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一章 追憶編

1話 全てを失った日

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あたり一面に広がる草原。

俺は目の前に咲くコスモスに目線を向ける。

剣を向けられていることすら忘れて感嘆を漏らす。

目の前の剣を向けている騎士の手は震えが止まる様子が無い。頭では理解しているのだ、生涯を懸けても傷一つ付けられない程圧倒的な実力差を。

俺の後ろには双子の姉妹が居る。

目の前の奴を殺して早く家に帰ろう。


⬛︎


「行きますよ騎士さん」
「来いレイク」

その言葉を開始の合図としてレイクと騎士は剣を交える、激しい剣を交える音が広場に響く、レイクは十歳、騎士は二十一歳。歳の差が十歳以上あるにも関わらずレイクが勝利した。

「いやぁ、レイクは強いなぁこりゃあ将来騎士団長も狙えるかもしれんぞ」
「ありがとうございます。狙えるかどうかは明日決まります。そうなれるならば精進します」
「謙虚だな、レイクならば歴代最高値の魔力を授かるかもしれんな!」
「それって現騎士団長より多いってことですよ?そんなわけないじゃないですか」

苦笑しながら否定する。すると

「レイクは絶対大丈夫よ!絶対一番強くなる!」

そう言ったのは幼馴染のルージュ。同い年で家が近いからよく遊びにくるのだ

「だってレイク強いもん!」
「いくら剣が使えてたって魔力が少ないと騎士団に入っても清掃員だけどな」

そう、この世界は魔力が全てなのだ。どれだけそれ以外が優れていても魔力に大差がある、ましてや魔力ゼロなどでは一切のダメージは通らない。魔力は11才の者になった者を集め、半年に一回、神殿で神より授けられる。そして魔力の色によって優劣が決まる。

「レイクは絶対すごいのを神様から授かれるよ!」
「授けられると良いな」

「明日神殿でね~」 

そう言いながらルージュが家に帰っていった






⬛︎
今日レイクとルージュに魔力が授けられる。

「次、レイク」

俺の番みたいだ。俺は神殿の魔法陣の中心に行き神官様の言葉を待つ

(ん?なんだか神官様がザワザワしてるぞ、何かあったのか)

「レイク=スパーダ、貴殿は魔力を授けられなかった」

うそだ。タチの悪い冗談だ。ル、ルージュは?

現実から目を逸らし、ルージュを見た。それがレイクに現実を突きつけた

「ルージュ=エリュトロン、貴殿の魔力は七色だ」

七色、この世界の歴史で一度も持った者がいない新しい魔力。光輝く色は赤、青、黄、緑、黒、白、紫の七色だ

「ルージュ様は次期騎士団長になることのできるお方だ」
「とんでもない才能だな」
「成長すれば間違いなく今までの全ての騎士の中で最強の騎士になるかもしれんな」

と口々にルージュを褒める周囲の者たち。その対となるレイク

「あの者は魔力を与えられなかったのか、神に見放されたなど笑える話よ」
「友達は七色の魔力を持つ天才、自分は魔力すら使えないゴミ。可哀想ですわね」

魔力が無ければ騎士団には入れない。魔物や魔族との戦闘は危険と隣り合わせ。一人が遅れれば部隊の遅れになるためだ。

ゴミ、神に見放された。その言葉が今後の人生を示している様な物である。



レイクは家に帰り、貴族の父と母にそのことを報告した。

「レイク、お前が成人なると同時にこの敷地内に立ち入ることを禁ずる。そして今日から五年間は敷地内の森で生活する様に最低限の金と家だけは森に用意しておいてやる」
「もう一つ、ルージュ様には今後近づかないように」

あの場にエリュトロン家の当主が来ていたから当たり前だろうな。そして勘当を言い渡された。スパーダ家に居てもらっては邪魔ということだ。スパーダ家の威厳を守るためだろう。俺は邪魔というわけだ。

「はい、わかりました。明日中に荷物をまとめて明後日出ていきます」

返事をして部屋に戻った。







この日レイクは全てを失った。


今思えばこの日からーーーーーー











後書き
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