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1-ようこそ、世界へ
10.少女、賭けをする。
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こんな奇妙な持病の事をできれば行く先々で言いふらしたくなかった。
しばらくその様子を見下ろしていたオズワルドは、うすうす感じながらも直視したくなかった事実を突きつけてくれる。
「まぁ、定期的に男の体液を摂取できる手段って言ったら娼婦くらいだよな」
「言わないでよ! 私、そんなの絶対ゴメンだから!」
いくら死活問題とはいえ、そこまで身を落としてなるものか。
いや、いざとなったらそれをやむを得ないかもしれないが、本当の本当どうにもならない状況までそれは保留だ。
幸い(?)この男はハナから自分など眼中にないらしい。それならば割り切って約束さえ取り付けてしまえば適任ではないだろうか?
「こんなこと頼んで迷惑だと思うけど。でもできる限り恩は返すから」
「おい、ちょっと待て――」
「私に魔女の素質が少しでもあるなら弟子として付いて行かせて、おねがい!」
真剣な顔をして少女は頼み込む。しばらく男は気おされたように仰け反っていた。だがグッと口元を結んで腕を組む。
「ダメだ」
「えぇっ」
「俺は弟子なんぞ取る気はない」
そこまで言われてもニチカは食い下がった。ここで退けば娼婦! 娼婦はいやだと呪詛のように自分に言い聞かせる。
「お願いします!」
「ダメといったらダメだ」
「足手まといにならないように頑張るからっ」
「しつこい!」
敵は手ごわかった。両者一歩も退かぬままにらみ合いが続く。
その張りつめた空気をぶち壊したのはまたしてもあのオオカミだった。気の抜けるような腹の音が盛大に鳴り響き、四肢を投げ出しウルフィが草原にへたり込む。
「ごしゅじん~おなかへったよぉぉ~」
これでもかと言うほど情けない声に気を削がれたのか、オズワルドがそちらを見ながら脱力した声を出した。
「お前な、場の空気ってもんを少しは読め」
「それってオイシイの~?」
「あはは、お昼にしようかウルフィ」
このまま平行線をたどるより一時休戦した方が気分も変わるかもしれない。そう考えたニチカは笑いながら荷物を下ろした。
***
数分後、さきほどまで草原だったその場はあっという間にピクニックのような光景に早変わりしていた。雑多に詰め込まれたウルフィの荷物の中には、今朝シャルロッテから渡されたお弁当が大量に詰め込まれていたようだ。
「だいたいお前は高望みすぎるんだよ。生きながらえたことに感謝してそこらで地道に生きていけばいいだろ。娼婦がなんだ、身寄りのない女なら誰でもやってるぞ」
「そんなの嫌です、私は絶対元の世界に帰るし、お腹に寄生してる種も取るし、もちろん生きることも諦めたくないの。ワガママなの」
「このハムサンドおいしいねーっ」
楽しいピクニックにしては言葉が剣呑としていたが、とにかく傍から見た分には平和そのものだった。
蝶々がひらりひらりと飛んでいく横で、男がフォークを目先で振りながら脅すように言う。
「言っておくがな、俺について来たらさっきみたいに追われる事になるんだぞ」
「それはそう……だけど」
黙り込んだ少女を横目で見ていた男は、咥えていたフォークをホーローのカップに投げ込みパチンと指を鳴らした。どこからかカードが現れその手の中に滑り込む。
「わかった、一つ賭けをしよう」
「賭け?」
男は二枚のカードを目の前に掲げ広げて見せた。カードの淵から覗くアイスブルーの瞳が細められる。
「このカードのうち、一枚はスペードのエース。一枚はジョーカーだ。エースを引いたのなら連れてってやるよ」
「ジョーカーを引いたら?」
「次の街で捨てて行く」
少女は一瞬ためらった後、口元をきゅっと結び片方のカードに手をかけた。
「……」
男の口元が弧を描く。
空は快晴。
運命が、決まった。
しばらくその様子を見下ろしていたオズワルドは、うすうす感じながらも直視したくなかった事実を突きつけてくれる。
「まぁ、定期的に男の体液を摂取できる手段って言ったら娼婦くらいだよな」
「言わないでよ! 私、そんなの絶対ゴメンだから!」
いくら死活問題とはいえ、そこまで身を落としてなるものか。
いや、いざとなったらそれをやむを得ないかもしれないが、本当の本当どうにもならない状況までそれは保留だ。
幸い(?)この男はハナから自分など眼中にないらしい。それならば割り切って約束さえ取り付けてしまえば適任ではないだろうか?
「こんなこと頼んで迷惑だと思うけど。でもできる限り恩は返すから」
「おい、ちょっと待て――」
「私に魔女の素質が少しでもあるなら弟子として付いて行かせて、おねがい!」
真剣な顔をして少女は頼み込む。しばらく男は気おされたように仰け反っていた。だがグッと口元を結んで腕を組む。
「ダメだ」
「えぇっ」
「俺は弟子なんぞ取る気はない」
そこまで言われてもニチカは食い下がった。ここで退けば娼婦! 娼婦はいやだと呪詛のように自分に言い聞かせる。
「お願いします!」
「ダメといったらダメだ」
「足手まといにならないように頑張るからっ」
「しつこい!」
敵は手ごわかった。両者一歩も退かぬままにらみ合いが続く。
その張りつめた空気をぶち壊したのはまたしてもあのオオカミだった。気の抜けるような腹の音が盛大に鳴り響き、四肢を投げ出しウルフィが草原にへたり込む。
「ごしゅじん~おなかへったよぉぉ~」
これでもかと言うほど情けない声に気を削がれたのか、オズワルドがそちらを見ながら脱力した声を出した。
「お前な、場の空気ってもんを少しは読め」
「それってオイシイの~?」
「あはは、お昼にしようかウルフィ」
このまま平行線をたどるより一時休戦した方が気分も変わるかもしれない。そう考えたニチカは笑いながら荷物を下ろした。
***
数分後、さきほどまで草原だったその場はあっという間にピクニックのような光景に早変わりしていた。雑多に詰め込まれたウルフィの荷物の中には、今朝シャルロッテから渡されたお弁当が大量に詰め込まれていたようだ。
「だいたいお前は高望みすぎるんだよ。生きながらえたことに感謝してそこらで地道に生きていけばいいだろ。娼婦がなんだ、身寄りのない女なら誰でもやってるぞ」
「そんなの嫌です、私は絶対元の世界に帰るし、お腹に寄生してる種も取るし、もちろん生きることも諦めたくないの。ワガママなの」
「このハムサンドおいしいねーっ」
楽しいピクニックにしては言葉が剣呑としていたが、とにかく傍から見た分には平和そのものだった。
蝶々がひらりひらりと飛んでいく横で、男がフォークを目先で振りながら脅すように言う。
「言っておくがな、俺について来たらさっきみたいに追われる事になるんだぞ」
「それはそう……だけど」
黙り込んだ少女を横目で見ていた男は、咥えていたフォークをホーローのカップに投げ込みパチンと指を鳴らした。どこからかカードが現れその手の中に滑り込む。
「わかった、一つ賭けをしよう」
「賭け?」
男は二枚のカードを目の前に掲げ広げて見せた。カードの淵から覗くアイスブルーの瞳が細められる。
「このカードのうち、一枚はスペードのエース。一枚はジョーカーだ。エースを引いたのなら連れてってやるよ」
「ジョーカーを引いたら?」
「次の街で捨てて行く」
少女は一瞬ためらった後、口元をきゅっと結び片方のカードに手をかけた。
「……」
男の口元が弧を描く。
空は快晴。
運命が、決まった。
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