三十路共の戯れ

おもちのかたまり

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限界なんて、来てみないとわからない

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本当にお茶菓子の分だけ話をして、マリリンは颯爽と帰っていった。妖精と人だと感性なんかが違うそうだけど、マリリンは随分人側に寄ってるんだなぁ。話が通じる辺り。長く存在していて、人間に感化されているとかかな

「リンちゃんはさぁ、聖女の力はどれくらい使えるのぉ?」

頬杖をついて、言えるところまででいいよぉ。と、ふわふわ浮きながら足を組むヴォイスさんに聞かれ返答に困る。いや、どれくらいもなにも師事すらしてないからね!私が聞きたいんだが?!

「戦闘能力1のゴミだよ…?ゼロさんのワンパンで沈むレベル。」

「僕も無手だったら死んでるよそれ。」

「そんなことはしない。」

わかる。ゼロさんクマだもんね。種別でいえばエゾヒグマの方。ヴォイスさんと真顔で頷きあっていると、ゼロさんが微妙そうな顔で割って入ってきた。冗談だよ?ほんとほんと。沈むのもほんとなだけで

「そもそも使い方を教えて貰っていないから、感覚頼りです。」

「そうなのぉ?最初からなんかよくわからない才能で使えるのかと思ってたぁ。」

「完全に後天的な上、当時泥酔していて記憶にございませんな。」

はぁーん?と肩を竦めてヴォイスさんに返す。むしろそんなチートな才能を持っていたら一人で旅してるやい。…聖物がいればワンチャン最強かな。不確定すぎていらないけれど

「ほら、御伽噺とかの伝説の聖女ってさ、回復魔法が得意でしょお?リンちゃんも覚えた方がいいんじゃない?」

小首を傾げる美女尊…。チラ見えの太腿が大変にけしからんよね。いやしかし、確かにテンプレ聖女あるあるですわ。皆を癒して慕われたり見初められたりする奴じゃろ?愛され主人公の鉄板だもんね。しかし思い出していただきたい。我、大聖女の前に『なんちゃって』って枕詞が付くんですよね

「神聖力は分類上は光属性だし回復魔法も光属性だから、リンちゃんは高威力の回復魔法が使えると思うよぉ。覚えられれば便利じゃない?」

「ううん…道中の回復係になれるのか。確かにこの世界の細菌事情とか分からないし、破傷風怖いからなぁ。」

ワクチンとかあるのかな?ちら、とゼロさんをみると、そもそもワクチンが何かわかってなかった。マジか。怖くなってきたんだが

「僕が教えられれば良かったんだけどぉ…、僕が使うのは一般的な光属性の回復魔法だから、リンちゃんの神聖力の規模だと何が起こるかわからないじゃない?だから、専門家に連絡しといたよぉ。」

にこにこ笑顔で告げられた言葉を、上手く飲み込めずに固まる。回復魔法を習うのに、回復魔法が使えるヴォイスさんは教えられない…?なんとなくニュアンスが違うのは感じるけれど、何を言っているのか以下略すぎてわからん。…いや、回復魔法を使えるに越したことはないけどね?専門家ってなんぞ。神聖力は高位神官以上じゃないと使えないみたいな話じゃなかったかい?

「ちなみに教皇だから、万が一魔法が暴発しても大丈夫だよぉ♡」

弧を描く口元も色気たっぷりに告げられ、ごふっ、と口から紅茶がフライアウェイした

「あああああっ!何も聞こえないっ!行きたくないでござるぅうううう!!」

権力者教皇とか碌な事がないよ絶対!頭を抱えてのた打ち回る私を、ヴォイスさんが愉悦顔で鑑賞していて腹立たしい。クッソ!綺麗な顔しおって!美人!巨乳!目の保養ですご馳走様です。視界の端でゼロさんがおろおろしているのが唯一の癒しだわ

「しかし、覚えれば今後も馬に乗っても問題ないんじゃないか?」

乗る事自体は楽しんでいただろう。とゼロさんに言われて項垂れる。それはそうなんですよねぇ…ジジ君かわゆいし、乗馬は楽しかったもの。身体が痛くならなければなおさらよかった。でもなぁ、…権力者に近づきたくない。社会人経験があって権力者が好きな人っている?権力怖いよね?腹の底の見えなさとか、図れなさとか、もろもろ。ああいう人達は自分とは違う次元にいるもの。でも、

嫌な事と心配を天秤にかける。心配しているのは、乙女ゲームとか小説にある様な利用されて酷い目に合う聖女にならないかってこと。回復魔法とか癒しの力なんて、ご利用は計画的にの最たるものだ。嫌なことは、治せる力が手に入るかもしれないのに見ないふりをして、有事の際に何もできなくて泣くしか無いこと。…それは嫌だ。滑稽で、無様だ。なら一時的にでも不快を飲み込んで、耐える方がいい

「…覚える。」

盛大にため息が出るのは見逃してほしい。礼儀がなっていなくても、教会関係者教皇様が相手なら、大聖女わたしの方が立場が上だ。謝って許してもらおう。強制的に有耶無耶にするとも言う!

「よし、覚えられそうなら人間救急箱になる。頑張るぞい!」

方針が固まって意気込んだら、考えこむ私を面白そうに見ていたヴォイスさんと目が合った

「あはっ、ほんとリンちゃんは面白いねぇ…僕のものになればいいのにぃ。」

「いい加減諦めろお前は。」

けらけら笑っているヴォイスさんに、ゼロさんが嫌そうな疲れた様な顔をしている。…こう、あれだよね。この二人というか、あともう一人ちらつく赤毛の男の三人組よ

「…いいなぁ」

私も、気安くて、喧嘩してもこいつなら大丈夫って思えるような相手が欲しいな。たまに敵になって、ちょっと激しめにやりあっても気が付いたらまた隣で笑ってるような、腐れ縁とかそんな安心できる関係。なんとなく、この世界で感じる疎外感というかさ…さみしい…。うう、テンプレの神様とかいるかな…?どうか私にそんなであいをおねがいし

「ぁれ…?」

「ッ、シンジョウ!?」

とつぜん地面が揺れて、気が付いたらゼロさんに抱き留められてた

「ぉ…?」

「大丈夫か?まて、動くんじゃない」

「ぉお~、なんか、じめんがまわって…」

立ち上がろうとしても、視界が揺れて踏ん張れない。ぐらぐらしてる

「身体が熱いな…。シンジョウ、動くなよ?」

「わ、」

ぐるん、と一回転を決めた視界が、ゼロさんの手で塞がれて前がみえない…けど、たぶん抱き上げられた?身体が浮いておりますな

「ヴォイス、近くに医者はいたか?」

「この辺じゃ無理だねぇ~、僕が見るよ」

「仕方ないか…、」

目の前は暗いままでなにもみえないのに、近くからゼロさんの声がして、それだけでふわふわして、眠くなって


□□□□□□□□


「…、シンジョウ?」

「おや、眠った?…うーん、気絶に近いかなぁ」

くったりと力なく身体を預けてくるシンジョウを抱え直す。規則正しい寝息が聞こえるが、触れる肌と吐息が熱い

「ん~、見た感じ、感冒風邪より疲れが溜まって熱が出ちゃったかなぁ?」

「疲労…」

「ま、突然身一つで世界を越えて来たんだし、原因は精神と肉体の疲労だね。妖精王にも会って、限界だったのかもねぇ~?」

熱冷ましだとヴォイスから渡された小瓶に、険しい顔の己が写る。…道中興味の向くまま楽しそうに走り回っていたが、そのまま受け取るべきではなかった。本人も気づかず無理をさせてしまったのかもしれない。己の不甲斐なさに気落ちしている場合ではないが…

「…寝かせてくる。部屋は、」

「部屋はそのまま使っていいよぉ。僕は看病とかしたことないし、どうせお前が看るんでしょ?」

「ああ。」

「おっぱじめるなよぉ~?」

「殺すぞ」

…気遣うにしても、他に言いようを考えろ。俺の先の無い悩みを感じ取ったのか軽口で叩き潰してくるヴォイスに、礼を言うのも癪だ。そんなことより、シンジョウを早く寝かせてやらなければ。ヴォイスを無視して、借りた部屋へ急ぐ

「ぅ…」

「すまん、起こしたか?」

ベッドへ寝かせ、寝苦しいだろうと靴や防具を外すうちに起こしてしまった

「だ、れ…?」

熱に朦朧としているのか、視線の合わない瞳は潤んで不安そうに揺れている

「…『ゼロさん』だ、わかるか?」

怖がらせないよう、起き上がろうとするシンジョウを支え隣へ座る。その間も、荒い呼吸が聞こえ気を揉む

「熱冷ましは飲めるか?」

「…ゃだ、」

蚊の鳴くような、か細い声がしかししっかりと聞こえ、差し出したままの小瓶が行き場をなくす。どうしたものかと逡巡しているうちに、ぼたりとシンジョウの瞳から涙がこぼれ落ちた

「っ、ゃだよう…、やだ…、」

「…ッすまん、怖がらせたか?」

泣き出してしまったシンジョウに慌てて小瓶を片付けたが…まずいな、思ったより体温が高く混乱しているようにみえる。かといって、無理に飲ませるのも…、

「…の、?」

「ん、どうした?」

「わたし、ころされるの…?」

「?!なぜ、そんな、」

全て諦めたようなシンジョウの声に、言葉がでない。どこか視線の合わないまま、上掛けを強く握り締めて震えている

「うまくやらなくちゃ、いらなくなったら、わたし、ころされるんでしょ…?」

「っ、そんなことにはならない。なるわけがない!」

「やだ…っ、」

なぜそんな考えに、そう続く筈の言葉は語気の荒んだ俺に怯えて、僅かにでも距離をとろうとみじろぐシンジョウを前に飲み込んだ

アルヘイラに会ったとき、シンジョウはどこか怯えていた。大聖女という役割や異世界を渡ったことで警戒しているのだと思っていた。妖精王に会ったとき、シンジョウは直接告げられていた。必要があれば殺すと。人智を越えた者達から監視され、降りた人の世で頼る者も信頼できる者もいない。そんな状態で、俺はシンジョウのように笑えるだろうか

「わかんない、こわいっ、だれか、だれかたすけて…っ!」

「リン」

「…っ!」

熱で錯乱するシンジョウの、抱き寄せた身体は小さく頼りない。荒事の経験も無いのだろう手は柔らかく、泣きじゃくり赤くなった瞳が痛々しい。どうしたら、一人で立つお前を安心させてやれるだろう

「リン、大丈夫だ。俺がそばにいる」

熱で魘されずとも、不安も不満も話して欲しい。怒りも悲しみも何にも妨げられず、本心から笑えるように支えてやりたい

「俺が護る」

だから、一人で泣くな。柔く背中を撫でているうちに、段々と強張っていた身体から力が抜けてきたのがわかる。…少しは落ち着いたか?

腕の中の温もりが心地よく離れがたい。が、怖がらせたいわけではないからな…シンジョウが離れやすいよう、抱き締めていた腕をはなした

「…、」

「シンジョウ?」

「ずっと、いっしょ?」

ぎゅう、と服を握られ、不安と期待がわかりやすいほど滲む眼に見上げられ、離れたくないと言われているようで、

「可愛…ッんん゛、」

待て落ち着けそうじゃないだろ、いやシンジョウは可愛いが!くるくると変わる表情も女にしては低い声も耳に心地良い。強気な黒い瞳が何より好みで、だからこそそんな潤んだ眼で期待を込めて見るなっ、お前が俺に好意があると勘違いしそうになる!なんでお前はそんなに泣き顔が可愛らしいんだもっと泣かせたくな…違うそうじゃない泣かせるのはダメだ、そういったことはそれこそもっと仲を深めてからだな、

「…だめ?」

「ッ一生一緒にいる!約束する!」

返事が遅れたから不安になったのか?眉根が下がり震える声がいつもより高く、わかりやすく甘えを含んでいて…己の喉が鳴ったのがわかった。思わずシンジョウを抱き締めて言いきってしまったが、元よりそのつもりだから嘘はない。嘘はないが、

「…そっか、」

「シンジョウ?」

「…えへへ、」

嬉しそうにゆるゆると微笑んで、すり寄ってくるシンジョウに眩暈がする。可愛いが過ぎないか?いや、待て早まるな。シンジョウにとってこれは愛や恋の意味は無いんだ。そもそも高熱で混乱して…、そうだ、何をしているんだ俺は。シンジョウに熱冷ましを飲ませて寝かせる為にここにいるんだろう。急激に冷静になったのは、その、罪悪感からでは…

「…まだ、熱が高いな。泣いて興奮したぶん余分に上がったか?」

「ん、」

うっすら汗ばんでいる額に手を当てると、先程までとはうって変わって大人しくされるがままで。気を許されているのが手に取るように解り…かわ、いや、んん゛、落ち着け

「シンジョウ、熱冷ましがあるからそれを…シンジョウ?」

「つめたくて、きもちいい…」

「ッ、」

額に当てていた手をとられ、シンジョウの柔らかい頬がすり寄せられ肩が跳ねた。心地良さそうに眼を細めて微睡む表情も、手に絡まる熱く細い指も、己との差を感じるほどザワザワと腹の底の方から沸き上がってくるナニか

「毒を飲まされると思ったのか?」

怯えていた原因、熱冷ましの小瓶を見せてこれは薬だと説明すれば、頷きはするが瞳はまだ不安気に揺れていて

「…死ぬなら、俺が先だ」

ヴォイスの作る薬は趣味で置いておくには勿体ない程効果が高い。腐っても大魔道師ということだろう。速効性もあるコレの問題は見た目や味が最悪なところだな。幼少期に実験味見と称して何度も飲まされたコレは、初めて飲む人間なら思わず吐き出す味で

だから、シンジョウがきちんと薬を飲むためだ

「ん、ぅ?」

小瓶のふたを開けて己の口に流し込んだ。驚き眼を見開くシンジョウを捕まえて、柔いくちびるに噛みつく

「っ、ン、ふ…っ、」

逃げられないように押さえ込んで、舌を割り入れて薬を流し込む。びくりとシンジョウの肩が跳ねても、唇を離すことなく飲み込むのを待った

「んっ、はぁ…っ、んン、」

ごくりと喉の鳴る音が聞こえる。鼻にかかる、蕩けるような可愛らしい鳴き声も。呼吸の為に開いたくちびるに吸い付いて、舌を入れて口内を舐めるとシンジョウの小さな舌が絡まって気持ちが良い

「…全部飲んだみたいだな」

「はぁ、は、…っ」

口の端から溢れる液体を舐めとると、あの独特な薬とは違く甘く感じる。シンジョウが甘いのか?荒い呼吸を整えようとする可愛らしいシンジョウの、小さな唇にもう一度吸い付くとやはり甘い。気が付けば夢中で甘さを追いかけ、何度も口付けを重ねていた


「んぅっ、…ゃ、くるし、」

「…っすまん!!」

瞳に涙を溜めたシンジョウに胸を叩かれ、やっと我に返るほど

「すまない、その、あまりの甘さにがっついてしまった…、」

言葉にして己の愚かしさに顔が熱くなる。我慢のきかない子供か俺は…!

「薬を、だな、その、独特な味がするだろ?吐き出してしまう者もいるから、そうならないようにと考えたんだ、誓って本当だ!この1本しかないし、怯えるお前を納得させるにも毒味をすればと、しかし俺が飲めば量が足りなくなると…だな、本当にそう…思っていたんだ…最初は…、」

いや完全に建前だこれは。想像していたよりも、ずっと柔く甘いシンジョウに我を忘れていただけだ。つらつらと立てた言い訳も、並べるほどに幼稚で滑稽で居たたまれなくなってきた。沸騰したように全身が熱い。そもそも順序も可笑しいだろう高熱で抵抗できないシンジョウに何をしているんだ俺は…!

「っすまないシンジョウ、なにを言っても言い訳にしかならないが、俺がお前を思っていることは本当で…!しかし無理矢理その、口付けたことには変わらない。気が済むまで殴ってくれても…シンジョウ?」

申し訳なさに下がっていた視線を上げた先。枕を抱き締め、すやすやと寝息を立てているシンジョウがいた

…っだから、速効性がありすぎるだろう!ヴォイスの野郎!

熱が下がったのか安定した呼吸で眠るシンジョウの手前、大声を出すわけにもいかず飲み込んだ。薬が効くのは良いことで、シンジョウが健やかに眠れていることは喜ばしいのにやりきれない焦燥感に悪態がついてでる

『おっぱじめるなよぉ~』

ここにいないヴォイスの高笑いが聞こえた気がした


□□□□□□□□



「…お手数お掛けしまして」

深々と頭を下げる私On theベッド。目の前にはなんとも言いがたい表情のゼロさんが、椅子に座ってます。どうやら私は昨日、マリリンを呼び出した後に高熱を出して気絶したらしい

「全然覚えてないでござる…っ!」

「…ちなみにどこから覚えてないんだ?」

「気絶したとこ。目が覚めていま!」

「そうか…、」

やべぇ私何かしちゃったんだろうか…?薄暗いようなゼロさんに声を掛けづらくてジッと見てたら、目があった瞬間反らされたんですけど?!なんで赤くなってるの?!

高熱でぱっぱらぱーになった私が、全裸で踊ったりしたんだろうか

いくら真面目に考えても記憶に無いから答えはでないわけで、うんうん唸ってたらゼロさんからトレーを渡されもうした。お?なになに?

「熱は下がったが体力が心配だ。今日1日はしっかり食べて休め。」

「わぁ!いいにおい!」

深めのお皿に白い液体と沈むなにか…パン粥かな?

「お前ほど旨くは作れないが…食べる分には問題ない筈だ」

「ゼロさんが作ってくれたんですか!?」

「久しぶりだったがこの程度ならなんとかな」

「わぁあ…、いただきます!」

なんということでしょう!そっぽを向くゼロさんは照れてるのかこっちを見ないけど、そんなの関係ねぇ!ミルクに浸るパンは一口には少し大きくて、匙で簡単に小さく割れるほど柔らかい。湯気の上がるそれを少し冷まして口にいれると、

「ふぁ、あまぁい…」

じゅわ、と口に広がる甘さははちみつかな?たっぷりミルクを吸ってぷるぷるなパンと、優しいはちみつの甘さが癖になる。噛まずともつるんと喉を通って、お腹がじんわり暖まって

「おいし…、」

無意識で出た声に、ゼロさんから息つく音が聞こえた

「ふふ、熱出して良かったぁ!こんなに美味しいものが食べられるんですね!」

「…熱を出さなくても、これくらいなら作ってやる。」

なんと!まことですか!?後からやっぱり無しとか言わないでくださいよ?

「…お前の作るものに比べれば、大したものじゃないだろうに、」

言質をとろうとやいやい騒いでいたら、仕方ないなぁって雰囲気で笑われたでござる。ふむ、

「ゼロさんが私を心配して、私のために作ってくれたんですよ?んふふ、幸せの味がします!」

ご存じないなら教えて差し上げましょうね!手が込んでいればもちろん美味しいけど、なにかを作り出すときに一番大切なのは気持ちだと思う!

「そうか…、」

「はい!それにこのパン粥は、ハチミツの優しい甘さにほんのり花の香りがして、ミルクで柔らかくなった小麦の味がじゅわっと…」

料理番組に負けない食レポを聞かせたらぁ!って意気込んでいたら、じわじわとゼロさんのお耳が赤くなってきたのが見えて思わず止まる

「ゼロさんが倒れたときは任せてくださいね!」

「…ああ、頼む。」

ゼロさんって笑うと幼いよね!本人には絶対教えないけれど、はにかむゼロさんてぇてぇ…。普段は男前で笑うと可愛いとか、欲張りセットかな?

◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「わかってた。わかってたよぉ…。」

ジジ君の鞍の上、横座りで今回は前に座らされております、なう。行きで馬だったんだから、次も馬じゃんね!そりゃあね!…絶対回復魔法覚えよう。この後襲い来るであろう痛みを想像して、ぺそぺそに凹んでいたら、ひょい、と左手をとられた

「じゃ、これは妖精王に会えたお礼ねぇ~?」

ちゅ、と口付けられた手の甲に、百合の様な花が咲いて消えた。…おおお、びっくりした。手を矯めつ眇めつ見ても、特に違和感はない

「軽い防御魔法だから、乗っていても痛くはならないよぉ」

足が痺れるくらいにはなるかもぉ。と悪い顔で続けられて、あの、ゼロさんの周りサドしかいないのかい?類友なの?どうなのそこんとこ。あ、感謝はめっちゃしてますありがとう美の女神さま!

サド疑惑のゼロさんをチラ見しようとしたら、ウエストに手が回ってきて引き寄せられた。見上げると眉間に皺を寄せて難しい顔のゼロさん。えっ、なにゆえそんなに不機嫌?座り方が悪かったかな。座り直そうにもヴォイスさんに魔法をかけて貰った左手を、今度はゼロさんに掴まれてて動けない。こらこら擦るんじゃない。擦ってもお花は出て来ないよ?

「ははっじゃあね。爺さんによろしくねぇ~。」

「ああ、世話になった。」

「っ、ヴォイスさん、ありがとうございました。」

謎行動のゼロさんを見て困惑していた顔が面白かったのか、とってもいい笑顔のヴォイスさんに御見送りされてしまった。なんだか釈然とはしないけれど、大人ですのでちゃんとお礼は言うよ。お礼大事。パチンとセクシーなウィンクをお土産にもらい、ジジ君は教皇様が待っているという街へ向かって、走り出した。
    
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感想 1

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みんなの感想(1件)

ゆう
2025.01.28 ゆう

面白かった
もっと続きが見たいです

2025.01.28 おもちのかたまり

ありがとうございます!
いまは加筆修正をしながら、
毎週金曜日に新しいお話を上げる予定でいます。

よろしければまた読んでやってください。

解除

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