【完全版製作記念連載再開】金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師

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ハーレム編

53話 煩悩×100000000 イラストあり

「……は。マジ思春期童貞だな」

 マホの冷めた言葉が放り投げられる。
 それから誰も何も言わず、皆が居心地悪そうにその場に佇み、最悪の空気が漂い始めた。

(うわ……なにこれ。なにこのお葬式の空気? なんかめちゃくちゃ悪いことした気分……)

 いままで散々悪いことをしてきたのに、悪いことをしなかったことにより、いままでにないほど悪い空気になるのだから、なんとも皮肉な話である。
 それも含めて自分の業か……などと悟りながら、ユーリはパンと柏手を打って、

「はい、じゃあもうこの話はおしまいね!
 いやぁ~、でもみんな、ほんとにそんな心配してくれてありがとうね。だけど、僕なら大丈夫だよ!
 確かに僕はメンタルよわよわだけど、いままで通にさ、みんなに一緒にいてもらったり、遊んでもらったりしてれば、すぐ元通りに……」
「さすが坊ちゃんです。皆の気持ちを考えた、大変素晴らしいご決断だと思いますよ」

乾いた空気の中で、ブレイダのほんわかとした声が響く。
ユーリもそれに乗るようにして、わざとらしく大きな声で、

「だよね、ブレイダさん! だからそろそろその物騒なもの仕舞って貰えると……」
「でもね、坊ちゃん、」

 ヒュン、と。
 剣を持ったブレイダの右手が、掻き消える。
 すると、

「──ふざけるのも大概にしなよ」

 ゴシャアアアアアァァッ!! と。
 2階へと繋がる大階段が、半ばから真っ二つに断ち切れ、派手な粉塵とともに崩落していった。

「どぅおおお!? ちょ、ブ、ブレイダさん! いきなりなにすッ……ええぇぇ!?」

 それに対して反応するよりも早く、二刀目が振り下ろされ、ユーリは大きく横に飛ぶ。
 先ほどまでユーリが居た床が深く抉れ、その延長線上にあった灰皿が、台座と壁ごと弾け飛んだ。

「ぎぎぎ、銀武の灰皿ああぁぁ! 6億! 6億ルードがあぁ!」

 ブレイダはユーリが逃げた方向へと刃を振り抜く。大きく身を屈めてそれを躱わすと、今度は背後に飾ってあった絵が、中心から沈み込むようにして真っ二つに割れた。

「えぇえええッ! 絵、絵、絵ぇぇぇ! 102億が! ドルベオの! 102億の変な絵がああぁぁ!!」
「黙って聞いてればさあ、なに見当違いなことをグダグダ言ってんのかなあ? しかも、坊ちゃんがしたいことを全部セイラさんに言わせて、挙げ句の果てに女の子たちに恥かかせて、君は一体なにがしたいわけ?」

 あっという間に108億を切り裂いたブレイダの表情は──無。
 普段の柔らかな雰囲気が、花のような笑顔が嘘のような、冷気すら生み出す鉄面皮だ。
 彼女が本気でブチ切れたときにだけ見せる、修羅の容貌である。

「建前とか、その謎の童貞ムーブとか本当に面倒臭いからハッキリ言うけど、みんな坊ちゃんとエッチしたいの。坊ちゃんのちんちんが欲しいからここに来てるの。恥ずかしいこととか、変態的なことなんて、むしろやりたいくらいに思ってるんだよ」

 ミキサーの如く屋敷と調度品を切り刻みながら、ブレイダはユーリへと迫り、その弁舌も加速させていく。

「女の子1人1人との関係が大事? 傷つけちゃう気がする? それって相手のこと思ってるようで、なんにも考えてないよ。自分の罪悪感から逃げるためにやってることで、相手の気持ちになんて寄り添ってないんだよ」
「…………っ!」

 迫りくる凶刃、そして言葉の刃に追い詰められていくユーリだったが、やがて壁際に辿りつくと、そこに飾ってあった宝剣に手を伸ばす。

「そもそもなぁに、ここでみんなで遊ぶって? 大人が8人も集まって、誰も見てない場所にいるんだよ。なのに、なに? ゲームかなんかで遊ぶつもりだったの?」
「ぐぅッ!」

ユーリは宝剣を抜き放ち、寸でのところでブレイダの唐竹割りを受け止めた。
 甲高い音と火花が散る中、ブレイダは見下すようにしてユーリを睨み、

「するでしょ、SEX」
「っぐ……だから、しないって言ってるでしょ!」

 叫びながら刃を押し返すと、ブレイダは後方に大きく飛んで身構えた。
 すぐにでもミキサーと化して突っこんできそうなその姿に、ユーリもためらいがちに【勇装龍気フランジャー】を発動させ、雄牛の構えを取る。

「決闘のルールはガン無視するわ、屋敷めちゃくちゃにするわ……ちょっと無茶苦茶過ぎるよ、ブレイダさん」
「自分のしてること棚にあげて、よくそんなこと言えるね。そんなふうに躾けた覚えはないんだけどなあ……。
 っていうかさぁ、そんなくだらないこと気にするよりも……」

 そのとき、ブレイダの真横の粉塵が割れ、凄まじい殺気が押し寄せてくるのが分かった。

「──もっとちゃんと、みんなに向き合ってあげなさい」
「雷魔法【ダークナイトパレード】」

「!!」

 幾重に折り重なった雷の刃が、突如としてユーリへと襲い掛かる。
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