不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ

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第1章 勇者の帰還

31 探索のち再会1

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「──何かある」

 しばらく進んだところで、俺は足を止めた。

「?」

 キョトンとした顔で俺を見つめる雫と凪沙さん。

 一見するとただ通路が続いているだけに思える。
 だけど、俺のカンが告げていた。

 異世界で勇者として、多くの戦場に身を置いた俺のカンが。

 ……その割に、さっき落とし穴に引っかかったりしたけど、それはまあそれとして。

 直後、ぼごぉっ、と音がして、左右の壁が弾け飛んだ。
 そこから飛び出してくる無数の槍!

「──って、なんだよ、これ!?」

 驚きつつも、俺は【近接戦闘・レベル13】のスキルを発動していた。

 高速で飛んでくる数十の槍の軌道を見切り、拳や蹴りで弾く。
 なんとか俺自身も、雫や凪沙さんにも当たらないように、全部防ぐことができた。

 ……暴走族退治で【近接戦闘】のレベルを上げてなかったら、危なかったかもな。

「ひええ……な、なんなんでしょう、この遺跡」
「侵入者撃退用の罠……?」

 おびえる雫に何やら考えている凪沙さん。

「これ以上は危険かもしれないな。引き返すか?」
「そ、そうですね」
「わたしはもう少し進む」

 凪沙さんは意外と精神的にタフなんだろうか?
 まるで異世界の冒険者さながらだ。

「調査に危険はつきもの」

 言って、前方を指差す凪沙さん。

「それに、あそこが終点」

 ん?
 どうやら突き当たりのようだ。

 何か模様のようなものが見えた。

「壁画……!?」

 俺たちはそこまで進んだ。
 前に凪沙さんが見せてくれた、遺跡の壁画とよく似た絵柄だ。

「やっぱり勇者の紋様に似てる……それに、この模様は」

 描かれているのは六本角の竜。
 そして、扉のような絵柄。

 そこから淡い光がもれていた。

「魔力の……光」

 俺はうめいた。
 なんだよ、この壁画は──。
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