神田琥珀

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事件発生から1分経過

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【事件発生から約一分経過】


『ニビン、今いいかな?』

名前を呼ばれた僕は、持っていたナイフの手入れを中断し声の方を向いた。

同時に、ほおばっていたビスケットを急いで噛み砕きながらマイクのスイッチを入れる。
食べかすがぼろぼろと床に落ちた。


「ふぁい!ふぁんほふぉおほぉーふぇんへほーふぁ、ほふ!」

『…食べ終わってからでいいよ』

ボスはやれやれといった顔で苦笑いして
煙草に火をつけた。
燃えているところからもくもくと白い煙が出てくる。


声の方、といっても
本当に目の前にボスがいるわけじゃない。

めちゃくちゃ綺麗な板と
音の鳴るすごく重い箱が置いてあるだけだ。

以前、一緒に仕事をしている女の子が
「ディスプレイ」と「スピーカー」
というんだと教えてくれた。

一緒に仕組みも教えてくれたけど
難しくてよくわからないと伝えると
氷みたいな冷たい目で睨まれたのを覚えてる。
とっても怖くてとっても綺麗だと思った。

でもこれさえあれば
いつでもボスと連絡を取ることができるから
とっても便利だと思ってる。



僕は口の中身をすべて飲み込んだので
改めてボスの方に向き直る。


「何のご要件でしょうか、ボス」


    
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