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二章 王都学院編

20話 激闘

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アラン VSフェト、ロイドの激闘が幕を開けた。

「ロイド様!何かマスターを助ける方法はありませんか?」

フェトは魔力の化身から放たれる高速斬撃を避けながらロイドに問う

「候補は三つじゃ。一つあの中に居るアランを引っ張りだす。二つ魔力切れまで食い止める」
「三つ、アランを殺す。儂はこれを選ぶのはごめんじゃの」

三つ目。これはフェトとロイドの二人掛かりでアランの暴走を止めることが叶わない場合のみだ。

「三つ目は無しですね。一つ目を狙うのがいいですね」
「そのつもりじゃ」

二人の決意は堅い。アランを生かして助け出す。その決意が。





⬛︎
一方エリスはフェトに指示を貰い、騎士団、学院には連絡し、住民の避難誘導を行なっていた。

表情は冷静だ。内では焦燥感に駆られ、自分の弱さへの恨んでいた。

(私はフェトやロイドさんと一緒に闘いたい。でも私があの戦場ヘ行っても二人の足手纏いにしかならないと分かる。何か私に出来ること…)

「あ!マリー先生のあの魔法なら!」

そう思い立った瞬間に、頭より早く体が動いていた学院生徒に避難の手助けの指示を出しているマリーの元へ。




「マリー先生!外に来てください!フェトとロイドさんを援護するんです!」

突然現れたエリスに驚くマリー。

「え、エリス!どういうことだい?援護?近づけないよ?あんなところ」

フェト達が闘っている場所は遠くからでも視認できる程に周囲の魔力の密度が通常の数百倍高い。人間はその密度に耐えきれず、魔力中毒を起こし、最悪死に至る。

「はい。わかってます。ここから援護するんです。あなたの霊魂魔法なら出来るでしょう?」
「可能だ。でもここからだと射程が足りないな」
「なら少し近づきましょう」



戦場まで五百メートルのところまで近づいてきた。

「ここからお願いします」
「教え子の頼みだ。派手にやろう」
「【弱体化(ディレイ)】」

詠唱と同時に魔力の化身の頭上に巨大な魔法陣が展開され、【鈍足付与】が命中した。



⬛︎

「な、なんじゃあの魔法陣は!援護か!」

唐突に現れた魔法陣に驚き、周辺に人が居るか確認する。そして見つけた

「フェト。この魔法陣はアランの友達からの援護じゃ!恐らく弱体化の類じゃろう」

「なるほど。では本気を出すとしましょう」

「【全魔力解放(オーバードライブ)】」

発動と同時にフェトの魔力が普段の黒っぽい魔力から金色の魔力に変わる。この魔法を発動させている間は、遠距離魔法を使えない。その代償に見合う効果。それは究極の身体強化。この状態のフェトは誰にも止められない。

「マスター。今、助けます」

刹那の一挙手一投足。

それだけで先程まで傷が付かなかった魔力の化身に風穴が空いた。

「マスター!」

アランの手を掴む。

「ロイド様!」

ロイドを呼ぶ。

「「ぁぁぁああああああ」」

二人で引っ張り出す。

ついに

「マスタぁぁぁ無事でよがっだぁぁうわぁぁぁぁぁん」

フェトの泣く声が響く。



約1時間に及ぶ激闘は幕を閉じた。
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