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一章 追憶編

3話 双子の名前

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森の荒屋で保護した双子は丸一日寝かせたら目を覚ました。

「「ここ、どこ?」」

二人揃って驚いた顔をして自分が今居る場所に戸惑う。

「あ、目覚めた?森を探検していたら奥でボロボロの荒屋を見つけて、中に入ってみたら二人が倒れていたから保護したんだ」
「あ、ありがとう」
「ありが…とう」
「どういたしまして」
「とりあえずお腹空いてるでしょ?何か作ってくるよ」

二人は部屋を見渡す。すると目に入ってきたのは

「ねぇ、あの写真誰だろう」

棚の上に写真が飾られている

「本当だ。誰だろう」

その写真には屋敷の前に小さな女の子と小さな男の子の家族が写っていた。写真に写っている人達が誰なのかは双子は知るはずも無いが何故か気になってた。

「ご飯ですよ~」

レイクが双子のご飯を運んできた

「名前知らない魚の塩焼きと米しか無いけどね」

レイクは料理はできるが魚や肉の見分けが全くと言って良い程苦手なのだ。一応自分が食べたことのある魚なので毒は無い。

双子は両手を合わせて

「「いただきます」」

と言ってから食べ始めた。

俺はその「いただきます」が何なのか気になったが、双子が幼子らしい幸せそうな笑顔で食べているのを眺めていた。

「「ごちそーさまでした」」

俺は「いただきます」とか「ごちそーさまでした」を食べる前と後に言う文化を持つ地域が存在するのかは知らないが、双子がかなり遠くの地域から来て、あの荒屋に居たのだろう。

「二人の名前は?」

とりあえず名前を聞いてみる。名前がわからないと会話がしにくいのだ。

「なまえ…わからない」
「わたしも…わからない」
「そうか…」
「何か覚えてる?」
「えほんでどうぶつがひをはいてたたかってたよ」
「えほんってどんな物なの?」
「ほんにえともじをかくの」
「一度見てみたいな!」
「二人が旅に耐えられる体になったら二人のお家を探しに行こう」

双子は大きく頷いた。

俺の最初の目標が決まった。双子を家に返す。それが最初のしたいことだ。

「話が逸れたな。名前がわかるまでなんて呼ぼう」
「好きなものある?」
「「無い」」
「好きな色は?」
「「無い」」
「そっか。明日の朝までに良い名前を考えておくよ」
「「うん」」

俺は双子に寝るように促して部屋を出て一人で名前を考えた。




次の日

「おはよう」
「おはよう」
「おはよう」

俺が起こそうと思って部屋に入ると二人揃って起きていた。三連続おはようだ。

「名前を考えた!嫌だったら嫌って言ってくれ」
「君は瞳の色が青っぽい色だからシーニィ。君は瞳の色が黒だからネロ。どう?」 

双子は互いの瞳の色をよーく見てから小さく笑う。

「うん。良い。シーニィ」
「うん。ネロ」
「よろしく。ネロ。シーニィ」

三人での森生活が始まった。
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