【完全版製作記念連載再開】金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師

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ざまぁされたらやり返す編

44話 バックれる

「な、なんだってぇ~!? じゃ、じゃあ、ヘルデンくんに、逃げられてしまったってことかいッ!?」

 と、緊迫感たっぷりにそう言ったユーリだったが、

「……ん~。でもまあ正直……『だからなに?』って感じなんだよね」
「ね。あ、そうなんだぁ~、へえ~。みたいな」

 と、緩い感じでファイフと顔を見合わせた。
 主犯であるガイムは捕まえたし、大暴走スタンビートも収まりつつある。
 そんな中で、小物ひとりに逃げられたとて「え? あぁ、そう」くらいにしか思えなかったのだ。
 そんなメンタリティをぶら下げていると、クインリィも大してやる気なさそうな声音で、

「まあ、正直私も同感ですが……そういうわけにもいきません。彼も戦犯の一人なのですから、きちんと捕まえてください」
「ん~。『戦犯』か……」

 エニファーとビーリッシュのほうをちらりと見やる。帝国兵をベースキャンプへと連行しながら、こちらに手を振ってくる彼女らへと手を振り返し、自分の考えを述べた。

「確かに彼も加害者のひとりだし、あの二人の報告にあった通り、かなり悪い子だし、頭も良くない……。救いようがないっていえば、そうなのかもしれないけどさ、」

 今度はガイムのほうを見やると、彼はジージョに連行されつつ、『汚い手でわしに触るな! 不当な扱いを受けたと報告させてもらう!』などと喚き散らしている。

「でも、ガイムさんに利用されていた、っていうことは、間違いないと思うんだよね」

 そう。
 彼はあくまでも、頭の悪さをガイムに利用されて、この計画の歯車に組み込まれただけなのだ。
 被害者、とまではいかないだろう。
 しかし、同じような扱いを受けるのは、あまりに不憫ではないだろうか。

「頭の悪い人は利用をされる……。確かにそれはこの世の常だと思うし、納得したくはないけど、この世が円滑に回っていくために、必要な理だとも思う。
 でもさ、それでもやっぱり、利用されるほうが悪い、なんていうことは、あっちゃいけないって思うんだ。
 悪いのは利用するほう。そういう人に指向性を与えるほうなんだよ。
 だから僕は、この一回『失敗』で、彼に終わって欲しくない、って思うかな……」
「……相変わらず、優しいですね、あなたは」

 困ったように、しかし愛くるしいものを見るような目でユーリを見やってから、クインリィはやや無理やり凛然とした表情を浮かべると、

「それは尊重されるべき感情だと思いますが、司法とはまた別の話。罪には罰を与えねばなりません。
 ユーリ、辛いことを命じて申し訳ありませんが、ヘルデンの捜索を」
「分かりましたよぉ~。やる気でないけど、【勇装龍気フランジャー】を辿って……ん?」

 そこでユーリは、ファイフの背中に、靴型の痣が滲んでいることに気付く。

「わ、わわ! ファイフさん! 背中! 背中に傷あるよ、大丈夫!?」

 すぐさま治癒魔法をかけながらそう問うと、ファイフはこともなげに答えた。

「ああ、さっきヘルデンに踏まれたときについたやつだ。あはは。別に大した傷じゃないのに。でも直してくれてありが……」

 ありがとう、と。
 そう、ファイフがそう言いかけた、そのとき、

 バォンンッ!!

 火柱を立ち昇らせるようにして、ユーリの全身から【勇装龍気フランジャー】が迸る。
 ヘルデンを威嚇したときよりも、ガイムへと力を誇示したときよりも、さらに大きく、太く。
 突風すら巻き起こす勢いで、彼は【勇装龍気フランジャー】を展開し始めたのだった。

「「「「ひっ! ひいいぃぃ!!」」」」」」」

 帝国兵は漏れなく腰を抜かし、中には失禁する者も出始める。ジージョも『何事ですか!?』とクインリィの元まで駆け戻り、周囲には再び緊張感が奔った。

「ちょ、ちょっと、勇者!? 急にどうしっ……」
「……その傷、ヘルデンくんにやられたの?」

 ファイフの問いをぶった切って、ユーリは静かな──とても静かな声でそう訊ねる。
 
「う、うん……まあ、そうだけど」
「……そっか」
 
 続いて彼は、静かな視線をクインリィのほうへと向け、

「……クインリィ様。このサザン山脈ってさ、生態系完全にバグってて、野生動物は生まれてこないし、近づきもしないじゃない?」
「そうですね」
「モンスターしか生まれないし、モンスターの温床にもなってる、とっても危険な区域だよね」
「その通りです」
「じゃあさ……」

 ぐにゃ、と、彼は耳たぶの下くらいまで口を割ると、

、いいよね?」

 物騒なその質問に、ジージョが胡乱げに挟んだ。

「な、な……? え、な、なくなっても、いい……って。ゆ、勇者様? なにを仰られているのですか?」

 そう言葉を返すジージョだったが、クインリィは思案顔で何回か頷き、

「なるほど。大暴走スタンビートを納めるために、やむなく王国側だけの山脈を削り取った……。
はい、悪くない筋書きです。帝国を舐め散らかしている言い分であるところが、特に」

よく分からないことを言ってから、眉ひとつ動かさずに言う。

「やっちゃってください」
「陛下!?」
「ユーリの言う通り、このサザン山脈はモンスターの苗床。国にとっては百害あって一利もない場所です。中堅冒険者にとっては良い稼ぎ場となっているようですが、その労力を他に回したほうが、国益にもつながるというものです。いい機会ですから、サクッとなくしちゃいましょう」
「ちょ、ちょっと待ってください! そ、そんなことしていいわけないですし……そもそも! ヘルデンがいなくなったということが……や、山を消すなんていうことと、どう関係があるんですか!?」
「あ、ごめんね、ジージョさん、ふたりだけで話しちゃった」

 グルンッ! ユーリは首だけジージョのほうに向けて、いとも淡々と、

「ヘルデンくんを追っかけまわすのに、この山邪魔だから、ぶっ壊してもいいか……って、そういう話をしてるんだよ?」
「……っや! ……はッ!」

 やっはぁ、みたいなことを言ってから絶句するジージョ。彼女から目を離すと、ユーリはスッと手を突き出し、

「僕たちに手を出したらどうなるか……ちゃんと分かって貰わないと。
 ヘルデンくんにも、帝国にも、ね……?

好青年のイメージが優り、そちらのイメージが置き去りになりがちだが、決して忘れてはいけない。
 ──彼は、パーティメンバーに危害が及ぶようなことがあれば、国のひとつやふたつは余裕でぶっ壊す界隈なのだ。

「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと、ダメです、ダメです!! こ、こんな大きな山脈が変形したら、土壌保全や土砂災害にどんな影響が出るか……!? それにこの山脈は、王国と帝国の武力的な争いを抑止する役割も果たしているのですよ!?」
「抑止力なら、他にもあるではありませんか」

 クインリィはそう言って、ユーリのほうを指差し、

「そこにいる彼が、そうですよ」
「──【覇龍吼ドラグスタ】」

 ガオオォォォォンンンッ!! と。
 ユーリの手から放たれた青い光が、山間へと一直線に突き刺さり、連なった山々が焦土へと変えられていった。
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