【完全版製作記念連載再開】金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師

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ハーレム編

63話  Harem・Square・club

 マホが引き気味に突っこんだところで、エンリエッタはその言葉を噛みしめるようにくるくる回りながら、

「彼女! 私、勇者様のかーのじょ♪ むふふ! それってもう、いまこの瞬間からってことでいいんですよね?」
「う、うん。いいんじゃないかな」
「じゃ~、みんなの前でこういうことしてもいいですよね♪」
「こういうことって……おぉ」

エンリエッタはユーリの腕に抱き着き、その勢いで頬にキスをした。
 それからふわふわの髪をユーリに擦りつけると、上目遣いに笑いながら言った。

「これからいっぱいゲームしたり、イチャイチャしたり、えへへ、エッチしたり、ラブラブな毎日を送って行きましょうね、勇者様♡」
「う、うん。よろしくね、エリちゃん」

嬉しいやら恥ずかしいやらの思いで返事をしていると、ツツツ、とセイラもユーリの横に移動し、ぽふ、と彼の肩に頭を押し付けた。

「まあ、第一秘書にして第一彼女は私なわけですが」
「そ、そうだね……。ん? そうだねはおかしくないか?」
「おかしくないです」
「おかしくないか……あたっ!」

いつの間にかやってきたマホが、ユーリの足を軽く蹴ってから、ふてぶてしい笑顔とともに告げる。

「ま、お前みたいなヤリチン童貞、どーせ誰とも付き合えねえだろうし、せいぜいボクが可愛がってやんよ」
「あはは……凄いパワーワード出たね」
「じゃああたし正面貰いぃッ!」

ファイフが勢いよくユーリに抱きつき、182センチの体躯を軽々と持ち上げる。

「あたしは脳筋だから事務仕事はあんまりだけど、勇者のパーソナルトレーニングとか、ダンジョン探索とか、その……あっちの方とかでも、色々に役に立てるようにするから、これからもよろしくね!」
「う、うん、頼りにしてるよ、ファイフさん……で、でも降ろして。折れるて! イケメンの背骨折れるて!」

地面に下ろされると同時、その背中にブレイダが抱きつきながら言った。

「私はみんなよりちょっとお姉さんだけど、テクニックじゃ負けませんからね。いっぱい可愛がってあげるよ……こことか、こことかぁ♡」
「ちょ、ちょっとブレイダさん。耳舐めないで……って、ズボンの中に手も入れないでってば!」
「ダメなんですかぁ?」
「ダ、ダメじゃないけど、いまはダメ! また暴走するから! また死傷者が……って、え!?」

いつの間にかやってきたカリナが、ユーリのシャツに手を差し込み、巧みな指遣いで胸板を弄り始めた。

「にひひぃ、勇者ぁ♡ 料理以外も色々頑張るからさ、カリナも可愛いがってよ。カリナ、手先器用だからさぁ、色々お役に立てると思うよぉ♡」
「ちょ、ちょっと、確かに器用だけど、いまその使い方されてら……おお!」

ハンナに左手をとられ、そのままおもむろに指を咥えられた。舌先でチロチロと指の間を舐められて、なんとも背徳的な快感が昇ってくる。

「わたくしもよろしくお願いします、勇者様。シェフだからといって差別せず、可愛がってくださいまし……わたくし、舌には自信がございますので♡」
「えっと、それは……料理のアナリストとしてってことかな? それとも……」
「うふふ。どっちらと思いまふかぁ?」
「ちょ、いや、そんな舐めあげないでってば! カリちゃむとブレイダさんは手ェだして!」

 と、場が荒れ始めたところで、ユーリは一度天を仰ぎ、瞑想するように深く目を瞑ると、

「あー………………。お母さん、ほんと、産んでくれてありがとう」
「心の声の漏れかたキショいなお前」
「で、でもじゃあ、まんざらでもないんだね、この状況……じゃあ良かったよ」

 と、マホとファイフがツッコんだところで、セイラはユーリに群がる女子たちを引きはがしながら注意喚起をする。

「ともあれ皆さん、勇者様はパーティリーダーで、我々はそのメンバーという立場である事ことを、努努忘れないで下さいね」
(それセイラさんが言うんだ)
(それセイラさんが言うんだ)
(それセイラが言うんかい)
(セイラさんが一番公私混同してそうなのに……)

 ファイフ、エンリエッタ、マホ、カリナがモヤっとしながらそう思っていると、ファイフはなにか思い出したように柏手を打った。

「あ、そーだ思い出した。パーティネームだよ、パーティネーム。あたしたちの新しいパーティの名前、どうすんの?」
「あ、そういえばそうですね」

 相槌を打ちつつ、エンリエッタは少し困り顔になり、一同も微妙な表情を浮かべた。
 パーティの名づけ。これは意外と面倒な作業なのだ。
 冒険者ギルドへ登録する際、必ず決めておかなくてはならないものなのだが、パーティの方向性や持ち味などが定まっていない状態でつけなくてはいけないので、パーティネームと実態が乖離しがちなのだ。

 一~二年して、ようやくパーティの強みや特性が定まってきたころ、ギルドに申請してリネームをしようにも、そのころにはある程度名前が浸透しているので、便宜的な意味で変えづらい……といった事態にも陥りがちだ。
 つまり、要約すると、

「ダセェ名前つけたら、それを一生背負うことになるからな。そこはマジ慎重にいこうぜ」

 マホの言葉にずっしりと重みを感じるように、一同は微妙な顔のまま頷く。が、ユーリだけはあっけらかんとした表情で、

「あれ、言ってなかったっけ? それならもう考えてあるよ」
「おー、マジ? それは普通にめっちゃありがてーわ」
「にひひぃ。やるじゃん勇者~。さすがパーティリーダーだぜぃ!」

 マホとカリナに持ち上げられて、『まぁね~』と胸を張るユーリ。もっとも、ふたりのヨイショの裏には、『自分がダサ十字架を背負うのが嫌だから、誰かにその重責を押し付けてしまいたい』という思惑があるのだが……それはともかく。

「えへへ。結構前から考えてたんだけどね……」

 一同を見回しながら、ユーリは誇らしげにそれを言った。

「『ハーレム・スクエア』──それが、僕たちの新しいパーティネームだよ。
 どう? ちょっとカッコいいでしょ?」
「「「「「「「……………………」」」」」」」

 一同の呆けたような、モヤっとしたような……あるいは、少し怒ったような反応を見て、ユーリは戸惑いながら首を傾げる。

「え? ダメ? ダサい? うそ、恥ずっ。結構自信あったのに……」
「……いえ、ダメとか、ダサいとかではなくて」

 怒りと呆れ、そして少しのやるせなさなど、ふつふつと沸き上がって来た感情を微笑の裏に押し込めながら、セイラは指摘した。

「勇者様、もしかして、ですけど……。
──最初から、このメンバーでハーレムを作るおつもりだったんじゃないですか?」
「いや……いやいやいや! 違うよ、違う! 別にそういうつもりでつけた名前じゃないって!」
「じゃあどういうつもりなんだよ!? 完全にヤリ散らかすつもりのネーミングじゃねえか!?」
「そんなことないでしょ! いや、普通にカッコいいって思ってつけた名前だよ! 可愛い女の子の中に、僕ひとり男だから、じゃあハーレムだなって……」

 マホの指摘にも必死に手を振るユーリ。その様子を横目に、カリナとハンナは苦笑いしながら目を合わせつつ、

「いや、まあ、普通の人がそういう名前を付けたんなら、そういう解釈もできるんだけどさ……」
「これだけヤリ散らかすつもりの家を建てた方が、ヤリ散らかすネーミングをなされるということは……それはもう、ヤリ散らかすつもりでいらっしゃるのかな、と」
「坊ちゃんも人が悪いなぁ~♡ ──じゃあ、私たちがこんなに頑張ったのも、全部無駄だったって事かな?」
「ブレイダさん、目ェ笑ってない、目! なんかもぎ取るときの目になってる! いや違うって! 本当にそんなつもりないよ!」

 ブレイダから一歩距離を置くユーリに、頬を膨らませたエンリエッタと、怖い笑顔を浮かべたファイフが詰め寄る。

「絶対うそっ! だって勇者様! 私とするとき、わざと人に見つかりそうな場所でするときありましたもん! 誰かに見つかったら、その人も巻き込んでエッチなことするつもりだったでしょ!?」
「おやぁ~? 思い返してみれば、あたしもジムでおっぱじめられたこととかあったなぁ。……あれってそういうことだったの、勇者?」
「違う、違うって! だってそんなの不誠実じゃん! たまたま流れでそうなっちゃっただけって!
 最初からハーレムを作るつもりだったなんて、そんなこと……!」

思っていた。
 最初は誰かとしているところをわざと誰かに目撃させて、流れでふたりですることにして、その噂を皆に流し、三人、四人と巻き込み、なし崩し的にみんなでできたらいいな……というようなことを……。
 ユーリは思っていた。

 それなら不誠実にもならないんじゃない? いやだって、流れでそうなったんなら仕方ないし……うん。それなら誰も傷つかなくない? 僕、悪くないってことにできるくない? 
的なことも思っていた。
 そんな可愛らしくもひたむきな願いを込めて、このパーティネームをつけたのだ。
 が、それをこの場で言うと、とてもとても怒られそうだったので、

「思ってない! 思ってないよ! ほんと! マジ! 信じて、みんな!」

 それから誰になにを言われようと、そのスタンスを貫き通すのだった。
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