147 / 156
終章-ひねくれ師匠と本当の私
147.少女、言の葉を綴る。
しおりを挟む
ランバールはそれだけを言い残し行ってしまう。言葉を継げずに見送っていたオズワルドの横でシャルロッテが楽しそうに笑う。
「あーあ、泣かせたー。仕方ない、またからかってやるか」
よっと腰掛けていた台から降りた彼女は資料を抱えなおし、出て行く直前で振り向いた。
「ねぇ、オズちゃん、あなただってもう幸せになっていいはずよ。それでもまだ自分が赦せない? 律し続ける?」
優しく諭すような響きが辛かった。視線をそちらに向けないまま遠くのポータルを見つめる。
「あのね、人はみんなカッコ悪い生き物よ。なんの汚点もない人生を送れる人なんてほんの一握り。もしくはそれを把握できないおバカさん」
自分は前者ではない、そしてもちろん認識できないほど馬鹿でもない。嫌と言うほど罪の意識に苛まれたままだ。……全て円満に解決したかのように見える今でも。
その時、シャルロッテがこちらに引き返してくるのを感じた。彼女はそのまま目の前に立つとこちらの胸にトンと指を突き立てる。
「つらい過去を上手く消化して笑えるのが、強い人。ニチカちゃんはそれを乗り越えた、男のあなたが負けててどうするの?」
「……」
それでも応えることが出来なかった。プッと吹き出す音がしてふいに頭に手を乗せられる。小さな子でも励ますように豪快にわしゃわしゃとかき乱しながらシャルロッテは、いや、ロッカは続けた。
「ほんと、自分のことになると臆病なんだから。人を好きになる前に、まず自分の事を好きになりなさい」
なぜかリッカの気配を感じる。
彼女『達』は柔らかく微笑んだ。見なくとも言葉だけでわかるほどに暖かい声の響きだった。
「『大丈夫、気付いてないかもしれないけどあなたいい顔するようになったわ。お姉ちゃんはあなたの幸せを願ってるからね。これかもずっと』」
――頑張って
ぬくもりが離れシャルロッテが去っていく。
男は最後まで顔を上げることができなかった。
***
相も変わらず美麗な美しさを誇る天空の回廊を早足で進みながら、オズワルドは苛立っていた。
ユーナもシャルロッテもランバールもいったい自分に何を言いたいのか。何をさせたいのか。何が頑張れだ。男を見せろだ。もうアイツは俺を必要とはしていない。そんな事は分かりきっているのに。
(俺に何の相談もなしに天界に残るという決断をしたと言う事は、つまりはそういうことなんだろ?)
もう導いてやる『師匠』は必要ないのだ。ニチカは何も持たない迷い子ではない。
だから空気を読んで黙って去ろうと言うのに、周りはせっつくようにけし掛ける。
(どうして俺がこんな気分にさせられなきゃいけないんだ、あぁ苛々する)
なぜ今回に限って、こうも心が引き裂かれんばかりに痛むのか。
人の心に執着などしたくなかった。これまでも去りゆく者は追わなかった。自分に人としての魅力がないのは分かっていたから。
うんざりだ。それもこれも全部――あの弟子のせいだ。
背中を押した彼らが聞いたら白目を剥いて気絶しそうな結論を出し、オズワルドはやや乱暴にテラスへの扉を開けた。
文句を言ってやる。俺をこんなわけの分からない感情に引きずり込みやがって。
「おいニチカ!」
苛立ちをぶつけようと思った相手は確かにそこに居た。
吸い込まれそうな青い世界に突き出たテラスで、少女はこちらに背を向けていた。
緩やかな風が彼女の髪をもてあそぶように吹き抜ける。
珍しく雲のない日で、どこまでも続く空が遠近感を狂わせた。
その不思議な光景にオズワルドは二の句を継げなくなり、扉をあけた体勢のまま動きを止める。
「昔――」
「?」
外の世界を向いたまま少女が話し出した。
「真夜中に帰ってきたお母さんが、私に絵本を読み聞かせしてくれた事が一度だけあったの」
一体何を言い出すのだろう。自分を捨てた酷い母親のことをまだ忘れられないのか? そんな話やめろと言いかけるがその前に少女は口を開いた。
「すっごい酔ってお酒臭かったんだけど、ニコニコしながら私の為に朗読してくれた。頭を撫でてくれた。一晩だけだったけど一緒に眠ってくれたの」
そこに悲壮感はなく、ただ懐かしいと、そんな響きが含まれていた。
「小さいときの話だし、もしかしたらこれも私が作った都合のいい妄想かもしれない。でもその思い出だけあれば、お母さんのこと忘れないで生きていける。たとえ向こうが私を忘れていても、それだけで……」
彼女は振り向かなかった。
泣いているのかとそっと様子を伺うが、少しだけ見える口角は上がっていた。
少しだけ時間が流れる。
いや、一瞬の事だったのか。男には計りかねた。
「ユーナ様がね、私が望めば元の世界に帰すことも出来るって」
初めて聞く話にギクリと身体が強ばるのを感じる。嫌な汗が吹き出し鼓動が加速していく。
「……帰るのか?」
「ううん、今さらだし」
何でも無いことのように言われて少しだけ拍子抜けする。ほっとしている自分に気付きまた苛立ちが募る。
それにも気付かずニチカは「ん~っ」と伸びをしたかと思うと軽く言った。
「一度壊しちゃった記憶とか記録は修復不可能なんだって。私があっちの世界に帰ったところで誰も覚えてないし、出生記録もないから生きてくのは少しだけ難しい。日本ってそういうの結構厳しいしさ」
ようやく振り向いたニチカは苦笑するように眉を寄せていた。
「私、この世界で生きていくよ。フェイクラヴァーの問題もまだまだ残ってるしね」
おどけたようにアハハと笑うニチカに緊張がほどける。
ならいい、たとえその傍に俺が居なくてもお前ならやっていける。
苛立ちがスッと消えていく。今なら素直に言えるかもしれない。
お前は天界で、俺は地上で。いつかまた縁があるなら会えるだろう。
そう口にしようと、終わらせようと息を吸い込んだ。
「だから戻ってきたら言おうと思ってた事、ちょっと変則的になっちゃったけど、今ここで言う事にするね」
そして絶妙なタイミングで言葉を被せられ、確か前にもこんなことあったぞと頭の片隅から声がする。
「お前な……」
引きつらせながら顔を上げたオズワルドは、そこにある表情に心臓を鷲掴みにされた。
ニチカは出会った時と少しも変わらない、まっすぐな眼差しでこちらを見ていた。
その瞳に宿る真剣な光に声を失う。
呼吸することすら忘れ、彼女の次の言葉を待つ。
ドクン、ドクンと耳鳴りがすさまじい。
これだけは聞き逃してはならないと、全身全霊が叫んでいた。
風がぴたりと止む。
泣き出しそうな、それでいて微かに笑った少女の口がわずかに開かれ、そして
空気が、揺れた。
「あなたが、好きです」
その一言が、どれだけ男の胸を貫いただろう。
たった8文字の言葉はどんな魔法よりも、どんな魔女道具よりも強烈に男の思考を停止させた。
「好きです、大好きです。もうずっと前から」
ニチカは頬を染め、ただひたすらにまっすぐ己の気持ちを解放し続けた。
急くように、少しの気持ちも取り残すまいと、
長い間ずっと胸の内に秘めていた想いを、全て吐き出すかのごとく息に乗せる。
「いつからだなんてそんな事わからないけど。でも気づいた時にはもう抑えきれないくらいになってて……っ」
はぁっ、とそこで息をついた少女は静かに俯く。
言葉の魔法を綴りゆく彼女は、振り絞るように言い切った。
「私の想い、受け止めてくれますか」
言葉が終わるのを待っていたかのように、再び風が吹き抜ける。
「……」
突然の告白に脳が完全停止していた男は、気付いた。
ぎゅっと握り締めた少女の手が微かに震えている。
赤く染まっていたはずの頬もどこか青ざめ、血が引いている。
あぁそうか、ニチカは今、恐怖と必死に戦っているのだ。
卑屈なことを言わず、勇気を振り絞った告白を、ばっさりと斬り捨てられる未来を恐れている。
ふいに笑い飛ばしたくなった。
愚かだ、なんて愚かなんだ。
まったく馬鹿で未熟でどうしようもないのは――
(俺だった)
「あーあ、泣かせたー。仕方ない、またからかってやるか」
よっと腰掛けていた台から降りた彼女は資料を抱えなおし、出て行く直前で振り向いた。
「ねぇ、オズちゃん、あなただってもう幸せになっていいはずよ。それでもまだ自分が赦せない? 律し続ける?」
優しく諭すような響きが辛かった。視線をそちらに向けないまま遠くのポータルを見つめる。
「あのね、人はみんなカッコ悪い生き物よ。なんの汚点もない人生を送れる人なんてほんの一握り。もしくはそれを把握できないおバカさん」
自分は前者ではない、そしてもちろん認識できないほど馬鹿でもない。嫌と言うほど罪の意識に苛まれたままだ。……全て円満に解決したかのように見える今でも。
その時、シャルロッテがこちらに引き返してくるのを感じた。彼女はそのまま目の前に立つとこちらの胸にトンと指を突き立てる。
「つらい過去を上手く消化して笑えるのが、強い人。ニチカちゃんはそれを乗り越えた、男のあなたが負けててどうするの?」
「……」
それでも応えることが出来なかった。プッと吹き出す音がしてふいに頭に手を乗せられる。小さな子でも励ますように豪快にわしゃわしゃとかき乱しながらシャルロッテは、いや、ロッカは続けた。
「ほんと、自分のことになると臆病なんだから。人を好きになる前に、まず自分の事を好きになりなさい」
なぜかリッカの気配を感じる。
彼女『達』は柔らかく微笑んだ。見なくとも言葉だけでわかるほどに暖かい声の響きだった。
「『大丈夫、気付いてないかもしれないけどあなたいい顔するようになったわ。お姉ちゃんはあなたの幸せを願ってるからね。これかもずっと』」
――頑張って
ぬくもりが離れシャルロッテが去っていく。
男は最後まで顔を上げることができなかった。
***
相も変わらず美麗な美しさを誇る天空の回廊を早足で進みながら、オズワルドは苛立っていた。
ユーナもシャルロッテもランバールもいったい自分に何を言いたいのか。何をさせたいのか。何が頑張れだ。男を見せろだ。もうアイツは俺を必要とはしていない。そんな事は分かりきっているのに。
(俺に何の相談もなしに天界に残るという決断をしたと言う事は、つまりはそういうことなんだろ?)
もう導いてやる『師匠』は必要ないのだ。ニチカは何も持たない迷い子ではない。
だから空気を読んで黙って去ろうと言うのに、周りはせっつくようにけし掛ける。
(どうして俺がこんな気分にさせられなきゃいけないんだ、あぁ苛々する)
なぜ今回に限って、こうも心が引き裂かれんばかりに痛むのか。
人の心に執着などしたくなかった。これまでも去りゆく者は追わなかった。自分に人としての魅力がないのは分かっていたから。
うんざりだ。それもこれも全部――あの弟子のせいだ。
背中を押した彼らが聞いたら白目を剥いて気絶しそうな結論を出し、オズワルドはやや乱暴にテラスへの扉を開けた。
文句を言ってやる。俺をこんなわけの分からない感情に引きずり込みやがって。
「おいニチカ!」
苛立ちをぶつけようと思った相手は確かにそこに居た。
吸い込まれそうな青い世界に突き出たテラスで、少女はこちらに背を向けていた。
緩やかな風が彼女の髪をもてあそぶように吹き抜ける。
珍しく雲のない日で、どこまでも続く空が遠近感を狂わせた。
その不思議な光景にオズワルドは二の句を継げなくなり、扉をあけた体勢のまま動きを止める。
「昔――」
「?」
外の世界を向いたまま少女が話し出した。
「真夜中に帰ってきたお母さんが、私に絵本を読み聞かせしてくれた事が一度だけあったの」
一体何を言い出すのだろう。自分を捨てた酷い母親のことをまだ忘れられないのか? そんな話やめろと言いかけるがその前に少女は口を開いた。
「すっごい酔ってお酒臭かったんだけど、ニコニコしながら私の為に朗読してくれた。頭を撫でてくれた。一晩だけだったけど一緒に眠ってくれたの」
そこに悲壮感はなく、ただ懐かしいと、そんな響きが含まれていた。
「小さいときの話だし、もしかしたらこれも私が作った都合のいい妄想かもしれない。でもその思い出だけあれば、お母さんのこと忘れないで生きていける。たとえ向こうが私を忘れていても、それだけで……」
彼女は振り向かなかった。
泣いているのかとそっと様子を伺うが、少しだけ見える口角は上がっていた。
少しだけ時間が流れる。
いや、一瞬の事だったのか。男には計りかねた。
「ユーナ様がね、私が望めば元の世界に帰すことも出来るって」
初めて聞く話にギクリと身体が強ばるのを感じる。嫌な汗が吹き出し鼓動が加速していく。
「……帰るのか?」
「ううん、今さらだし」
何でも無いことのように言われて少しだけ拍子抜けする。ほっとしている自分に気付きまた苛立ちが募る。
それにも気付かずニチカは「ん~っ」と伸びをしたかと思うと軽く言った。
「一度壊しちゃった記憶とか記録は修復不可能なんだって。私があっちの世界に帰ったところで誰も覚えてないし、出生記録もないから生きてくのは少しだけ難しい。日本ってそういうの結構厳しいしさ」
ようやく振り向いたニチカは苦笑するように眉を寄せていた。
「私、この世界で生きていくよ。フェイクラヴァーの問題もまだまだ残ってるしね」
おどけたようにアハハと笑うニチカに緊張がほどける。
ならいい、たとえその傍に俺が居なくてもお前ならやっていける。
苛立ちがスッと消えていく。今なら素直に言えるかもしれない。
お前は天界で、俺は地上で。いつかまた縁があるなら会えるだろう。
そう口にしようと、終わらせようと息を吸い込んだ。
「だから戻ってきたら言おうと思ってた事、ちょっと変則的になっちゃったけど、今ここで言う事にするね」
そして絶妙なタイミングで言葉を被せられ、確か前にもこんなことあったぞと頭の片隅から声がする。
「お前な……」
引きつらせながら顔を上げたオズワルドは、そこにある表情に心臓を鷲掴みにされた。
ニチカは出会った時と少しも変わらない、まっすぐな眼差しでこちらを見ていた。
その瞳に宿る真剣な光に声を失う。
呼吸することすら忘れ、彼女の次の言葉を待つ。
ドクン、ドクンと耳鳴りがすさまじい。
これだけは聞き逃してはならないと、全身全霊が叫んでいた。
風がぴたりと止む。
泣き出しそうな、それでいて微かに笑った少女の口がわずかに開かれ、そして
空気が、揺れた。
「あなたが、好きです」
その一言が、どれだけ男の胸を貫いただろう。
たった8文字の言葉はどんな魔法よりも、どんな魔女道具よりも強烈に男の思考を停止させた。
「好きです、大好きです。もうずっと前から」
ニチカは頬を染め、ただひたすらにまっすぐ己の気持ちを解放し続けた。
急くように、少しの気持ちも取り残すまいと、
長い間ずっと胸の内に秘めていた想いを、全て吐き出すかのごとく息に乗せる。
「いつからだなんてそんな事わからないけど。でも気づいた時にはもう抑えきれないくらいになってて……っ」
はぁっ、とそこで息をついた少女は静かに俯く。
言葉の魔法を綴りゆく彼女は、振り絞るように言い切った。
「私の想い、受け止めてくれますか」
言葉が終わるのを待っていたかのように、再び風が吹き抜ける。
「……」
突然の告白に脳が完全停止していた男は、気付いた。
ぎゅっと握り締めた少女の手が微かに震えている。
赤く染まっていたはずの頬もどこか青ざめ、血が引いている。
あぁそうか、ニチカは今、恐怖と必死に戦っているのだ。
卑屈なことを言わず、勇気を振り絞った告白を、ばっさりと斬り捨てられる未来を恐れている。
ふいに笑い飛ばしたくなった。
愚かだ、なんて愚かなんだ。
まったく馬鹿で未熟でどうしようもないのは――
(俺だった)
0
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる