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第2章 青い海と空、常夏の島・東蘭
独立か死か
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ラニ連邦による支配は、東蘭の人々にとって過酷だった。資源は搾取され、文化は抑圧され、東蘭人は自分たちの土地で二級市民として扱われた。それでもラニ連邦の支配に終止符を打つために倭国が介入したことは、少なくとも搾取の終わりをもたらした。
だが、倭国が東蘭に介入した理由は単なる善意ではなかった。東蘭の豊富な資源と交易の要衝としての地位は、倭国にとって大きな魅力だった。また、ラニ連邦の勢力拡大を食い止め、東亜地方での自国の影響力を強化する狙いもあった。倭国は東蘭の島々に対する過酷な植民地支配を、ラニ連邦との戦争の大義名分として利用し、現地の反ラニ連邦派を巧みに扇動して自国の支持を得ることに成功した。
結果として、倭国の支配下に入った東蘭は経済的に復興し、教育やインフラも整備された。しかし、その代償として、倭国人による新たな差別と同化政策が俺たちを苦しめた。
「自由があると言いながら、奴らは俺たちを未開だと見下している。倭国もラニ連邦と同じだ。奴らは俺たちを利用しているだけだ。」
人々の不満は高まっていき、一部には倭国の支配からの完全な解放を求める声を挙げる者たちもいた。
「だが、独立のためには多くの血が流れるだろう。それに、我々にはまだ独立国としてやっていけるだけの経済的基盤がない。倭国の豊かさを利用して我々の地位を上げていくことが一番だ。」
そうした独立反対派も一方で多くいた。
二つの意見が対立する中で、東蘭は再び分裂の危機に瀕していた。
士官学校を卒業して間もないころ、戦争なんて現実味のない話だった。それが突然、目の前で始まった。東蘭内部でくすぶっていた独立への熱が、一部の急進派の暴走で燃え上がってしまったのだった。
倭国陸軍の駐屯地が奇襲を受けたって知らせが来たのはある日のことだった。独立派による一方的な攻撃で、これを契機に東蘭軍は倭国に宣戦を布告した。だが、内部では残留派と独立派が対立して混乱していた。俺はその状況を横目に見ながら、ただぼんやりしていた。
「これが俺の関わることなのか?」
そんな疑問を抱きながらも、戦況は刻々と変わっていった。東蘭側は人口の多さを武器に序盤は優勢だったが、倭国軍の緻密な戦略と統制された行動がその差を埋めていき、東蘭独立軍は徐々に追い詰められていった。
そんな中で、立ち上がったのが巌斗だった。彼の卓越した指揮能力と人を引きつける力が、東蘭独立軍の戦力を引き出し、一時的にでも倭国軍を押し返す結果を生んだ。いつしか人々は巌斗を独立の支柱として慕うようになり、若いながらも独立軍の総大将に祭り上げられるほどの存在になった。
「独立は、俺たちの手で掴む。」
巌斗の言葉、そして彼の存在そのものは、東蘭人すべての希望の光であった。
しかし、そんな一時的な戦力の再興は長くは続かなかった。
巌斗の部隊は、深い森の中に迷い込んでいた。背の高い木々が視界を遮り、どこに進むべきか見当もつかない。だが、彼らの迷いを見逃さなかったのが、倭国軍だった。森に潜む兵士たちが素早く包囲網を築き、罠が完成するのに時間はかからなかった。
倭国軍の司令官は、無駄な血を流すことを避けようと、巌斗に降伏を勧告する書簡を送った。しかし、彼が送り返した返答はたった一言だった。
「独立か死か」
彼は最後の一兵まで戦い抜き、圧倒的な数的不利の中で倭国軍に甚大な損害を与えた。その戦いぶりは、仲間たちに勇気を与えるものだったが、その奮闘もついに限界を迎えた。彼は壮絶な最期を遂げ、彼の魂は自由への献身と共に空へ昇っていった。
その知らせを聞いた時、俺は言葉を失った。すべてが白く反転し、頭の中が空っぽになる感覚に襲われた。東蘭の民、そして俺にとっても導きの光であった巌斗がいなくなったのだという現実が受け入れられなかったのだった。
巌斗の死によって、独立軍は指揮系統を失い、混乱が広がった。まさに絶望が押し寄せる中、その空白を埋めるように立ち上がったのが、巌斗の妻である琉霞だった。
俺が久しぶりに彼女に会いに行った時、悲しみに暮れる姿を想像していたが、そこにいたのは冷静で毅然としたリーダーの琉霞だった。高位武人階級に属する彼女は、その影響力を駆使して独立軍の再編成を進め、戦争の指導を引き継いでいた。彼女の周りにいる人間は琉霞を全面的に信頼しているらしく、きびきびと彼女の命令に動いていた。俺は琉霞にそんな大役を担えるのかと疑っていたが、今彼女を目の前にすると、その決断力や冷静さに驚かされるばかりだ。彼女が発する言葉に迷いは一切感じられない。
彼女の冷静な判断力と迅速な行動は周囲を圧倒し、兵士たちに新たな希望を与えているのは疑いがなかった。しかし、その表面上の態度の裏に隠された悲しみも同時に、俺には明らかだった。彼女は愛する夫を失い、その喪失感を押し殺しながらも、独立の旗を掲げ続けていた。
「士官学校成績最下層の無能将校が何の用?」
再会の場で、琉霞は鋭い言葉で俺を迎えた。
「『剛成が優秀な将校だ』なんて嘘くらい、私だってわかってたから。」
そうだ。巌斗は決して人を悪く言わないのだ。だからそんなことを彼女に吹き込んだのだろう。俺は肩をすくめながらも、反論した。
「だが、射撃の成績だけは俺がトップだったのは嘘じゃないぞ。」
琉霞は驚いて俺をまっすぐに見つめた。
「遊び呆けていた俺は軍に入るまで銃なんて握ったことはなかったが、ピストルでもライフルでも百発百中だった。後で教官に確認してみたらわかったよ。俺は射撃の異能を持っているってさ。」
そう言って、俺は続けた。
「巌斗の代わりはいない。だが俺にも、まだやれることがある。」
その決意を胸に、俺は倭国への潜入作戦に志願した。倭国の国力を内部から削ぐための特殊部隊の一員として、俺の射撃能力を活かすつもりだった。だが、市民を巻き込む無差別なテロ行為には反対で、自分なりの方法で戦う覚悟を決めていた。
--
倭国の街道を歩いていると、背筋に寒気が走った。周囲に目をやると、複数の人影が俺を取り囲むように潜んでいた。
「おいおい、こんなに堂々とやられたら、嫌でも気づくぞ。」
軽口を叩いてみせたものの、心臓は高鳴っていた。倭国にも東蘭人の陸軍士官が混ざっているから、倭国陸軍の制服を着てカモフラージュしていたつもりだったが、ここまで早く潜入がバレるとは思わなかった。こいつらは倭国が送り込んだ刺客だ。武器を手に、明確な殺意をこちらに向けている。
逃げる隙を作るために応戦するつもりだったが、奴らの戦闘能力は予想以上だった。手練れ揃いの刺客たちは、容赦なく攻めてくる。すべての敵に当てたとしても弾が足りない。しかも手練れのこいつらにはなかなか当たらない。焦りがピークに達し、額から汗が滴り落ちる。
その時だった。突然、風のように現れた影が俺の前を駆け抜け、刺客の一人を一撃で切り伏せた。現れたのは銀髪の女だった。彼女は驚くべき速さと正確さで刺客たちを次々と正確無比な剣で薙ぎ倒していく。
「何ぼんやりしてるの? 戦うか、逃げるか、決めなさいよ!」
その声にハッとして、俺も敵の隙を突いて応戦を続けた。彼女と俺の連携によって、刺客たちは次第に数を減らしていった。戦闘が終わると、彼女は剣を収め、俺に向き直った。
「助けてもらった礼は、しっかり払ってもらうよ。」
戦闘が終わると、剣士――涼音と名乗った――はそう言ってきた。アルビノ特有の銀髪に、鋭い青い目。高潔な戦士の光を宿していた。
「たかりかよ。」
俺は笑って肩をすくめた。
「まあ、助けてもらったのは事実だし、お前みたいな腕の立つ奴を雇うのも悪くない。」
俺は東蘭独立軍の潜入組であることを明かし、豊富な資金を持っていることを伝えた。涼音は興味を示し、即座に用心棒となる契約を結んだ。
「金をもらえるなら、命がけで守ってやるよ。でも、面白い話も聞かせてくれると嬉しいわ。」
--
数日後、潜入している同志を通して、琉霞からの電報が届いた。当初、にわかにはその内容は信じられなかった。
東蘭の統合の象徴であった大木――かつてラニ連邦が切り倒したあの巨大な樹木「神々の樹」についてだった。ラニ連邦駆逐後、東蘭には現地の民による、ある程度の自治と経済的自由が認められたものの、東蘭統合の象徴だったこの大木周辺は接収され、倭国の直接統治となった。当然、東蘭の民は不満であったが、なぜ倭国が、たかが切り倒された樹ごときにそんなことをするのか、その理由は誰もわからなかった。
今、その大木は新芽が出てきており、倭国が自らの最新鋭の技術と莫大な資金を投資し、その成長を加速させているというのだ。
「神々の樹を、復活だと……?」
近年、東蘭ではすべての税金が異常なほど引き上げられた。当然現地の反発はすさまじく、倭国がついにラニ連邦と同じように、東蘭から搾取を始めたのだとすべての東蘭人は思っていた。
しかし実際には違った。ここ倭国に潜入してきて分かったのだが、倭国側ですら同じように税が引き上がっていたのだ。そして琉霞によれば、最近の大増税が、全てこの大木再生のためにすべて費やされているという事実が明らかになった。
「倭国が、なんでそんなことを……?」
俺は故郷の象徴であった神々の樹の正体に疑念を抱かざるを得なかった。ただの木に過ぎないと思っていたそれに、なぜこれほどの資源が投入されているのか。しかも、倭国の人々まで苦しめているその行動には何かしらの理由があるはずだ。
「涼音、俺はこの大木の正体を突き止める。これは東蘭独立に直接かかわらないから、この件に関して金は出せない。お前は下りるか?」
そう俺が問うと、涼音の反応は意外なものだった。
「いいえ、全力でその謎を突き止めましょう。」
こうして、俺と涼音の旅は始まった。東蘭独立、そして神々の樹について明らかにし、俺たちの未来を変えるために。
ラニ連邦による支配は、東蘭の人々にとって過酷だった。資源は搾取され、文化は抑圧され、東蘭人は自分たちの土地で二級市民として扱われた。それでもラニ連邦の支配に終止符を打つために倭国が介入したことは、少なくとも搾取の終わりをもたらした。
だが、倭国が東蘭に介入した理由は単なる善意ではなかった。東蘭の豊富な資源と交易の要衝としての地位は、倭国にとって大きな魅力だった。また、ラニ連邦の勢力拡大を食い止め、東亜地方での自国の影響力を強化する狙いもあった。倭国は東蘭の島々に対する過酷な植民地支配を、ラニ連邦との戦争の大義名分として利用し、現地の反ラニ連邦派を巧みに扇動して自国の支持を得ることに成功した。
結果として、倭国の支配下に入った東蘭は経済的に復興し、教育やインフラも整備された。しかし、その代償として、倭国人による新たな差別と同化政策が俺たちを苦しめた。
「自由があると言いながら、奴らは俺たちを未開だと見下している。倭国もラニ連邦と同じだ。奴らは俺たちを利用しているだけだ。」
人々の不満は高まっていき、一部には倭国の支配からの完全な解放を求める声を挙げる者たちもいた。
「だが、独立のためには多くの血が流れるだろう。それに、我々にはまだ独立国としてやっていけるだけの経済的基盤がない。倭国の豊かさを利用して我々の地位を上げていくことが一番だ。」
そうした独立反対派も一方で多くいた。
二つの意見が対立する中で、東蘭は再び分裂の危機に瀕していた。
士官学校を卒業して間もないころ、戦争なんて現実味のない話だった。それが突然、目の前で始まった。東蘭内部でくすぶっていた独立への熱が、一部の急進派の暴走で燃え上がってしまったのだった。
倭国陸軍の駐屯地が奇襲を受けたって知らせが来たのはある日のことだった。独立派による一方的な攻撃で、これを契機に東蘭軍は倭国に宣戦を布告した。だが、内部では残留派と独立派が対立して混乱していた。俺はその状況を横目に見ながら、ただぼんやりしていた。
「これが俺の関わることなのか?」
そんな疑問を抱きながらも、戦況は刻々と変わっていった。東蘭側は人口の多さを武器に序盤は優勢だったが、倭国軍の緻密な戦略と統制された行動がその差を埋めていき、東蘭独立軍は徐々に追い詰められていった。
そんな中で、立ち上がったのが巌斗だった。彼の卓越した指揮能力と人を引きつける力が、東蘭独立軍の戦力を引き出し、一時的にでも倭国軍を押し返す結果を生んだ。いつしか人々は巌斗を独立の支柱として慕うようになり、若いながらも独立軍の総大将に祭り上げられるほどの存在になった。
「独立は、俺たちの手で掴む。」
巌斗の言葉、そして彼の存在そのものは、東蘭人すべての希望の光であった。
しかし、そんな一時的な戦力の再興は長くは続かなかった。
巌斗の部隊は、深い森の中に迷い込んでいた。背の高い木々が視界を遮り、どこに進むべきか見当もつかない。だが、彼らの迷いを見逃さなかったのが、倭国軍だった。森に潜む兵士たちが素早く包囲網を築き、罠が完成するのに時間はかからなかった。
倭国軍の司令官は、無駄な血を流すことを避けようと、巌斗に降伏を勧告する書簡を送った。しかし、彼が送り返した返答はたった一言だった。
「独立か死か」
彼は最後の一兵まで戦い抜き、圧倒的な数的不利の中で倭国軍に甚大な損害を与えた。その戦いぶりは、仲間たちに勇気を与えるものだったが、その奮闘もついに限界を迎えた。彼は壮絶な最期を遂げ、彼の魂は自由への献身と共に空へ昇っていった。
その知らせを聞いた時、俺は言葉を失った。すべてが白く反転し、頭の中が空っぽになる感覚に襲われた。東蘭の民、そして俺にとっても導きの光であった巌斗がいなくなったのだという現実が受け入れられなかったのだった。
巌斗の死によって、独立軍は指揮系統を失い、混乱が広がった。まさに絶望が押し寄せる中、その空白を埋めるように立ち上がったのが、巌斗の妻である琉霞だった。
俺が久しぶりに彼女に会いに行った時、悲しみに暮れる姿を想像していたが、そこにいたのは冷静で毅然としたリーダーの琉霞だった。高位武人階級に属する彼女は、その影響力を駆使して独立軍の再編成を進め、戦争の指導を引き継いでいた。彼女の周りにいる人間は琉霞を全面的に信頼しているらしく、きびきびと彼女の命令に動いていた。俺は琉霞にそんな大役を担えるのかと疑っていたが、今彼女を目の前にすると、その決断力や冷静さに驚かされるばかりだ。彼女が発する言葉に迷いは一切感じられない。
彼女の冷静な判断力と迅速な行動は周囲を圧倒し、兵士たちに新たな希望を与えているのは疑いがなかった。しかし、その表面上の態度の裏に隠された悲しみも同時に、俺には明らかだった。彼女は愛する夫を失い、その喪失感を押し殺しながらも、独立の旗を掲げ続けていた。
「士官学校成績最下層の無能将校が何の用?」
再会の場で、琉霞は鋭い言葉で俺を迎えた。
「『剛成が優秀な将校だ』なんて嘘くらい、私だってわかってたから。」
そうだ。巌斗は決して人を悪く言わないのだ。だからそんなことを彼女に吹き込んだのだろう。俺は肩をすくめながらも、反論した。
「だが、射撃の成績だけは俺がトップだったのは嘘じゃないぞ。」
琉霞は驚いて俺をまっすぐに見つめた。
「遊び呆けていた俺は軍に入るまで銃なんて握ったことはなかったが、ピストルでもライフルでも百発百中だった。後で教官に確認してみたらわかったよ。俺は射撃の異能を持っているってさ。」
そう言って、俺は続けた。
「巌斗の代わりはいない。だが俺にも、まだやれることがある。」
その決意を胸に、俺は倭国への潜入作戦に志願した。倭国の国力を内部から削ぐための特殊部隊の一員として、俺の射撃能力を活かすつもりだった。だが、市民を巻き込む無差別なテロ行為には反対で、自分なりの方法で戦う覚悟を決めていた。
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倭国の街道を歩いていると、背筋に寒気が走った。周囲に目をやると、複数の人影が俺を取り囲むように潜んでいた。
「おいおい、こんなに堂々とやられたら、嫌でも気づくぞ。」
軽口を叩いてみせたものの、心臓は高鳴っていた。倭国にも東蘭人の陸軍士官が混ざっているから、倭国陸軍の制服を着てカモフラージュしていたつもりだったが、ここまで早く潜入がバレるとは思わなかった。こいつらは倭国が送り込んだ刺客だ。武器を手に、明確な殺意をこちらに向けている。
逃げる隙を作るために応戦するつもりだったが、奴らの戦闘能力は予想以上だった。手練れ揃いの刺客たちは、容赦なく攻めてくる。すべての敵に当てたとしても弾が足りない。しかも手練れのこいつらにはなかなか当たらない。焦りがピークに達し、額から汗が滴り落ちる。
その時だった。突然、風のように現れた影が俺の前を駆け抜け、刺客の一人を一撃で切り伏せた。現れたのは銀髪の女だった。彼女は驚くべき速さと正確さで刺客たちを次々と正確無比な剣で薙ぎ倒していく。
「何ぼんやりしてるの? 戦うか、逃げるか、決めなさいよ!」
その声にハッとして、俺も敵の隙を突いて応戦を続けた。彼女と俺の連携によって、刺客たちは次第に数を減らしていった。戦闘が終わると、彼女は剣を収め、俺に向き直った。
「助けてもらった礼は、しっかり払ってもらうよ。」
戦闘が終わると、剣士――涼音と名乗った――はそう言ってきた。アルビノ特有の銀髪に、鋭い青い目。高潔な戦士の光を宿していた。
「たかりかよ。」
俺は笑って肩をすくめた。
「まあ、助けてもらったのは事実だし、お前みたいな腕の立つ奴を雇うのも悪くない。」
俺は東蘭独立軍の潜入組であることを明かし、豊富な資金を持っていることを伝えた。涼音は興味を示し、即座に用心棒となる契約を結んだ。
「金をもらえるなら、命がけで守ってやるよ。でも、面白い話も聞かせてくれると嬉しいわ。」
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数日後、潜入している同志を通して、琉霞からの電報が届いた。当初、にわかにはその内容は信じられなかった。
東蘭の統合の象徴であった大木――かつてラニ連邦が切り倒したあの巨大な樹木「神々の樹」についてだった。ラニ連邦駆逐後、東蘭には現地の民による、ある程度の自治と経済的自由が認められたものの、東蘭統合の象徴だったこの大木周辺は接収され、倭国の直接統治となった。当然、東蘭の民は不満であったが、なぜ倭国が、たかが切り倒された樹ごときにそんなことをするのか、その理由は誰もわからなかった。
今、その大木は新芽が出てきており、倭国が自らの最新鋭の技術と莫大な資金を投資し、その成長を加速させているというのだ。
「神々の樹を、復活だと……?」
近年、東蘭ではすべての税金が異常なほど引き上げられた。当然現地の反発はすさまじく、倭国がついにラニ連邦と同じように、東蘭から搾取を始めたのだとすべての東蘭人は思っていた。
しかし実際には違った。ここ倭国に潜入してきて分かったのだが、倭国側ですら同じように税が引き上がっていたのだ。そして琉霞によれば、最近の大増税が、全てこの大木再生のためにすべて費やされているという事実が明らかになった。
「倭国が、なんでそんなことを……?」
俺は故郷の象徴であった神々の樹の正体に疑念を抱かざるを得なかった。ただの木に過ぎないと思っていたそれに、なぜこれほどの資源が投入されているのか。しかも、倭国の人々まで苦しめているその行動には何かしらの理由があるはずだ。
「涼音、俺はこの大木の正体を突き止める。これは東蘭独立に直接かかわらないから、この件に関して金は出せない。お前は下りるか?」
そう俺が問うと、涼音の反応は意外なものだった。
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