【完結】侍女が王女に転生?!英雄と結婚して破滅の国を救います!

カナタカエデ

文字の大きさ
98 / 117
第三章

17話 答え合わせ

しおりを挟む
「この方はロキア王国の初代国王様よ」

「ええっ、あの変……」

「そう。婚約の儀とかいう変な儀式を、自分の子孫に強制した国王よ」

「そ、そこまで言ってません」

二人の会話に苛立った様子で、老人は手にした杖を地面に叩きつけた。
その音を合図に、二人は互いに目を合わせ、老人を睨みつける。

「乱暴な方ですね」

「でしょ……そもそもこの人のせいで、私は転生する羽目になったのよ」

「えっ!? じゃあ、アメリア様や私を転生させたのが、初代国王ってことですか?」

老人は気まずそうな顔を浮かべつつ、気を取り直すように咳払いをした。

「それはそうと……ヴァルク様が去った後、ロキアはどうなるのですか? 酷い結末って……」

「それは、わしが教えてやろう」

王女が止めるよりも早く、老人の杖がカリナの額に当てられた。

次の瞬間、脳裏に浮かんだのは、かつて燃え落ちた城――
いや、それ以上に、目を背けたくなる光景だった。

王都には兵が侵入し、町民たちを容赦なく斬りつけている。
惨劇の中、城は燃えさかり、その炎の只中には、ナイフを手にしたアメリア王女の姿があった。

隣には、すでに息絶えたカリオン王子。
そしてアメリア王女は、覚悟を決めたように、自らの首元へナイフを突きつける。



「きゃああああっ!」



思わず上げた叫び声とともに、映像は霧が晴れるように消え去り、意識は再びこの場へと引き戻された。

「な、なんですか……今の……」

「それが、アメリアの歩んだ人生じゃ。

ヴァルクが去り、ヘブラムは倒れ、仲違いしたままの兄弟たちには、国を治める力がなかった。
その好機を逃さなかったユーラシアは、同盟を破棄し侵略に踏み切った。

まさに、総崩れじゃったわ。

こやつが愛したフィリップ・モリスは、躊躇なく領地を捨て、ダリオンたちと逃げ出した。
置いていかれたアメリアは、カリオンと共に自害するしかなかった――というわけだ」

「そんな……国王陛下が、倒れたのですか……」

「……たぶん、毒を盛られたのだと思うわ。
あの時は、ヴァルクがいなくなって、父は心労が祟ったのだと……そう思っていたけれど」

すべてを言わずとも、王女の言いたいことは伝わった。
脳裏に浮かんだのは、フィリップの叔母――マリアの母である男爵夫人の姿。

実行犯はテティかもしれない。
いや、テティ以外にも、フィリップの手先のような人間は、他にもいたはずだ。

どちらにせよ――
アメリア王女は、自ら王宮に招き入れてしまったのだ。


破滅を招く、悪魔のような男を。


「それで……初代国王陛下が、アメリア様を救ってくださったのですね」

「違うわ!」

間髪入れずに否定した王女に、老人は気に食わなさそうに口を結んだ。
その様子が、なぜか二人の間に奇妙な親密さを感じさせる。

「この人はね……自分が作り上げた国が、私のせいで滅びたって、すごい剣幕だったのよ。
それで、転生させてやるから、何がなんでも滅ぼすなって……」

「ねえ、酷くない? 可愛い子孫を、こんな目に遭わせるなんて」

「……だからって、よりにもよってアレクサンダー王子を選ばなくても……。前世でも、ユーラシアは攻めてきたんですよね」

「あら、だから彼にしたのよ。
ずっと私を想ってくれていたように見えたし、何より――あなたと出会わなければ、ヴァルクはロキアを捨てないでしょう?

ヴァルクがいれば、騎士団も領内の統制も、もっと取れていたはずよ。

それにフィリップのことだって……あなたの知っている世界で、彼を破産させたのは私なのよ」

「アメリア様が!? え、いつの間に……!」

「あなたに知られないように、色々と暗躍していたのよ。びっくりした?
フィリップのことは絶対許せなかったからしっかり復讐してあげたの。

最後は、アレクサンダーの歪んだ性癖のせいで地獄を見ることになったけど、一応努力はしたのよ。

……まさか私がいなくなってから内乱が起きるとは思わなかったけど…」

まるで褒めてほしいかのように堂々と功績を挙げた王女だったが、最後には隠しきれない苦しさが滲んでいた。

「頑張りましたね……アメリア様」

そっと王女の体を抱き寄せると、その細い身体がカリナにもたれかかる。

「私に嫌がらせをしたと言いましたが……ユーラシアが侵略しない確証がなかったから、私を置いていったんですね。
強がるところは、今も昔も変わらないですね」

「……それだけじゃないけど」

「え?」

「わからないなら、いいわよ……」

アメリアの額が、カリナの肩に乗る。
美しく、気高い王女。
けれど本当は、弱く、誰かに愛されたいと願い続けてきた人。

「あの……アメリア様。心配しなくても大丈夫です。
ヴァルク様は、何があっても、あなたをお守りくださいます。

だから……」

「本当にいいのか?」

アメリアとカリナの会話に割って入った初代国王は、冷たい目で二人を見据えた。

「本当に、お前はそれでいいのか。
せっかく手に入れた愛を手放して。

わしなら、そんなことはしない。
どんな手を使ってでも、自分のものにしておくだろう」

その漆黒の瞳は、カリナを試すかのように射抜いていた。
すぐに答えようとしたが、威圧感に足が竦み、声が出ない。
これが、国王という存在の重みなのか。

それでも――
カリナの答えは、最初から決まっていた。




「愛……は、ひとつじゃありませんから!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす

遊鷹太
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する

影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。 ※残酷な描写は予告なく出てきます。 ※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。 ※106話完結。

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。 死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

処理中です...