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ざまぁされたらやり返す編
45話 天網恢恢災害界隈 イラストあり
「……な、にが、起こっている……?」
ヒィロ、フェイフェイとともに最前線で戦っていたパンダは、彼らしからぬ間の抜けた声を上げた。
サザン山脈の山々に、巨大な青黒い光が突き刺さったと思ったら、粉々に砕け散ったたのだ。
そんな光景を目の当たりにしたら、誰だってこんな声が出るだろう。
「勇者のヤツ……どういうつもりなのだ……!?」
「ん~。まあでもあれなら、大暴走も収まるだろうし、別にいいんじゃネ?」
「いいわけあるか! 魔法班! ナーセの街の結界魔法を強化しろ! 噴火どころの騒ぎではないぞ!」
フェイフェイとの会話を打ち切ると、パンダは怒号のような指示を響かせた。
本来ならその役割は、ヒィロがすべきなのだが……。
「は、はは……マジか……」
彼女は、見入ってしまっていた。
勇者を勇者たらしめている魔力【勇装龍気】。
それがもたらす、本来の力に。
本来の力を引き出した者にのみ使える、圧倒的な暴威に。
「……『ヒィロさんは僕より強くなった』なんて、よく言えますね、先輩」
──解放龍力98%。
歴代では二位。現存する勇者の中では、他に大差をつけての一位。
世界一の解放龍力を持つ勇者の所業に、ヒィロは魅せられてしまったのだ。
「あなたに勝てる勇者なんて、この世にひとりもいないんですよ……」
■
「はあ……はぁ……は……っひ……おえ……おぅえ!」
爆音。衝撃。地鳴り。爆炎と落石。再び爆音。
この世の終わりのような光景の中を、ヘルデンは山間を駆け抜けていった。
『ヘェェェェェェルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥデェェェェェェェェェェンンンンンンくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅんんんんんんんんんんんんんん~~~~。
どぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉこぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~』
「ひい! ひっ! ひぃいい、ひいいぃぃぃぃッ!」
爆音、轟音とともに、怨嗟と愉悦が混在した声が、拡声魔法によって降り注ぐ。
……甚だ信じがたい話ではあるのだが、認めざるを得ないようだ。
どうやらこの過飽和攻撃……いや、天変地異は、ヘルデンを見つけるためだけに行われているものなのだ、と。
自分が踏んだ尾は、虎なのではなく、イカれた神のそれだったのだ、と。
『この辺にいるのは分かってるんだよぉ~? 早く出てこないと、君の生まれ故郷も、こことシミラールックな土地にしちゃうよぉ~』
『ちょ、ゆ、勇者! やり過ぎ、やり過ぎだって! 山どころか、帝国領の形まで変わっちゃってるよ! ってかこんなんしたら、普通にヘルデン死ぬって!』
『いいよ別に。バカは生きてる価値なんてないんだから』
『さっきと言ってること違う過ぎない!?』
拡声魔法の中で、ファイフがユーリを諫めている声も聞こえるが、天変地異が収まる気配はなく、どころか帝国領にまで飛び火しそうである。
(こ、これだったら、普通に投降したほうが……! いや、いやいやいや! 無理無理無理! なにされるか分かんねえ! このままワンチャン逃げ切るしか……!!)
と、禿げあがった頭をぶん回し、どうにかして生き残る術を模索していると、進行方向にモンスターの群れを発見した。
「っく! どけ雑魚ども! 邪魔なん……ッ!」
と、【勇装龍気】を放とうとした、そのとき……。
「──見つけたぁ~~~~~~~♪」
「…………ッ!!」
来たるべきときが、来てしまったようだ。
ファイフをおんぶしたユーリが、飛行魔法によって、ヘルデンの眼前へと舞い降りたのだった。
「あ……あぁ……あ、あ……」
「いやぁ~。困るよヘルデンく~ん。君のせいでこんなことになっちゃったじゃない。モンスターさんかわいそう。山さんかわいそう。山の神々さん、バチ切れしてそぉ~」
「い、いや、一番バチ切れしてんのは、アンタだと思うんだけど……」
ユーリの背から下りると、ファイフは憐憫の視線をヘルデンへと向け、
「確かにコイツのことは嫌いだけどさ、ここまでビビらせたらもう充分だよ。これからちゃんと罪も償うことになるだろうし、この辺で勘弁……」
「んっんー。分かってないなあ、ファイフさん。それは大暴走を引き起こしたに対する罰だよね? 僕が言いたいことは、そうじゃないんだよ~」
ユーリは振り返りもせず、背面に向けて【勇装龍気】をぶっ放した。
「「「「「ぐぎ、ぎいいいぃぃぃぃぃぃぃッ!?」」」」」
すると、青黒い光が一団を丸呑みにして、山林ごと灰燼へと帰していく。
山火事の如く燃え上がる山の中で、ユーリは爽やかに笑いながら言った。
「僕の女に手を出したら、どうなるか……。
それはさ、ちゃんと僕が、教えてあげないとじゃない?
彼にも、帝国の人たちにも、さ」
「へひ、ひぃ、っひ……!」
ヘルデンはかばりと土下座をすると、額を地面に擦りつけながら、
「わ、悪かった! マジで、悪かったと思ってる! い、いや、思ってます! もう二度と、あんたには逆らわないって誓う! 誓います!
ファイフ……さん! ファイフさん! あ、あんたにも謝る! だから、その、ど、どうにかそいつ……その方を説得して……!」
と、図々しくもファイフへと下駄を放ったヘルデンだったが、彼女はポーっとした目でユーリを見やってから、やがて恥ずかしそうに、
「や、やだぁ♡ もぉ~! 勇者ってばぁ~♡ ぼ、僕の女、だなんて……、そんな、そんなぁ♡ セイラさんに悪いよぉ~♡」
「…………ッ!」
と、体をくねらせるばかりで、こちらに見向きもしなくなっていた。
「……あ、あぁ……あっ……!」
「……さて、ヘルデンくん」
ガリ、ガリガリ、ガリ……と、剣の切っ先で地面を削りながら、ユーリはヘルデンへと歩み寄る。
そしてその眼前で足を止め、首を九十度に折り曲げると、件の目が全く笑っていない笑みを浮かべた。
「また怖いモンスターが来たらやっつけてあげるし、それに僕、セイラさんに教わってるから、治癒魔法は上手なんだ。
──だから、何回死にかけてくれてもいいからね?」
「うあぁ、あ……あッ………うぐぅあ! あ゛あ゛ッ! ぐぎぃぅうッ! むぐぅ、うぐあああああああああああぁぁぁぁぁぁッ!!!」
──斯くして。
未曽有の大災害となった大暴走は、サザン山脈消滅という未曾有の大災害によって、無事食い止められたのだった。
※※以下筆者後書き※※
今回もご覧いただきありがとうございました!
あともうちょいで2編完結となります!
そして本日から31日まで、1日3話更新となります! ラストスパート!!
ご意見ご指摘、いいねやお気に入り登録、大会ポイントの投票など、よろしければお願い致します!
ヒィロ、フェイフェイとともに最前線で戦っていたパンダは、彼らしからぬ間の抜けた声を上げた。
サザン山脈の山々に、巨大な青黒い光が突き刺さったと思ったら、粉々に砕け散ったたのだ。
そんな光景を目の当たりにしたら、誰だってこんな声が出るだろう。
「勇者のヤツ……どういうつもりなのだ……!?」
「ん~。まあでもあれなら、大暴走も収まるだろうし、別にいいんじゃネ?」
「いいわけあるか! 魔法班! ナーセの街の結界魔法を強化しろ! 噴火どころの騒ぎではないぞ!」
フェイフェイとの会話を打ち切ると、パンダは怒号のような指示を響かせた。
本来ならその役割は、ヒィロがすべきなのだが……。
「は、はは……マジか……」
彼女は、見入ってしまっていた。
勇者を勇者たらしめている魔力【勇装龍気】。
それがもたらす、本来の力に。
本来の力を引き出した者にのみ使える、圧倒的な暴威に。
「……『ヒィロさんは僕より強くなった』なんて、よく言えますね、先輩」
──解放龍力98%。
歴代では二位。現存する勇者の中では、他に大差をつけての一位。
世界一の解放龍力を持つ勇者の所業に、ヒィロは魅せられてしまったのだ。
「あなたに勝てる勇者なんて、この世にひとりもいないんですよ……」
■
「はあ……はぁ……は……っひ……おえ……おぅえ!」
爆音。衝撃。地鳴り。爆炎と落石。再び爆音。
この世の終わりのような光景の中を、ヘルデンは山間を駆け抜けていった。
『ヘェェェェェェルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥデェェェェェェェェェェンンンンンンくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅんんんんんんんんんんんんんん~~~~。
どぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉこぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~』
「ひい! ひっ! ひぃいい、ひいいぃぃぃぃッ!」
爆音、轟音とともに、怨嗟と愉悦が混在した声が、拡声魔法によって降り注ぐ。
……甚だ信じがたい話ではあるのだが、認めざるを得ないようだ。
どうやらこの過飽和攻撃……いや、天変地異は、ヘルデンを見つけるためだけに行われているものなのだ、と。
自分が踏んだ尾は、虎なのではなく、イカれた神のそれだったのだ、と。
『この辺にいるのは分かってるんだよぉ~? 早く出てこないと、君の生まれ故郷も、こことシミラールックな土地にしちゃうよぉ~』
『ちょ、ゆ、勇者! やり過ぎ、やり過ぎだって! 山どころか、帝国領の形まで変わっちゃってるよ! ってかこんなんしたら、普通にヘルデン死ぬって!』
『いいよ別に。バカは生きてる価値なんてないんだから』
『さっきと言ってること違う過ぎない!?』
拡声魔法の中で、ファイフがユーリを諫めている声も聞こえるが、天変地異が収まる気配はなく、どころか帝国領にまで飛び火しそうである。
(こ、これだったら、普通に投降したほうが……! いや、いやいやいや! 無理無理無理! なにされるか分かんねえ! このままワンチャン逃げ切るしか……!!)
と、禿げあがった頭をぶん回し、どうにかして生き残る術を模索していると、進行方向にモンスターの群れを発見した。
「っく! どけ雑魚ども! 邪魔なん……ッ!」
と、【勇装龍気】を放とうとした、そのとき……。
「──見つけたぁ~~~~~~~♪」
「…………ッ!!」
来たるべきときが、来てしまったようだ。
ファイフをおんぶしたユーリが、飛行魔法によって、ヘルデンの眼前へと舞い降りたのだった。
「あ……あぁ……あ、あ……」
「いやぁ~。困るよヘルデンく~ん。君のせいでこんなことになっちゃったじゃない。モンスターさんかわいそう。山さんかわいそう。山の神々さん、バチ切れしてそぉ~」
「い、いや、一番バチ切れしてんのは、アンタだと思うんだけど……」
ユーリの背から下りると、ファイフは憐憫の視線をヘルデンへと向け、
「確かにコイツのことは嫌いだけどさ、ここまでビビらせたらもう充分だよ。これからちゃんと罪も償うことになるだろうし、この辺で勘弁……」
「んっんー。分かってないなあ、ファイフさん。それは大暴走を引き起こしたに対する罰だよね? 僕が言いたいことは、そうじゃないんだよ~」
ユーリは振り返りもせず、背面に向けて【勇装龍気】をぶっ放した。
「「「「「ぐぎ、ぎいいいぃぃぃぃぃぃぃッ!?」」」」」
すると、青黒い光が一団を丸呑みにして、山林ごと灰燼へと帰していく。
山火事の如く燃え上がる山の中で、ユーリは爽やかに笑いながら言った。
「僕の女に手を出したら、どうなるか……。
それはさ、ちゃんと僕が、教えてあげないとじゃない?
彼にも、帝国の人たちにも、さ」
「へひ、ひぃ、っひ……!」
ヘルデンはかばりと土下座をすると、額を地面に擦りつけながら、
「わ、悪かった! マジで、悪かったと思ってる! い、いや、思ってます! もう二度と、あんたには逆らわないって誓う! 誓います!
ファイフ……さん! ファイフさん! あ、あんたにも謝る! だから、その、ど、どうにかそいつ……その方を説得して……!」
と、図々しくもファイフへと下駄を放ったヘルデンだったが、彼女はポーっとした目でユーリを見やってから、やがて恥ずかしそうに、
「や、やだぁ♡ もぉ~! 勇者ってばぁ~♡ ぼ、僕の女、だなんて……、そんな、そんなぁ♡ セイラさんに悪いよぉ~♡」
「…………ッ!」
と、体をくねらせるばかりで、こちらに見向きもしなくなっていた。
「……あ、あぁ……あっ……!」
「……さて、ヘルデンくん」
ガリ、ガリガリ、ガリ……と、剣の切っ先で地面を削りながら、ユーリはヘルデンへと歩み寄る。
そしてその眼前で足を止め、首を九十度に折り曲げると、件の目が全く笑っていない笑みを浮かべた。
「また怖いモンスターが来たらやっつけてあげるし、それに僕、セイラさんに教わってるから、治癒魔法は上手なんだ。
──だから、何回死にかけてくれてもいいからね?」
「うあぁ、あ……あッ………うぐぅあ! あ゛あ゛ッ! ぐぎぃぅうッ! むぐぅ、うぐあああああああああああぁぁぁぁぁぁッ!!!」
──斯くして。
未曽有の大災害となった大暴走は、サザン山脈消滅という未曾有の大災害によって、無事食い止められたのだった。
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