短篇 山ノ神

しずくなうすぎぬ

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ことりばこ

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母が死んだ。
そして、気持ちの悪い男に引き取られた。

男に初めて会ったのは母の葬儀の日だ。
火葬後にいやがる私は乱暴された。
初めての事で何がなんだかわからず、親戚に話したら頭がおかしいと罵られた。

生活は監禁そのものだ。
男の集めた気持ちの悪い本ばかりは自由に読むことが許されていた。

食事はたまにしか出ないが、よくわからない味付けの不思議な肉、何か粉っぽいものが混ざったご飯。
ご飯のある日は交換条件のように犯された。

母は生前「食べれるときに食べ、強く生きなさい。」と言っていた。
何度も何度も舌を噛みきって死のうとしたけど、まるで呪いのような母の言葉が響き声も出さずに泣いていた。

いつも以上に気分が良かったのか、男は一緒に料理をしようと言ってきた。
無理矢理手伝わされた。

人間の赤ちゃんの解体だった。

「いつも食べさせてるだろ?」
泣きじゃくる赤ちゃんの頭を最初に落とす。
あまりの気持ち悪さに私は吐いた。
男が何か言いながら近付いてきたが、そこで記憶は途切れていた。


気が付くと、手足の自由を奪われていた。
変なものを口から無理矢理流し込まれ、犯されの繰り返し。

何日経ったかわからない。

生きることも死ぬことも許されない。

ふと、本の内容を思い出した。
コトリバコ。
私がはこなら呪いは充分かな?
壊そうとすれば禍いを振り撒く最悪の呪い。
かろうじて保ってる理性もそろそろ壊れるかな。
母の呪いの言葉で残ってる理性。

なにも感じず犯されている。
男が首に手を掛けてきた。
ああ、これで楽になれる。

けど、最後の最後でゆるめられた。
また生きてるといえない殺してももらえない
だから、考えた言葉をふりしぼる

「わたしをのこさずほねまでたべて」

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