちゃえとか言いそうだが。
 そんなことを思っている間にも、ガイムは独白のように言葉を紡ぐ。

「しかし、そんなものは所詮張りぼてだ……それを武器として認めさせるには、説得力が必要……。勝たねばならない。わしは勝ち続けなければならないのだ……」

 勝利に対する異常なまでの執着。
 ガイムのその姿勢は、自己肯定感の低さに端を発しているようだった。
 意外とメンヘラチックなおじさんだったのだ。

「勝たねば……誰もわしのことなど認めない。わしのほうを見向きもしない……。勝ち続けなければ、わしに存在価値などないのだ……」
「そんなことはありませんよ。あなたは正真正銘の強敵でした。他の誰が認めなくても、僕はあなたのことを認めています」

 と、思わずメンケア担モードでその肩に手を置こうとした……。
 そのとき、

「勝たねばならん、勝たねば……! こんなところで負けるわけには、いかんのだ!!」

 ガイムは懐に手を差し入れると、大口径のリボルバーを握りしめ、

「魔弾【龍咆弾ドラゴンブレスバレット】!!」
「なっ……!?」

 ガゥンッ!! と。
 凄まじい反動(リコイル)に押し出されていった弾丸が、ユーリの心臓へと食らいつき、その身体を吹き飛ばした。
 その弾丸は、破城槌の一撃とされる、ドラゴンの【ブレス】を封じ込めたもの。
 しかも『面』としてではなく『点』の攻撃として、その威力を一点に凝集させたものだ。
 ──勇者の【勇装龍気フランジャー】すら貫く、死の弾丸である。
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